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空気猫

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イチゴミルク続編。
現代パラレル最終シリーズの連載です。







――スプーンとフォークで楽しいお食事会を開きましょう。
今日のメインディッシュは、きみのお気に召すまま。
いらっしゃいませ――





長い煙突から、空に向かってモクモクと煙が吐き出されている。学校帰り、ナルトは、木の葉町の片隅にある工場地帯を歩いていた。スモッグの匂いと、河の音に混じって、歩道の両側からは定時の就業時間を終えるまで1日中機械音が鳴り響いている。中学時代を過ごした今は懐かしい風景に目が細まった。
カエルのマスコットキャラクターのキーホルダーが付いた横掛け式の学生用布鞄が、ぱこんと揺れる。河岸に沿ってスロープした道を歩き、家屋と家屋に挟まれてゴミバケツと配管と野良猫でごちゃごちゃした小道を抜けると、表通りのオフィス街にある高層ビルとは正反対の佇まいで営業している古びた整備工場の前に出た。
「おーい、綱手のばぁちゃーん。生存確認に来たってばよー!」
ナルトは、工場の横にあるプレハブの建物に向かって顔の横に手を当て大声で叫んだが、建物の中からは返事はなかった。事務室か、と古びた工場の二階に目を向ければ、火花が散るのではないのか、という勢いで殴られた。―――後頭部から。
「うう。いってぇ」
「あ、あひぃ。ナルトくん…」
「誰が生存確認だってぇ?」
小ブタを抱えたシズネが口の中に手を入れてガタガタと震える傍で、豊満な胸の年齢不詳の女性が拳を握っていた。
「綱手のばぁちゃん。せっかく会いに来たのに、いきなり殴るなんて酷いってばよ…!」
地面にしゃがみ込んだナルトは恨めしげに緑色の半被を着た綱手を睨み上げる。
「〝せっかく会いに来た〟だぁ?」
「うぉ……っ」
ぶん、とナルトの頭部の辺りで風が薙ぎ、ナルトは間一髪の所でそれを避ける。
「あっ。危ないってばよ、ばぁちゃん。オレのこと、殺す気かよ!」
綱手の突然の暴力に、ナルトが抗議の声を上げ掛けたが、豊かな胸が視界一杯に広がって思わずたじろいだ。
「おまえは、なんで今の今までなんで連絡を寄こさなかったんだい!」
「ばぁちゃん…」
ナルトは目尻に浮かんだ涙を引っ込めて綱手の抱擁を受けた。
「たく、自立は許したが、少しは私たちを頼ってくれてもいいんじゃないのかい。電話もロクに返さないで、私たちがどれだけ心配したと…」
「ご、ごめんってば…。ばぁちゃん。オレ…」
そういえば携帯電話が壊れて以来、綱手たちと連絡を取る事が出来なくなっていた。結果、綱手等との連絡を疎かになってしまい、知らない間に随分と心配を掛けたようだ。
「このど阿呆が!」
「まぁまぁ、綱手様」
綱手を宥めるシズネの後ろで「血管切れますよー綱手社長」と工具箱を持ったコテツとイズモが笑いながら通り過ぎる。
ナルトは軽く工員等に手を振って、ニシシと笑った。
「……おまえ、随分とすっきりした顔になったじゃないかい」
「んぁ。そうかな?」
「なんだか、迷いが取れた顔をしてるな」
「ニシシ、まぁな。ここを出てから色々、あったかな…」
「そうか…」
ナルトの回答に、綱手がどこか安堵したかのように肩を落とした。
「今日は綱手のばぁちゃんの顔を見に来ただけだからもう行くってばよ…。この後、用事があるんだ。近い内にまた来るってばよ。またな、ばぁちゃん、シズネの姉ちゃん!」
「――お、おい。ナルト!」
「あ、あれ。事務所でお茶は飲んで行かないんですか、ナルトくん…!?」
シズネが、お盆を持って事務室から出て来たが、既にナルトの後ろ姿は遠くにあった。
「まったく相変わらず云うことをちっとも聞きやしない子だねぇ。どこを跳んで歩いてるんだか」
「そう言いつつ綱手様、顔が嬉しそうですよ?」
「うるさい、シズネ。とっとと仕事に戻りな」
「あひぃ。綱手さまぁ…」
「まったく。どいつもこいつも仕様がないガキだねぇ…」
そう言って綱手が見上げた空は青く、澄んでいた。




同刻、同じ空の下。
「ん…、んぅ、ん、ん、んん。ふぅ」
「ん……」
銀髪の大人によって壁際に背中を押し付けられて、金髪の少年が声を押し殺していた。ここは道端で、時刻は昼間。キスをし合う二人は同性で男同士。キスをされているのは先程の少年だ。そしてキスというよりは、食べるという行為に似た深い口付け。呑み込むように、舌を絡めとられ翻弄される。口内で蠢く大人の巧みな舌。含みきれなかった、だ液が伝う。
「ふぁ…っ。カカシ先生っ」
「ん、上手だったね…?」
別に二人はキス以上の行為に及んでいないが、十数分間に及ぶ長いキスに、大人の相手をしていた金髪の少年は息を荒げ涙ぐみさえしていた。
銀髪の大人の名前ははたけカカシ。金髪の少年の名前はうずまきナルト。なんとも目に鮮やかな色彩の二人である。
「けほ、けほ、けほ。はぁ…」
「だーいじょうぶ?」
咳込んだナルトの金糸を愛おしそうに弄びながらカカシは笑う。
「カカシ先生が無理させるからじゃんっ」
「はは、そぉー…?ちゃんと息継ぎ覚えなきゃねぇー…?」
とろんとした瞳のナルトを懐に招き入れて、カカシは腕時計を確認する。
「ナールト、そろそろバイトの時間だよ?」
「んー…」
瞼にキスを落とされてナルトの頬が朱に染まる。少年であるはずのナルトは、本来であれば、女性をリードする側の性に属しているはずだが、カカシと恋人関係になってから、受け身的な役割を担うことが多い。
年齢的な年の差を考えれば仕方がないことかも知れないが、ナルトは男としての意識が人一倍強い少年故、まだ照れが入ってしまうのだ。
だが、それに相反して、カカシの腕の中に居ると、この大人には甘えてもいいのだと、言いしれぬ安寧に満たされた。だから、今のように大きな身体で抱き込まれるとナルトは「うーうー」言いながらも大人しく降参してしまうのだ。
「あ、そうだ。カカシ先生、今週の日曜日なんだけど、オレってばちょっと用事があって逢えねぇの」
「あー、オレもそうかな」
「カカシ先生も?」
「ま、ね。そっかじゃあ外でデートはしばらくお預けかな?」
「………んー、んー、うん」
“デート”の言葉に赤くなっているナルトを見下ろして、カカシはニンマリと人の悪い笑みを浮かべる。
「じゃあ、ナルトのキス、日曜日の分もちょーだい?」
「――ん゛っ」
ナルトが長い長いキスから解放されたのはそれから更に数十分後。慌ててバイトに向かうナルトを平手を振って見送って、
「さ、オレもそろそろ仕事に行こうかねぇ…」
と、カカシはナルトのコンビニと真逆の方向へと歩き出した。




そして日曜日。
「ここが、そうだってば?」
ナルトは古びたメモ用紙を片手に喫茶店の前に立っていた。ナルトのアパートから少しだけ離れた場所にひっそりと佇む小さな店。古びて、罅の入った看板に書かれた店名は『木の葉喫茶』。緊張でこくんと喉が鳴る。
―――だって、8年ぶりの再会になるはずなのだから。
木製の雰囲気のあるドアの前でナルトは、入るか入らないか、迷ったあげく、ええいっと気合一発で扉を上げた。
扉に取り付けられていたベルがカランカランと鳴る。珈琲の香りと、煙草の匂い。喫茶店独特の空気に、しばしナルトは固まってしまった。
金髪碧眼の少年の登場に、中にいた金髪碧眼、ホワイトカラーのシャツにエプロンを着けた男の目がまん丸に見開かれる。
ガッシャーンと皿か何かが落ちる音と共に、歓声が飛んだ。
「ナルくん……!!」
「だ、だ、誰かナルくんだってばぁぁーーっ!!!」
抱擁してくる男を押し退け、ナルトのアッパーカットが見事に決まった。ああ、思い出なんて美しいままの方が良かったのかもしれない。ニコニコと満面の笑みで抱きついてくる男の名前は波風ミナト。そんな、父との8年ぶりの再会だった。

















大変、お待たせ致しました。
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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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