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空気猫

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「おまえさー…この間道端で、男とキスしてただろ」
イチゴミルクの200ミリパックを飲んでいたナルトは文字通りぶっと噴き出した。
「げほげほげほ…―――ええと見た?」
「おお、ばっちり」
「この間、校門の前での?」
「?いや、それじゃねえな。って、おまえ。どれだけあの人とキスしてるんだ」
「~~~~っ」
昼休み。屋上のフェンスに寄り掛っていたナルトは、何とか喉に飲料物を飲み下してから足元で寝転がっていたシカマルに目を落とした。
「見たのは、この間の日曜日。スーパーの帰り道にたまたまだよ。悪かったな出歯亀みてぇなマネしちまって」
昼飯を外で食べるには、少々肌寒くなった屋上で学ランの生徒2名が、何となく微妙な空気を漂わせて、フェンスに寄り掛った金髪碧眼の少年はすよすよと吹く秋風に、気持ち良さそうに目を細めたのだが、目付きの悪い友人の突然の爆弾発言に、すっかり驚いてしまった。
ナルトはフェンスに沿うようにズルズルとしゃがみ込んで蹲ると、そこで長い髪を後ろで一本に結っている黒髪の友人と目が合わせる。
「あれっておまえが前に言っていたおまえにやたら構いたがる変なお客の男か?」
「!!」
「そうなんだな」
「すげー、シカマル。なんでわかったんだってば」
頭の良いシカマルのことだ。下手に誤魔化しても仕方がないと、ナルトは正直にそれが自分であることを認めた。
「はぁ…おまえなー。オレがあれほど怪しい人間にほいほい付いて行くなっていっただろ」
「ごめん」
「あやまんなって」
バシ、と頭にツッコミが入る。いてぇ、と頭を抱えると、返す手でぽふぽふと頭を撫でられた。
「おまえは顔に出るからな。あとはまぁ予想だ。おまえの雰囲気変わったのもそれくれぇだったしな。で、どういう関係なんだよ、そのコンビニの客とは」
「つ、付き合ってるってば。だめ?いけない?」
「悪いとは言ってねぇよ」
やはりそうか。バツが悪そうに、しゅんと子犬のように項垂れた友人に気付いてシカマルは言葉を切る。そうしてここ数カ月に起こった粗方の事情をナルトから聞き出し、シカマルはため息を吐いた。
「はぁ…。しかしめんどくせぇ人間に目ぇ付けられたな」
「へ?」
「いやなんでもねえよ」
ガシガシとシカマルはどこかの髭クマがやるように頭を掻く。
「――カカシさんだっけ。おまえの話聞くと、その人ってマジでデキた人間か、どっか頭のおかしい人っぽくね?嫌なことをしない人間なんて存在するのかよ」
普通、いくら仲の良い恋人だとしても多少の衝突はあるのではないのだろうか。それなのに、ナルトの口から飛び出すはたけカカシという人間は、どうやらナルトが右だと言えば右へ、左だと言えば左に行くような人物に聞こえる。そのことを指摘すれば、ナルトは唇を歪めてしまった。
「そ、そんなことないってば。ホントにカカシ先生は優しいんだってば。頭おかしいとか言うな」
「無理矢理変なことされてないだろうな」
思わず飛び出たシカマルの台詞に、ナルトはパチクリと瞳を瞬かせた後、胸を突かれたような面持で、首を被り降った。
「変なことなんてされてないってば…。カカシ先生はすげーオレに優しいの。嫌なことなんてされたことないってば」
「……まぁ、てめぇがそれで納得してるならいいけどな」
「それどういう意味だってば」
ナルトが珍しくシカマルを睨むと、シカマルはまたハァとため息を吐いた。
「いや、妙な勘ぐりしちまって悪かった」
「………」
「おまえが納得して付き合ってるんなら、オレがとやかく言うのもおかしいだろ」
叩き甲斐のあるデコを手の平で弾くと、一瞬納得のいかないようなむっとした表情を返したものの、へへへという照れてはにかんだような笑い声が返って来た。
どうせ、シカマルってばちょーいい奴などと思っているのだろう。本当に性質が悪い。そのくせ、ど天然で無自覚なのだから憎めない。ぎゅー…とナルトに抱き締められながらシカマルは思った。
シカマルたちに対してナルトのむやみやたらなスキンシップが増えたのは、つい最近のことだ。だから、確実にナルトと人との距離を縮めている人間がいることは薄々気付いていた。誰かにさわられることの慣れていなかった少年に、ありったけのスキンシップを施している何者かの影。
「なぁー…、シカマルゥー?」
「あ?」
「もしかしてオレのこと、心配してくれて怒った?」
「あぁ?」
「オレ、怒られるの好きだってばよ。それだけオレのこと心配してくれたんだろ?」
友人から返って来た意外な反応に、シカマルはきょとんしたが、
「んだよ、その顔は。めんどくせぇ」
二マ二マと大変性質の悪い顔で、四つん這いになって詰め寄る金髪の友人にシカマルは「めんどくせぇ」とまたただ一言を漏らして、わりと形の良い鼻の先をぴんっと弾いた。
「……ちぇ。なんだよ、せっかく感動したのに。損したってば」
「あぁ?」
ぷー…と頭上で頬を風船みたいに膨らませたナルトを(恐ろしいことに高校一年生にもなったというのに、その仕草がよく似合っている)シカマルは顔を顰めて見上げる。何のことはない秋の午後の弱い日差しとそれに反射する天然の金髪が目に眩しかったのだ。それ以外の理由など、ないだろ?
「なぁなぁ、オレのこと、心配してくれたんじゃねぇの?」
「するかよ、めんどくせぇ」
「それじゃーその不機嫌な顔はなんだってば。シカマル、シカシカシカ。シーカ」
「だー…うるせぇ」
フェンスに寄り掛かっていたナルトは、横で寝転がっていたシカマルに詰め寄る。面倒臭い事情持ちの面倒臭い性格の少年と面倒臭がり屋な性格の少年。気が合わないような二人だが、小学校の頃からの腐れ縁で、なんだかんだと言いながらもキバやチョウジも含めて「あ」「うん」の呼吸はぴか一だ。
「んだよ、その顔は」
「ほんとぉに、ほんとぉーに心配してねぇの」
「してねぇよ、うぜぇなぁ」
気が付けば鼻先まで金色の少年が近付いていた。面倒臭せぇ…とシカマルはナルトの顔を自分から手を突っ張って突き放しつつ、ふいっと顔を背ける。
「奈良くん、つめたーーい!」
「おまえ、マジでキモいから。つか、近寄るな」
「クラスの女子のマネだってば、似てた?」
「知るか」
「ちぇ」
「おい、降りろよ」
「やだ」
自分の腹の上で馬乗りになったナルト少年をさてはてどうしようかと、シカマルは考えあぐねた挙句、はぁーと腹の奥に溜まって出て来たため息で誤魔化すことにした。
青空を背景に、ニシシと笑った少年の頬を撫ぜて、ちょっと煙草が吸いたくなった。ポケットの中でくしゃくしゃになった煙草の箱を取り出そうか、取り出すまいか迷った挙句、そうだ前にこいつの前に吸って盛大に怒られたんだっけ…というようなことを思い出して、煙草の煙の代わりにまたため息を吐く。
学年トップ並の頭脳を持つ少年の頭の中は近頃、計算出来ないことで悩まされ気味だ。十代、もしくは思春期真っ盛りなシカマル少年の頭を悩ますもの。それは彼の上に乗っかって無防備な表情を見せるひよこ頭の友人だ。
オレはきっとこいつに恋をする。何故だかわからないが、そう思ったのは、まだ小学生のガキの頃だった。まったく救えない。
小さい頃のナルトはどちらかというと無表情で誰かを睨み付けているような拗ねたガキで、だけど何故だろう、何かを我慢したような表情に、自分(たち)に対してだけ向ける笑顔。気が付けば好きだった。
「オレは反対しねえよ。おまえが、その人と好き合って付き合ってるんだろ」
シカマルの言葉に、ナルトは金魚のように口をパクつかせたあと、真っ赤な顔で俯いてしまった。
本当に、男とか同級生と腐れ縁とか友人とか贔屓めとかを差し引いたとしても……――愛しいと思う純粋に。
だが、友人関係をぶっ壊してまで思いを告げるかと言えば迷うところで、自分に思いを告げられて困り切ってしまうこいつの泣き顔は見たくねぇなぁと思ってしまう。
幸せになって欲しいと思う。それが自分であったら良いと思うが、こいつが笑っていればその他の奴の傍でもいいとも思う。
奪い取るとか無理矢理掻っ攫うとかではなく、そういう愛し方のポジションが自分であっていて――。
「あー…すぺしゃるめんどくせぇぜオレの恋心」
赤面してあたふた始めたナルトに、シカマルも鼻の頭だけ赤くさせて微妙に視線を逸らした。
「へ」
「なんでもねぇよ。はぁあああ、本当にめんどくせぇええええ…」
「なんだよシカマル。何か悩み事があったりするのかよ。オレが相談に乗るってば」
「ねーよ。つーかおまえのお悩み相談室だけはマジ勘弁」
「む。微妙にひでぇ…」
面倒臭いが口癖で、平々凡々生活志望だというのに、どうしてこうも厄介なだけの面倒臭い恋を選んでしまったのだろう。人生って七面倒臭いことばかりだ。
「なんだよ、オレだって色々悩んだり考えたりしてるんだからなーっ」
と、シカマルの腹の上でナルトが憤怒したところで、購買にパンを買いに行っていたキバとチョウジがやって来て、そこで話は一旦途切れた。


しかし、その数日後。
「あのさ、シカマルにちょっと相談してぇことがあるだ。だめってば?」
ちょっと怒ったように目元を赤くしたナルト(恐ろしいことにそんな仕草もに合っていた)に昼休みに呼び出されたかと思うと恋の相談だった。シカマルにしか相談できないんだってば、なんて一世一代の大告白のように、友人宣言をされ、嫌だ、と即答したかったが、面倒臭がり屋な少年は面倒見の良さが災いして、乙女モード全開の友人から恋の相談なんてものを聞くはめになり、本当に勉強方面以外で要領が悪い人間だとシカマル少年は常々思ったようである。
とりあえず同性恋愛なんてものの相談をなんとなく受けるようになった奈良シカマル高校一年の秋であった。

















友情以上恋愛未満チックです。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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