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空気猫

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お隣のカカシさんシリーズ第3弾。続かないようで何気に続いてるシリーズ。







怠け者の朝食

そういえばこの間、近所で銀行強盗が起きて一億円盗まれた。うわー、犯人は今頃左内輪だな!と思っていたら、キャバクラで豪遊しているところを警察に捕まったんだって。笑える。
ニュースでは相変わらず遠い国で戦車が横切り、10歳くらいの子供がマシンガンを掲げ誇らしげに笑っていた。オレの前には緊張感のないからっ風が吹いている。この国は今日も平和だ。
春。引越しのアルバイトが大忙しだ。どうして春になると人間って移動したくなるのかな。携帯で登録したアルバイト紹介サイトから配信されるメールで呼び出され、指定された場所に行って仕事をする。重労働から、ただひたすらベルトコンベアーから流れて来る工場の部品を見ている地味なものまで、世の中って本当に色んな仕事があるよな。
現地集合現地解散のペラペラの人間関係。毎回仕事仲間が変わるので、余計な人付き合いをしたくない奴には気楽なアルバイトかもしれない。
何故、オレがこの仕事を選んだかと言えば、日雇いのバイトだと時間の縛りがないことが魅力的だった事と、好きな時に沢山の求人情報の中からボタン一つで自分の仕事を選べるからだ。モバイルで人材派遣と言えば聞こえはいいが、顔を合わせないで仕事が取れるなんて本当にお手軽な世の中になったものだと思う。
桜の花びらが河川敷に舞って、春風に目を細めていると、チリンチリンと自転車のベルを鳴らしている女の子とすれ違った。
「くぁ……」
春ってどうしてこんなに眠たくなるんだろ。尻ポケットから着メロが鳴って、液晶を見ると、元同級生からアドレス変更のメールだった。
なぁんだ、とアドレス登録は後回しにして、携帯を閉じる。下を向いた拍子に目に飛び込んだのは、くたびれたスニーカー。紐がボロボロになって来たから、そろそろ買い換えないといけないかもしれない。
「それと、マンションに帰ったら散らかった部屋を掃除して、洗濯もして、もうちょっとで洗剤が切れそうだから買い足しに行かなき駄目だってば」
あー…、健全な生活って億劫だ。自己管理って、こんなに大変なものだったけ。それとも春という季節が、全てを緩慢にさせるのかな。
からっ風が運んで来た新聞紙には〝戦後未曾有の大不況〟の太文字。オレから言わせれば物心付いた時から〝大不況〟だの〝不景気〟だのと騒がれていた気がする。基本的にこの国はネガティブなんだよな。どこかの大国が風邪を引いたら一緒に風邪を引いて、そろそろ誰か任せの政策を変えるべきだと思う、とこの間テレビで偉い人が言っていた。オレの知識なんてそんなもん。
オレは古新聞を、ゴミ箱に放り込んだ。そんなオレの横を、幸せそうなカップルが手を繋いで通り過ぎる。春だ。
「……。どうして連絡がないんだよ」
ぽつりと呟いた独り言がやけに寂しく響いた。別に。オレたちは熱愛の果てに、付き合い出した関係ではないと思う。自分の趣味は男に固定していないし、カカシさんと肉体関係が出来た後も変わらず身体の柔らかい女の子が好きだし、アダルト雑誌を見ればきちんと興奮する。
だけど、オレは情けなくも道端にしゃがみ込んでしまった。アスファルトの上で桜の花びらが押し花みたいになっていた。桜は散っても綺麗だよな。羨ましい。
「カカシ先生の馬鹿ヤロウ…」
季節は春なのに。こんなにオレの前に広がる世界は美しくて平和なのに。どうしてオレという人間は不幸なんだろう。そんなことを考えている自分のネガティブさに驚いた。
ここ最近、お隣の彼からの連絡が無い。
「出張なんだ。しばらく留守にするから鍵預かっていて?」
最後にキスされたのは2か月前。抱き締められた時、これからこの人が居なくなるなんて実感は全然なかった。別に新聞とかに書いてあるリアルを感じられない若者とか出はないと思うが、カカシ先生の腕の熱さとは裏腹にオレの心は冷静だった。
だって、キスしても抱き締められもセックスしても、愛されてるって実感があまり湧かないんだ。生きてると辛いことって結構あるから感覚を鈍くしないとやってけないと思う。
誰かに過剰に期待することって結構勇気があることだよな。オレの背中に回された腕は、温かかったけれど、どうしてかな。その温もりがいつまでもあるとは信じられないんだ。
だから、お隣の彼と連絡が途絶えて、およそ1か月半。忠犬だって限界だ。猫ならとっくに新しい家で餌を貰って、前の飼い主の顔すらも忘れている頃だろう。
「うずまき、この間のこと考えてくれたか」
この間のバイト帰り。現場主任のゲンマさんからそれとなく、告白の返事を催促された。ゲンマさんから好きだと言われたのは2週間前のことだ。付き合ってる人いますから、とその時は断ったが、この間のバイト帰りに飲みに誘われた時、うっかりその相手が傍にいないことを喋ってしまった。
それ以来、それとなく仕事仲間以上の関係になることを提案されている。オレも満更でもない。ゲンマさんっていい人だし、誰から好かれるっていうのは無条件に嬉しいもんだ。悪い気はしない。
「もう、オッケーしちゃうってばよぉ…?」
2か月も放って置かれたら、カカシ先生との関係を清算しても、どこからも文句は出ないと思う。だけど、どうして、こんなに未練があるのか。あのやたらと格好良い顔が憎らしくなってしまう。
「くそぅ。あんまり待たせているとオレは浮気するぞぉ、はたけカカシィィィ」
オレは恨みがましい怨念を空に向かって叫んだ。指を咥えた幼稚園児が、ぽかんとした顔でオレのことを見ていた。
オレは見世物ではない。ついでに言えば、頭の可哀相な人間でもない。5歳の君へ。大人になると世の中が複雑化して、普通に生きて行くことが難しくなるのデス。



******


日曜日の昼過ぎ。コンビニで買ったサンドイッチと薄い牛乳。ベランダにやって来るぶさいくな顔の野良犬に餌をやって、ため息と共に、一人の部屋で怠け者の朝食。お隣の彼は帰って来ない。





 
 

 



 カカシさん出張中。
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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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