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空気猫

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日常編
―初恋の時間―






「カァシーー!!!」
パタパタパタ。どたた。可愛らしい足音と共に玄関のドアが開いた。ドアの前に三角耳と尻尾付きの子供が頬を紅潮させて立っていた。そんなはたけ家の昼下がり。
「どーしたの、ナルト」
ソファーに寝転んで、読書に耽っていたカカシは、億劫そうに顔を上げた。
「オレってば好きな子できたっ」
「へ…?」
「しゅごい可愛いの。頭が桃色でおめめがぱっちりで、お花の名前の女の子なの。お姫さまみたい。なうってば一目惚れ!」
「あー…、もしかしてそれは春野サクラか…?」
「カァシ、凄いってば。なんでわかったんだってばっ?」
「いや、おまえの後ろにいるから」
「へ?」
「カカシ先生がその子の保護者なんですか?」
「サクラ、久しぶりだな。長期任務はどうだった?」
玄関先に立っていたのは、木の葉の里の中忍春野サクラだった。カカシの数少ない教え子の1人で(とはいっても後に医療のスペシャリストである三忍の1人に師事を仰いだのであるが)、雪の国に長期遠征に行ったきり木の葉を離れていたのだ。
「サスケも帰って来たのか」
「ええ。今、任務報告書を出しに行ってるわ。呼びますか?」
「いや、いいよ。そのうち任務で一緒になるだろう」
人間二人の会話に、ナルトがぽかんとした顔で、首を傾けた。狐っ子は好奇心が旺盛だ。
「教え子の春野サクラだ。おまえと会うのは初めてだったな」
「初めまして、ええと」
「なうとだってば!」
ナルトは片手を上げて大きな声で返事をした。良い子のお手本にしたくなるような元気なお返事だ。
「サクラちゃん。なうとってばサクラちゃんに一目惚れ!」
「あら、まぁ…」
今年で17歳になる春野サクラは、片頬に手を当てて、7、8歳くらいの小さな人獣の子供を見下ろした。オレンジ色のファー付きのジャケットの上下揃いを着た子供は、大層愛らしい。
「ナルトね。私は春野サクラ。よろしくね?」
「おう。なうとってばサクラちゃんのこと、だいしゅき!」
サクラがしゃがみ込んでナルトの手を握ると、子供と同じ視線になる。
「でも、サスケは嫌いなのよー」
「あら」
唇を尖らせたナルトに、サクラは思わず破顔した。
「サクラ。ナルトはサスケにも会ったのか?」
「はい。でも、何だか二人とも気が合わなかったみたいで。サスケくんも子供相手に大人げないったらないんですよ」
「アイツってばスカしててムカつくんだってばぁ~~」
ぷくう、と頬を膨らませたナルトは、「やーよ。サスケ、やーよ」を繰り返している。
ぷっ、とカカシが吹き出した。
「ナルト。おまえ、お外に行ったならおててを洗って来なさい?」
「うぇ? あーい…」
三角耳の子供が洗面所に消えて行くのを見ながら、くくく、と背筋を丸めて笑う教師を、サクラは物珍しそうに見たあと、はたけ家のベランダに目を移した。そして、首を捻る。
「カカシ先生、あれはなんですか?」
サクラが指差したその先にあったのは女の子用の下着。それも、子供用。それが爽やかな風に靡いてベランダで乾かされていた。
「ん?ああ。ナルトの下着だけど?」
「え。だって……」
サクラが口元に手を当てる。けして、サクラに悪気があったわけではない。
「……あう?」
丁度その時、洗面所から帰って来たナルトが、こてんと首を捻った。びしょびしょの手のまま、カカシに抱きつこうとしたものの、次のサクラの台詞に、狐っ子はフリーズしてしまった。
「だって、これ。女の子のパンツじゃないですか。男の子なのにどうして女の子用のパンツを履いてるんですか?」
尻尾付きのナルトはそれまで、履き心地の良さから女の子用のショーツを愛用していた。飼い主のカカシがそうしたことに構わない性格もあったし、ナルトとて幼子故に、それを恥ずかしいと思う事もなかったのだが…。





「カァシ。なうってば、もう女の子のパンツ履かない、お、男になる。男の子のパンツ履くってばぁっ」
〝サクラちゃんに笑われたってば〟
サクラが帰った後、ナルトはカカシの膝の上でシクシクシク啜り泣いて、鼻水を垂らしていた。初恋の女の子に笑われた事が相当ショックであったらしい。
「んー。そうかぁ。ナルトは男になるのかなぁ。少し寂しいなぁ」
「………?」
「ナルトの初恋はサクラなんだね。もう、オレはいらないかな?」
カカシの一言にナルトは三角耳をぴんと立てる。狐の子供の口は何か放り込めそうなくらいぽっかりと開いていた。
「なうと…!!カァシが一番!!カァシだけだってばよ!!」
「そう…?でもさっきはサクラが好きだって言ったでしょ?」
「カ…っ。カァシが一番大事。カァシ以外いらない!!ほんと、うそじゃないっ!!」
「ナルト」
「ふぇえ、かぁしぃ…」
その日、ナルトは一日中、泣きべそを掻いてカカシの膝を思う存分濡らしたという。















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空気猫取扱説明書概要
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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