空気猫
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そんなわけで12歳になりました編2
その日、木の葉の里は快晴に恵まれていた。昨日。ナルトは結局、明け方近くに帰って来たカカシを夢現の中で出迎えいつものように二人同じベッドの中で丸くなり眠った。カカシの息からは、ナルトがまだ飲んだことのないアルコールの仄かな匂いがしてそれが胸を締め付ける。
そして、太陽の陽射しが燦々と降り注ぐ中、ナルトはひよこさんのポシェットを横掛けにして、ぽてぽてと道を歩いていた。
ついでに忍者戦隊木の葉レンジャーの主題歌を元気良く歌い、道端の猫じゃらしを片手に、三角耳とふさふさの尻尾を揺らしていた。ボア付きのオレンジ色のジャケットを着た半人半獣の子供は道中で酷く目立ったが、子供が〝はたけカカシ〟のペットであることは、ある程度里中に広まっていたので、大した騒ぎにはならない。
〝ナルト〟の迷子札がタグに付いたオレンジ色のジャケットはナルトのお気に入りだ。以前、カカシが買って来た上下揃いの同じ衣服はすでに着られないほどナルトのサイズは大きくなったのだが、カカシがそっくり同じものをナルトが成長する都度、用意してくれているのである。
既製品ではないそれは、どうやら手縫いのようで、大好きなカカシが縫ってくれたと思うと、それだけでナルトの気持ちは温かくなった。本当は、裁縫の不得意なカカシに代わりタグ付け以外はアスマが縫ったものだったが、それでもナルトは嬉しいのである。
なにはともあれ、ナルトは今日も幸福なのだ。子供用の忍者サンダルが、地面を蹴る。やがて、木の葉の中心部に出ると人生色々の前で、緑色の忍者ベストを着たスカした上忍の姿があった。
「あ。サスケ…」
「よう、ウスラトンカチ」
「オレってばウスラトンカチじゃねえもん!」
「なら、ドベと呼んだ方がいいのか?」
向かい合った一人と一匹を表現するなら、まさに〝ばったり〟といった表現が相応しい。ちなみに、二名の身長差を述べるならナルトは青年の腰元ほどだ。
「何してるんだ」
「べっつにぃ…」
「こんな所を一人でほっつき歩いて、またカカシに叱られても知らないぜ?」
ナルトに、皮肉気な台詞を言い放った青年の名前は、うちはサスケ。17歳。職業、上忍暗部。はたけカカシの直接の弟子であり、ナルトとは何故か初めて会った時から犬猿の仲である青年だ。だから、ぷくう、と餅のようにナルトは頬を膨らませた。
「サスケには関係ねぇもん。ぷーん」
「そうやってすぐにムキになるところがガキだな」
「うううっせえの。オレってば、カカシ先生に会いに来たんだってば。おまえに用はねぇってば!」
ナルトの両拳がサスケの腹部の前で空を切る。サスケの腹部に突進しようとしたナルトだが、見事に襟首を掴まれ、両足は中にバタバタと浮いてしまった。
「サスケなんていーでべーなんだってばよ。あっちいけ!」
「おまえ、カカシの任務が終わるまでここに一人で待ってるつもりなんだろ。…今日の任務は結構かかるぜ?」
カカシと同僚でもあるサスケが皮肉気に言い放つと、ナルトは大きな口に二本牙を、ぽかんとした。そして、ジタバタとサスケの手から逃れようと暴れた末に、地面に着地する。
「別にオレってば1人でも寂しくないってば!」
「あ、そうかよ」
ナルトの答えにサスケは、あっさりと相槌を打つ。そして、上忍待機所に向かって歩いて行ってしまった。
「………」
「………」
「………ふぇ」
ナルトは呆然としてサスケの後ろ姿を見詰めた。道端に一匹取り残されてみると、途端に周囲の音が物寂しくなる。やがて、垂れた耳がふるふると震えた。
「さしゅ…」
モゴモゴと呟いた、ナルトを余所にサスケは振り返ることもなく人生色々の建物の中へ、消えて行こうとしてしまう。
「……!」
落っこちそうなくらい大きな碧玉が、ぱちくりと瞬いてから揺れた。
「ま、待てってば。おまえが暇ならオレの相手してくれても良いんだってばよっ!」
忍服の下部を小さな手で引っ張られ、サスケは尻尾を丸めて自分を見上げている狐の子を見下ろした。もう少しで涙が落ちそうなうるうるとした瞳。泣きそうな顔。不安そうに垂れた三角耳。サスケは、仏頂面で小さな子狐を見下ろした。
人生色々の前に隣接されているベンチの座っていると、サスケから汁粉ドリンクを渡されて、ナルトは〝きゃーー〟と歓声を上げた。齢12歳の仔狐の大好物は油揚げでもなく、ラーメンと甘味ジュースなのだ。
「サスケにしてはナカナカ気が利くってば」
「おまえなぁ…」
「有り難く受け取るってば。サンキュッ」
「たく、カカシの野郎はどんな教育してんだか」
「む。カカシ先生の悪口言うなってば。おまえ、サスケのくせに生意気だってばよ!」
「なんだと」と大人げなくもサスケの額に青筋が浮かび、暢気なひよこ頭をポカンと叩く。
「ぎゃいんっ。痛いってばぁああ…!!」
「甘やかされ放題で育ちやがって。――ったく」
唇を尖らせて、上目遣い気味に己を見上げるナルトに、視線を逸らしつつ、仕方なく頬に付いた餡の粒を親指で拭ってやる。
「なぁ、サスケェ?」
「…んだよ」
ベンチに並んで座ったサスケとナルトは、傍から見ると、近所のお兄さんとその子供といったところであろうか。それにしては、ナルトの頭を飾る大きな三角耳が不自然ではあるが…。
ふう、と珍しくため息を吐いたのは、ナルトの方であった。
「オレってば恋しちゃったかもしんねぇ」
「………はぁ!?」
頬を風船を膨らませたみたいにして、仄かに染めたナルトの様子に、トマトジュースの缶を啜ろうとしたサスケは、思わず喉を詰まらせそうになってしまった。
「な、なんだよ、急に」
ガキのくせにいつのまに色気付きやがって、と舌打ち混じりに言い掛けたサスケは、ナルトの次の台詞を聞いて、喉元まで出掛かった言葉を飲み込んだ。
「でも、今のオレなんてカカシ先生にとって可愛いペット未満なんだってば」
「………」
「カカシ先生の、鈍チン」
「……。あんな奴のどこがいいんだよ」
何故か、怒ったようなサスケの口調に、ナルトはきょとんと耳を片っぽ提げた。
「彗星みたいに綺麗な銀髪だろ。紺色と宝石みたいな右の赤い眼。オレのこと撫でてくれる時のおっきい手、ぎゅってしてくれる時、時々くしゃって笑う顔、ぜーんぶ格好良い。そのうえ、お仕事中はしゅーってびゅーんなんだってば。な。世界で一番、格好良いってば?」
「……オレに振るな」
「はぁああ。あの人がちょっとやそっとのことでオレの気持ちに気付いてくれるはずがないってばよぉお…」
頭を抱えるナルトを見て、一応、飼い主が「朴念仁」であることは気付いていたのかと、サスケはわけのわからない安堵をした。
「おまえも厄介な奴に惚れたな…」
ベンチにダンゴムシのようにまるっと蹲ったナルトの頭を撫でつつ、サスケはため息を吐いた。そのままサスケはふわふわした子供の感触から離れがたかったのか、何度か手を行き来させる。
「言っとくが、あいつの趣味は年上の美人だぞ」
「…うぐ」
〝それも女の〟と付け加えて、さらにナルトの耳はヘタれる。チビでちんくしゃのナルトにとっては痛いスタートラインだ。
「うう。この際、雄とか雌は関係ないってば。この間テレビで観たドラマでやってたってば。オレってば大人のテクニックを磨いて、カカシ先生を落とす!」
「はぁ?」
「ちょうどいいってば。サスケ。練習させろってば!!」
「は?」
「〝ちゅー〟の練習だってば…!」
「何言ってるんだ、馬鹿。こら、ウスラトンカチやめろっ」
「サスケ。じっとしてろってば」
「お、おい。ナルト…」
ぼたたた、と涎がサスケのジャケットに落ちる。自然と12歳児に押し倒される格好になって焦ったのはサスケだが。ぐぐぐ、仔狐を押しのけると「やめろ」「やめねぇ」の喜劇のような押し問答が開始された。
「――あれぇ。ナルト、何やってるの?」
「ふ、ふぇ?」
「カカシ…!」
サスケに馬乗りになったナルトの姿を発見したのは、丁度任務を予定より早く終え人生色々の前にやって来たカカシだった。
「………んー、ナルトォ?」
「カ、カシセンセ…」
「………」
カカシは利き手で後頭部を掻きつつ、唯一晒されている右目で眠そうに一人と一匹を見た後、ぽんっと拳を手の平の上で打った。
「あ、あの。カカシせんせぇ……?」
「………」
「そっかぁ。おまえ、サスケのことが好きだったんだねぇ…」
仲善きことは美しきかな、と言い残し、煙と共にニッコリあっさりカカシの姿が消える。
本人は気を使ったつもりなのだろうか。
「…。おい、ドベ。今のは不味いんじゃないか」
「………」
「ドベ?」
「カカシ先生に誤解されちゃった…」
「………」
しばらくの沈黙の後、サスケの腹の上で、見る見るナルトの瞳が潤んでいく。やがて、涙の粒が決壊した。
「うわーーーん、サスケのせいだってば。ばかーーーーーーっ」
その日、ナルトは噴水のような涙を流して、サスケをポカポカと叩いた。
サスケくんはなんちゃって木の葉設定ということで17歳にしてみました。
つまりは歳の差があった方がなんでも美味しいという話です。
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ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前 空気猫、または猫
職業 ノラ
趣味 散歩・ゴミ箱漁り
餌 カカナル
夢 集団行動
唄 椎名林檎
性質 人間未満
日記 猫日和
ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
職業 ノラ
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餌 カカナル
夢 集団行動
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性質 人間未満
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ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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