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空気猫

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そんなわけで12歳になりました編3





 
「カカシ先生!オレってば、サスケとはなーんでも、ないんだってばよ!」
「ふぅん?」
「ふぅんって、そ…、それだけだってば…?本当に本当なんだってばよ…?」
「うん…。まぁ、おまえの付き合いにオレがいちいち口を挟むのもおかしいでしょ?もうおまえも大きいことだし」
「………」
「それより、ナルト。オレが遅くなる時は、12時までには寝ていなさいね?」
「………」
それだけ、カカシ先生?ぱたん、とまた扉が閉められて、ナルトは三角耳と尻尾を萎れさせた。





「おい、ドベ…」
「う…。サスケ?」
家を出て木の葉の里の中通りを歩いていると、黒髪頭の青年とばったりと出会った。ナルトは目の縁に溜まった涙の粒を慌てて拭うが、サスケは露骨に顔を顰めた。小走りになったナルトの背中に「待て」という声が掛る。
「んだよ、サスケ。オレってばそこを通りてぇの。どけってば」
「………」
「もう、オレってば先を急いでるのーっ」
サスケに首根っこを掴まれ、ナルトはジタバタと両の足をバタつかせた。裸足のまま、家を飛び出して来たらしい、狐の子の小さな足が、砂利だらけになっていた。
「ったく。手間のかかる奴だな」
「ふぁ、サスケ!?」
サスケはナルトの軽い身体をひょいっと抱き抱えると、そのままズンズンと歩き出した。ナルトは普段よりも高くなった視線に驚きつつ、ぎゃいぎゃいと騒ぎ出した。
「サスケ、離せってば。オレってば一人で歩けるってばよ~~!!」
「ウスラトンカチが。てめぇの短足でどこまで行けるって言うんだよ」
「サスケには関係ないってば!」
威勢の良い声の割りに、サスケの腕の中に収まったナルトから聞こえてくる音は鼻を啜る、涙交じりの嗚咽だ。柔らかな金糸を扱いでやると、丸まった背中が小刻みにフルフルと震え始めた。視線を下げれば、真っ赤に染まった貝殻のような耳。大嫌いなサスケに、弱い所を見られて、大失態だ、とでも思っているのだろう。
「家出か…?」
「………」
「そうじゃねえのか?」
ぐしっとおそらく涙と鼻水でべちゃべちゃになった音が忍服ベストの胸の辺りで聞こえた。頬を寄せるのは結構だが、鼻水は勘弁して貰いたいとサスケは思ったが、頑是ない子供相手ではどうにも仕方がない。そう、ナルトはまだ12歳なのだ(それも見掛けだけの話で実年齢は定かではない)。
「買い物だってば。カカシ先生の大好物作るの…」
「忍犬と一緒じゃないのか?」
「もう忍犬は卒業したんだってば!」
何故か涙目になって訴える様に、こいつ黙って出て来たな、とサスケは即座に悟った。はたけカカシという男はあれで過保護で、いつもナルトが外出する時は、忍犬を付けていた。今回は、それの気配がまったくない。
「今頃、血なまこになって探してるんじゃねぇだろうな」
「………?」
「あんまり飼い主に心配かけるなよ」
「そんなことないってば。カカシ先生はオレのことなんて心配してねえってばよ…。カカシ先生はオレのこと好きくねえのっ」
「……はぁ?あのウスラトンカチがそう言ったのか?」
一度だって、言われたことはない。ナルトはカカシに甘やかされているのだ。ただ、それは拾った者の責任とか、そうしたもので自分個人に向けられる好意や嫌悪とは別ではないだろうか。唇を噛んだナルトの頭を撫でて、
「泣きたい時は泣け。余計な意地張ってるんじゃねぇぞ」
ぶっきらぼうに呟くとサスケは子供を抱えたまま歩き出す。傍若無人だが、サスケはサスケなりに優しい。ナルトが頬をぷっくりと膨らませて、抱っこされていると、
「あ、あのサスケさん!」
緑色のベストを身に付けた中忍らしい女性が、サスケに声を掛けて来た。ナルトはぽかんとした顔で中忍くノ一と、サスケとを見比べる。サスケは下から来る視線に、若干バツの悪い顔で中忍くノ一に対応することになった。
「今、任務帰りですか」
「あぁ…?」
「も、もしよければ、このあとお茶になんて行きませんか?」
「………」
「サスケさん……?」
元より、弁のたつ青年ではない。サスケは黙りこくったあと、腕の中の金児に目を落とした。
「悪いが、こいつを送り届けないといけないんで無理だな」
「え。その子ってサスケさんの、弟ですか。それにしてはちょっと……」
黒髪の青年に対して、金糸の子供が生まれるとは考え難い。それも、その子供ときたらおかしな三角耳と尻尾まである始末だ。しかし、中忍くノ一は、次の瞬間、子供の潤んだ碧い瞳に息を呑んだ。
なんて宝石のように綺麗な瞳をしている子供だろう。思わず見惚れていると、剣呑な瞳で睨まれて、中忍くノ一は、慌てて謝罪をした。
「ご、ごめんなさい!」
何がサスケの不興を買ったかわからぬまま、中忍くノ一は頭を下げる。そして、きょとんとしたナルトと眉間に皺を寄せたサスケを残したまま
「突然話し掛けてすいませんでした…っ」
と恐縮気味に去って行った。後に残ったのはサスケ青年と狐の子供。
「サスケってば、女の人にモテるんだな…」
「好きでもねぇのに、寄って来られたって迷惑なだけだよ」
サスケの発言に、ナルトの耳が露骨に垂れる。ナルトのしょんぼりとした仕草は、半人半獣の子供ということもあってか、見目に分かりやすい。人の感情の機微に鈍いサスケも、流石に自分が不味い発言をしたことに思い当たる。
「おい、ドベ…」
しかし、口から漏れたのは、そんな愛称で、「やっぱオレってばドベだってば?」相手を元気づけることもなく、ますますナルトを落ち込ませることになった。
「そうだよな。オレってば、カカシ先生に迷惑だよな…」
「どうして、そういう発想になるんだよ」
サスケは深いため息を吐くと、懐にへばり付いているナルトを抱え直した。
「いいか、おまえが相手にしているのはど天然の朴念仁だ。保護者気取りで自分が、おまえのことを思って正しいことをしていると、信じて疑わねえようなどうしようもねぇ野郎なんだ。わかるか?」
きょとんとした瞳がサスケを見上げた。ふくふくとした体温だとか、日の光に透ける金色の睫毛に視線を落としながら、
「何かあったら、オレの家に来い…」
何故か、斜め横に視線を流されて、またナルトはきょとんとする。サスケの紅潮した頬に手を伸ばそうとしたが、代わりにこてんと首を捻った。
「サスケ、おまえ。実は良い奴なんだな」
ほにゃんと笑った、ナルトの笑顔に、サスケは視線を逸らすことにだけ集中するはめになった。



 
 

 







 
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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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