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空気猫

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木の葉イエローの得意技は敵をばったばったと恋に落として味方に引き入れること。
原作さんとそう変わらないですね。
ナルトはそんな時代のニューヒーローです。
 






ところ変わって、ここは木の葉学園。1-Bの教室の前。生徒たちがそれぞれに談笑する中、一際大きな声が上がる。
「ナルトくん。好きです。どうしたら、ボクの恋人になってくれますか?」
「おまえ、オレのことを暗殺するために転校して来たんだろ!?その任務はどうしたんだってば!!」
「ナルトくんのおかげで人を愛することの素晴らしさに目覚めました。だから、ナルトくんのことは殺せません」
「うぎゃああああ、オレってばそういうのは、もうノーセンキューっ」
サイの熱い告白に対して、ナルトは必死に学内を逃げ回る。二人が高速で移動するたびに、廊下に煙が起こった。
「……〝もう〟、ですか?」
ナルトの発言に対して、サイは赤と青のコードが通っている機械仕掛けの首を捻る。
「あいつには、とんでもねぇ番犬がくっついてるんだよ」
サイの疑問に答えたのは、部活に向かう途中だった竹刀を背負ったサスケだ。
「へぇ。ナルトくんが犬を飼ってたなんて知らなかったよ」
「おまえな。少しは言葉のニュアンスを汲み取れよ」
「すいません。なにしろ、ボクはアンドロイドですから。まだそう言った微妙な言い回しの意味は理解が出来ないんですよ」
「ちっ」
「出来れば、ナルトくんから人間のデータを取りたかったんですが…。逃げられちゃいましたね」
サイはそう言って、残念そうにナルトが消えた廊下を見詰めた。



「はー。はー。サイの野郎。わけがわからないってばよー」
空気の読めない発言ばかりする転校生のサイに、拳を振るって熱くお説教をしていたら、なぜだかいつの間にか好かれていた。その上、〝よければ男同士でお付き合いしたいんだけど〟、という告白をされる始末だ。どのような経緯でそのような結果に至ったのか、とんでもないことをいう青年だ。
病気で1年留年した海外からの帰国子女だとか言っていたくせに、蓋を開けてみれば、根だとかいう敵の刺客で?年はナルトたちより1歳上に設定されたアンドロイドらしい。しかし、実際にはまだ生後1年足らずの赤ん坊同然だというのだが。
(ったく。そんな奴、刺客に寄こすなってばよ~~)
ゼーハーゼーハー、ナルトが肩で息をしていると、カツン…と紫にラメの入ったパンプスが木の葉商店街のアーケードを踏んだ。
「………?」
ふんわりと香った白粉の匂いとその人物の化粧の奇抜さに、木の葉商店街の店長であるオヤジたちが仰け反る。
「ここであったが、百年目…。木の葉レンジャー、この恨み晴らさせて貰うわよ」
ひゅるるるーと木枯らしが木の葉商店街に横流しに吹く。突然現れた謎の人物に、ナルトは身構えた。
「ひゃくねん…?オレってば、まだ16年しか生きてないってばよ?」
「小うるさい子ね!物の例えってものがわからないのかしら!?」
 ぴしゃりと、一蹴されて、ナルトは目の前に現れたオネエ言葉の謎の人物に大いにビビった。
「ふふふ~。私は悪の蛇軍団の団長…、大蛇丸。木の葉商店街の男共をみんな性別不明にしてあげるわぁ」
紫の薔薇がどこからともなく舞って、なんのことはない、大蛇丸の背後で部下のカブトが巨大扇風機で花を散らしているだけなのだが、「うわ。むわっとするってば!!」ナルトは仲間を呼ぶために携帯を片手に戦く。
「な、なんて恐ろしい敵だってば!!―――あ、サスケぇ?県大会の練習どころじゃないってばよぉ~!!木の葉商店街のピンチだってばぁああっ」
「ふふふ。木の葉レンジャー、私を倒せるかしら!?」
「オレってば、負けないってばよっ?ご近所のボランティア活動のゴミ拾いで鍛えた足腰の力と腕の素早さをみせてやるってばよ~!」
うりゃー…!とナルトが、敵に向かって拳を繰り出した。どがぁ、と大蛇丸の後ろにあったゴミバケツの中身が散乱する。
「ふん。まだまだ甘いわね…」
空き缶や魚の骨が宙を舞う中、大蛇丸は優雅に黒髪を靡かせる。
「貴方の実力はこんなもの?性別の垣根を越えた私の力は底知れないわよ?」
「今までになく手ごわい敵だってば。オレだってトラとの死闘で培ったヒーローとしてのど根性を見せてやるってばよ!!」
ナルトは思い切り大蛇丸に向かって突進する。そして、「うああああ!?」
張り切り過ぎて廃品置き場に転倒をかました。
「………」
あちゃー…とどこからともなく額に手を当てる人が続出する中。
「………。ナルトくん。あなたって、もしかしなくてもドジっ子ヒーローって奴かしら…?」
「な、なんの話だってば!?」
顔を赤くさせたナルトが、粗大ゴミの中から飛び出す。
「まぁ、いいわ。さぁ、私を楽しませて頂戴?」
それからもナルトは螺旋丸を繰り出し失敗したり、禁断の九尾パワーを炸裂させたりしたが、戦いは蛇の尾のように長引いた。
「な、なんて、恐ろしい子…。天然で木の葉商店街をここまで破壊するなんて…。悪の組織以上の才能だわ」
大蛇丸は、半壊した商店街の様子を見て口に手を当て戦く。「貴方、本当にヒーローなの?」と頑張り屋ナンバーワンご近所の治安維持ヒーローに禁断の質問をして、
「うるせぇってばぁああっ。最初は誰だって初心者なんだってばよぉ!!」
ナルトがまたしても大ぶりの攻撃を繰り出した。
「あら、図星?こんなことでムキになってるくらいじゃ私は倒せないわよ?」
大蛇丸が易々とナルトの拳を受け流し、ひらりとスリットスカートをひらめかす。
「く、くそ。くねくねした動きのせいでちっとも当たらないってば…」
ナルトは肩で息をしながら、大蛇丸を睨む。と、そこで少年はあることに気が付いた。「んん…?」静止すること十数秒。ナルトは、じぃっと大蛇丸を凝視する。
「あ、あれっ。あんたって…?」
先程まで敵を倒そうと息巻いていたナルトが、なぜか大蛇丸を不思議そうに見詰めている。
「何よ?」
「……ええっと。兄ちゃんなのに、姉ちゃんなのか?」
 ナルトの発言に、大蛇丸は「ぐはぁ…」と物理的攻撃を喰らったかのように蹲る。
「ふ…。流石ね、ナルトくん。ここ一番という時に人の傷口に無断で腕を突っ込むようなマネをするなんて…。なかなかの攻撃だったわ」
「大蛇丸様、しっかりして下さい!!」
建物の陰に隠れていたカブトがすかさず大蛇丸の元へと駆け付ける。
「こう見えても大蛇丸様は羽化したてのモンシロチョウのように繊細なんですよっ。その大蛇丸様なんて酷いことを言うんですか!!心の傷は治り難いんですよ!!」
カブトは、涙ながらに正義のヒーローに訴えた。
「え?へ?何が?」
しかし、正義のヒーローはどこまでも鈍感だった。
「おのれ、またしても。黄色の閃光の息子め~」
カブトに支えられながらも大蛇丸は、怨嗟を吐き出す。
「え、父ちゃんのこと、知ってるんだってば?」
「知ってるも何も、私はねぇ、あんたの父親と同期の先代木の葉レンジャーよ。一度はリーダーの座を争ったほどの間柄だったわ、ねっとりとね。それを、それを、〝大蛇丸さんって化粧濃いですよねぇ〟〝すいません、オレって正直者で〟だぁああ!?乙女心を傷つけられたこの恨み晴らさずにおくものですかぁぁっ」
あれは大蛇丸がまだ木の葉レンジャーとして活躍していた時のことだった。当時、大蛇丸は次代のリーダーかとまで噂されるほどの実力の持ち主であったが、「大蛇丸さんってちょっと化粧濃いですよねぇ」と先代黄レンジャーの心無き一言で、彼(彼女?)のプライドはズタズタにされたのであった。それ以来、大蛇丸は木の葉戦隊を抜け、木の葉レンジャーに復讐を誓ったのだ。
「お、乙女っ?」
ナルトは大蛇丸のあまりの剣幕に戦いたものの、
「あんたって、姉ちゃんだってば?なら、木の葉、ぴ、ぴんくだった人ってば?」
大きな目をぱちくりさせながら、そんなこと言った。
「ピンク…??」
ナルトの一言にメデューサのようになっていた大蛇丸の怒りが止まる。
「オ、オレ、女の人なのに殴ろうとしてごめんなさいってば。オレってば全然気付かなくって…」
〝すいませんでしたってば〟とナルトはぺこりと頭を下げる。しおしおとしたナルトの態度に、大蛇丸は蛇眼を見開いて、正義のヒーローを凝視する。そして…。
「あらぁ!?あ、あなた…っ!!すごく…可愛いじゃない!?」
「え?」
「あの男の息子のくせに、こんなに謙虚に育つなんてねぇ。あの遺伝子を受け継いで奇跡としか思えないわぁ」
つつつ、とナルトの頬に手を添え、性別両性類は怪しく笑い出した。くいっと上を向かされて、ナルトはぽかんと大蛇丸を見上げる。
「ふふふ。それに、よく見れば男前ね。あの男も顔だけは、良かったのよねぇ。性格は最悪だったけど…」
 天は人に二物を与えずとは言うけどねぇと大蛇丸はつくづくため息を吐いたあと、
「私のコレクションにならない?ナルトくん?」
「ふぁ、え?何の?」
「ふふふ。そういう鈍感なところも可愛いわ。本当はあなたみたいな元気な子はあんまりタイプじゃないけど、特別よ。天然でやんちゃな性格の元気っ子。いいわぁ、今すぐにでも食べちゃいたい」
完璧アウトです、という台詞を呟いた悪の蛇軍団の団長はそのまま正義のヒーローと共に薔薇色の世界を繰り広げようとしたが、瞬時氷点下まで下がった空気に、「―――っ」瞬間的に身を引く。
「―――いやぁ、ははは。手が滑っちゃいました」
そこにいたのは、ラフな普段着を着たはたけカカシだった。カカシが投げつけたネギは大蛇丸の頬を見事にかすって、壁を貫通しダーツのように刺さっていた。大蛇丸は、向けられた殺気量に笑みを零す。
「あらぁ。貴方、魔王のカカシくんじゃない。相変わらず凄い魔力ねぇ。それに変わらずいい男…。最近、悪の組織を結成したって聞いたけど、どうしてこんなところにいるのかしら?」
ふふふ、と笑った大蛇丸の頬に薄らと血が伝う。
「あー、アレですか?今は魔王やめて、そこの子の専属になったんですよ、オ・レ」
ニコニコと笑いながらも銀髪の男は、先ほど大蛇丸が攻撃を避けた瞬間に目を回して倒れている少年を抱き起こすことを最優先した。そんな青年の行動に大蛇丸は、少しばかり驚いたようだ。
「ふぅん。つまりもうナルトくんは先約済み、ということかしら?」
「そうでーす。今はオレの腕の中で可愛~く育ててる最中なんだから、邪魔しないで下さいね?」
「あら。ぺろりと食べちゃわないなんてカカシくんにしては随分と過保護なことねぇ…?」
「好物はじっくり味わうほうなんですよ、オレは」
「へぇ。余裕なのね?そんなこと言って、横から美味しく頂かれても知らないわよ?」
お互いにどす黒いオーラを出して、牽制し合う大蛇丸とカカシ。蛇と狼に挟まれて、ぷきゅう、と正義のヒーローは気絶をしている。
「はぁ…」
とお付きのカブトがため息を吐いた時だった。そこで目を回していた少年が覚醒する。
「あ、あれ。カカシ先生っ!?なんで!?オレってば。気絶しちゃってたってば!?」
「おはよう。今日もたくさん頑張ったねぇ。ナルト…」
意識を取り戻したナルトは、こめかみにちゅっと落とされたキスに飛び上がる。カカシの腕の中にいる自分に驚きを隠せないし、キスを受けている自分の事態も上手く飲み込めないらしい。蛇軍団の二人は、そんな元魔王と正義のヒーローの珍妙な風景にぽかん顔だ。
「あぁっ。オレってば、こんなにお店を壊しちゃってたってば。おっちゃん方に謝らねぇとヤベぇってばよぉ~」
「うん、うん。そうだねぇ。ナルトは偉いねぇ」
わたわたとカカシの膝から起き上ったナルトは、すぐさま商店に向かって走り出していた。
「転ばないように気を付けて行っておいで~?」
ほのぼのとした様子でナルトの後姿を見送る魔王の姿に、カブトは戸惑いを隠せない。
「イノイチとチョウザのオジちゃーん。またお店ぶっ壊しちゃってごめんってばよ~!!」
「はぁ。まったくナルトくんは頑張り屋さんも程々にしないとねぇ…」
「そうだよ~。怪我してなぁい?」
店主と少年のやりとりを傍観しつつ、カブトは呆れたようにため息を吐いた。
「驚きましたよ、カカシさん」
「な~んのこと?」
あの子のことですよ、と丸眼鏡の青年は顎をついとしゃくる。視線の先には金髪碧眼の少年の姿。
「うずまきナルト。どう見たって、ただの人間でしょう?あの子のどこにそんな魅力があるんです?お世辞にも知能が高そうには見えませんでしたし、貴方の興味を引くとも思えませんでしたが…?」
カブトの苦言にカカシは肩を僅かに震わせて笑った。
「カブトだっけ。きみもまだまだねぇ」
「何がですか?」
「あの子の良さがわからないなんて、っていう意味かな?」
意味深なカカシの言葉に、カブトは眉間に皺を寄せ、むっとしただけで終わった。
「…変わりましたね。カカシさん。前に会った時はもっと気の合う人だと思ってましたが、今ではすっかり牙が抜けてしまったご様子で残念です」
カブトは軽蔑しきった視線をカカシに向ける。しかし愛に目覚めた元魔王はまったく意に介していないようだった。そして、そんな二人の元に、少年が駆けて来る。
「そこの兄ちゃん!」
「―――は?」
そう、そう。あんた、あんた、とナルトに指名されたカブトはぽかんとした顔で固まる。
「名前、なんてぇのっ!?」
「カブトですが…」
「カブトさん!今回はオレの負けだってば!」
「………?」
「でも次にこの商店街に何かしたらオレってばヒーローの名に賭けてぜってぇ負けねぇからな!」
カブトは唖然として少年の後姿を見送る。二人のやりとりを無言で見ていたはたけカカシは「あの子、眩しいでしょ」と我が事のように誇らしげに笑みを零した。
「いやぁ正直、オレはナルト以外の人類がどうなろうがまったく関係ないけどねぇ」
「は…?」
「ついでに言えば、世界がどうなろうと知ったこっちゃないし?この商店街にも何一つ愛着も未練もないよ?」
だけどね、とカカシがほのぼのとした表情のまま続ける。
「ここにはあの子がいるから…」
まるで宝物を見付けたように元魔王は視線を落とした。
「ナルトは、この商店街が大好きなんだ。だから、ナルトにとってここが大切な場所だって言うなら、オレも大事にしてあげたいし、愛着がわかなくとも、ナルトがここを守りたいと言うなら、オレも力を貸してあげるだけ」
人間の中に混じるのって、疲れるけど、ナルトのためだと思ったら、出来ちゃうから不思議だよねぇ~、愛だよねぇ~、とカカシは、苦笑して、目を細める。
「だから。今後ナルトに手出しをしたら、…―――殺すよ?」
まるで鋭い刃物で首を掻き切られたかのような錯覚。そこには狼と恐れられた男がいた。途端に伝った冷や汗に、カブトは身震いする。
「それはボクへの牽制ですか」
無言でニコニコするカカシに、カブトはごくりと唾を垂下する。
「カカシさん。貴方って人は…本当に恐ろしい人ですね」
「なーにが?オレは愛に目覚めちゃったしがない専業主夫だよ~ん。さぁ、さぁ、帰って夕御飯の仕度しなくっちゃ」
カカシはスキップをしながら、ナルトに飛びつく。狼に懐かれて、うわわわ、と飛び上がる羊飼いの少年のように、慌てふためくナルトの悲鳴が商店街に短く響く。
「ナルト♪今日のご飯はぁ~、なんとオレの愛情たっぷりの特製味噌ラーメンで~す!」
「あ、え、でも!オレってば木の葉商店街のお店をいっぱい壊しちゃったから片付けないと…!」
「大丈~夫。あとはオレの元部下たちに任せておけばいいから~

「ええ、あの人たちはもう解雇したんじゃないの!?」とナルトは驚いて、カカシに抵抗したものの、「いいんだよー。あいつら好きでオレの犬奴隷になって無報酬で働いてくれるんだからぁ」というカカシの恐い発言にさっくり押され、文字通り後ろ髪引かれながら5時を知らせるメロディと共に木の葉商店街から退場する。
「ヤマトさん。いつも通り店舗の修復、お願いします。困るんですよねぇ、毎回。ナルトちゃんはともかく、貴方方は大人なんだから、しっかり責任とって下さいね」
木の葉商店街オヤジーズは しっかり木の葉レンジャーの損害分を請求し、店舗を新築に建て直して貰うのだった。こうして、木の葉商店街は毎回復興して行く。おっちゃんパワー恐るべし。



カカシにお姫様抱っこをされて帰宅したナルトは、アパートの前で己の帰宅を待っていたらしい同級生に驚かされた。
「サイ…!?」
「どうも。こんにちわ。ええと、用事があるのはナルトくんじゃなくて…」
「ナルト~。なんかあの子。オレに話があるみたいだから、先に家に入ってなさい?」
「え?う、うん?」
 ナルトは地面に下ろされると、カカシに促されるまま階段を上がって行く。
「で、何かな?」
二人っきりになってようやくカカシが口を開く。ナルトがいた時とは違い、かなり素っ気ない態度だった。
「サイと申します。見た目の年齢はナルトくんより一つ年上ですが、今日から人権を放棄してナルトくんに飼われることになりました」
「へぇ」
「確かサスケくんがナルトくんの家には、紐で職無しのニート男がいると聞いていたのですけど、あなたですか?」
ニコニコと悪気のない顔で微笑むサイに、カカシはニッコリと激怒する。
「カカシせんぱぁい。ボクに全部押し付けて置いて行っちゃうなんて酷いですよォ」
丁度その時、間が悪いのか、運が悪いのか、商店街を修復し終え戻って来たらしいヤマトが、現れる。
「テンゾウ。面白くないからそこのマンホールに頭突っ込んで来て、今すぐ」
「突然っ!?」
ボク、死んじゃいますから!!とカカシに冷たい魔王の視線で見降ろされ、ヤマトは冷や汗を掻いた。このあとしばらく「カカシ先生。ラーメン伸びちゃうってばよ~」とナルトが顔を出すまで魔王様のブラックモードは続いたらしい。



夜。サイを追い返し、夕飯を食べ、風呂に入る。そして、ナルトは先程からかなりきつくカカシにキスマークを付けられ続けていた。
「ん…っ」
風呂上がりの火照った身体に、カカシの唇が落ちるたび、ナルトは小さく声を上げている。親の人肌すら知らずに育った寂しがり屋の少年は、スキンシップに飢えているという生い立ちで、住み込み魔王の成す過剰な求愛行為にすら、あらがうことが出来ずにいた。
「ひっ」
歯を立てられ、ナルトは怯えたように、背後を振り返る。後ろから腕で抱っこされるようにして囲われているので、体格差からナルトの逃げる道はない。
「んー。ちゃんとオレのだってマーキングしておかないと虫けら避けにならないでしょ?もう、ちょっとだからごめんね?」
「~~~っ」
また強く噛みつかれ、ナルトは何度も悶絶する。カカシはふっと笑って、真っ赤な花を咲かせているうなじに今度は優しく口付けた。
「今日も最高に恰好良かったよ、ナルト。オレ、惚れ直しちゃった♪」
お決まりの睦言を囁き、少年をぎゅうっと囲っていると腕の中の少年が身じろぎした。
「ん?どうしたの?」
「あ、あの、さっ!カカシせん、せぇ…」
珍しく歯切れの悪い少年にカカシがもう一度「ん?」と首を傾げる。
「あの、さ…せんせぇ、。オレ…、このままヒーローを続けていていいのかなぁって時々思うんだ」
「ナルトはどうしてそう思うの?」
「オレ、父ちゃんのマネをして木の葉レンジャーをし始めたけど…。ちゃんと皆の役に立ててるかなぁ?」
ここ数日、ナルトが何かを思い悩んでいるのは知っていた。あえて訊ねなかったのは、ナルトから打ち明けてくれるまで待っていたからだ。だけど、少年の言葉にカカシは苦笑した。
「ぷっ。くくく」
「あ、ひ、ひでぇっ。オレにとっては重大な悩みなのにっ!」
「あはは。ごめんごめん」
またナルトの肩口に口付けを落としながらカカシはくつくつと笑い声を漏らした。少年のうなじが真っ赤に染まる。
「大~丈夫。ナルトは立派なヒーローだよ。オレが保証する。だって、オレを救ってくれたヒーローはおまえでしょ?」
「でも、オレ。このままヒーロー続けて、カカシ先生に見合った人間になれるかな…」
「オレはどんなおまえでも好きだけどねぇ~」
「~~~っ。だって、カカシ先生は、もっと贅沢な暮しがしたいとか思わねえ?」
「んー。ナルトはそう思うの?」
「カカシ先生は元魔王じゃん。魔王は、こんなボロアパートに住んでねぇと思う。オレがもっと立派なヒーローだったらカカシ先生に買い物なんて行かせなくってもよくなるってば」
どこか、拗ねたような少年の口調に、カカシはクスクスと笑った。カカシにしてみれば、まだたった16年しか生きていないこの少年の葛藤が愛おしくて仕方がない。
「うーん。ナルトは、もっとお金持ちな暮らしがしたい?それなら、どこかの国をオレが征服してあげる。宝石が欲しいなら、おまえの目よりも大きなのをあげるよ?」
「………っ?」
「簡単に出来るよ。おまえが望むなら、全部叶えてあげる…。でもね、それがおまえの目指すこと?違うでしょ?おまえは立派な正義のヒーローになりたいんでしょ?」
「カカシ先生…っ」
まさか元魔王から、こんなふうに優しく諭されるとは思わなくて。思わずナルトは感動から涙ぐんでしまった。瞳を潤ませたナルトを見降ろして〝可愛い…〟とカカシがくすっと笑う。
「オレはどんなおまえでも嫌いになったりしないから、安心して」
「カカシせんせぇ…」
「でも、その代わりオレの傍から離れないで。おまえがいなくなったら、オレ、暴れちゃうからね?」
世界、滅ぼしちゃうからね? 無邪気な笑みを浮かべ、カカシが甘えた声を出す。ナルトが瞠目していると、くすっと、カカシは微笑んだ。
「冗談で~す。あのね、オレはここでナルトとこうしてるだけでいいよ。それが一番幸せ…」
カカシはナルトを抱え込むと、金糸に顔を埋める。あぁ、落ち着くとため息を漏らされ、ナルトは戸惑った。
「あの…さ。カカシ先生はオレといて、幸せなんだってば?」
元魔王の腕に囲われながら、ナルトは恐る恐る訊ねる。きょとんとしたカカシの顔が、今日で一番破顔した。
「もちろんっ。オレはナルトの一番のファンですから~」
蕩けそうな顔で微笑まれ、何故かナルトは酷く泣きそうになってしまった。涙のわけなど、わかりはしないが、明日も彼に尊敬されるような正義のヒーローでいたいと思った。






 



 
 
 
 
 
二人は同じ布団で寝てます。しかし手は出してません魔王はイエローのことをひたすらに大事にしてます。
さーの一族が「オレたちのホスト話は!?」って言ってる気がする。ここ…カカナルサイトだから。話のまとまりの関係でイタチさんが出す場面がなく個人的に残念。魔王が悪いんだ。
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ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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