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空気猫

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一般人からみたカカナル。オリジナル女性の一人称です。







或るОLの優雅ならざる1日の始まり

突然だが、寝坊をしたОLの朝は壮絶だ。洗濯籠に入ったままだった下着を探し出し、春めいたコーディネートに身を包み、ストッキングを履いて、慌てて口紅を引き5分で化粧を済ませる。そのまま、昨夜玄関に散ばしたままだったパンプスに足を引っ掻けた。
何年か前に買ったわりと気に入っているバックを肩に掛け、もうそろそろ月曜日の朝を廃止する法案を作って欲しい、と思いつつ今日も駆け足で出社する。
この春、思い切ってショートカットにしたばかりの髪の毛がすーすーして、少しばかり気になった。寝癖がついていないかも気になるところだが、今朝ばかりは妥協するしかないだろう。会社に行ってから、女子トイレの鏡の前で直すしかない。
近所のドラックストアで購入した完全栄養食品を口に放り込むと、昼食はこの間雑誌に載っていたフレンチがいいなぁなどと思いつつ、やたらと反響する安アパートの階段を駆け降りる。
大人になり、食べ物の好き嫌いに関して、怒られることがなくなると、好きなものだけを食べ、嫌いなものは手をつけないという、己の偏食は再び復活した。
それどころか、親元を離れて一人暮らしを始めると、怒られることがなくなったせいか、物心付いた頃から今までしつこく言いきかされたはずの、しつけは呆気なく崩壊してしまう始末だ。
例え、スナック菓子を食べて夕食が入らなくなろうが、お風呂上がりにパソコンの前でパンツ一丁の姿でネットショッピングをしようが、飲み会の後に「アンタ、誰」という名前も覚えていない男と一緒の布団で朝を迎えようが、まったく本人の自由意思なわけで、一般的な20代独身女性の品行方正などこのようなものだろう(たぶん)。
大人って素晴らしいなぁと自由を満喫する反面、最近では物寂しさを感じてしまう、そんな贅沢なこの頃である。まぁ、憂鬱なことと言えば、一つだけ。週明け仕事始めの朝である。
(サイアク。爪、せっかくネイルサロンで綺麗にしたばっかりなのに禿げちゃってる…)
平素なら、仕事の日は目覚まし時計の音が鳴る10分前には自然と起床出来る哀しき社会人の体内サイクルが習慣化していたというのに、本日は何故か、予定より30分も遅く起床してしまった。つまりは、前述の通り未曾有の寝坊事故だ。
実を言うと、昨夜のレストランで付き合って随分経つ恋人に「おまえ、実はオレのことを愛してないだろう」と言われた。なので、「今頃、気付いたの?」と目の前のフルコースのディナーを上品に平らげつつ驚いた顔で教えてあげたら、何故か別れを切り出された。
まぁ、そんな遅刻理由など上司に報告できるわけがないので、言い訳にもならないだろう。
(度量の狭いオトコだよなぁ…。なにも、あんなに怒ることないのに。せっかくのディナーが台無し)
そう言えば、会社の給湯室で、己の恋愛観がおかしい、と指摘されたことを思い出す。
「あんた、今までの彼氏とはどういうきっかけで付き合ったわけ?」
「食べ物をご馳走してくれたからだよ。だって、少なくともいい人だなぁ~って思えるじゃん?」
「ごめん…、あんたの判断基準が頭痛い。じゃあ、あんたって奢ってくれたら誰でもいいわけ?」
「誰でもいいわけじゃないわよ。ちゃんと選んでるわ、食べ物の質で」
「………」
同期の同僚に、真顔で言ったら何故か引かれた。ああ、でも近くに居た新人の男子社員が「それなら先輩、オレと飯行きませんか!?」と会話に乱入してきたのには驚いた。
確か、この春入社してきたばかりの新卒の子。自分にはない初々しさで、顔を真っ赤にさせちゃって可愛いなぁとは思った。だけど、はっきり言ってあんまりタイプじゃない。だって、大学を卒業したばかりの学生なんて、まずお金を持っていないでしょ。(なんと言うか、勢いだけって感じだし…)確かに、顔も悪くなく、性格も悪くないんだけどなぁって思うけど、異性としては、どうかな。可愛い、子犬ちゃんって感じを抜け出せないことを否めない。
それに、食事に行ったらよくて割り勘。下手したら先輩であるあたしが奢りよ?
〝奢り〟だとぅ?そんなもの、あたしの辞書には載ってない。
拳を握り、遅刻に急ぎつつもゴミステーションに寄って、先週から出しそびれていたゴミを捨て、ふと自分のアパートを振り仰ぐと、
「ぶっ…」
危うく完全栄養食品で有名な朝食を吹き出しそうになってしまう。何故かと言えば、男同士のキスの現場を目撃してしまったから。
(うっそ。本物って初めてみちゃった…)
それも、あれは確かお隣の、名前はなんて言ったっけ。うずまきナルトくん?引っ越しの挨拶を、わざわざしてきた今時珍しい現代っ子だ。やたらと派手な雰囲気の髪色だったわりには礼儀正しい印象だったから、よく覚えている。確か高校生で、一人暮らし。たまに、朝にすれ違ったりする時、挨拶などもするので、密かにあたしの中では好印象な子。
(あ…、可愛い)
普段はオトコノコ、オトコノコしているくせに、恋人らしき相手の男に、キスをされた後、はにかんだように笑う姿が、とても綺麗だった。
(お相手は謎の銀髪の男っと)
めもめも、ってどこにメモすんじゃい、とコンマ数秒の自分ツッコミしつつ、ついつい急ぎ足を止めてしまう。
(お。結構、いい男じゃない。年恰好から見るに年上かしらぁ…。うずまきくんってば、なかなかやるじゃん)
抱き合う銀と金を前に完全栄養食品を咥えつつ、
(うーん、少年よ。その歳にして随分難儀な恋に落ちたものですね。いやいや、お姉さんは応援しますよ。なにしろ、お姉さんは自由恋愛主義者ですからね)
ついでに、飽食主義者なのです、とヒールをアスファルトの地面に叩き付ける。
(大事にされてるんだなぁ…)
頬を撫ぜられて、きゅうっと目を細めている顔。愛されると人間とは心身共に美しくなるのだ、とこの春電撃入籍をした知人が言っていた気がする。
(うーん。朝から、見せつけられてしまった気分ですよ)
思わず、自分の半生の恋愛遍歴というものを思わず振り返ってみる。…食に彩られた戦歴ともいう。自分の中での絶対的な価値観をブレることなく、貫き通して来たと思うが、その代わり二十代の半ばにもなっていると言うのに、誰かをきちんと好きになって、というようなまともな恋愛はしていなかったかもしれない。
そもそもそういった感情に興味はなかった。おいしいものをご馳走してくれるなら、付き合ってもいいかな、というお手軽な恋愛観。
だから、続かない。奢ってもらえれば誰でもいい。人の中身なんて見て来なかった。
(こういう自分、結構気に入ってたのになぁ。なんだかアテられちゃったなぁ…)
〝先輩!〟と叫んだ新入社員くん。そろそろ、本気で恋をするべきかしら?割り勘か、下手すればこちらが奢り。そんな誘いにノる女じゃないって、いうのが昨日までの(つい今朝までの?)あたし。年を重ねるにつれて、高く、高く、頑なになった、あたしの、ぽりしぃ。
とりあえずは、新しい定規で男を見る目を養ってみますか。この歳になってそれはきっついなぁ、と思う反面、今までの勉強不足が祟っただけなのだと拳を落とされた気分。
まぁ、新しい自分出発記念に、あの新人くんの夕食の誘いにのってやらないこともないかな、と思い直す社会人うん年目の春。そんな或るОLの優雅ならざる朝の始まりである。


















つまりはカカシさんはにゃるとさんの家にお泊りしてたようです良かったねという話を書きたかっただけです。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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