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空気猫

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「スプーンとフォークでお気に召すまま」番外2
サクラちゃん視点。








大体ね、ナルトが最初に好きだった女の子は私なのよ――。
でも、うるさいくらい、好きだ、好きだ、と告白されて、いい気になっていた。そんな馬鹿な女の子だったの、私は。



女子高生、春野サクラちゃんのラプソディ





最近、ナルトが変わった。クラスメイトとはしゃいでいるのはいつもの通りだけど、ただ馬鹿やってるだけじゃない時の顔にどきりとさせられることが多くなった。
ナルトの席は、教室で一番後ろ側の窓際。アルバイトで疲れている時は、教室の隅っこで窓を少しだけ空けて、気持ち良さそうに目を細めたり、好きな音楽をイヤホンで聞きながら、雑誌に視線を落としていることが多い。そう、あいつはいつもいつも騒いでるだけじゃない。
そして、そうやって喋りもせずに、金色の睫毛が伏せられていると、女子の私から見てもとても綺麗。色白で金髪碧眼。よく見れば、肌なんかもきめ細かいのよね。腰なんかはそこらへんの女の子より細っこいし、この間、手を掴んだら、私より華奢な腕でムカついて、思わず頭を殴っちゃったくらい。いいわよねぇ、男子は。あれだけ食べて、ひょろひょろしてられるんだもの。女の子はお菓子とか、新作スイーツなんかで誘惑たっぷりなのよ。
だけど、ナルトは私が理不尽な暴力を振るっても、にへにへしているだけだ。あいつは、女の子に特別優しい。負けてやる、ということをごく自然に出来る男の子なのだ。だから、負けられた私は、とても悔しい。そんな優しく女の子扱いしないでよ、と悔しくてドキドキする。そこら辺なんかは、がさつなキバなんかと違ってる。
最近は、学校内でもナルトのことをいいなぁ、と思う女の子は多くなってきた。私から言わせれば、ナルトの良さに気付き出すと、その子は少し大人になったかなって感じだ。だって、私たちの年代って目に見えて恰好良かったり目立つものが人気。雑誌のアイドルとか、流行りの服を着た子とか、見た目って非常にわかりやすくて即物的だから、きゃーきゃー言い易いでしょ。
だから、ナルトの中身に目が行くようになったってことはその子はクラスメイトより大人の階段を一歩踏み出したことに繋がるのかもしれないわね。中学の時はなんと言っても隣のクラスのサスケくんが一番モテていたけど、今はナルトも負けてないんじゃないかしら?ああ、シカマルなんかもその一人だったりする。あいつ、面倒面倒言ってるくせに、意外と包容力があっていい奴だもんね。
まぁ私だって、サスケくんに目がハートになっていた口だから、ちっとも偉そうなことは言えない。小学校の頃からナルトが好きだったていうヒナタは先見の目があった、ってことかしら。
つまり、高校生になってから、みんながナルトの良さに気付き始めている。私が、ちょっと焦ってしまうくらい。
クラスの馬鹿をやってる男子どもとは違う、何か。一人暮らしをしていると、それだけでもただ学生やって親元に居る私たちとは違うなぁという目で見られるのに、ナルトは気負うことなく自然体だから尚更だ。だって、私なんかお母さんの手料理を毎日食べているんだもん。でも、ナルトは毎日自分で作ったり用意したりしてるのよねぇ。それだけで、尊敬しちゃう。でも、ナルトは一度だって偉ぶったところなんか見せやしない。
ナルトは、どんなにバカやって、はしゃいでいても、決めるところはびしっと決めるというか、どこか出す雰囲気に透明感がある。
そういう意味でナルトって特別な男の子だと思う。子供なのに、子供じゃない。かといって大人ぶらない。その違和感が、教室の中で混ざると、心地良い。
たぶん、みんなナルトが好き。クラスの雰囲気を明るくさせる子って必ずいる。ナルトは間違いなくその筆頭だ。いざ、学園祭なんかになると、ナルトを中心に回っちゃうっていうところがある。あの子がやる気を出すと、しょうがねぇなぁって感じでクラスが纏まるのだ。
もちろん、注目を集めるぶん反感も買うけど、でもなんだかんだ言って最後には皆がナルトのこと好きになってしまう。そう、させてしまう子なのだ。
真っ直ぐなことは、私たちの年齢においてダサいなぁとか、面倒な奴だなぁと思われることも多いけれど、ナルトのように突き抜けられてしまうとそれが逆に、眩しいなぁに変わってしまうから不思議。
たぶん、みんな憧れてしまう。本当は、そうしたいなぁと思うけど、出来ないから、だからこそ凄く綺麗だと感じるのだ。
「ぎゃははは。キバ。だっせぇ、普通バイクで崖から落ちるかよォ。それも、車体は全損で奇跡の生還…。おまえ、本当、悪運だけはつえぇんだな」
「おまえなぁっ。それが生死を彷徨った友人に一番初めに言うことがそれかよ!心配の言葉をどこに忘れてきやがった!!」
「だってよぉ。うぷくく…、ウケる」
「てめぇ…ぐう」
「おい、そこらへんにしてやめておけ。キバ、傷口開くぞ」
シカマルが「面倒臭せぇなぁ」と止めに入ると、「シカマル…、もうちょっと早く言え…」とキバがベッドの上で静かに悶えている。
「馬鹿ねぇ、あんたら!病院まで来て騒ぐんじゃないわよ。本っ当、子供っぽいんだからぁ!」
「そういうイノの声も十分騒がしいと思うぞ。なぜなら、類は友を呼ぶと言うからだ」
花瓶に切り花を生けているイノが笑って、始終無言だが実はそこに居たシノがぼそっと何かを言ったが、ナルトたちの喧騒の中に紛れてしまった。
キバは今回の事故で肺に穴が開いたらしい。身体から半透明のチューブが伸びていたのにはビックリだが、それが半分ほど赤く染まっているのにも些か驚かされた。まさか…と思わず、ぞぞぞとしてしまう。
「ナルトもあんまりキバを興奮させるんじゃねぇよ。退院が延びたらどうするんだ」
「だって、キバがベッドの上でチューブに繋がれてるとか、おっかしいじゃん。いつも見てぇに突っかかってこれねぇしよぉ」
「出来るか!!」
ツッコミをしつつ、キバがゲホゲホと咳き込んでいる。その姿はベッドに両手両足をぐるぐる巻きの包帯で巻かれて、まるでB級映画に出てくるミイラ男そのもの。
「なぁ。ギプスになんか感動する文字書いてやっか?」
「激しくいらねぇよ!!」
ナルトとチョウジは自分たちで買ってきた入院見舞いの品を本人の目の前で食べながら、笑い合ってる。本当、はしゃいでると子供っぽいくせに。
「キバくん…。大丈夫…?」
「あ…。あぁ、ヒナタも来てくれたのかよ」
「だって、クラスメイトだもの」
「………」
消え入りそうな小さな声で、ヒナタが囁いている。キバは少なからずヒナタに恋心を抱いているようで、ヒナタのあんまりな言葉にガクッと肩を落としている。本当バレバレで見てられないわ。
「あ~あ。喉乾いちゃったわ。ジュース買いに行きましょうよ。ナルト、シカマル、チョウジ、シノ!イノも!」
「んあ?」
「一人で行けよ、春野」
「いやよ。全員分買ったら重たいでしょ。それに女子に奢らせるつもり?チョウジも自分でジュースの種類選びたいでしょ?」
「まぁ、確かに」
何か言いたそうなシカマルを視線だけで黙らせて、すぐに合点したらしいイノと目配せして私は座っていた丸椅子から立ち上がる。のろのろとした動作で男子陣もそれに続く。
「ヒナタ。ちょっと、キバの看病してあげてて。私たちは、ほら、ジュース買いに行くから」
「え。でも、サクラちゃんっ?」
戸惑ったような、ヒナタの声。私は、聞こえないふりをして病室を出る。
「ごゆっくり~」なんて若年寄のような台詞を吐いているイノにため息をしていると。
「なぁ。ヒナタ、おいてきちゃって良かったのかよ」
「いいのよ。本っ当、あんたって乙女心がわからないわねぇ~」
「???」
鈍感なナルトは放っておいて、私はずんずんと廊下を進む。その後に続く男子陣。
わざとらしい用件で私が病室を後にしたのには訳がある。
「ほら。中、見てみなさいよ」
「へ?」
僅かに開いたスライド式の扉の隙間から、ベッドに横になっているキバと丸椅子に座るヒナタの姿。お互いに顔が真っ赤である。ぼそぼそとした音量の会話で内容までは聞こえないが。
「うひゃぁ。いい雰囲気だねぇ」
お菓子にしか興味ないはずのチョウジすら、スナック菓子を摘まみながらそんなことを言う。つまりはそういうことなのだ。
「わかった?私たちはお邪魔虫よ。というわけで、退散するわよ」
「へ?え?サクラちゃん、ジュースは?」
「馬鹿。そんなの、口実に決まってるじゃない。作戦よ、作戦!」
私が怒って言うと、ほわぁああ…、と間抜けな声を上げて、ナルトがぱっくりと口を開けている。なによ、その馬鹿面は。
「さっくらちゃんって、いい女っ!」
「あんたなんかに言われてもちっとも嬉しくないわよ」
「がぁーーん…。そりゃないってばよ、サクラちゃんー」
私に駆け寄って来たナルトを、コンマ1秒で撃沈させる。そんな私たちを見ていたイノが急に擦り寄って来た。
「ねぇ、最近。ナルトって結構いい線いってると思わない?雰囲気が妙に柔らかくなったって言うか。あんたも意地張ってふってばっかいないで一回くらいデートの一つでもオッケーしてみたら~?」
「馬鹿ねぇ、あんたは…」
「はぁ?なにがぁ?」
「もう遅いのよ…」
どうやら、イノもナルトの魅力に気付き始めたらしい。私は、訝しそうなイノにため息を吐いた。
「サックラちゃ~ん」
ナルトの呼び声。ニコニコとした屈託のない笑顔。お願いだから、もう叶わないと知っているから、せめてあんたの初恋の女の子としてのプライドを保たせてよ。私、誰よりも強い女の子でいたいのよ。
「サクラ…?」
「大丈夫。なんでもないの」
病院を出て、私の横顔を春風が通り過ぎる。新しく買ったヘアピンに気付いてくれる繊細な心の持ち主はこのメンバーの中にはいないらしい。
「近くのファミレスで仕切り直すか?」
「いいねぇ。ボク、本当にジュース飲みたくなっちゃった」
「それじゃあ、ドリンクバーのあるとこにすっか。チョウジ、食い過ぎんなよ」
「あ。わりぃ。ごめん、オレってばこれから用事~!」
シカマルとチョウジに謝罪して携帯の画面を確認しながら、ナルトがさらりといなくなってしまう。「ちょっとぉ?ナルトぉ?」イノの肩透かしをくらったような声。その所作があまりもさり気なかったから、私も逆に引っ掛かった。
「……ナルト?」
「サクラちゃん、も。ごめんってば!また学校でな!」
なによ、〝好きな女の子〟と休日を過ごしたくないの?前だったら、絶対に「サクラちゃん。このあとオレとデートしてってば~!」とか言って誘ってくれたじゃない。それがどうして…。
ううん、本当はわかっていた。ここ数カ月で起きたナルトの変化に。彼は、もう私のことを見ていない。憧れめいた恋心すら、抱いてくれなくなったのだ。全部、私が悪い。
「サクラ…?どうしたの…?」
イノが訝しそうに振り返る。キラキラ光る金色の軌跡。ひらり、手の平を振って、私の前から消えた。病院の角を曲がったところにある大きな駐車場。見てはいけない、と直感が囁いたのに、目が離せなかった。
「―――……」
ああ、なんて綺麗な笑顔。私の、知らないあの子。
「本当、馬鹿な女よね。私――…」
ナルトの髪の毛にふれる銀髪のあの男の人は誰だったのかしら。たぶん、これは私、春野サクラの、咲くことがなかった恋のラプソディ。













 
 
 
 


 
 
思ったよりサクラちゃんが切なくなりましたすいません。
関係のない話ですが、猫さんも以前知人の退院日を一週間延ばしたことがあります。
お見舞いに行った時、笑かしてチューブ真っ赤に染めてごめん。(と、ここであやまる)
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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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