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空気猫

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昼休みのコツコツ5分の成果。おかしなところあったらごめんなさい。








「ナルト。どうしたのよ。あんた」
いつも通り任務を終えた春野サクラはアカデミーの廊下でウンウン唸る見知った青年の背中を見かけ―――そのまま蹴りつけるか放置しても良かったのだが、あまりにも文字通りウンウン唸っているものだから、昔からの腐れ縁や持ち前の優しさなどを総動員して、声をかけた。
「う~ん、サクラちゃん。思春期の子って難しいってばよ?」
サクラの気配に気付いたナルトは自身の前で立つ少女を見上げる。中忍服姿の彼女はおそらく任務帰りなのだろう。緑の支給ベストと額当ての姿で、訝しそうに立っている。
「馬鹿ねぇ。あんたみたいなタイプが、難しく考えたってしょうがないでしょう。ウジウジしていないであんたがいつも人一倍主張している自分の忍道を貫きなさいよ」
ばしっと背中を叩かれて、ナルトは激しく咳き込んだあと涙目で、
「サクラちゃん…」
「何よ」
「流石はオレの認めたオンナ…」
ぼそっと呟きしゃがみ込んだ姿勢のまま、ニシシと笑う。
「私の授業料は高いわよ、ナルト。」
今から飲みに行く?春野サクラは元チームメイトの青年を見下ろし、ふふんと笑ったのであった。





カカシは混乱していた。あの教師を振り払った手の感触がいつまでも残っていて気分が悪い。
「これじゃあまるで…」
カカシは切れた息を整えながら夜空を見上げる。
「オレが駄々っ子みたいじゃないか」
ぽつりと呟いた言葉は、それが真実であると如実に語っているようで胸糞が悪い。何故だか涙まで何かのおまけのように流れ出てきて、拙い自分が酷く悔しかった。見上げれば夜空の星が美しく輝いており、余計に滑稽だ。
そう自分は今アカデミー生だ、とカカシは思う。それが堪らなく屈辱的でならない。何故、今更アカデミーに通わなくてはいけないのか。自分に足りないものなどないだろう。忍として十分にやっていけていたはずだ。それなのに、何故、何故。カカシの中に渦巻くのは、どうしようもない憤りだった。
火影に言われた足りないものがわからない。自分はこの里でエリートの称号を欲しいままにしていたはずだ。そう、言ってみれば火影が作り上げた世界で、自分の存在は求められていたということなのだ。それなのに、唐突に否と言われた。とんでもない裏切り行為だ。
「オレは精一杯やってきた…!」
呟いた独白は、里に対して叫んだものであったのか、自分に向かってのものだったのかは、定かではないが、折り曲げた膝に透明な滴が落ちた。
「やってきたのに…!」
何がいけない。他の子供のように我が儘も泣き言だって吐かなかった。優秀な忍、道具としての価値は十分であったはずだ。それなのに、何が足りないと言うのか。
「カ、カシ…?」
そこにいたのはいつも通りのぽかんとした顔をした見慣れた教師で、いったいこんな時間まで何をしていたのやらと、カカシは自分自身のことを棚にあげて舌打ちした。
最悪だ。今、一番会いたくない相手に一番出会いたくないタイミングで一番見られたくない場面を見られてしまった。
こんなみっともない、思わず反らした視線の先の地面にはまばらな雑草が散らばっており、睨み付けたところで何が起こるわけではない。
(……みっともない?)
そうだ、こんな奴に自分の不格好な姿を見せたくはないに決まっている。当たり前だ。だけど…?
「こんな夜遅くに外で何してるんだってば?」
「オレだって忍なんだよ。子供じゃないんだから、どこで何してようが関係ないでしょ」
浮き立つ心とは裏腹の言葉を吐いてカカシは担任教師の青年を突っぱねた。
「関係なくなんてないってば」
「ここは学校の外でしょ。放っておいてよ。プライベートってやつデショ」
「放ってなんておけないってばよ」
「なんでだよ」
「だって、カカシってば泣きそうな顔してるってばよ…」
いつの間にか教師がすぐ近くにいた。気配などまるで感じなかったので、カカシはそれに対して驚きを禁じ得ない。
両頬を掬われて視界が上を向く。確実に体温が2
は上昇する事態にカカシは混乱する。手に負えない部類の人種とはこういった人のことを言うのだろう。この教師は天然というやつなのかもしれない。
「見るな、いやだ、見るな、見るな、見るなっ」
「カカシ。弱さを見せることは恥ずかしいことじゃないってば。自分の弱さを他人に曝け出して自覚した時初めて、強さに代わることもあるってオレは思うんだ」
「あんたはオレが弱いって言うの?」
「ちがうってばよ。オレはただ弱いってことが、悪いわけじゃないって言いたいんだってば」
くしゃくしゃとかき回される手の平はとても温かくて、…妙な気分になる。ああ、わかった。自分はこの大人に子供扱いされるのが嫌なのだ。唐突に悟った。
しかしそれが人間的嫌悪から起因するものなのかと問われれば〝否〟と答える自分がいる事実を不定する術はない。つまりは至極簡単に言い表すのならば、それはとても困難且つ厄介な事象ではあるのだが、カカシの無駄に素早いと有名な思考回路の解析結果から察するに、自分自身が頭を抱えてしまいそうなとても奇特な分析結果になってしまったようだ。
こんなはずでは、という思いと、火影は果たしてどこまで予想した結果であっただろうという面白くない思い、ついでに言えばこの不足で不憫な状態に初めての感情に気持ちが浮き足立ち、心臓を高鳴らせる。
早い話が担任教師の顔を見ると、ドキドキとするということだ。
「カカシ。ラーメン食いに行こうってば」
「あんた、どれだけラーメン好きなんだよ」
口は心とは裏腹の言葉を吐き出すが、赤く染まった頬を隠すようにカカシは視線を反らした。





「おい。担任教師」
「んあ?」
いつものように出席簿を片手に教室へと向かっていたナルトは、廊下で掛かった声に碧い瞳を大きく見開いた。そこにいたのは銀髪の少年だった。
「カ、カ、カ、カ、カカシ!!!」
「なんだよ、ウザったいな」
転がるように駆け寄った教師を背にして少年はすたすたと廊下を歩いて行く。
「い、い、いま、オレのこと!」
「なんだよ、担任教師」
カカシの赤くなった耳朶に「……しゃぁっ!」と青年がガッツポーズを決める。ナルトは満面の笑みでカカシの隣に並んだ。
「…別におまえのこと、嫌ってない」
「そっか。へへへ、そっかぁ」
キラキラ~、と瞳を輝かせて、子犬のように歯を見せて笑う。ちらりと目の端でそれを確認したカカシは、こんな生き方があるのだと肩の力が抜けるようだった。
「認めてやってもいいよ、あんたのこと。ナ・ル・ト・先・生」
「っ!!」
見る見ると輝き出す担任教師の表情にくすぐったい思いにかられながらもカカシは教室へと続く道を進む。
「カカシ。オレってばおまえのこと、だぁいすきだってばよっ!」
これはある恋の物語。…の始まりである。



















end
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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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