はたけ家。風通しの良い和室の居間。丸テーブルを囲んで、四代目火影がニコニコと笑ってる。
「うん。サクモさんの顔は相変わらずすっっごくタイプだよ!」
四代目の問題発言に弟子カカシとその息子のナルトがぶばっと飲んでいたお茶を吹き出し、
「きみは昔から変わらないねぇ」とサクモが少し困ったような笑みを落としてる。
「一番はクシナさんですけどね~~。男では一番大好きですよ!!」
普通であったら恐ろしい愛の告白に聞こえてしまいそうなことをズバッという四代目。ははは…とサクモは背中をまるめで笑うばかりで、もそもそとお茶を啜っている。
(父さん。あんなこと言われてるのに抵抗なしですか!?)
(サクモさん。オレたちが、ま、守ってあげるってば!!)
いまいち反応の薄いサクモに対して、弟子とその息子のナルトは慌てるばかりで。黄色い閃光と、木の葉の白い牙のやりとりをあわあわと見守る。
「で、ナルトとカカシくんは、どういった関係なわけなのかな?」
そんな二人の様子に、今度は話しの水が向けられる。ニコニコと満面の笑みで笑う四代目の顔は笑っていたが、怖かった(カカシには)。
「え、えっと。こ、これはってば!その!」
「うん。うん。流石にオレの息子だよねぇ。悔しいけど、はたけ家の顔ってうちの家系のモロ好みの顔なんだよねぇ~」
「へ…?」
四代目の答えに、ナルトはぽかんと大きな口を開ける。
「へえ、そうなんですか?初耳ですよ、先生」
「そりゃ、カカシくんには言ったことなかったモン。師弟だし、変に誤解されちゃっても困るしね~」
(あ。一応、そういう自覚はあるんですか)
カカシが納得したのもつかの間。
「まぁ、オレは恩師の息子、それも教え子に手を出すなんて不貞なマネとてもじゃないけど出来なかったけどねぇええ~~…」
それこそ真夏の夜の怪談のように。怨嗟のような、声色で四代目が微笑んでいた。
その顔は、甘い顔立ちで現役時代は里のくの一たちをキャーキャー言わせていただけあってとても美しい。カカシも少年時代など、師に対して憧れめいた想いなどを抱き懸想した口ではあるが。
「やだなぁ、先生。愛に、年齢・性別・身分は関係ないんですよ~。これだからあの世帰りの古い人は頭が硬くて困るったら…」
「いやぁ~。カカシくん。オレは、人としての常識を説いているんだよ~?髪型と一緒に思考もズレてちゃったんじゃないの~?」
「ははは~…。それが愛弟子に向かって開口一番に言うことですか~」
「何を言うの、カカシくんったら。あの世から蘇えってみれば、可愛い~可愛い~息子にでっかい虫がついていて!!不肖の弟子に誑かされていると知った時の湧き上がる殺害衝動と言ったら…よく我慢している方だと思うよ~、オレは」
ふつふつと地獄の釜から湧き上がるマグマのような怒りを露わにして、四代目火影がバキボキなどと指の骨を鳴らしている。
「ミナトくん。〝誑かされている〟という言葉は聞き捨てならないね。それに〝でかい虫〟というもの少々…。カカシは、父の私の目から見ても立派な忍に成長したと思うし、ナルトさんのことも真剣に考えているよ。なぁ、そうだろ、カカシ」
「え、あ。父さん…。あ、ありがとう」
父サクモの言葉に感動したようにカカシが、目を見開き、サクモは真面目な顔のまま今度は隣のナルトに向き直る。
「ナルトさんさえ、良ければいつでもはたけ家の嫁に来て欲しい。我が家はきみを歓迎するよ?」
「サ、サクモ…さん」
サクモに両手を握られ、真摯な眼差しで見詰められ、ナルトは乙女のように頬を染める。
「オトウサンと呼んでくれて構わないと言ったはずだがね」
「あ。お、お義父さ…っ」
思わずカカシの父から投げかけられた嬉しい台詞に、ナルトが頷きそうになった時だった。
「だめ~っ。ナルトの父親はオレだけなんですーっ。いくらサクモさんでもそこは譲れませんよ~」
間に割って入ったのは駄々っ子のようにごねる波風ミナト。
「きみは…。昔から自分の大事なモノに対しては狭量な子だったね。少しは譲歩することも大切だと忠告したはずだが…?」
そうなんだ…と一見完璧そうに見える四代目の貴重な一面に、弟子とその息子が感心していると、ミナトが地団太を踏んでいた。とても…里の長となったものがやるような仕草ではない。
「サクモさん。オレはねぇ、カカシくんの男ぶりに文句があるわけじゃないんですよ。見ての通り貴方の才能を受け継いで、忍としても超一流ですし…。顔がいい男だってことも先述の通り認めます。ただ、オレが許せないのはですねぇ…」
はたけ邸に一時の静寂が訪れる。固唾を飲んで周囲が見守る中。
「オレのナルくんに手を出したってことです!!!!」
四代目火影の怒髪天。ミナトの言葉に「だから、きみは少し人の話を聞きなさい…」とサクモが、ため息を吐き、
湧き上がる黄色のチャクラに、カカシが上忍らしく身構える。
「父ちゃん、やめろってばよ~!!カカシ先生に何するんだってば!!」
螺旋丸を繰り出そうとした父の姿に、びっくりしたナルトが思わずカカシを庇いに入る。
「ナルト。どうして、お父さんの邪魔をするんだい!?」
「そりゃ、オレってばカカシ先生のこと、愛してるモン!!」
「!!!!!」
ナルトの告白に、カカシが大きく目を見開く。恥ずかしがり屋の青年は滅多なことがないと、そんなこと口にしてくれない。一瞬、彼の頭の上にリンゴーン、リンゴーンと幸福のベルが鳴り響く。きゅうと抱き締めれば、自分の懐にすっぽりと収まるジャストサイズ。そのうえ、青年特有のいい匂い。はぁ、幸せ…とカカシはナルトの首筋に顔を埋めながらため息を吐いた。
「カカシくん。うちの子から離れなさいっ!なにしてるの~~!!!」
四代目がまたしても螺旋丸を繰り出そうとすると、
「いくら父ちゃんでもこれ以上カカシ先生とかサクモさんに迷惑を掛けたら嫌いになるってば!!」
「ナ、ナルトぉ~」
大体、人様の家で螺旋丸をぶっ放そうとするなんて非常識だってばよ~~~!!とナルトはお怒りモード露わに、四代目を説教する。
「だって、ナルト。オレだってね、寂しかったんだよ。ナルトの隣、カカシくんにとられちゃったみたいで…」
「そんなん、オレをおいてさっさと死んだ父ちゃんが悪いってば。オレがカカシ先生を大切にするのは当たり前だってばよ?」
「ナルト……!!!」
感極まったカカシがナルトを熱~く抱擁して、首筋に顔を埋める。
「だ、だめ。ナルト、すぐにその虫を避けなさい。ナルトには可愛いお嫁さんがきて、波風家の名字を継いでくれるんですーっ」
「オレの名字は〝うずまき〟だってば。波風なんて知らないってばよー!」
「そ、そんな。酷いよーーーナルトォぉおおーーーっ」
そんな親子の対決を後目に、柔らかいナルトの軟肌気持ちいい…、ハァハァとカカシのチャクラが目に見えて桃色になる。
「そんな変態のどこがいいの、ナルト!?おまえが引っ付けてるのただのオッサンだからね!!目を覚ましなさい~~~!!!」
庭の草花が綺麗な長閑な和式造りの屋敷に、四代目の怒号が響いた。
サクモさんは息子の可愛いお嫁さんに「お義父さん」と呼ばれるのが夢だったり。そしてクリーンヒットなナルトさん。そんなわけで是非、嫁に来て欲しいはたけ家。せっかく再会した息子を嫁に行かせたくないミナトさん。両家ともで可愛い子の取り合いです。