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空気猫

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四+仔カカの夏の話。書いてる途中で鳥肌が立ったので没にしてたやつです。





 
 
はたけカカシは同情が嫌いだ。つまりはあれだ、かわいそうにと言われた瞬間にぺたりと背中に貼られるレッテルが嫌なのだ。それは子供の遊びのように公園で拾った木の棒で、私たちはこっち、あなたは向こうとガリガリと地面に線を引くようなもので、結局、線を引かれた人間は哀れだ。けして仲間に入れられることなく、その他大勢の集団を見ていなければいけないのだから。
「というわけで、オレはかわいそうになんて同情は嫌いなんです。反吐が出る」
「そうかな。オレはとても優しい労いの心だと思うよ」
「氷」と書かれた旗が蒸し暑い空気を無駄にかき混ぜて、ジーワジーワだとか、リリーンだとか夏の風物詩的な音が、容赦ない夏の陽射しを受けて座っている二人に突き刺さる。
「前にも言ったけどねぇ、カカシくんはもう少し周りを頼るべきだと思うよ。きみを心配している大人はきみが思ってるよりも多いし、世の中は悪意のある感情ばかりでもないんだよ」
「オレ、オッサンにモテる趣味はないんですケド」
「うん。オレも弟子に対してそういう趣向をブツけてくる人間がいたら全力で削除して行こうと思ってるから安心して」
師から真顔で返された返事にカカシは深いため息を吐いた。この人は常識ぶっているようで色々と過激な発言をするから目を離せないのだ。いや、けして変な意味ではなく。
「うわぁ、カカシくん。すっっごい三白眼だね。眉間に皺、寄ってるよ」
ぶはっと吹き出した担当教師は、ちょっと不謹慎なんじゃないかと思うくらい背を折り曲げて笑い転げ出した。しかし、笑い上戸の師をいちいち相手にしていたら米神の血管がいくらあっても足りないと学びつつある少年は懸命にも怒りを露わにすることもなく、溶けかけたかき氷をしゃくりと口に運んだだけで憤怒を収めた。
(変なところにツボがあるしこの人…)
あれだ、不思議ちゃん線が手相にあるタイプだ絶対。カカシは手相占いを信じないが。
「ああ、アンタの眼から見たこの里はさぞや美しいことでしょうねぇ」
「とても皮肉だよ、カカシくん」
「主観の問題ですよ、センセイ」
所詮、人間は世界を主観でしか認識できない。青だとか黄色だとか丸だとか三角だとかいう観念だって、個人の属する此岸の世界の視認でしかない。だから、歪んだ像でしか世界を捉えることができないカカシのような人間は、やっぱりちっとも里だとか人だとかを好きになれなかった。
一方で担当教師は人が良いを体現したような存在で、いつかこの人は絶対、無理難題を押し付けられて損な目を見るぞとカカシは睨んでいるのだが、とりあえず彼が見る世界は大層美しいらしい。
「オレはね、これでも忍という職業の人間として、何も人が争わないとか、嘘を吐かないとか思ってるわけじゃないんだよ。そうした人間の悲喜交々な一面も含めて美しいと思えるんだよ」
「先生みたいに達観した目で見てたら、神様か何かになってしまいますよ」
カカシは呆れたように言うと担当教師は破顔した。
「それはとっても笑えないなぁ…」
いや、アンタ盛大に笑ってるじゃないですか、と嫌味を言おうとしたカカシを遮って、担当教師はふとえらく真面目な顔をした。
「神様かぁ。ねぇ、カカシくん。神様とか英雄とかさぁ、それも線だとは思わないかい…?」
「………」
「ほら、困った。あははっ、カカシくん。またすっごい顔」
ぐりぐりと眉間の皺を親指の腹で伸ばされて、カカシは不機嫌そうに顔を顰めた。ちなみに師が注文したかき氷は練乳をたっぷりかけたイチゴ味だ。見るだに胃凭れを起こしそうなソレを見降ろしたカカシは、ため息と共に片頬に手を当てて肘を付いた。
「カカシくん。子供が子供らしくあることは大切なんだよ」
「余計なお世話って言うんですよ、先生」
何故か教師に説教臭い台詞を吐いて、少年は無色透明なかき氷を口に運ぶ。舌の上で溶けた氷の味は、人工甘味料たっぷりでやけに甘ったるく胃もたれを起こしそうだった。
 
 
 














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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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