空気猫
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ー日常編ー
しつけの時間
しつけの時間
アスマが、カカシの家に行った時すでに、そこは酷い惨状だった。くすん、くすんと泣いている、狐っ子を前に、アスマはガシガシと後頭部を掻いた。
「あー…なんだ」
「カァシにはナイショ。いっちゃ、めーよ?あしゅま、め? め、わかるってば?」
ふっくらとした唇に人差し指をあてて、ナルトはお願いポーズをした。いったいどこでこういった仕草を覚えてくるのかアスマは眩暈を起こしそうになりつつ、カカシの部屋の隅っこにある四角い旧型テレビを恨めしげに睨んだ。
「あしゅま、なうとのお願いわかる…?」
しょんぼりと垂れた狐耳。うるうるに潤んだ碧い瞳。ましゅまろみたいな赤いほっぺ。ちんちくりんな顔のくせに、震える唇はさくらんぼのように赤かった。妙に愛らしい狐の子の足元には水たまり。
「なうと、悪い子したらカァシに怒られる。カァシ、怒ったら怖いにょ。めーってされるの。あしゅま、わかる?」
アスマは口から煙草を取り落としかける。ふらふらと手が伸びそうになって。おいおいおい。そりゃまずいって。とガキ相手にイケナイ気分に肝を冷やした。
「カァシ、なうとにぷんぷんしたらおっかいの…」
「あー……、ああ見えてカカシはスパルタだからな?」
細かいし潔癖症だしな、とアスマは、小さな大惨事を見下ろして煙草を吹かした。アスマはため息を一つ吐くと、ナルトの湿ったカボチャパンツを脱がしてやり、タンスから新しいのに変えて、まだ涙やら鼻水やらで大変なことになっている顔を拭いてやる。さすが甥っ子がいるだけあり手馴れたものである。
「あしゅま。さんきゅ。クマでも役に立つことがあるってば。カァシの言った通りだってば」
「おまえさんなー……」
風邪を寝込んで以来、ナルトはアスマの言うことを素直に利くようになった。絆が深まったわけではなく、どうやらカカシが、「自分がいない時はアスマが代わり」なのだと言い聞かせたらしい。それ以来、カカシが任務で出ている時、アスマが家にやって来てもナルトがアスマを追い出すことはなくなり、一応和解したのだ。
「しかしなぁ、いくらカカシが厳しいっつってもガキが小便漏らしたくらいで怒るかぁ?」
「だめっ。なうと、一人でおトイレ出来るんだも…。だからカァシにはナイショ!」
顔を真っ赤にさせて、ナルトが着替えたばかりの上服を引っ張る。まんまるい頬はリンゴのほっぺみたいに真っ赤になっている。
唇をぎゅっと噛んで俯いて…どうやら、怒られるのが怖いというより、トイレに失敗したことをカカシに知られたくないらしい。
(難しいお年頃って奴かぁ…?オレがこんくらいの時はどうだったけ)
思い出してみたが、どうもこうした面での繊細な感情とは掛け離れた少年だったと思う。それとも相手が実の両親ではなく、カカシであるということがこの狐の子にはネックなのかもしれない。何しろ子守りをしている最中にナルトがアスマに話すことと言ったら、カカシがいかにカッコイイかなのだ。ナルトの話の中のカカシはまるでスーパーヒーローかスーパースターのように聞こえる。確かにカカシは見目は小綺麗な顔をしているかもしれないが、友人としては、色々抜けている性格だと思う。
ただ、確かにここまで想われれば悪い気はしないかもしれない。この子供に対するカカシのいつにない溺愛っぷりもわかる気がした。
アスマはこの間、近所のスーパーの食玩コーナーで対象年齢三歳児以上と記載されているパッケージの箱と対峙しているカカシを目撃してしまった。里を代表する上忍が真剣な顔でいったい何をやってるのか、カカシの背後では暗部の後輩等が涙を流しつつ、その光景を見守っていた。そう言えば暗部の間では、カカシさんはスーパーなんかで買い物しないんだ!!という伝説が流れていたような気がする。それではカカシはトイレにも入らないのか…とアスマは無性にツッコミを入れてやりたくなった。いつから木の葉の里の暗部の頭は暢気になったのだろう。アスマは里の将来を憂いた。
「あしゅま、ナルのパンツ洗濯してってば…!」
「はぁ……?」
「はやくすうの。カァシ帰って来うでしょー!!」
必至だな…と思いつつも、アスマはナルトにぐいぐい腰を押され、洗面所に向かわされる。髭の大男と三角耳尻尾付きの子供が並ぶ姿は、まるで大熊とヒヨコのようだ。
「アースーマ??」
「やべ、カカシだ」
「ナルトを甘やかすなってあれほどいったデショー??」
玄関を見れば、ただいま帰宅したと思われるはたけカカシが、長ネギの飛び出したスーパーの袋を片手にブラ提げて、般若の顔で怒っていた。ああ、あのカカシが所帯染みて来てやがる、とアスマは全然関係ないことで感動しつつ、今日も木の葉の里に華麗な噂とは真逆のシュールな姿を晒す、友人を片手を上げて、〝おう〟と出迎えた。
「いや、これにはわけがあってな?」
「ナルト。おまえ、おねしょしたの……?」
「あう……」
ナルトはバツが悪そうに、壁際に背中をくっつけて、カカシとアスマの持っているぐるぐる巻きのシーツやら自分の下着やらに視線をやる。
「アスマもいい歳してこいつの隠蔽工作に加担するんじゃないよ」
「おま、だってそりゃ不可抗力ってもんだろうがよぉ。まだこいつはちっせぇことだしよ」
ナルトのおねしょの証拠隠滅をしていたアスマは、なぜか子供と一緒に叱られるはめになった。大体、ガキってーのは吐いたり漏らすものなのだと言ってやりたくなったが、三白眼を光らせたカカシに、ここにオカンがいる…とアスマは後ずさった。
「やぁああ。かぁしごめんしゃい、めんしゃいぃぃ。ぺんぺんはやーなのぉ」
「ダ・メ。ナルト、こっちに来なさい」
ぴしゃりと言い放ったカカシに、ナルトの狐耳が垂れて、涙の粒が決壊する。
「ひっく、ひっく。ごめ、ごめんなしゃい、ごめんなしゃい」
確かに、暗部の後輩でもカカシに睨まれればまったく情けないことなのだが、腰を抜かす若輩者がいるくらいだし、まだ小さなナルトにはカカシの怒り顔は相当怖いのかもしれない。
それでも、ナルトは耳と尻尾をぺたんと垂らしながらも、カカシから逃げようとしない。カカシが屈み込むとナルトの身体が頭の上の三角耳と一緒に震える。その様子にカカシは長いため息を吐いた。
「叩かないよ……?」
カカシの言葉にナルトは恐る恐ると言ったふうに視線を上げる。そこにいたのは、優しげな微笑を浮かべているカカシだった。
「カァシ……」
「オレは、おまえが、いけないことをしたら容赦なく叱るよ。だけど、理不尽な理由でおまえを打ったりはしない」
カカシは、ナルトのふくふくとした両手を自分の両手と重ねて尋ねた。
「ナルト、なんでオレが怒ったかわかる?」
「おねしょちたからだってば?」
「ちがーうよ。ナルトが嘘吐いたからなの。おまえ、オレにおねしょのこと隠そうとしたデショ?」
「あう……」
「嘘はいけないことなの。わかる?」
「…………いけな?」
「そ、失敗したことから逃げちゃだめなの。ナルトは一人前の立派な狐の男の子になるんでしょ?」
ふわん、とナルトの尻尾が膨らむ。立派な狐の男の子ってなんだそりゃ…とアスマが内心でツッコミを入れたが、当の二人、とくにナルトの顔は真剣そのものだった。
「ふぇ…ふぇええええ。もうちない。カァシごめんなしゃいいい」
「ん。よしよし。ナルト、お口あけてごらん?」
「うにゅ」
「いいから。ほら、あー」
「あー」
カカシはポケットから出した包み紙を剥がして口の中に放り込んでやる。
「あまあま」
「ちゃんとごめんなさい言えたからご褒美だよ」
「カァシー、うまうまぁー」
足にきゅうと抱きついて懐く子狐。
「……おまえなんか先生みてーだな」
一連の動作を見守っていたアスマが口を開く。すると、ナルトの青玉が見開かれる。
「せんせぇ?」
カカシを見上げながらナルトは不思議そうに首を傾げ、花が咲くように笑った。
「カシシせんせぇ」
「ありゃま」
「カシシせんせぇ、カシシせんせぇ!!」
「こら、ナルト。すぐ飛びつくんじゃない……」
「気に入ったみてぇだな」
「おまえね。オレ、教師なんかじゃないんだけど?」
「いいじゃねーか。似たようなもんだろ」
「カシシ先生!」
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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前 空気猫、または猫
職業 ノラ
趣味 散歩・ゴミ箱漁り
餌 カカナル
夢 集団行動
唄 椎名林檎
性質 人間未満
日記 猫日和
ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
職業 ノラ
趣味 散歩・ゴミ箱漁り
餌 カカナル
夢 集団行動
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性質 人間未満
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ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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