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空気猫

空気猫

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はたけカカシはいつも判を押したようにきっかり同じ時間に現れる。つまり夜10時ジャスト。その時間が近付くとナルトはそわそわとし始めてしまうので、なんだかカカシの策略に乗せられているような気がしないでもない。
その日、カカシはいつものように完全栄養食品を一箱と、500ミリペットボトルの水と、友人用の煙草を買い求めた。そこら辺のマイペースさは付き合いだしてからも相変わらずなのかもしれない。
「……カカシ先生さぁ、そのうち死ぬってばよ?」
「そ?」
「うん。死ぬ。カカシ先生、全然オレのこと叱れねぇじゃん。野菜とかの問題じゃないってば生物を食えってば。こんなのばっか食ってて毎日力出る?」
「それなりに…」
ミナトの店の手伝いをしているカカシは料理人なんて職業をやっているくせにあまり食事に興味がない。「仕事で嫌というほど料理を作るから、家で料理を作るのが億劫なんだよねぇ」というカカシの話を聞く限り料理人という奴は案外、食に淡白な性質が多いのかもしれない。カカシは料理を作る時の味見で一日の大半の食事を済ませ、身体を誤魔化し誤魔化し機能させているようだ。
「あ。新しいクジ出たんだ」
「おう。木の葉レンジャークジだってばよ。ちびっこに大人気なんだってば」
「ふうん、引こうかな」
「げ。先生、マジで引くの。まさかまた…」
「ううん、今度はA賞のお皿狙い」
「グレードアップしてるし…」
「また当てるまで通い続けようかな」
「ったく。もうその手は使わなくても、普通に来てもいいってばよ」
「え」
「別に…カカシ先生は、ただのお客さんじゃないし」
照れたよう笑うナルトに、カカシはきょとんとしたあと、このうえなく幸福そうに微笑んだ。
「でも、本当にあのカップは家で使ってるよ~?」
「嘘くせー」
「それじゃあオレの家に確かめに来る?」
「え」
「今度の土曜日はどうかな。いつもの公園で待ち合わせでどう?」
「カカシ先生が本当にカップを使ってるか確かめに?」
「そう。オレがちゃんとネコのファンシーカップを使ってるか確かめに」
面白そうな提案にナルトは破顔してから、二つ返事でカカシの家に行く返事をした。



しかし、コンビニのアルバイトが終わり、ロッカールームで私服に着替えていたナルトはふと考え込んだ。
「よく考えれば、オレってカカシ先生の家に行くの初めてかも……」
あれ?と若干の違和感を感じる。
「……オレ、カカシ先生の家に行ってどうするんだろっ?」
ジュースを飲んで帰って来れるのだろうか。何となくナルトの鈍い思考回路が、否と唱えている気がする。
「うぉおお…」
鏡に半裸になった自分が映っている。
「明日。シカマルに聞いて見よう……」





「おまえはバカなのか」
「ぐぁ!?」
「菓子をあげるから家に来いというのと、ほとんど変わらねぇ誘い文句じゃねぇか」
「………」
「能天気なひよこ頭が。付き合い出した後に男の家に行くと言ったら、よっぽどのことがない限りヤられるに決まってるだろーが」
パピコチューべットを咥えたナルトは、シカマルの冷たい視線に固まった。ぞわ、と背筋が寒くなったのは季節がらか時期外れのパピコのせいか、シカマルの視線のせいか、計り兼ねた結果、
「シカマルゥー…!」
がばぁと温もりを求めてナルトはシカマルに抱き付いた。昼休みに「シカマルに相談したいことがあるってば」と言いシカマルを呼び出したナルトは、優秀な友人の簡潔な回答を聞いて大いに頭を悩ました。
「……というかおまえらまだヤッてなかったのかよ。なんだ、奇跡のカップルか?」
「う…」
「付き合い出して何ヶ月になるんだよ。いい大人と高校生が小学生並みか」
「だ、だってさ。…カカシ先生からは何もシテこねえし、オレは今までの関係だけ十分というか一杯一杯だったしさぁ?」
「ふぅん…。その結果があのしつこいキスか?」
「うぉおお……」
オレってば求められてる!?とダラダラと背筋に嫌な汗を掻いて、ナルトが助けを求めるようにシカマルを見詰める。
「ったく、めんどくせぇ。おい、パピコの汁をオレの学ランに付けるな…そこで口を拭くな」
「シカーーーっ。オレってばどうしよー。心の下準備が出来てねえってばよぉおお…っ!」
「それを言うなら心の準備な、バカピコ」
ぐぁあああ……っと悩みに暮れるナルトはそのままシカマルの肩に顔をくっつけるとぎゅうぎゅう締め付ける。
「おい、誤解されるから、離れろって。めんどくせぇ野郎だなぁ」
「だ、だめだってば。シカマル。今はおまえの温もりを感じさせてくれーーー!」
「はぁ……」
片思いの相手に抱きつかれるという、おいしいんだか、損なんだかわからない状況にシカマルがため息を吐いていると、キバとチョウジが購買から帰って来た。「おい、いつもの屋上に居ねえと思ったら何でこんな空き教室に…」焼きそばパンにがなり立てたキバは、シカマルに抱き付いているナルトの背中に視線を落として、首を捻った。
「おい、シカマル。ナルトはどうしたんだよ。腹でも壊したのか」
「んでもねぇよ、めんどくせぇ」
「今、オレッテバ、シカマルの肩ノ上デブロークンハート中ナンダッテバ…」
「はぁ~?」
訝しそうに、キバの表情が顰められ、説明を求めるようにシカマルを見るが、面倒臭いが口癖の友人は状況を説明してくれそうになかった。
「バッカじゃねぇの。男同士で何ベタベタしてんだよ。気持ち悪りぃ……」
シカマルにぴっとりとくっついたナルトから視線を外しつつ、キバはがなる。キバに悪気はなかった。むしろ、本人すらも勘付いていないナルトへの恋心から来る微かな嫉妬からの行動だったのだが、図らずもナルトの唇を尖らす結果を招いた。
「オレってばキバとはしばらく口利かねえってば」
「あぁ?」
「何、ガキ臭せぇこと言ってんだよナルト。ったく、めんどくせぇ」
「キバが、ムカつく」
シカマルは好き、とシカマルに抱き付くナルトを見て、キバの声は知らず知らずの内に大きくなる。
「この間から二人で何こそこそしてんだよ…っ」
「意地の悪いキバには内緒だってば」
「あぁ?」
キバの片眉がぴょんと毛虫みたいに跳ねる。
「な、なんだよそれ」
「キバのバーカ、バーカ。キバなんかにオレのこの繊細で複雑な気持ちはわからないんだってばよっ。キバなんか、焼きそばパンでも齧ってればいいんだってば」
「んだとうっ!?おまえこそ、一生パピコを吸ってろ。オレに喧嘩売ってるのか、てめぇは!」
「ふんっ」
「おい、オレを挟んで喧嘩すんなよ?」
ナルトを膝に載せたままのシカマルは呆れた口調で、頭を掻く。
「そんなにオレが羨ましいなら、こいつ、やるから。ほら、交代な」
「う、うお……っ!?」
脇を持たれて、ナルトが猫の子宜しくキバに渡される。ナルトは透明なまなこでキバをじぃっと見詰めると、「ちぇっ」今度はキバの懐にぎゅうと抱き付いた。
「仕方ねえからキバで我慢してやるってば」
「おっ、おいっ?ナルトっ?」
ナルトの甘ったるい匂いが鼻先を掠め、動揺の余りキバの顔が真っ赤に染まる。
「キバ。おまえには幾らぎゅうぎゅうしても緊張しねえのにな…」
「あっ?」
「どうして相手がカカシ先生だと全部が特別なんだろ」
はぁ…と肩口で切ないため息が漏らされて、キバは顔を赤くさせる。
「おおおおおいっ、離れろバカナルト!」
もう少しで触れるところだった唇の感触に耐えられずキバがナルトを引き剥がす。そんな二人を見ていたシカマルはため息を吐いた。
「はぁ。めんどくせぇ」
そんな少年二人の心を無自覚に引っ掻き回しったナルトは今度は窓を開け、頭を半分外に出して黄昏ている。
普段正しもしない学ランの襟元を直したキバは、気不味い表情で、傍らに腰を下ろしていたシカマルに視線を落とした。
「なんだよ、シカマル」
「なんでもねぇよ」
「何かオレに隠し事してっだろ。言えよ」
「おまえはまだ知らない方が身のためだよ」
ナルトに対して淡い恋心を抱いているキバに対して、さて今ナルトに相談された事を教えるべきか。非常に悩む所である。
(いいから、おまえは大人しくヒナタにしておけば良かったのに。糞面倒臭い奴に惹かれやがって…)
事情を知らないキバが訝しい表情で己を見ている。オレたちって報われないよな、とシカマルはため息を吐いた。


 














 
ちなみにパカピコは実在の人物(あだなのみ)。猫さんが高校生当時、真冬にパピコチューベッドを口に咥えつつ自転車登校してくる色々ゆるい友人でした。
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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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