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空気猫

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「もしも家族っ!」という題名のパラレル小説が書きたい。以下小話。







「あらあらーカカシくん。おかえり。寒かったでしょう?」
仲睦まじく声を揃えたB型夫婦に温かく迎えられたカカシは、任務でボロっとなった姿のまま新婚夫婦の新居へと足を踏み入れた。ちなみにカカシに無茶臭い過酷な任務を与えた張本人は赤い髪の女性の左隣でにこやかな笑みを讃えている金髪の大人その人であったりする。
「それで雪の国での任務はどうだったんだい。カカシくん?」
「どうもこうも…あんな手酷い任務の話は聞いてませんでしたけど!センセイ!どう見ても多勢に無勢もいいところでしたよ…っ!」
興奮のあまり咳き込んだカカシは、ぶすっとした表情のまま首に巻いたマフラーに顔を埋めると、居心地悪そうに夫婦の前に腰を下ろす。
「だからオビトを増援で送ったじゃない。彼は頼もしかったでしょ?」
「いや、センセイ!あいつはただ無駄に現場を引っ掻き回しただけですから!結果的にクーデターは鎮圧できたから良かったものの…」
「まぁ、まぁ、無事に帰って来れて良かったじゃない。ね?」
「クシナさん…」
マフラーに指を引っかけて顔を出したカカシは、口の中で何かを言いかけてモソモソと黙り込み、そこで初めて女性が抱えて来た小さな塊に気が付いた。
「ほら、ナルト。カカシくんよ。会うのは二度目かしら。カカシくんは家族なんだから、ちゃんとおかりなさいのご挨拶しないとね?」
腕の中ですうすうと寝息を立てている赤ん坊は贔屓めかもしれないが、とても可愛らしい。生まれ立ての命を前に、任務で凍てついていた心にじんわりと温かいものが滲んだような気がする。
「ねぇ、抱いてみない?」
「へ?いや、イイデスヨ」
とんでもない、というニュアンスを含ませれば、赤髪の女性は大仰に顔を顰めた。
「な、ぁ、に。カカシくんってば私の子供が抱けないってばねー?」
「そういうわけでは…っオレ、任務帰りで汚いし!」
「ま!何それ!ちょっと聞いた!ミナト!カカシくんったらまたひがんだ発想をしているわ!」
黙ってれば美人で聡明な師の細君となった人は、口を開けば男顔負けのガッツのある女性で、何かとカカシの世話を焼きたがる。常なら、そういったお節介を鬱陶しいとすら思うカカシではあるが、どうにもこの女性だけには弱かった。母は強しとはこういうことかもしれない。
「いいからいいから遠慮しな~い!」
さぁ!さぁ!と強引に赤ん坊を押し付けられたカカシは、普段クールに暗部任務を遂行している人物とは思えないほど引っくり返ったような悲鳴をあげた。
「ちょ、ちょっと待って下さい。本当に待って…!」
かわいいでしょう、と赤ん坊を手渡したクシナは「はぁ、爽快感ってばねー」と呑気に肩をぐるぐると回して、台所へと姿を消す。カカシに出す飲み物を準備しに行ったのだろう。
「ク、クシナさん…っ!!」
初めて担当教師から彼女を紹介された時は、しとやかなどこか神秘的な雰囲気を持つ女性だと思っていた。しかし今思えばベンガルトラを百頭くらい被った状態だったのだなぁとしみじみと感じる。カカシは何度妊婦であった彼女の一挙一動に声が枯れるほど悲鳴をあげ、冷や冷やさせられたことか。先生って意外と気の強い女性がタイプだったんだなぁとか、カカシは若干師の意外な一面を垣間見たように感じたものだ。とにかくうずまきクシナという人は、色々とぶっ飛んだ女性なのだ。それは日常生活においても然りで…、
「クシナさん、オレのこと簡単に信用し過ぎです…」
カカシは腕の中の赤ん坊を見降ろして、ガックリと肩を落とした。忍の妻とはいえ、いや自身も忍だった人とはいえ、普通、妊婦や子供を育てる母親というのは自分のように殺しに携わる人間を忌避するものではないのだろうか。それなのに彼女はこうして血に濡れたカカシの手を気にすることなく、赤ん坊を抱かせた。避けるどころか、温かく迎え入れ、歓迎さえしてくれたのだ。
感謝しても仕切れないことではあるが、生まれたばかりの首も据わっていない赤ん坊はどこに力をいれていいかわからない。本当に自分と同じ生物なのだろうかと慣れない感触に変なところに力が入り腕が震えそうだ。
というわけでカカシはうごめく赤ん坊に恐れをなし必至の形相で台所から帰って来たクシナに助けを求めた。そして困り切った様子のカカシを発見した彼女は「まぁ…!」と声をあげた。
「……カカシくん……そのままで………」
「はい?」
「初めて赤ちゃんを抱いてタジタジなカカシくんのレアショットを激写!!」
はぁああああっ?何言ってるの、この人!?
左に右にと残像を残し、師の細君たる人がカメラを構えている。連射されるシャッター音に、カカシは口元をひく付かせた。
「せっ先生。クシナさんをとめてくださ…」
「ん!カカシ!フレッシュだよ!カカシのメモリアルアルバムに加えるべき一枚だね!」
「ちょ、やめて下さい、先生も悪ノリしないで下さい!」
何、コワイ。この人たち。話が通じない。カカシの顔前で焚かれるフラッシュの嵐。ぐるぐるとカカシの周りを回る夫妻を前にカカシは成す術もなく固まる。
いやふつうにオレが赤ん坊を落としたらどうするんだ。オレ、間違ったこと言ってるか!?
自慢ではないがカカシはDランク任務をすっ飛ばして上忍、暗部へと進んだ超エリートだ。つまり本来なら下忍たちが通るべきこまごまとしたお手伝い任務の数々、子守り任務等をしたことがまったくない。
そんな人間に里の宝…引いては夫婦の宝を持たせたままはしゃぐな!
カカシは赤ん坊が大事じゃないのかとこの呑気な夫婦を心の底から怒鳴りつけたかった。だって、カカシの腕の中の赤ん坊はこんなにも温かくて、万が一にも壊してしまわないかと震えてしまうほどなのに。
しかしふつふつと湧き上がる怒りを抑えていると、はしっとカカシの銀髪を引っ張る小さな手の平があった。それは、生まれて間もないというのに力強く、やけに体温の高い手の平だった。
「は……?」
間の抜けた声をあげて、視線を下げれば、細められた碧い瞳と目が合った。
「あらら。ナルトったら、流石は私たちの息子ね!カカシくんが優しいってわかるのよ!」
「本当だ。特別懐いてるように感じるね!」
カカシは呆然としたまま、腕の中の温もりを凝視した。はたけカカシが物の見事に静止した瞬間であった。
そうして彼はくしゃりと顔を歪めると、「いらっしゃい」ではなく「おかえり」と迎えてくれる夫婦に不覚にも泣きそうになってしまった。世間からちょっとズレた時間帯、木の葉の里、夜中の二時半のことであった。



















いらっしゃいではなくおかえりで夫婦に迎えられるカカシくんでありました。
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ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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