空気猫
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路地裏のきみに恋をした
そう初めは同情だったのかも知れない。愛を受けない子供が可哀相だとそんな事を思っていた。だけど優しく頭を撫ぜれば戸惑ったように自分を見上げはにかむ姿が、酷く印象に残ったのも事実。
監視を初めて1週間。うずまきナルトは相変わらず元気だ。火影さまから直々にうずまきナルトの監視を命じられたカカシだが、毎日同じ事ばかりが繰り返される単調な任務に、正直、退屈で退屈で仕方がなかった。
そりゃ、カップラーメンを食べる姿や、ベッドで丸くなって眠る姿を、かわいいな、と思う事もあったが、所詮は任務、あくまで監視とその対象者という範疇を超えてはいなかった。
四代目の遺産。少なからずとも自分と縁がある子供。だけど、それだけの存在だった。目に映る金色はカカシの古い記憶を擽るが、特別には程遠い、と思っていた。
今日も、木の葉商店街を駆ける子供。手に握られているスーパーの袋を視認すればお決まりの内容。また、カップラーメン? 身体に悪いなぁと思いながらも、カカシはナルトに気付かれない位置で監視対象者を観察する事に専念していた。
しかし、屋根の上で頬杖を付き猫背気味の姿勢でしゃがみ込んでいると、監視を始めて7日目にして僅かな異変が起きた。子供がガラの悪そうな若者に囲まれて路地裏に引っ張り込まれて行ったのだ。
「あらら」
そして始まる暴力。男たちは、ナルトの事を、サンドバックか何かのように思っているのだろうか。ひと気のない路地裏で、際限のない暴行が始まった。
「おら、泣けよ。おまえ、運良く忍になったからっていい気になるなよ」
「どんな奥の手使って忍になったんだよ」
容赦なく小さな身体に叩き込まれる仕打ちに胸が悪くなるが、監視をしている身で出て行く事は出来ない。
「ははっ。忍者になったからって大して強くなってねえじゃん!」
「狐は大人しく人間さまの靴底でも舐めてればいいんだよ。なっ?」
(あんなに蹴って内臓に傷がついたらどうするんだ…)
あの子も下忍だ。簡単な受身くらいは出来るだろうが、それにしてもやられっぱなしというのは頂けない。
何より、九尾来襲から12年、子供相手にバカな輩が耐えないものだなと呆れてしまう。カカシとて大切なもの、大切な人を失った。だが憎しみがあるかと問われれば答えは否。あるのはただ未熟だった自分への後悔の念だけで、それを器でしかないあの子に向けようとは思わない。
(…傷薬は家にないだろうなぁ)
ナルトが傷の手当をしている所はついぞ見たことがない。おそらく常人にはない回復力のせいで、怪我を治療するという観念が薄いのだろう。
カカシはため息を吐くとポーチからマキビシを出して、男たちに投げてやった。
「イテ。なんだぁ」
「空から変なもんが降ってくるぞ」
男たちが頭を押さえながら空を見上げた。雨のように降って来るマキビシ。
「イテテ…。くそ、なんなんだっ」
「鉄の棘だ。狐の祟りかっ?」
やがて、馬鹿な妄想をして男たちが逃げていく。
あとに残ったのはボロ雑巾のようになって地面に転がっているナルト。
気を失っているのかそれとも。
(……泣いてるのか?)
あの年の子供が、いくら下忍だとはいえ、こんなにも酷い暴力を受けたのだから、当たり前だ。
偶然を装って出て行こうかと、職務規定ギリギリの行為に及ぼうとした時、子供が起き上がった。汚れた泥をほろい、無残に散らばった食料品を拾い集めている。大半の食料は潰れてしまって、駄目になっていたが、インスタント物は無事だったようで、手馴れた様子で食料品を買い物袋に入れる姿にカカシの心臓がわけもなくつきりと痛んだ。
給水塔の上からつい身を乗り出してナルトの様子を伺っていたカカシだが、次の瞬間、己が隠れている方角に向かって上げられた瞳に驚く。
カカシの視線を感じたのか、はたまた偶然か、ナルトはきょろきょろと辺りを見回している。
(ふーっ、危ない危ない。下忍に見つかっちゃうなんて笑えないデショ)
給水塔の背後に張り付いてカカシはそっとため息を吐く。
やがてひと気がないと判断したナルトはテクテク元の一般道へと戻っていった。何事もなかったかのように去っていく背中。それほど、里人から受ける暴行はあの子供にとっては日常なのだろう。
だけどカカシはいつまでも金色の少年から目が離せなくて、何故か跡を追ってしまう。
いや、監視をしている自分があの子を見ている事は普通で、まったく何も問題ないことのはずなのだが。
去り際にもう一度、子供の瞳がきょろりと給水塔の上に向けられる。
(……うわ、綺麗)
そして血で滲んだ唇が何事かを模る。カカシは無意識でその唇を読んだ。〝オレってばぜってー負けねぇもんね〟?
オレの存在に気付いていたのか?いや、違う。あれは虚空に呟かれた独り言なのだろう。誰も聞いている者など居ないとわかった上での強がりな発言。
「あー……。なんかヤバいかも」
さすが先生の子供。オレのツボをピンポイントでついてくるわ。はたけカカシ、給水塔の上でひとり悶絶。今日、子供に落とされた大人が一人。
「くじけないんだね、おまえは」
カシカシとカカシが銀糸の髪を掻き回す。思い入れはあった。だけどそれまでだと思っていた。あの子は確かに先生の子供だが、それを理由に特別扱いなんてしないつもりだったのに。
だけどあの目は反則だろう。自分は昔から真っ直ぐな瞳に弱いのだ。自覚症状はある。何しろカカシの師こそ、その典型のような人物だったのだから。あの手の天然系人種相手だと逃れる術はないのが困ったところ。
―――火影を超える…、か。
自己紹介の時に言い放たれた言葉。確かにカカシの胸を打ったことは確か。もしかしたらあの子なら。
「ヤラレタ。ほんと、まさかここまでとはねぇ」
期待を裏切らない、いやそれ以上の面白い成長してくれちゃって。くくくと背中を丸めて笑うカカシは宝物を見つけた子供のようで。どこか嬉しそうに、そして何かを思い出すようにくしゃりと表情を緩めた。
その日から、カップラーメンを食べる姿や、ベッドで丸くなって眠る姿が、格別かわいく思えて、あまつさえコップを両手で掴んで牛乳を飲む姿に、「そんなに一気に飲んだら咽てしまわないか」なんて、ちっともする必要のない心配までしてしまうようになった。
もちろん、それ以来ナルトを暴行する輩は、はたけカカシの名を持って容赦のない制裁が下されるようになり、ナルトが以前のように怪我を負う回数は格段に減った。
カカシが隠れていた給水塔を見上げた、意思の強そうな瞳。射抜かれたのは、はたけカカシの心臓。そんな恋の始まりの瞬間。はたけカカシ、己の初恋の自覚まで秒読み段階。
そう初めは同情だったのかも知れない。愛を受けない子供が可哀相だとそんな事を思っていた。だけど優しく頭を撫ぜれば戸惑ったように自分を見上げはにかむ姿が、酷く印象に残ったのも事実。
監視を初めて1週間。うずまきナルトは相変わらず元気だ。火影さまから直々にうずまきナルトの監視を命じられたカカシだが、毎日同じ事ばかりが繰り返される単調な任務に、正直、退屈で退屈で仕方がなかった。
そりゃ、カップラーメンを食べる姿や、ベッドで丸くなって眠る姿を、かわいいな、と思う事もあったが、所詮は任務、あくまで監視とその対象者という範疇を超えてはいなかった。
四代目の遺産。少なからずとも自分と縁がある子供。だけど、それだけの存在だった。目に映る金色はカカシの古い記憶を擽るが、特別には程遠い、と思っていた。
今日も、木の葉商店街を駆ける子供。手に握られているスーパーの袋を視認すればお決まりの内容。また、カップラーメン? 身体に悪いなぁと思いながらも、カカシはナルトに気付かれない位置で監視対象者を観察する事に専念していた。
しかし、屋根の上で頬杖を付き猫背気味の姿勢でしゃがみ込んでいると、監視を始めて7日目にして僅かな異変が起きた。子供がガラの悪そうな若者に囲まれて路地裏に引っ張り込まれて行ったのだ。
「あらら」
そして始まる暴力。男たちは、ナルトの事を、サンドバックか何かのように思っているのだろうか。ひと気のない路地裏で、際限のない暴行が始まった。
「おら、泣けよ。おまえ、運良く忍になったからっていい気になるなよ」
「どんな奥の手使って忍になったんだよ」
容赦なく小さな身体に叩き込まれる仕打ちに胸が悪くなるが、監視をしている身で出て行く事は出来ない。
「ははっ。忍者になったからって大して強くなってねえじゃん!」
「狐は大人しく人間さまの靴底でも舐めてればいいんだよ。なっ?」
(あんなに蹴って内臓に傷がついたらどうするんだ…)
あの子も下忍だ。簡単な受身くらいは出来るだろうが、それにしてもやられっぱなしというのは頂けない。
何より、九尾来襲から12年、子供相手にバカな輩が耐えないものだなと呆れてしまう。カカシとて大切なもの、大切な人を失った。だが憎しみがあるかと問われれば答えは否。あるのはただ未熟だった自分への後悔の念だけで、それを器でしかないあの子に向けようとは思わない。
(…傷薬は家にないだろうなぁ)
ナルトが傷の手当をしている所はついぞ見たことがない。おそらく常人にはない回復力のせいで、怪我を治療するという観念が薄いのだろう。
カカシはため息を吐くとポーチからマキビシを出して、男たちに投げてやった。
「イテ。なんだぁ」
「空から変なもんが降ってくるぞ」
男たちが頭を押さえながら空を見上げた。雨のように降って来るマキビシ。
「イテテ…。くそ、なんなんだっ」
「鉄の棘だ。狐の祟りかっ?」
やがて、馬鹿な妄想をして男たちが逃げていく。
あとに残ったのはボロ雑巾のようになって地面に転がっているナルト。
気を失っているのかそれとも。
(……泣いてるのか?)
あの年の子供が、いくら下忍だとはいえ、こんなにも酷い暴力を受けたのだから、当たり前だ。
偶然を装って出て行こうかと、職務規定ギリギリの行為に及ぼうとした時、子供が起き上がった。汚れた泥をほろい、無残に散らばった食料品を拾い集めている。大半の食料は潰れてしまって、駄目になっていたが、インスタント物は無事だったようで、手馴れた様子で食料品を買い物袋に入れる姿にカカシの心臓がわけもなくつきりと痛んだ。
給水塔の上からつい身を乗り出してナルトの様子を伺っていたカカシだが、次の瞬間、己が隠れている方角に向かって上げられた瞳に驚く。
カカシの視線を感じたのか、はたまた偶然か、ナルトはきょろきょろと辺りを見回している。
(ふーっ、危ない危ない。下忍に見つかっちゃうなんて笑えないデショ)
給水塔の背後に張り付いてカカシはそっとため息を吐く。
やがてひと気がないと判断したナルトはテクテク元の一般道へと戻っていった。何事もなかったかのように去っていく背中。それほど、里人から受ける暴行はあの子供にとっては日常なのだろう。
だけどカカシはいつまでも金色の少年から目が離せなくて、何故か跡を追ってしまう。
いや、監視をしている自分があの子を見ている事は普通で、まったく何も問題ないことのはずなのだが。
去り際にもう一度、子供の瞳がきょろりと給水塔の上に向けられる。
(……うわ、綺麗)
そして血で滲んだ唇が何事かを模る。カカシは無意識でその唇を読んだ。〝オレってばぜってー負けねぇもんね〟?
オレの存在に気付いていたのか?いや、違う。あれは虚空に呟かれた独り言なのだろう。誰も聞いている者など居ないとわかった上での強がりな発言。
「あー……。なんかヤバいかも」
さすが先生の子供。オレのツボをピンポイントでついてくるわ。はたけカカシ、給水塔の上でひとり悶絶。今日、子供に落とされた大人が一人。
「くじけないんだね、おまえは」
カシカシとカカシが銀糸の髪を掻き回す。思い入れはあった。だけどそれまでだと思っていた。あの子は確かに先生の子供だが、それを理由に特別扱いなんてしないつもりだったのに。
だけどあの目は反則だろう。自分は昔から真っ直ぐな瞳に弱いのだ。自覚症状はある。何しろカカシの師こそ、その典型のような人物だったのだから。あの手の天然系人種相手だと逃れる術はないのが困ったところ。
―――火影を超える…、か。
自己紹介の時に言い放たれた言葉。確かにカカシの胸を打ったことは確か。もしかしたらあの子なら。
「ヤラレタ。ほんと、まさかここまでとはねぇ」
期待を裏切らない、いやそれ以上の面白い成長してくれちゃって。くくくと背中を丸めて笑うカカシは宝物を見つけた子供のようで。どこか嬉しそうに、そして何かを思い出すようにくしゃりと表情を緩めた。
その日から、カップラーメンを食べる姿や、ベッドで丸くなって眠る姿が、格別かわいく思えて、あまつさえコップを両手で掴んで牛乳を飲む姿に、「そんなに一気に飲んだら咽てしまわないか」なんて、ちっともする必要のない心配までしてしまうようになった。
もちろん、それ以来ナルトを暴行する輩は、はたけカカシの名を持って容赦のない制裁が下されるようになり、ナルトが以前のように怪我を負う回数は格段に減った。
カカシが隠れていた給水塔を見上げた、意思の強そうな瞳。射抜かれたのは、はたけカカシの心臓。そんな恋の始まりの瞬間。はたけカカシ、己の初恋の自覚まで秒読み段階。
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管理人の生態
自己紹介
名前 空気猫、または猫
職業 ノラ
趣味 散歩・ゴミ箱漁り
餌 カカナル
夢 集団行動
唄 椎名林檎
性質 人間未満
日記 猫日和
ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
職業 ノラ
趣味 散歩・ゴミ箱漁り
餌 カカナル
夢 集団行動
唄 椎名林檎
性質 人間未満
日記 猫日和
ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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