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空気猫

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「カカシせんせぇ、カカシせんせぇっ?」
ぱたぱたぱたぱた……。お狐様がオレの腕の下で、か弱い抵抗を繰り返している。
オレは構わず、お狐様の口の中一杯に舌を差し入れた。ぱたぱたぱたぱた……。
「ふきゅう……」
お狐様がオレの腕の下で、ぐるぐると目を回していた。どうやら、本当に、か弱かったらしい。喉奥を犯していた舌を出す前に、オレの腕の下でお狐様が力尽きていた。
「ナルト…?」
「あぁっ、一瞬意識を失っちゃったってば!」
神様のあんまりな言葉に、オレはがっくりと項垂れた。おまえ、そりゃないでしょー…。オレは一気に身体の力が抜けるのを感じる。目の前にあった白く細い首筋に顔を埋めると、お狐様からはふんわりと砂糖菓子のような匂いがした。
「おまえ、お風呂ちゃんと入ってるんだね。それとも神様って皆こんなに良い匂いなの?」
「へっ?ええとお清めの儀式の事だってばっ?」
「ふぅん。なるほど、清潔なんだな」
「あ、あのさっ。カカシ先生、どうしたのっ。オレってば、鈍いからさっきからカカシ先生が何をしたいのかよくわからなくって…っ。んうっ」
オレが、再び口付けるとお狐様の耳が伏せられる。
「あ、あのっ、カカシセンセェ…!」
舌っ足らずなその声が、欲に塗れた人間を益々煽る事をこの小さな神様は知らないのだろうか。
「ひぁ、くすぐったいってばっ」
オレは幼い肢体を抱き上げると膝の上に乗せた。ふわふわの三角耳を甘噛みするオレに、戸惑ったようなナルトの声が掛る。
「……どうしてだろカカシ先生から、すげえいい匂いがする…。オレってばこの匂いを嗅いでると、カカシ先生の言ってることに逆らえない」
うっとりとナルトの表情が酒に酔った時のように蕩ける。どうやらオレの左目に反応しているらしい。この国の当主たちが持つ血筋が、神様に媚薬のような効果を生んでいるのかもしれない。
「なんだかずっとカカシ先生に抱き付いていたい気分だってば」
はぅ…と子供特有の甘い吐息が首筋に掛る。見れば、桃色に染まった頬の子供が、切なそうな瞳でオレを見上げていた。ごくん、とオレの喉が鳴る。
この国の当主たちは生まれながらに神々を従える力を受け継いでいる。そのオレの左目に敏感に反応するナルトは紛れもなく神仏なのだろう。
つまり、神であるナルトは無意識に当主の血を受け継いでる左目を持つオレに服従してしまうのだ。これは益々もって好都合な事だ。
「オレってば変。なんだかふわふわするってば…」
ふと思う。この国の真ん中で、王座に座っている少年が、この小さな神様を見つけたらどうするだろう。漆黒の髪を持つ少年王は毎夜、金色の神の夢を見るのだという。都で密かに囁かれている噂によると、美姫と呼ばれる姫君たちとの縁談を断っているのも、夢の中の金色の神様に心を奪われているためであるらしい。今、巷では帝の名の元、神狩りが流行っている。オレは地方の神社が彼等の無遠慮な足で無残に踏み荒らされている場面を何度も見た。一説に寄ると、金色の神を都に連れ帰る事が神狩りに課せられた勅命らしい。神狩りに抜擢された人間の何人がまともな〝眼〟を持っているか、オレは知らないが、ナルトの姿を見るまで、とうとうあいつも頭がおかしくなったのかと思っていた。
今、オレの前には金髪の色彩を持つお狐様が居る。こんなにも愛らしく、従順な生き物の存在を知ったらあいつはどうするだろう。
仏頂面を益々酷くさせるだろうか。いや、それはないだろう。少年王が、ナルトという神のことを知ったら、放っておかないに違いない。帝はこの小さな神様を所望して召抱えようとするだろう。傍に置いて、一時も離さないで、政を行うかもしれない。ナルトは間違いなく、帝が毎夜夢見るという…金色(こんじき)
の神だ。
「ははは…。まさか、オレがおまえを見付けてしまうなんてね…」
ナルトは、自分は誰にも必要とされていないと思い込んでいるようだが、一度人里…それも人間の多い都に出れば、自分がどれほど今、所望されているか、嫌というほど知ることが出来ただろう。それも、この国の当主から直々に。
だが。それは非常に困る。何故なら、カカシもまたこの小さな神を所望しているのだから。
「これも何かの運命かもな。いや、天啓か?」
「カカシ先生?」
「ナルト。安心しなさい。おまえはオレが大事に護ってあげるから」
「え」
「本当はこのまま連れ去りたいくらい可愛いんだけど、おまえはこの神社の神様だからね、引き離すのは可哀相でしょ。オレは優しいから、そんなマネはしなーいよ?」
「へ、へ、へっ?」
結論から言えば、オレは都で召抱えられるはずの神様を秘匿横領した男になるのだろう。友人には悪いが、オレの人生はどうも朝廷に謀反を働く運命ばかり辿ってしまうらしい。
「可愛い神様には素敵な神主様が必要なんでしょ。オレが神主になってあげるって言ってるの、わかる?」
「……カカシ先生がオレの神主様になってくれるの?」
「その通り」
ぽかんとしたナルトの顔は、あどけなくて、本当に千年生きているのかと疑ってしまうくらい無防備だった。
「えええーーー、本当だってばっ?だ、だってさっきはすぐに出て行っちゃうって…」
「しぃー…。ね、気が変わったの。おまえ、オレのこと、欲しいでしょ?憧れの神主様だよ。おまえだけの男。わかるでしょ、ねえ大事にしてくれるんでしょ?」
「お、おう。オ、オレってば、神主様を大事にする神様…!」
「そう、いい子だね。ナルトは良い神様だもんねぇ?オレのこと、大事にしてくれるもんねぇ?」
「大事にするっ、大事にするっ。オレってばカカシ先生のためならなんでもするってば!」
飛んで火に入る虫ならぬ神様に、オレはにんまりと口の端を吊り上げた。
「本当、可愛いね。おまえ…」
人間の言葉で言えば、世間知らず。神様の世界で言えば俗世に不慣れな、なんとも徳の高い、清らかな神様である。
「オレが身体を使ってたくさん慰めてあげるね」
「へっ?」
「神様のためなら、夜伽のお相手も惜しみませんよ」
訝しげな視線を注がれ、オレは笑いを抑える事が出来なかった。
「おまえ。オレより何百倍も長く生きているだろうに、色事を知らないのか?」
「イロゴト…?」
「そう。やんごとなき神様を慰めるのは、神主の役目でしょ…?」
オレ、おまえの男デショ。ボソボソと耳元で、囁くとナルトは見てるこちらが可哀相になるくらい顔を赤くさせた。キョロキョロと所在無く瞳を彷徨わせる神様の首筋にオレは口付けを落とした。
「え、えええとっ、これってばなんの行事なんだってばっ?」
オレは暴れるナルトの腕を床に固定する。甘い唇を貪れば、初心な神様は簡単に大人しくなった。
「く、――うんっ」
「ん。可愛いねぇ」
まさか、オレの自由気ままな旅がこのような終焉を終えると誰が予想したであろうか。オレの腕の下には、男との初めての体験に震える神様。
「ほら、神様。ちゃんとお口あけて?」
そのまま、オレは神様の着物に手を滑り込ませた。怯えた、だけどどこか嬉しそうな顔で神様がオレを見ていた。こんなに無邪気な性格でよく千年も無事でいたものだ。
「よろしくね、オレの神様」
そのままオレは神様をぺろりと食べた。




 
 
 







最初は神様強姦から始まるバチアタリな話を考えていました。
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空気猫取扱説明書概要
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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