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空気猫

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15歳ナルトくん現代パラレルです。嘘吐き男の次は誑し男でお願いします。ではKnockKnock  からどうぞ~






 

はイチゴミルク味の誑し男


高校生になって1人暮らしを始めたのは、これ以上養いの親に迷惑を掛けたくなかったからだ。とある事情により、両親と離れ離れになったナルトは、父の知り合いだという老人の元で育てられた。彼が老衰で死んだのはナルトが中学に上がって間もなくの頃のことで、とうとうひとりぼっちになってしまったナルトを次に引き取ってくれたのは綱手姫という(あざな)を持つ女傑だった。2年ほど彼女の元に身を寄せ、独り立ちする決心をした。「面倒を見てもらうのは中学まででいい。高校に入ったら自分で学費を出して通う」そう宣言すると、
「そうかい、あんたの好きにしな」
彼女はあっけらかんと快諾してくれた。幸い、ナルトの通う私立高校は貧乏人には優しい学校で、奨学金制度などを上手に使えば、未成年のナルトでも学費を払うことは不可能ではなかった。ナルトは学校に借金をするという形で、残りは社会人になってから少しずつ返していくことに決めた。
「ナルトくん、本当に出て行っちゃうんですか。私たちに遠慮することないんですよ」
「いいんだって。いつまでもシズネ姉ちゃんに世話になってちゃ悪りぃじゃん?」
「こら、ナルト。どうして、シズネだけなんだい!」
「あひぃ、綱手様、落ち着いて!」
「だって、メシ作ってくれるのって、いっつもシズネ姉ちゃんじゃん。ばぁちゃんの世話はともかくオレにまで構ってたらシズネ姉ちゃんだってカレシとか作りづれぇだろ」
「そ、そ、そんな、ナルトくん。カレシなんてそんなあたしにはまだ」
「いーの。これからイイ人が現れるかもしんねぇじゃん?ばぁちゃんと違ってまだ若いんだからさ?」
「私だってまだ十分若いよ。女は50代からなんだっていつも言ってるだろ?まったくカワイくないガキだね!」
「おーい、ナルト。あんま綱手社長怒らすなよ?」
「わーってるって。ゲン兄もまたなー」
「ま、おまえならなんとかやってけんじゃねぇか。ちょくちょく顔出せよ?」
「おう、サンキュ。ゲン兄!」
綱手は下町の整備工場の女社長で、元来面倒見のいい性格なのだろう、身寄りのない人間を見ると、「食わせてやるからうちで働きな」と自分の会社に雇っていた。事務員のシズネ、工員のゲンマやライドウもその口で、工場の横には工員たちの寮なんていうのもあった。
だから、このままここに居ても楽といえば楽であったのだが、他の工員の人たちがちゃんと働いているというのに、自分だけが何もしないでのうのうとしていることに抵抗がなかったといえば嘘になる。学生は学業が本分であるというが、自分の場合それほどデキがいいわけでもないのだし、高校に進学することを決めたのだって、亡き祖父(ナルトと彼の間に血の繋がりはないがそう呼んでもいいくらいの関係だったと思う)の今わの際の言葉を汲んでのことだった。
「いいかい、ナルト。無理するんじゃないよ、辛くなったらいつでも帰ってきていいんだからね。ここはアンタの家でもあるんだから」
最後に、綱手は自慢の胸に押し潰された。彼女には、実の両親と同じくらいに良くして貰ったと思う。仕事中だった工員の人たちが囃し立てる中、ナルトは顔を真っ赤にして頷いたのだった。



「いらっしゃいませってばーっ」
コンビニのバイトを始めて1ヶ月。接客にも、業務にも慣れてきた。初めは居酒屋系のワリの良いバイトを探していたナルトだが、友人のキバの紹介で家の近くにあるコンビニで働き始めた。勤務時間が夕方から深夜に差し掛かるまでと学生に働きやすい時間帯であったのと、ロスした商品を持って帰って良いことがおいしかったからだ。
店長は気前の良い人でナルトが一人暮らしと知るや、あれもこれも持って帰れと弁当などを持たせてくれるので、朝食や学校の昼食もすべてバイト先の商品で賄えた。食べ盛りの少年のことだから、食費が浮くことは誠に助かるのだ。既製品ばかりで栄養が偏るのではとは文句は言ってられない。
「お会計、1470円ですってば。ってわぁぁぁああ」
木の葉マート。夜半過ぎ。ぱぁん!とレンジの中で爆発が起こる。弁当についているソースの袋をそのまま温めてしまったらしく、ナルトが恐る恐る振り返ると、レンジの中で何やら大惨事が巻き起こっていた。
やべぇ、またやっちまったってばよ…。と、ナルトは顔を青くする。
「ああああ~。すいません。今、取り替えるんで!」
そう。接客は持ち前の明るさで完璧なナルトであったのだが、元来そそっかしい性格のためか時々こうした失敗を繰り返していた。
これには店長も初め、同僚たちも苦笑するばかりで、だけど慌てた本人の仕草が本当にすまなそうで、悪気がないだけに「ま、うずまきだしな」と叱られることは少なかったが、ナルト本人は失敗のたびに激しく落ち込んでいたりする。
「ご、ごめんなさいってばよ…」
叱られた犬そのものであやまれば、買い物客もそそっかしいコンビニ店員の様子がおかしかったのか、「まぁ、別にいいよ」なんてのんびり答えてくれて、怒っている素振りもない。しかし、ナルトとしては申し訳ない気持ちいっぱいなわけで、背中に棒線をいっぱい付けてしょぼくれる。
「で、でもそんなダメだってば…」
「兄ちゃん、若いのにほとんど毎日ここで働いてるだろ。次から気を付けてくれればいいって」
「そうそう、いつも元気良く挨拶してくれてオレたちまで元気になるよ」
「へっ? えっ?」
「まぁ誰にでも失敗はあるさ」
「オレたちも毎日、兄ちゃんに元気貰ってるしちょっとくらいの失敗はチャラだな」
「あ…、あのっ、ありがとうございますっ」
「まぁ、兄ちゃんはちょーっと失敗が多いけどな」
「はは、違いねぇ」
「……す、すいませんってば」
「あはは。また落ち込んだぞ、この兄ちゃん。おもしれぇなぁ」
道路整備のおじさんたちは毎日仕事が上がるとコンビニによってくれる常連さんで、言葉遣いは粗野なものの優しかった。むしろ嫌味なことを言ってくるのはリーマン系のお堅い感じの人とかで…。と、そんなことを考えていると、陳列台の向こうでくくく…と笑う銀髪の後ろ姿。
(また、失敗したとこみられちゃったってば…)
そもそも、ナルトが失敗したのは、いつもより少し早めに来店した彼のせいなのだ。普通、コンビニに来る客が、コンビニ店員(しかも男)に向かってウィンクを送ってくるだろうか。まったく彼の思考回路がわからない。
ため息を吐いて、項垂れていると、カウンターに商品が置かれた。レジに並んだ銀髪の彼の今日の買い物の品はビタミン剤にインスタントコーヒー、そしてイチゴミルク。
「あ、あれ。これも?」
「なにか?」
「あ、いえ。なんか、意外だったから…」
「そうかな。あ、煙草も貰える?」
「あ、はいっ」
木の葉マークの煙草をその人に渡しながら、レジ袋にストローと共にイチゴミルクの200ミリパックを入れる。
「オレのこと覚えてくれたんだ。嬉しいよ」
「へっ?」
「煙草の銘柄。まだ何も言ってないよね、オレ?」
確かめるようなその言葉にナルトは真っ赤になってしまった。しまった、と思ったがもう遅い。なんだかこれでは自分がこの人を意識しているみたいではないか。そう、彼が入店した瞬間から、彼がいつも買っていくこの煙草を用意してしまうほどに。
「オレってばべつにっ」
「慌てた姿も可愛いけど、恥ずかしがってる姿も可愛いね」
「はい?」
「きみ目当てで、毎日通ってるリピーターがいるのもわかるなぁ」
なんと答えていいかわからずナルトが目を白黒とさせて絶句していると、また銀髪の客は背を丸めてくくくと笑っている。なんとなく気不味くなって、視線を逸らしつつ、もごもごと言葉を探したあげく結局、彼の手の中の小箱に視線が落ち着いた。
「そういえばこの煙草の銘柄好きなんっすか?」
幸い、店内にはこの銀髪のお客しかいなかったので、なんとなく今まで気になっていたことを尋ねてみる。深夜のコンビニは暇なものだ。もっとも、普段はこんな質問、他のお客さんにはしないのだが、これくらいはいいだろう。
「ああ、これ?」
「オレが言うのもなんなんすけど、あんまり吸ったら身体に悪いですってばよ?」
「いや、別にこれはオレが吸ってるわけじゃないんだよねぇ。友人にヘビースモーカーの奴がいてね」
「あっ。そうなんすか、すいませんってば。なんか勘違いしちゃって」
「いいよ、毎回買ってるもんね。熊によーく言っておくよ」
「ク、クマ……?」
「うん、熊。ものっそい髭面の壁のようにでっかい熊だよ~」
「なんすか、それ」
吹き出したコンビニ店員を、銀髪の客は、やんわりと色違いの目付きで見詰める。
「オレ、はたけカカシっていうんだよね。きみのファンだからこれからも構ってやってよ?」
「ファンって。……そんな、大袈裟ですってばよ」
「えー、きみが入ってる時間帯、異常に売り上げが伸びるって聞いたんだけどな」
「どこの情報ですか、それはっ」
詰め寄るナルトに、ないしょ~と幼稚園児のように口に人差し指を当てる仕草は、何故か堂に入っていて、やはり掴みどころがない。
パリッとした白シャツ、ブラックカラーのパンツ。それにトレンチコート。息苦しくない程度開襟された胸元にはチェーンネックレスが嫌味なく、…そういうとこが嫌味なのだが―――さらりと身に付けられていて、サラリーマンのようでいて、そうではないように、いい感じに着崩されている。
色男だよなぁ、と同性ながらもドキマギしつつ、ナルトはビニール袋に残りの商品を詰める。
「はい、これはきみの分」
「へ?」
お会計を終えた彼はビニール袋の中からイチゴミルクの200ミリパックを取り出してレジの前に置く。彼のような成人男性が買うには可愛らしすぎるパッケージに首を傾げていると、銀髪のお客が、〝きみにだよ〟とナルトに笑む。
「え、なんで…」
「好きそうだと思って」
「へ?」
「甘いもの、嫌い?」
「や、好きっすけど……」
「そう。良かった。それじゃあ仕事頑張ってね?」
これオレからの差し入れと。綺麗な微笑みを残して彼は去って行って、そのあと入れ違いに入店した客に挨拶をすることも忘れてナルトはきょとんと立ち尽くした。





 
 









とくに何が起こるわけではない
ゆるめの木の葉マートライフをお楽しみ頂けると幸いです。
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ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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