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空気猫

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 日常編
―暗部の時間―







はたけカカシ、26歳。特別暗殺部隊、通称暗部所属の上忍は、忍者としての華麗な経歴も然ることながら、木の葉の里で最も月の下での任務が似合う男として、後輩等の憧れの的でもあった。それは忍としてのスキルだけではなく、つまりは、覆面に殆ど覆われたマスクの下の顔が、見目素晴らしいという話だ。職業忍者としては当たり前の事ではあるが、謎に包まれたプライベートが、一層彼の人気を高めていた。もちろん、当人の知らない所で、だ。
岡惚れをする後輩等は数知れず。異性のみならず、同性にも人気だというのだから、はたけカカシとはまったく罪な男である。
これは、そんな彼と、月の明るい夜にツ―マンセルを組んでいた後輩暗部の話である。任務を終え、帰路に着く道中、後に暗部内で大論争を巻き起こした一大事件が起こった。
「――ねぇ」
それまで任務中、始終寡黙を貫き通していた上忍暗部が突然口を開いた。後輩暗部は普段無口な先輩暗部に話し掛けられたことに驚きつつ、〝はい〟とだけ返事をした。二つの影がひゅんひゅんと木々の間を疾走する。
「おまえに一つ質問したいことがあるんだけど」
「…は、はい!!」
憧れの先輩から話し掛けられたことは、後輩暗部を有頂天にさせた。あとで同僚等に、〝オレはあのカカシ先輩に話し掛けられた〟のだと自慢せねばならないだろう。しかし、次にカカシに問い掛けられた質問に、彼の思考回路は完全に停止した。暗部にあるまじき失点だ。
「なぁ、おまえ。最近、ペットを飼い始めたんだって?」
「………」
「その、他の奴等が話してるのを聞いたんだが、どんなペットを飼ってるんだ…?」
「……。ええと、彼女が最近ペットを欲しがって、オオサンショウウオを…」
余りに想像だにしない話題を振られたため、後輩暗部はモゴモゴと口を動かした。ペットをと言われキワモノを飼い始める辺り、この後輩暗部も相当変わり者であったかもしれないが、相手はアスマ曰くツッコミ機能が崩壊していると噂のあのはたけカカシである。
「そう…。可愛い?」
「は、はぁ。飼い始めれば、情が沸くといいますか…、愛嬌があるといいますか…」
後輩暗部はそこまで話して、自分は憧れの先輩暗部に向かって何の話をしているのだろう、と慌ててその会話を打ち切ろうとした。しかし、先にこのような話の水を向けたのは、カカシの方であったし、何より横を走るカカシは黙って己の話に耳を傾けている様子なのだ。
「ペットって…、――可愛いよね」
「え。えぇ…」
そのうえ思わず、同意が得られて、目を見張ってしまった。
〝あのカカシ先輩がオレと世間話を……?〟
後輩暗部の背後で稲光のような衝撃が走ったが、何とか暗部最後のプライドで平静を装う。
しかし――。次に放たれたはたけカカシの台詞にまたもや後輩暗部は思考回路を停止させなくてはいけなかった。
「……ねぇ、うちの子の写真、見る?」
「はい?」
「見たいよね、見るよね、もちろん見るよね、ていうか見なさい」
「はぁ……?」
「可愛いでしょー、うちのナルト」
はたけカカシの台詞に、後輩暗部は、任務中だというのに、感情を押し殺すことを忘れた。憧れの先輩暗部から、妙にやに下がった表情で、いそいそと差し出された写真は「きょるん」とか「きゃぴぴ」とした装飾文字が似合いそうな狐耳の子供が映った写真だった。
「あ、あの、これは…」
どう見たって、写真の中に映っているのは7、8歳の子供。それも、おかしな三角耳と尻尾のオプション付き。
加えて、何故それがはたけカカシのポケットの中から出てくるのか。更には、任務を終え里に帰る途中とは言え、特S級の任務を遂行中に、後輩相手に自慢して見せびらかしたくて堪らないといった風情満々に見せるのだろうか。
「可愛いでしょ、この子」
「は、はぁ…?」
「絶対お嫁さんには出せないよねー」
「……この子は女の子なんですか?」
「男に決まってるじゃない。物の例えだよ、例え。ほら、見てよ。この凛々しい眉毛。立派な男の子でしょ~~?」
凛々しい、と言われても写真の中の子供の眉は、男らしいというよりは、中性的ですらある。
それにどう見ても三枚目の写真は、オートクチュールドレスにモジモジと身を包んだ骨董人形のような姿なのである。
「………」
後輩暗部はゆっくりと瞼を閉じた。現実を直視するのが辛過ぎたのだ。
「ず、随分と可愛らしいお子さんですね?」
やっと絞り出した声は、訳が分からないなりにも後輩らしく、先輩を立てたものだった。
「おまえ、違いのわかる奴だねー。そうでしょー、んもう本物もすんごい可愛いんだよ。見てよ、このプニプ二のほっぺ。血色の良い毛並み!」
後輩の答えにカカシは上機嫌で、おそらく彼の中では〝ペット自慢〟を始めた。またまた後輩暗部は混乱するが、改めて写真の中の子供に目を落とす。
どうやら。カカシはこの子供を自慢する機会を虎視眈々と狙っていたらしい。確かに、うるうるとした大きな碧い瞳や、ましゅまろのようなほっぺは可愛らしいとは思う。子供の血色の良い頬や、ブラッシングの行き届いた毛並みは、何者かによって写真の中の子供が溺愛されていることがわかった。
「ぶさいくな顔がまた可愛いんだよねー」
次に出された写真は、お世辞にも愛らしいとは言い難い表情で写った狐っ子。狐目を吊り上げて、生意気そうに唇を尖らしている。
「アスマがさー、撮ってくれたんだよね。でも、こいつオレ以外の人間に懐かないからイヤイヤ~~って、―――可愛いでしょ?」
「は、はぁ……?」
アスマ上忍に子供の写真を撮る趣味が…?嫌がる子供のことを無理矢理写真撮影だなんて。ロリコン、という社会的地位を脅かすのに破壊力のある言葉が思い浮かんで、ゾゾゾゾと後輩暗部の背筋が寒くなる。ああ、そうだ。きっとああいう強面の人物に限って、小さくて愛らしいものを好む傾向にあるのかもしれない。どんなに完璧な人にも一つや二つ欠点があるという。真面目な後輩暗部は己の気が遠くなるのを感じた。
横で、憧れの先輩、はたけカカシが幼児の写真を見ながらクフクフと怪しい笑みを零しているのに気付かず、後輩暗部は、髭の上忍に対する見る目を変えていた。
〝カカシに頼まれてしぶしぶ撮ったんだよ!!〟とどこかの髭クマの叫びが聞こえてきそうであるが、後輩暗部に届くはずもない。こうして、猿飛アスマのスティタスは、はたけカカシによって崩壊させられていく。ペット共々、人を陥れるのが得意な奴等である。



――最近、はたけカカシは、大層可愛らしいペットを飼っているらしい。
曰く、「きょるん」や「きゃぴぴ」が似合うような見目可愛らしい愛玩動物。
三角耳付き、尻尾付きの半人半獣の仔狐。
〝愛らしい〟だけが取り柄で、まったくなんの役にも立たないのだが、驚くべき事に、心が凍りだと呼ばれた男の生活に潤いを齎しているらしい。一人と一匹の生活は、こうして優しい時間を積み重ねていく。



真夜中。くっしゅんと小さな仔狐が、可愛らしいくしゃみをした。そして、夜霧と共に、大好きな主人が帰宅した事に、子供の大きな三角耳が機敏に反応する。
「ただいまー…って、あれ、ナルト。まだ起きてたの?」
「なうと、ねんねしないでカァシのこと待ってた。抱っこ」
暗部服から、ラフな格好に着替えたカカシは苦笑しながら、己の足に絡み付く温かな生き物の頭を撫でた。金髪のふこふこ頭を撫でると、幸せの感触がした。
「おまえね、ちゃんと寝ないと大きくなれないよー?」
頭の上で、くつくつ笑うカカシの低い声がくすぐったくてナルトは薄っすらと頬を染めた。
「カァシ、なうとのこと抱っこなの」
両手を広げて、ナルトがカカシを見上げる。
「カァシ、おかえりなしゃい。なうと、カァシがお仕事している間、いい子してたの。明日もお仕事?」
「明日は休みだよ。おまえといーっぱい遊んであげる。久しぶりにお散歩に行こうか?」
返事の代わりにパタパタと尻尾が振られる。ぺろりと頬を舐められたのはそれと同時。
「カァシ。だいしゅき」
「はい、はい…。わかったから、もうねんねしなさい?」
「あーい」
優しく獣耳に囁き掛けてやれば、くぁっと小さな欠伸が二本の牙の間から漏れた。
「なうとは、カァシとずっとずっと一緒なのよ…」
主人が帰って来たことに安心したナルトは、うっとりとした表情で眠りの世界へと旅立った。
「おやすみ、ナルト…」
ベッドにナルトを運び寝かしつけたカカシは、三本髭の痣を慈しむようにそっと撫でた。部屋に漂う任務後特有の僅かな血臭さえも、この子がいれば不思議と気にならない。自分を一心に思ってくれる小さな存在が、愛しかった。

















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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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