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空気猫

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ナルトの学校生活と、侵食するはたけさん。

比率は3:1 








「おまえ、すんげぇ可愛いもん飲んでるな」
「んー。似合わねぇ?」
「妙に似合ってるのがきめぇ…」
「………」
イチゴミルクの200ミリパックにストローを差して、屋上のフェンスに寄り掛かっていたナルトは、ストローの先っぽを齧りながら空は青いなぁなんてしばらく感慨に耽った後、とりあえず友人のキバにヘッドロックを掛けておくことにした。
「ギブギブギブギブッ。んだよ、自分から聞いたんだろーがよぉっ!」
「おまえこの間、教室の横の黒板にオレが中学の学祭で女装した写真貼っただろ。怨んだ」
「ほんのデキゴコロですーっ、いやーあんまり可愛らしいお写真だったからオレだけが楽しんでいるのも、もったいねぇかなぁと一般公開。スルーを激しく希望」
「右から左に流して~ってするかぁああ。ごめんですんだらケイサツはいらないってばよ~っ。サクラちゃんに見られちゃったじゃん。変な男だって思われたらどうしてくれるんだってばよ、オレってば立ち直れねぇぇっ」
「はー…。バカばっか。めんどくせぇ」
「ナルト、キバ。あんまり、はしゃぐと先生たちに見つかるよー」
ナルト、シカマル、キバ、チョウジ。立ち入り禁止の立て札の掛かった屋上で、猫の日向ぼっこよろしく男子高校生たちが全員ダレているという、なんだかテンション低めな昼休み。若いんだから覇気あってもいいんじゃないかという、突っ込みは当の本人たちにしてみれば、余計なお世話であって、最近の高校生たちに青春とか熱いものを求めないで欲しいと思ってしまう。大不況の時代に生まれた彼等の生き方としては、盛り上がる時は盛り上がってあとは省エネモードなのである。
そんなわけで、ナルトに肩を激しくシャッフルされたキバもアスファルトと左頬を仲良しにして、突っ伏す。
「あー…、つまんねぇ。なんかおもしれぇことねーかなぁ」
ちなみに、君たちもうちょっと女っ気があってもいいんじゃないかとかいう指摘は本人たちに非常に痛い質問なのでしないで貰えると有り難いという、ガラスのハート仕様である。
「面白れぇっつーか、変なことはあったってば」
「おー、なになに。女、女、女?」
「キバは頭の中そればっかだってばよ…。おまえに紹介してもらったコンビニなんだけど」
「あ?」
「……おまえってお客さんとかと、どの程度親しくしてたってば?」
「あぁ?」
「コンビニって常連客いるだろ。毎日通ってくれたらそりゃ顔見知りになるわけだし、ちょっとした世間話とかもするようになるだろ?」
「ははぁ。わかったぞ。まぁ、おまえ年上ウケ良さそうだもんなー。ОL系のお姉さんとかおばちゃんとかにチヤホヤされてんだろ。かわいーなんて言われて」
「や、それがその…。……困ってるのはオトコの方なんだけど」
「はぁ?」
「ややややっぱりおかしいってば……?」
ぽかんと口を開けたキバに、自分から喋りだしておいて、赤くなった耳朶に気付かれないだろうかと、微妙に視線と顔を逸らしつつ、ナルトは、ちょっとだけ速くなった動悸を紛らわすようにストローの先っぽを噛む。
「はぁ、めんどくせぇ。とりあえず聞いてやるから話してみろって」
「ナルトが悩むなんて珍しいねー」
シカマルとチョウジにも促されて「オ、オレだって悩む時くらいあるってば」とぼそぼそと口を尖らすナルトに訝しそうな三人の視線が集まる。
「なんつーか非常に微妙というか、珍妙というか。とにかく変な客なんだってば」
甘い液体を垂下して、学校の購買でついつい目が留まって買ってしまったピンクとイチゴ柄の暢気なパッケージに視線を落とす。






「いらっしゃいませーってば、…あ」
「今日も元気がいいねえ」
よ! と登場したのは、銀髪の怪しいお客、はたけカカシだった。
「こんにちわですってばよ」
「ははは、かしこまらなくてもいいのに」
「そ、そんなわけにはいかないってばよ!」
木の葉マート夜10時きっかり。その日の彼の買い物内容は、やっぱりインスタントコーヒーの袋と、ビタミン剤、それにミネラルウォーターの500ミリペットボトル。
「いつもの煙草、貰える?」
「あ、はい」
「禁煙は失敗らしいよォ。まったく熊だけあって堪え性がないよねぇ…。ま、オレもきみのとこに来るついでだから喜んでパシられるけど?」
かぁぁああ、と赤くなったナルトの顔を見て、銀髪の男は満足そうに微笑んで、「ああ、これもお願いね」と言った。彼が指差したのは、レジの横に設置されている日本一有名な猫のファンシークジ。
「これ、引くんすか」
「なあに。男が引いちゃいけないわけ?かわいーと思うけどな。B賞のこのマグカップとか結構使えそうじゃない?」
「もしかしてコーヒー飲むのに……?」
「そう。コーヒー飲むのに」
「ぷ…。あはははっ」
「あ、酷いなぁ。笑うことないデショ?」
「だって、なんかイメージ違い過ぎてて。すいませんってば、うくく…」
「ふうん。きみの中のオレのイメージって?」
「部屋になんにも置いてなさそうつーか、カップも無地とかでオフホワイトに囲まれてるっつーか」
「ははは。そーんなことないよ。オレの部屋は結構、所帯臭い部屋だと思うけどなぁ?」
1225円になりますってば、と言ってナルトが真四角のボックスを差し出すと、「手、綺麗なんだね」と言葉が落とされる。直接、相手の手が自分と手に触れたわけではないのに、視線だけを送られて、それが逆に、気恥ずかしい。手、なんて気にしたこともなかった。別にヤローの手なんかみたって面白くないと思うのだが、そんなマジマジみつめないで欲しい。
「手が綺麗な人は心も綺麗なんだって。知ってた?」
「え、その…えっと」
顔を赤くして俯いたコンビニ店員を見て、確信犯の笑みを浮かべて銀髪の客は微笑んだ。





「で、そのあとどうなったんだよ」
「結局、カップじゃなくてペンが当たって、んでこれがそれ」
「…貰ったのかよ」
「だって〝これじゃあオレは使わないし、きみにあげる〟って言うんだもん。使わなきゃ勿体ねぇってばよ。それで〝当たるまでまた引きに来るから~〟だって」
ファンシーなペンを金パの男子高生がくるくる指で回すという、似合わないはずなのに、妙にしっくり来る光景がしばらく繰り広げられ、
「それってどう考えてもおまえの気を引くための小技だろ」と1番初めに口を開いたのはシカマルだった。
「なんでだよ」
「その人、すげー自分のことわかってるよ。自分が他人にどう見られてんのかも。おまえが〝どうして?〟って聞きたくなるだろ。普通、いい歳した男がんなクジ引いたら、興味引くじゃん。んでそれがきっかけで会話に発展するだろ。計算ずくだよその人」
きょとんとナルトとキバがシンメトリーで首を傾げる。
「んだよ、それどーいうことだよー」
「よくわかんないってばよシカマルー」
声を揃えてピーピー喚くヒヨコ二人に、こいつらの脳みそは大変おめでたくていいよなと、シカマルは若干頬を引き攣らせた。
「シカマル、もっとわかりやすく言ってあげないと二人にはわからないよ」
「はー。めんどくせぇ」
シカマルは一番腐れ縁の友人チョウジからもっともな指摘を受けて、純粋培養らしいヒヨコたちに、アブノーマルな推測を教えるべきか、考えたあげく空を見上げて「ま、いっか」という結論に達した。
(確証はまだねぇしな。ただナルトのことを気に入ってるっつー線も消せねぇし。つかそれが常識的に考えて普通っぽいし。オレの考え過ぎってこともあるわけだ)
無駄に悩むシカマルと、のほほんとスナック菓子を口に放り込むチョウジ。すでに話題の内容が昨日のテレビ番組に移ってるナルトとキバ。昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ってこの話はなんとなく宙ぶらりんのままお開きとなったのであった。
「シカマルー、おまえはこのあとどーするぅ?」
「オレは昼寝。午後はタルいからサボるわ」
「オレたちは体育だから出るってばよ。キバァ、どっちがバスケのシュート多く決めたかで勝負な!」
「お、いいなそれ。ドベだったほうが帰りのジュースおごりで決まり!チョウジー、おまえはどーすんの」
「僕は女子の調理実習に行こうかな」
「……おまえ、それはいいのか。教育委員会的にはいいのか。男子の選択科目は体育必修じゃん、うち。女子だけの選択科目に参加は問題ナシなのか?」
「さすがチョウジだってば…。でかい男だってば…。いや見掛けじゃなく、懐とか心が」
「先生もこの一ヶ月で諦めてるからね。適材適所って奴だよ。今日はクッキー作りらしいね、楽しみだよ」
「羨ましい奴…」
「チョウジー、サクラちゃんのクッキー貰ってきてくれってば!」
「ずりぃ、ナルト。そじゃあオレはヒナタので!」
「春野はうちはサスケに渡すって意気込んでたなぁ…。ヒナタは…。まぁ、貰えたら貰ってくるよ」
「チョウジ、さんきゅ!」
「愛してるー」
男二人に熱い抱擁を受ける幼馴染のちょっとしょっぱい光景をシカマルは盛大なため息と共に見送る。寝転がった彼はしばらくたゆたう雲を見つつ、金髪の少年のちょっと危なっかしいというか、ほっとけない危ういところを思い出して、僅かばかりに普段はしなれない心配なんてものをしてみた。
履き潰した上履きをぺたぺたさせて歩くナルトの後姿に、シカマルがおーいと声を掛ける。
「ナルトー、一応忠告。その人にもし遊びに行こうとか誘われてもあんまひょいひょいついて行かないほうがいいぜ」
「んあ。なんでだってば?」
「お菓子あげるよーって言われてもついて行くなってこと。そのうちかどかわされんぞ」
「な、なんだってばよそれ。オレってばもう子供じゃねーし。失礼だってばよ。それにオレってば食べ物とかに釣られるほど安い男じゃねーのっ」
「それを言うなら安い女だよ…。めんどくせぇ」
まったく、人が心配してやりゃぁこれだ。無駄に頭が周るということは損なものである。奈良シカマル、この時に心配してやったことがきっかけで、自分が「男同士の恋愛」について友人から真剣マジな相談を受ける事態に発展するとは露ほども思わず、欠伸を噛み殺して食後の優雅な昼寝のひとときを満喫したのであった。




 








 




*日本一有名な猫=キ○ィちゃん=゜w゜=
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=゜w゜=大好きですよ~

はじめまして~このシリーズ好きです。おもしろい、ナルかわいい!これからの展開がどきどきしちゃいます。
こらからも楽しみにしてますね!
あっきー 2008/05/02(Fri)08:48:04 編集
(=ФwФ=)
初めまして、あっきーさま!大好き、お、おもしろい……!?
すいません、しあわせを噛締めてもいいですか?
まだ動き初めで人物掛け算的な感じが出せなくてドキドキしていたのですが
楽しみにしておられるという飴玉をもらったのでバカみたいに働きますよここの猫は!えらく燃費がいいですからしばらくニヤニヤニマニマ元気だと思います!うん、怪しい!一人暮らしコンビニバイトナルというゆるい雰囲気をそこはかとなく感じて頂ければ幸いです。素敵な書き込みありがとうございました。
空気猫  2008/05/02(Fri)23:18:03
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ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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