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空気猫

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やっとお互い名前呼び。な木の葉マート第3段です。
KnockKnock
からいらっしゃいませ。








お客さんに笑顔でお釣を手渡しして、「ちょっとお待ち下さいってば?」と温めたオムライスを出そうと振り返ったら今日もレンジの中で大惨事が起こっていた。
「ああああああ~、すいませんってばぁ」
加熱でぺこんとヘコんだプラスチックの容器。シュウウウと謎の異音。オムライス全体から煙が出そうな怪しげな雰囲気。オムライスは間違いなく「今年の夏はちょっと暑すぎましたね、ナルトさん」と言っていた(?)。
触れば焼けど間違いなしの容器からぎぎぎと目を離して、ナルトはバックで在庫整理をしている人物に向かって大声を出す。
「ヤ、ヤマト隊長~、ヘル―プ!!このお客さまのオムライス、お、お取り替えでお願いしますってば~~」




「ナルト。きみねぇ、これで何度目だい?」
「申し訳ないってば……」
ガックリ肩を落としたナルトの前で、ため息を吐いて腕を組む真面目そうなコンビニ店員。お客さんの前ではニコニコして笑顔で替えのオムライスを差し出した彼であるが、店内にお客さんがハケたところでお説教タイムが始まった。
「なんてーかお客さんのオムライスに愛情を込め過ぎたらつい温めすぎちゃったっていうか、オレの熱意が空回りしちゃったっていうか…?」
「それで僕が誤魔化されるとでも?」
「ささされませんよね…!?」
ヤ、ヤマト隊長、レジに備え付けの懐中電灯を顔の下に充ててオレのこと脅すのやめて欲しいってばよ!なんかなんか、スゲー怖いんだってばよ、うう…、とナルトは、壁際に追い詰められながら思う。
コンビニのバイトの先輩格にあたるヤマトは建築学科の大学院生で、すでに大手の建築系企業に就職が決まっているナルト的にはなんかスゲー人だ。ナルトの直接の教育係でもあり、最初の研修期間でしっかり上下関係も出来て、ナルト曰く「ヤマト隊長って見掛けによらず恐怖統治なんだってばよ」らしい。
ちなみになぜ隊長呼びなのかというと初日にナルトが「なんていうかヤマト隊長って隊長って言いたくなる雰囲気だってば!」と若干不思議ちゃん発言をしたためである。
「あれ~、テンゾウじゃない?」
「カカシ先輩…」
ピコン、ピコンと気の抜けた電子音と共に、同じくらい気の抜けた声。ナルトは壁の時計を見て、そういえば彼の来る時間帯だったことを思い出す。木の葉マート夜10時、きっかり。
「ヤマト隊長、知り合いなんだってば…?」
「あれ、聞いてなかったのかい。この人は僕の高校の頃の先輩で、はたけカカシ先輩」
「へ?」
ナルトの頭の中でセンパイコウハイで河原を駆ける二人の姿が思い浮かんで「ナルト、今物凄ーく失礼な想像しなかったかい?」とヤマトに睨まれてナルトはいやーあははニシシと笑う。
「ま、テンゾウがここでバイトしてるっていうから前からちょくちょくは顔を出してたんだんだよね?」
「そうだったんですかっ」
「ちなみにオレの情報ソースはこいつだよ」
「うえええ、隊長がぁ!」
「どう、びっくりした?きみのことはテンゾウからよーく聞いてたんだよ。バイト先に面白い失敗ばっかりする子がいるってね」
「……ぜ、全然知らなかったってば」
ヤマト隊長が情報源ということは、あんなこんな恥ずかしい失敗を全部知られているってば!?ああああ~、と金髪の頭を盛大に抱え込んだナルトに、大人二人が吹き出す。
「ヤマト隊長ひでぇってばよ。何、喋ったんだってばよー」
「バックヤードの商品倉庫で大ゴケしてダンボールの箱の山に顔面から突っ込んだこととか、対強盗犯用の赤いカラーボールをうっかり割って店内が血の惨劇状態になったとか?」
「ぎゃあああああ~~。違うんですってば、それは最初の頃で今はもうそんなに失敗とかしないんですってばよ!?」
「くくく。いや、オレは何も言ってないけど?それにまぁ失敗の話ばかりじゃなくて、お客さんに優しいとか笑顔と挨拶がいいって話も聞いたよ?」
改めて自分の接客態度を褒められると恥ずかしいものである。
「あいさつと愛嬌は人一倍なんですけどね。この子、女性層のハートをがっちりと掴むんですよ。何気にガテン系の人たちにもウケがいいし」
「だってお客さんとのお喋りは楽しいってばよ…。たまに主婦の人とかおばぁちゃんは夕飯の残り物とか持ってきてくれるし、ОL系のお姉さんはいつも優しいし、大好きだってば」
餌付けされている…と片頬を引き攣らせたヤマトと、「オレも負けてられないね~」と怪しい発言をした、はたけカカシと胸中はそれぞれであったが。ナルトはどちらにも気付かずまだブツブツと独り言を呟いている。
「なるほどね~、そりゃ売り上げが伸びるわ。でも心配だな。変な客とかに目をつけられてない?いきなりお客さんとかに手を握られたりとかしたらすぐオレに言うんだよ~」
それはあなたのことを言っていますか?というツッコミを出来る人間は残念ながらこの場にいなかったようで「オレ、男なんで大丈夫ですってばよー」なんて暢気に笑うナルトの声だけが有線放送の流れる店内に響いた。
「いや、そんなことはない…」と何かやっぱり不穏な言葉を言おうとした先輩に、先程から引き攣った頬が戻らないヤマトはコホンコホンと咳をしてから、ええと、と割り込む。
「カカシ先輩は優秀な人でね、高校の頃は下級生にもそれは慕われて、大学時代には塾講師なんかもやっていたんですよね?」
「ふぁああ、すげーってばよ」
「ま、気楽なアルバイトだけどね~」
かなり強引な話題転換をしたにも関わらずナルトはすぐに乗ってきて、単純な子で良かったとヤマトはナルトの押し込み式の脳みそに感謝する。ナルトと言えばスゲースゲーとやたらめったら連発して、
「じゃあさ、じゃあさ、カカシ先生なんだってば?」
なんてことを言い出した。カカシ先生!?とヤマトとカカシが声を揃えてナルトを見つめる。
「なんか、おかしかったってば?」
きょとんと首を傾げたナルトに「くくく…」と背筋を丸めて笑いながら、銀髪が揺れる。
「いや、それでいいよ。さすが意外性ナンバーワン。じゃあ、オレも名前で呼んでいい?」
「あ、どうぞ!」
「それじゃぁね、―――ナルト?」
「へへへ、なんか慣れないから照れるってばよ」
「いつもの煙草取ってくれる?」
カカシ先生って大人の声って感じで素敵ですってばね~とモニョモニョ呟きながらナルトが煙草棚に手を伸ばして、カカシに木の葉マークの箱を渡す。
「いつもありがとうね、ナルト」
「カカシ先生こそ、いつも来てくれてありがとってばよ」
「―――いいんだよ、ナルトはオレの特別なんだから」
「え?」
今までになく、低い声色のカカシにナルトが首を傾げる。
「―――なんでもない。また来るから構ってやってね?」
「おう。またお越し下さいませってばよ……?」
「うん、ありがとう」
ニッコリ微笑まれ、ナルトの顔が知らずに赤くなる。なんでオレ、この人に見つめられるとドキドキするんだろ。わかんねぇ。
「―――ナルト、在庫チェックに行って来て貰えるか?」
頭の上にクェッションマークを三つほど乗っけたまま固まった少年に居た堪れなくなったのか、ヤマトがため息を吐いてナルトに助け舟を出す。
「ついでに防犯カメラのテープも換えて来てくれ」
「うぃーっす。了解だってばよヤマトたいちょっ」
赤い頬のまま若干よろよろしつつ、ナルトがバックヤードに姿を消して、レジを挟んでヤマトは銀髪の男に向かい合う。
「カカシ先輩、あんまり苛めないで下さいよ。動揺すると失敗するんで」
「だってあの子、慌てた姿が可愛いでしょ。ついついからかってみたくなっちゃうんだよねぇ」
「〝可愛い〟ですか…?あの年の子は言われてもあんまり嬉しくないと思いますよ?」
「そうかなぁ。でも可愛いんだから仕様がないでしょ」
ヤマトの目が暗に「この人しょうももない人だ」と呆れて半眼になる。
「それでいつまでお客さんAで居るつもりなんですか」
「さぁ。いつまでデショ。あの子がオレのこと意識しすぎてどうしようもなくなっちゃうまで?」
「営業妨害なので勘弁してください…」
ニコニコ笑う先輩にヤマトが盛大に肩を落とした時、
「ああああああ~、いてぇってばぁ!!」
バックから何かが転倒するような盛大な騒音が聞こえてきて、商品倉庫を覗いたヤマトがダンボールの箱に埋もれるナルトを発見して「あーあ……」とため息を吐いたのは言うまでもない。




 
 


 

 
 
 
 
 
 


 

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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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