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空気猫

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よくある感じの一人暮らしの男の子の部屋。
KnockKnockからうずまきくんの部屋にご案内。








「眩し…・…」
休日の朝。朝日の眩しい、東向きの部屋で、寝相の悪い少年が起床した。一人暮らしを初めてもうすぐ3ヶ月になるアパートの一室。
ヒヨコ頭の少年は午後も過ぎた時分に、もそもそと平べったい敷き布団から起き上がった。起床時間としてはやや不健康な時間帯と言えたが、彼がバイトから帰って来た時間を考慮すれば致し方ない事と言えた。外は雲一つない晴天。そんなある夏の日。
「そろそろカーテン買いたいってばよ…」
目をコシコシ擦りながら、頭の中の買いたい物リストに遮光カーテンを入れる。でも高そうだってばよーと思いつつ、ぺとぺと床を歩いて洗面所へ。
あちこち縦横無尽に跳ねたくせっ毛はもう諦めるとして、適当に顔を洗って歯を磨く。時計を見ると、世間一般で言えば朝ご飯とお昼ご飯の二食を食いっぱぐれた状態で、ナルトは自分の引っ込んだ腹に手を当てる。
「お腹空いたってば……」
しゅんと俯いて、冷蔵庫に足を向け、一人暮らしサイズの真四角の箱の前にしゃがみ込む。ぱかんと扉を開けて、心地良い冷気に目を細めたナルトだが、冷蔵庫の中の現状を把握して、「あー……」とだらしなく口を開けた。ぴょこぴょこと跳ねた金髪を掻きながら、空っぽの冷蔵庫の中身を見るが、されどそれで食べ物が出てくるわけがない。
「しくったってば…」
テーブルを振り返れば、昨夜、店長から「これもうロス(賞味期限切れ)したからうずまきくんが持って帰っていいよ」と渡された晩飯代わりのイタリアン風のスパゲッティ。しまった分量を考えて残しておけば良かったかなと思ったがもう遅い。買い置きのカップラーメンもない。ついでに言えば食料品はおろか調味料も色々足りていない。人間、水だけで暮らすわけにもいかず、
「さすがに買い物しなきゃ駄目だってば…」
ぱたんと冷蔵庫の閉まる音と共に、最近めっきり増えた独り言を呟いた。しんと静まる室内に、ブブブブ…と冷蔵庫の稼働音が響く。それがやけに耳に付く狭い部屋。慣れた事とはいえ、物寂しさを感じてしまうのは己の甘えのせいか。久しく忘れていた、否、忘れようとしていた感情が湧き上がりそうになって、
「や、ヘコんでてもしかたねーし」
ついでに腹も膨れねぇと、スーパーに買い出しに行くことを本日の予定に入れ、ナルトは洗いざらしのTシャツとジーンズという出立ちで履き潰したスニーカーを引っ掛けた。
「あっつ。サイアクだってば…」
カン、カン、カン、とやたら煩く反響する錆びて古くなった階段を下りると外は見事な炎天下。道すがら携帯の待ち受け画面をぼんやり眺め、つい最近の事を何となく思い出した。
「ナルトー。最近、疲れてる?」
「え…?」
「ちょっと、痩せたデショ。顔色も悪いし、ちゃんと食ってる?」
「あはは、カカシ先生に言われたくないってばよ。でも、ちょっと最近シフト詰め気味だからそれのせいかもしれねぇ」
ナルトはカカシの買った物を袋に詰めながら苦笑する。いつものインスタントコーヒーの袋と、1日の栄養を1箱で摂取出来るが売り文句の固形食品。これだけで腹が膨れるとは思えない買い物リストで、もっと言えば育ち盛り食い盛りのナルトとしては信じられない食料摂取量だ。もちろん、食料品を売っている場所は何もここだけではないので他の所で買っているのかもしれないけれど。
「オレのことは気にしなーい」
「気になるでしょ~ってばよ?」
「なにそれオレの真似?」
「シシシ。なかなか似てるってば?」
「赤点」
「辛口採点だってばよー」
ニシシとナルトが笑うと、つられてカカシも苦笑する。
「ま、生活が懸かってるのはわかるけどあんまり無理するなよ?」
「サンキュってば、カカシ先生!」
元気良く挨拶したナルトだが、カカシに商品を渡す際に若干身体がグラついて、カカシの眉根が寄る。
「な、なんでもないってばよ。これくらい!」
「ナルトさ、なにか隠してる?」
「な、なにがだってば?」
「…何か悩み事があったらいつでも相談しろよ。オレで良かったら何でも聞くから」
「大袈裟だってばよ、カカシ先生」
「おまえ、ギリギリまで抱え込む性質だろ。ほら、はいってお返事は?」
「ええと…」
銀髪の男と金髪の少年のいまいち熱意とテンションのズレた、そんなコンビニでの会話。
「はぁ…」
数日前の会話を思い出して、思わずため息が出た。人と、関わり合いになることは嫌いではない。だから、コンビニのバイトも好きだ。客と何気なく交じわす挨拶や、レジ操作の合い間の他愛のない世間話。二、三言の中から漏れるその人の日常。まるで、友人のように会話して、だけどあからさまに馴れ馴れしくするわけではない。けして、踏み込みすぎない関係。自分は、そうした微妙な距離の取り方がいいなあと思う。
しかし、はたけカカシという男は、そのボーダーラインを易々と超えて入り込んでくる。自分のペースに巻き込むのが上手いというか、強引だというか。そのくせまったく嫌味でないのが不思議だった。
「あちぃ……」
じわりと、汗が滲んだ。ミンミンとセミの五月蝿いくらいの鳴き声。目を落としたままの携帯には、数件の着信メッセージが入っていた。
伝言を再生すると無言が続き、しかし微かに漏れてくるノイズを拾えば、聞きなれない男の荒い息遣いと呼吸音。それが全件に渡って続いて、ナルトは全て聞き終わると、しばらく待ち受け画面を眺め、ジーンズのポケットにしまう。平素通り着信拒否にしたが焼け石に水だろう。頬に伝う汗を拭うと逃げ水の揺らめくアスファルトの道路をのろのろと歩いてナルトは空を振り仰ぐ。
「相談……、したほうがいいのかなぁ」
いつでも相談に乗るよ、と言った彼の笑顔が思い浮かんで、だけどいざとなると二の足を踏んでしまう自分がいた。



 


 
 



 





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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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