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空気猫

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四代目の話ってまともに書いていなかったと思いまして唐突アップ。
パパでも先生でもない四代目の言葉使いって未知の世界でした。ま、どちらにせよかなりねつ造度の高い話なのでイーブンかな!(最後を言いたかっただけに決まってる)







 
誰がために鐘が鳴る。
鐘福の鐘は誰がためにある。


どぉーーーん…。
どぉーーーーーん…。


どこかで大砲の音が鳴った。もしかしたら、どこかの忍がチャクラを使って放った術かもしれない。疾風歴49××年。忍界大戦の真っさ中。虫のように人間が生まれ、虫と同じくらい簡単に死んでいた。人の一生が、とても呆気なくて軽い時代。



はたけサクモは砲弾の音を夕飯時にどこからか聞こえるメロディと同じくらい馴染みのBGMとして聞きつつ、木漏れ日の中に居た。彼は、数週間に及ぶ重大な任務を完遂し、まさに木の葉の里に帰ったところであった。卒なく、完璧に、任務報告を終え、久しぶりに会う同僚等に後妻のない挨拶を済ませ、ふと立ち寄った公園の木の上に着地し、そして、誠に残念なことに木から転落した。
ぼと…、とみの虫が木から落ちるのと似た音と共に砂色のマントに身を包んだ彼は地面の上で風景と化した。残念ながら、長期に及んだ任務中にロクに食料を摂取しなかったため身体が栄養不足だと訴えていたらしい。ポーチの中にある兵糧丸に手を伸ばそうという意思はあるものの、身体が思うように動かない。本格的に危ない状況にも関わらず、危機感が薄いのは既に空腹で身体器官の反応が鈍っているせいだろうか。
「―――……」
何かを諦めて空を振り仰ぐと、白い鳥が悠然と空を旋回していた。こんな時代でも鳥は変わらず空を飛んでいるのだと、当たり前のことが不思議でならなかった。次に生まれ変わる時は、人間ではなく、同族殺しをしない生物になりたいと叶いもしない夢想に耽ったところで、砂埃が舞った。
「こちら、火の国戦隊木の葉レンジャーイエロー。応答せよ!」
特大ゴーグルをかけた少年が、ズザザザと片足に重心を掛け、よく見れば継ぎ接ぎのある砂色のマントを翻して、サクモの前に現れた。
「〝鳩の止まり木〟の下で、人間を1名発見。生存者かどうか早急に確認!」
少年は腕に描かれている時計に向かって報告しているようだが、それは落書きなのだから、どこにも繋がっているはずがない。
「オジサン。オジサン。生きてますかぁ、死んでいますかぁ。応答せよー」
ゆさゆさと世界がシャッフルするほど乱暴に揺さぶられ、サクモは銀色に縁取られた瞳を瞬かせた。
「んんん~。なぁんだ、生きていた」
ゴーグルを頭の上にズラした少年の瞳は空と同じ色をしていた。
「私は、まだオジサンと呼ばれる年齢ではないと思う…」
「ええっ、オジサンのその髪、地毛ですかぁっ?」
微かな眩暈を覚えつつ、結果的に行き倒れた男は突っ伏していた地面からモソリと起き上がる。サクモの髪も里では珍しく白銀と名ばかりの髪はほとんど、色が抜けている。確かに年寄りと初対面の子供に間違われても仕方ないかもしれない。
「それと、死んでたら応答出来ないと思うのだが…?」
「その時は速やかに地面に埋めるに決まってます」
さっくりと冷めた発言をして、太陽を逆光にして少年が笑った。人の生き死にに馴れているのは、今の時代では子供とて珍しいことではなく、この少年も戦争孤児か何かだろう。
「残念。せっかく金品をチョロまかしてやろうと思ったのに」
「………」
サクモは少年の呟きに何と反応いいかわからず至極真面目に悩み込んだあと「それは随分と悪いことをした…」と答えた。
サクモの答えに、金髪頭の少年は瞳孔が細くなるほど真ん丸く目を見開いた。
「ぷわははははっ!!!」
「………」
「はー、はー。ひー。オジサン。凄い笑いのセンス…。自分で身包み剥いで良いって言ったお人良しはオジサンが初めてですよ」
絶対、そんなんじゃ人生損しますよ、と少年は笑いに笑いこけた。どうやら笑い上戸らしい。
底抜けに明るい笑顔を、サクモはぼんやりと見詰めた。長く続く終わりのない戦時下で久しぶりに誰かの笑顔を見た気がした。
「ははは。すいません。本当、さっきも久し振りにナイスに死体らしい死体だなぁって思ってて…」
「………」
「でもオジサン、凄くいい男ですね。オレ、なんだかオジサンの顔、とても好きです」
死体らしい死体とはなんだろうとその定義について考えていると、少年は懐いた犬ころのようにサクモの周りを、うろつき始めた。
「オジサン、その格好は忍者でしょ。偉い忍者さんですか?チョコレート持ってます?」
木の葉の里は戦時下であるため、物資が不足している。忍者は里の重要な戦力のため優先的に食料が支給されるが一般人はそうもいかないことが多い。定期的な配給があるものの、現在の運営体制では安定しているとは言えず、とくに庇護してくれる親を失った子供は尚更だろう。サクモが救急用パックを放り投げると「うわっ、ラッキぃい!」と弾んだ声が上がった。サクモも自分用の兵糧丸を口に含む。
ガツガツとした仕草で食料を摂取する捨て犬のような少年の食欲に呆れつつ、何となく手持無沙汰になっていると、
「それじゃあ、オジサンには特別に〝オレたち〟の秘密基地を案内してあげます!」
「は?」
しゃがんでいた少年は公園内を自分の家か庭のように歩きだした。何となく、否と唱える機会も、拒否する理由も思い付かずサクモは少年の後に着いて行く。案内された公園は、特に珍しくもないごく普通の一般的にして平均的な公園だった。壊れ掛けた滑り台、ぐにゃぐにゃになったジャングルジム、座ることの出来ない鎖が収納されたブランコ。特筆すべき点と言えば目の前に歩く金髪の少年の色彩くらいで、他に珍しいところなどない。
砂場の近くまで来たところで少年の足が止まった。どうやらここが、公園ツアーの終着点らしい。少年の足元にあるのは、こんもりと盛り上がった地面。ある土の頂点には木の枝が、あるものにはアイスの棒が立っていた。
それは…、無数の墓標だった。
「犬は1号から3号、猫は1号から5号まで、鳥は10号までいたよ。人間は女の子が2人と男の子が3人」
「きみは…、あまり名前のセンスがないな」
「そういうオジサンも名前のセンスが無さそうですよ」
致命的な欠点をお互いに指摘し合って、白銀の大人と金色の少年の頭が廃墟となった公園の中に何となく並ぶ。
「皆、死んじゃった。オレは一番足が速いから、いつも助かるんだ。だから、皆に先に逝っちゃった…」
砂に書かれた○×模様の落書き。空虚な一人遊びの残骸。クレーターの跡が転々と続いていたから、平和な公園とて、戦火から逃れることは出来なかったのだろうとは察しがついていた。
壊れた遊具の中に立つ少年の年頃は幾つぐらいであろうか。10代半ばであることは間違いないが、落ち着いた雰囲気が年齢不相応にも見える。
「ねぇ、ねぇ。オジサン。暇?」
楽しいものを見せてあげる、とニカニカした顔で言われ、サクモは走って行く少年の背中を追う。
一人だけ残された公園で少年が笑う。
一見、底抜けに明るいのにどこか背中が寂しい。だが、人間の目が鋭くなる時世の中で、この少年はまるで憑きものがとれたかのようなさっぱりとした顔をしている。こんな表情の子供は初めて見た。
「ロケットって知ってます?」
「………?」
プラスチックで作られたちゃちな物体の周りに不可思議な幾学模様を描く少年に追い付くとサクモは、地面に描かれた落書きに目を見開いた。それは怖ろしく緻密な術式だった。
「これは……」
「これをこうやって……、こうするんです」
練られているのは、緻密で無駄のないチャクラ。少年の周りに青白い光が集まり複雑な印が組まれる。次の瞬間、閃光と共にロケットが空の彼方に発射された。
「――飛んだぁ!!」
綺麗な流線形を描いたペットボトルは、ぷしゅうと間の抜けた音ともに、青空に吸い込まれた。そして、しばらくすると10メートルほど先の別の術式の上に出現して地面に落ちた。
「へへへー。どうです、楽しいでしょ?」
少年は得意げに白銀の大人に向かって笑った。
サクモは、
はたけサクモは、
目を真ん丸く見開いて、まるで掘り出し物の原石を見付けたかのように、立ち尽くした。
「この仕組みはきみが全部考えたのか」
「へ…?そうですけど、何か。あ、これ、わざわざ飛ばしたペットボトルを探しに行かなくていいから便利な仕組みでしょ?」
「………凄いな」
「えっ、いや、――照れるなぁ。そこらへんにある死体になった忍者さんの技の真似しただけですよ、…あとお手本は一杯あるから、はははは!」
いとも簡単に言ってのけた少年の背中をサクモは呆然と追い掛ける。応用力だけの問題ではない。類稀なる発想力と、先天的な何かがなければ先程の術が完成出来るわけがない。それを、この少年は遊び感覚でやってのけたというのだ。
「きみは、きっと天才と呼ばれるようになるよ…」
予言のような言葉がするりと喉を通って出た。
己も忍としては優秀な方ではあるが、この少年とは決定的に何かが違う。言うなれば、才能のスタートラインが違う。別次元だ、と言っても良い。
「木の葉で最も良い師を紹介しよう。きみには才能がある」
「……――?」
「きみは、この公園の外の世界に出てみる気はないか?」
いつの間にか、公園の木の枝には無数の鳥たちが止まっていた。まるで、サクモと少年の様子を見届けるように、無数の水晶体が二人を映している。
「君は、もしかしたら、この里を変えてしまうほどの風を巻き起こすかもしれない…」
先程まで行き倒れていた大人に唐突に宣言された少年は沈黙したまましばらく逡巡した挙句、困ったように笑った。
「でも、オレはそういうことにあんまり興味ないです」
「―――?」
ニカニカと笑う少年の周りを吹き抜けるような風が靡いた。
「里とか、何かを変えるとか、本当に興味がないんです」
ポカンと固まった大人に、少年は尚も笑った。
「助けられなかったんです。誰も、助けることの出来なかった、オレは無力でひ弱な人間なんです」
「それは、私とて同じだ。いつも己の無力を感じる……」
しばしの沈黙の後、真っ直ぐな碧い瞳に見詰められたサクモは、躊躇いがちに言った。
「だが、たぶん奢り昂る者より、それは人間らしい感情だと…私は思う」
サクモの最後の台詞は既にボソボソと消え入るようだった。
金髪の少年は、幾分か迷ったように、大人が先程転落した木に視線を移した。
――早くこの戦争が終わりますように。
それは少年より幼い少年少女の文字だ。幹にナイフで削るように書かれたらしいそれは、星のマークや他の冗談めいた落書きに混じりオリジナリティもなく稚拙で捻りもないものだったが…。
――早く皆が幸せになりますように。
やけにくっきりと少年の目に浮かびあがった。少年が空を見上げた瞬間、無数の鳥が、空の上に舞い上がった。



「ん~。そうだなぁ…行ってもいいですけど、紹介してくれる人って怪しい人じゃないですよね」
「もちろんだ…。とても信頼できる立派なお人だよ…」
うううーんと悩んだ金髪頭の少年は、よーしオレは決心したぞ!と拳を奮った。
「それじゃ、配給のラーメン一杯で手を打つことにしましょう!」
「ああ、ラーメンくらいお安い御用だ」
「オジサン、いい人ですね。よぉし、取り引き成立!」
オジサンではない、とサクモは訂正を入れつつ、蒼空を見上げる。拾った天才孤児は果たしてこの後、どのような運命を辿るのだろうか。
ここでこの少年を見つけたのは偶然だったのか、それとも必然だったのか。自分が、平穏無事な公園の中から連れ出した事で、この少年は手にする筈だった小さな幸せを逃してしまったかもしれない…―――が、それはまだ誰にもわからない遠い未来に出るべき結論だろう。


誰がために鐘は鳴る。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
ラーメン一杯で四代目が四代目になった瞬間。
天才はいつの時代も善き支援者に発見され、しかるべき運命を辿るという数奇なお話。
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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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