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空気猫

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某さんに触発されて木の葉ティーンズのお話。ちなみに内容は、夜眠れなくなる感じの話。






世にも怖いシノくんの話

「あちぃ。あーもー、とける。アイスが食いたい」
「ばっ。キバ。それってばオレの最後のアイスーっ」
ここはナルトの自宅。床に寝転んで巻物を見ていたナルトがガーガーと怒る。ナルトの部屋にいる少年等は、木の葉のルーキーたちだ。
「ナルト。キバを止めても無駄だ。なぜなら、奴は図々しい性格だからだ」
黒い丸眼鏡を掛けた虫使いの少年がずずいっとナルトの正面に顔を近付け、忠告する。
「うわ。シノ。いたのかよ!」
「………」
(うう。こいつってばいまいち何考えてるかわかんねぇんだよな~~)
ずずぅん…と空気を重くした虫使いの少年をしり目に、ナルトはそんなことを思っていた。ちなみにシカマルは部屋の端で雑誌を顔に載っけたまま昼寝をしている。
「ナルト。おまえは今、オレをないがしろにしたな?」
「ししししてねぇってばよ!」
「本当だな? おまえの言葉に嘘偽りはないな?」
(お、重い…。カカシ先生並みに発言が重いってば…)
ナルトは、つつつと虫使いの少年から距離を取りつつ、オレンジジュースの入ったグラスを仰る。
「あちぃ…」
どちらかというと、ナルトは暑がりだ。常に無駄な動きが多く、発汗するということもあるが、元々異常に新陳代謝が良いせいもあるだろう。それは16歳になった今も変わらなく、夏などはコンクリートの上で熱された犬のようにヘバってしまう。―――彼の担当上忍に言わせれば、まだまだ忍耐が足りないのだそうだが、見るからに低血圧、低温動物っぽい人間になど言われたくない、とナルトが思っている。
まぁ、何はともあれ窓を全開にして、カーテンを閉め切って、室温を下げようという無駄な試みをしているものの、室内はうだるような暑さを維持している。ぺとっと、インナーが胸板にくっついて、不快感が拭えない。ナルトが、ランニングのシャツの中に空気を送りつつ、グラスを仰いでいると、
「ところでナルト」
「う…、お、おう!?」
まだ会話が終わっていなかったのかと、口に含んだジュースを危なく吹き出す寸前で、ナルトはシノを振り仰ぐ。今日はやけに話しかけてくるなー、と思いつつ虫使いの少年の声に耳を傾ければ、
「そんなに暑いのなら、オレが涼しくなる話をしてやろうと思う。なぜならオレは親切な男だからだ」
と、表情の窺い知れない丸眼鏡越しに、やけに近い距離で話しかけてくる。
「う、うん?」
「加えて、おまえはオレにとって大切な友人であるから、その友人を助けるのは当たり前なのだ」
「あ、あんがと…」
なんと答えていいかわからず、ナルトが曖昧に礼を言うと、シノはジャンバー越しに僅かに微笑んだようだ。
「………」
アカデミー時代、クラスが違ったせいもあり、ナルトは彼とはあまり接点がなかった。しかし、中忍試験で再会して以来、何かと友好的に話しかけられることが多くなった気がしないでもない。別に何をしたわけでもないのに、好意を抱いてくれているというのだろうか?
何を考えてるかわらない奴。それが今までの印象であったが、どうやら嫌われていないらしい。それにほっとすると共に不可思議でもある。
「――で?」
と、首をこてんと傾げて話を催促すると、ふむ、とシノが頷く。怪談話でもするのだろうか、とナルトは少しだけドキドキとしていた。ナルトは、あまりそうした話を得意としないのである。それなので、〝涼しくなる話〟に多少身構えた気持ちで耳を傾けていた。
「何、ちょっとした例えた話だ。人間は、通常毎日睡眠を取る。しかし、虫の仲間の中には、数年間に渡って土の中で眠り続ける種族もいる。そして残りの一生を覚醒し生き続けるのだ。このことを考えていた時、オレはふと面白いことを思い付いた」
しかし、シノが喋り出した話は、ナルトが予想していたものとは違った。どうやら怪談ではなく虫の話らしい。ナルトは床に寝転がっているシカマルに視線をやりつつ、シノの話を聞く。
「例えばここに、毎日12時間の睡眠を取る人間がいるとする。その人間の寿命は、きっかり100年と仮定しよう。その人間が虫のように一生分の睡眠時間をまとめて取ることが出来たとして、睡眠を後回しにすることにした。つまり、その人間は50年間起き続けることが出来る」
「お!それってば便利だってば。だってさー、だってさー、50年間ずぅっと休まず修行とか出来るってことだもんな!」
ナルトのその台詞に、〝ふ…〟とシノが人知れず笑ったような気がして、ナルトは首を傾げる。
「む?なんだってばよ?」
「ナルト。その人間は確かに50年間起き続けることが出来る。しかし、その代り残りの50年間、昏睡状態になることが決定されるのだ」
そこでシノは含むように、言葉を切る。
「人生の半分は意識不明の寝たきり…」
誰が呟いたかわからないが、辿り着いた結論に、シン、と室内が静まった。冷蔵庫からアイスキャンディを取り出し、キッチンから引き返して来たキバが「げぇ」という顔つきでフリーズしている。
「ぎゃーーーっ、やめろってば。シノ。おめぇってばその話ちっとも笑えない!」
「唐突になんつぅ怖い話すんだよ!」
一時の静寂を破り、ナルトとキバが騒ぎ出す。この二人はいつもタッグを組んでうるさい。
「どうだ。涼しくなったか?」
「そういう意味での涼しいかよ!!!」
一斉にキバとナルトがツッコミを入れる。二人に、がなり立てられたシノは表情一つ変えず、なぜか口の端を吊り上げて不気味な沈黙を作る始末だった。
「シカマル―、シカ―、シカシカシカ!!起きろってば!!今すぐ起きろってば!!おめぇってば、のんきに寝ている場合じゃねぇってば。このままじゃ人生の半分以上寝たきりになっちまうぞーー!!!」
昼寝好きな友人に向かって叫んだのはナルトだ。ナルトは、ほぼ涙目になりながら、ひっつめ頭の友人の肩を持ち「起きろ―、起きろ―」とガクガクと揺さぶり起こす。
「んぁ?なんだよ、ナルト。うるせぇなぁ。めんどくせぇ」
「それどころじゃねぇんだってばっ。おまえの一生に関わる重大なことが発覚したんだってばよ。おまえってば、このままだと人生の半分以上は意識不明の昏睡状態!」
「はぁ?何、失礼なこと言ってんだてめぇ?」
友人宅に来たきり眠りこけていたシカマルが、遅まきながらにのろのろと身体を起こす。そして話が行ったり来たりするナルトの説明に耳を傾けつつ、あー…とシカマルが間の抜けた声を落とす。頭脳明晰なこの少年は会話の端々から全てを察したらしい。
「シカマルってばいっちばん深刻に受け止めねぇといけない奴なのに、どうしてそんなに冷静なんだったば!」
「ふぁあ…。そりゃ、ま。所詮、例え話だからなぁ」
あくびを噛み殺したシカマルに「こんの日和見老人が…」とナルトが一言。それどころかキバまで「ナルト。シカマルに構うじゃねぇ。こいつはもう手遅れだ」と言い出す始末。
「て め ぇ ら な…」
ナルトとキバの態度に思わず低い声を出すシカマルだが、二人にはまったく聞こえてなかったようだ。
「あーもー大体、オレたちってば1日12時間なんて寝ねぇし!任務とか修行で忙しいし!ちちちちっとも怖くなんてねぇんだからな!」
「そうだ。そうだ。シノ。おまえのそういう暗くてネガティブキャンペーンなところがネチネチして嫌なんだよ!」
シカマルはしかめっ面で後頭部を引っ掻いた後。
「で。ナルトは何時間くらい寝るんだ?」
「ん?オレってば、たっぷり8時間は寝るってばよ!」
「オレは6時間くらいかなぁ。つい夜中にゲームやりすぎちまうともっと短いけどな」
犬使いの少年の返答に、「キバってば、家に帰って来てからんな暇あるのかよ」とナルトが唇を尖らせていると、シカマルがとんでもないことを言い出した。
「って、ことはそれを100年で計算すっと…」
「計算するんじゃねぇよ、シカマル!」
「そうだ、難しいことばっか考えてるとなぁ、今にハゲるぞ!」
「あのな…。人を散々日和見老人扱いしやがって。言っとくけどなぁ、オレはおまえらと同じ年だぞ?――仕返しだ」
こめかみに、青筋を立てたシカマルが、半分座った目で、引っくり返っていた床に反転すると、頬杖を付きつつ、一言。「8時間毎日寝てる奴と6時間寝ている奴が100年間生きたとして一生の中で眠ってる時間は――…」思わずナルトとキバが耳を塞いだが。







「シカマル~~~~~!」
数秒後、ぎゃー!という悲鳴が、うずまきナルトのアパートから響いた。

 
 
 
 
 
 
 







この後数日間、ナルトは眠る時ビクついていると可愛いと思う。
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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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