空気猫
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アスマさんが大好きです。
パラレルっていいですね。みんな生きてる設定です。
息を切らして、アパートの階段を駆け上る。携帯電話を握って、震える手でアドレス帳を開くが、誰に連絡をしていいのかわからないことに気付いて愕然とする。シカマルやキバやチョウジに、相談すればいいのだろうか。でもなんて言えばいいのか。いつも笑って自分の傍にいてくれる仲間を、こんな薄暗い事件には巻き込みたくはなかった。
「カ、シせんせぇ……」
いつでも相談してね。と言った彼の声。
今すぐにでも声が聞きたいと思ってしまうのはどうしてだろう。携帯のアドレスすらも知らない人なのに。今になってカカシと自分を繋いでいた糸は脆く儚いものであったのだと気付いた。
いつも当たり前にように顔を見ていたからわからなかった。カカシがコンビニに来ることを止めてしまうだけで、二人は顔を合わすことさえ出来なくなってしまうかもしれないのだ。
そんな微妙なラインをたゆたっていたはずの二人なのに、それを感じさせないくらい、自分はカカシの笑みに安心していた。それを怠惰だったと言われてしまえばそれまでだが。
――いいかい、これ以上、あのカカシとかいう男と親しくしたら、彼が酷い目に遭うよ。
「や……」
キャンキャンと耳の奥で木霊する仔犬の鳴き声。血溜まりと夕焼けと河原と誰も居なくなった部屋。たくさんの洪水のような過去の光景。もう失うのは嫌だ、もう誰かが居なくなるのは嫌だ。ぎゅっと拳を握って、セピア色の記憶が蘇りそうになるのを頭を振り払って止める。
「ナールト」
木の葉マート。いつもの時間、いつものテンションで、片手を上げたカカシが来店して、いつも通り、金髪のコンビニ店員が笑みで向かえる、しかしその法則は今日、初めて破られた。
「ヤマトたいちょ、オレってばバックで冷凍室の在庫チェック行って来るってば!」
「え、ナルト?」
カカシの顔すら見ずにパタパタと走り去る少年。あとに残されたのは、カカシとその日、ナルトと共にシフトに入っていたヤマト。
「……カカシ先輩、あの子に何かしましたか?」
ジト目でカカシを睨むヤマト。信用ないなぁと思いながらもカカシは苦笑する。
「したというか、してしまったというか、したんだけど」
「つまりしたんですね?」
「んー、でも本気でイヤがっているようには見えなかったんだけどね……」
「貴方って人は~……」
おかしいなあと暢気そうに頭を掻くものの、視線はいつまでもバックヤードに固定されたままで、それが傍目にはわからないが、はたけカカシの動揺を如実に表していた。
その日から、カカシはナルトに避けられるようになった。
「ナールト」
カカシがニコニコと笑ってナルトに話し掛け、ナルトが哀しそうに目を伏せる。レジに向かい合った2人の表情はどこまでも対照的で、やがてカカシが困ったように表情を崩した。
「…ナルト?」
「―――っ。お会計1270円になりますってば」
「………」
「あ、ありがとうございましたってば、またのお越しをお待ちしてますってば!」
まるでカカシに早く去ってくれとでもいうような一方的な接客態度、儀礼的な挨拶。
「おまえ。顔、真っ青だよ?」
びくんとナルトの身体が強張って、カカシから逃げるように後ずさる。「そんなことないってばよ…」カカシが顔を顰めて、ほぼ無意識で心配そうにナルトの手の平に己の手を重ねると、電流を受けたかのようにナルトの手が払われる。
「…ルト?」
「ご、ごめんってばカカシ先生っ」
傷付いたようなカカシの顔にナルトは必死に堪えて俯く。
「オレの方こそ、ごめん。―――触られてイヤだったよな…」
「あ……」
違う。カカシはいつだって神経質なほど、ナルトとの距離を取っていてくれていたのに。
ナルトは自分の手をぎゅっと握ったまま、唇を噛んで、顔を歪めたが、結局喉元まで出掛かった言葉は音になることなく、喉奥に張り付いたままで、気不味い空気が二人の間に漂う。
「もうここに来るの止めた方がいい?」
「………っ!!」
「おまえがいやだって言うならオレはもう来ないよ?」
「あ…っ、その…」
揺れる揺れる碧球は、海より深い哀しみの色に染まっていて、ああ、あの「河原の時」のように泣き出すのを必死に堪えている顔だとカカシは遠い過去の光景を思い出していた。
「好きな子が目を合わせてくれなくなった」
薄暗い小部屋で、猿飛アスマは吸っていた煙草をぽろりと落とした。長椅子に抱き枕を抱いて寝っ転がり、いじけている長身の友人はいい男台無しな現状なのだが、それはまぁ結構日常の事であったりするので、とりあえず横に置いておく。
「って、おまえの好きな奴ってのは確か、あの金髪のガキンチョ――」
「ナ・ル・ト・だよ。アスマ、おまえねぇ―――」
「とうとう手ぇ出して嫌われたか!?よっし、今日はヤケ酒に付きやってやる」
「…なんでみんな開口一番にそういうわけ?」
信用の問題である、とアスマは喉元まで出掛かった言葉を飲み込む。
「一発食いのカカシだろ、てめぇは。スゴかったなぁおまえの10代から20代前半は」
「そんな過去は消去しました。今はあの子以外見えないよ」
むくれていじけるもうすぐ30代になるだろう男。その姿はちっとも可愛くない。ここ数ヶ月コンビニ通いなんてまるで似合わないことを地道にやり続けていた友人に、ああ重症だなとアスマはため息を吐く。
「あー…、なんつーかなぁオレは、できれば友人がティーンエージャーに手ぇ出すとこは見たくねぇよ」
「……これでも7年我慢したんだけど?」
「そういえばそういう変態だったなおまえ」
「失礼なこと言わないでよね。たまたま好きになったのが、あの子だっただけでしょ」
「で、マジで襲い掛かって嫌われたのか?」
「人をケダモノかなにかのように言わないでくれる?――まだ、何もしてないよ。…ま、味見の予約くらいはしたけど」
「なんだそのあからさまに怪しい発言は」
「ナールートー、ああああ話したい、さわりたいー」
「一回、おまえのこの情けない状態をあのガキに見せてやりてぇよ、オレは」
「……なにが?」
胡乱そうに友人を見上げる銀髪の男。100%無意識でやってるのだから始末に終えねぇと髭の友人はガシガシと頭を掻き、
「……いいから上に仕事しに行けよ、四代目が怒ってたぞ」
「あー。あの人にナルトに会いに行ってるバレたらぶっ殺されるだろうなぁ」
尚もぶつくさ言っている友人を蹴り倒したのであった。
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職業 ノラ
趣味 散歩・ゴミ箱漁り
餌 カカナル
夢 集団行動
唄 椎名林檎
性質 人間未満
日記 猫日和
ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。