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空気猫

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日常編 
正義の味方の時間―








はたけカカシが木の葉の里を出て、火の国の首都へと出立したのは、とある黄金ウィークと呼ばれる、連休のことであった。大方の人間が休みとなる祝日とはいっても、売れっ子の上忍兼暗部であるカカシに休みなどない。本日とて、木の葉の大名に機密文書を届けるため、〝流石はカカシ先輩〟と後輩暗部が居たなら感嘆のため息を吐くほどのスピードで雑木林の中を疾走していた。
だが、しかし。そんなふうに颯爽と任務に従事する彼のリュックサックから、黄金色の三角耳がぴょこんと飛び出す。
「カァシ。はやい、はやい~」
彼の遠征用リュックサックの中には、何故か黄色い三角耳を持った狐の子がくるんと丸まって入っていた。木の葉一の技師、はたけカカシのリュックサックから三角耳と顔だけをちょこん出し、お花を振りまいている狐の子供――はたけナルトは、右から左へと変わっていく風景に興奮気味だ。
ちなみにナルトの声援に、カカシは表情をまったく変えない。プロ意識の高い天才上忍は、
例え、今運んでいるのが、木の葉の命運や、自身の命に関わるような機密文書ではないとしても、一瞬足りとも気を抜くことなどないのだ。その証拠に、今回初めて狐の子供を携帯して任務を遂行している上忍は、けして口布の下の表情を弛めなかった。
つまり、傍目には鬱蒼とした森の中を、お花を振りまいている仔狐を背負った忍が疾走する姿が目撃されたに違いないのである。





ここは、火の国の中心部に位置する首都。その目抜き通りにある木の葉デパート。今回の任務後に、カカシはしばしの休暇を与えられた。だからこそ、ナルトを連れて来たのである。
数日前、彼の家に投げ込まれていたチラシを見た、彼の愛玩ペットは、チラシを紙飛行機代わりにして遊ぼうと目論んでいたが、チラシの写真を見た途端、歓喜の悲鳴を上げた。
玄関から、居間の長椅子で寝転んでいたカカシの傍まで一目散に駆けると仔狐は、〝木の葉レンジャーショー〟の広告を何度も指差し、尻尾をはためかせた。
子供の好きなものどころか世間の流行にはまったく疎いカカシであったが、さすがに買い物に行くたびにせがまれた食玩のヒーローのことは頭の隅っこに引っ掛かっていたらしく、「あぁ~」とか「うーん」とか反応の薄い生返事をした後、長椅子に寝転がったまましばらく頭を悩ませていた。
「まぁ。よかろう」
以外にも、火影の許可は簡単に出た。本来であればカカシランクの上忍が請け負うはずのない安易な任務をわざわざ受付で調べて選んできた上忍を訝しく思った火影は、「定刻までには戻るので空いた時間を私用に使わせて欲しい」という彼の不可解な頼み事の理由を訊ねた後、至極あっさりと頷いた。
それどころか、数十年任務一筋で、無趣味な男の珍しい頼み事に好々爺の上司は片眉を興味深そうに跳ね上げ、またその原因が一匹の仔狐だということに笑みを零し、
「本当に半日だけでいいのかのぅ?もっとゆっくりとしてきて良いのじゃぞ?」
とまで、言ったくらいだ。カカシはしばし考えたあと、「あくまで私事での我儘ですので」ときっちり夕刻までには帰里する旨を伝えた。依頼人の方としても格安で木の葉随一の上忍を雇えるということで、快く頷いた。
そんなわけで、はたけカカシは期日よりかなり早く巻物を依頼人の元へと届け、(何故か依頼人にレンジャーショーの無料招待券までプレゼントされ)その足で首都の中心部へと向かったのだ。
「カァシ。人がたくさんだってばよ~」
「そうだねぇ」
豪奢な建物が並んで建つ目抜き通り。銀髪の忍者の姿は目立ったが、三角耳の子供の姿もまた同じくらいに人目を引いた。忍者が堂々と街なかを歩くだけでも、忍里ではないこの街にして見ればざわめくというのに、カカシの風貌は際立って目立つうえ、オプションは金髪碧眼の狐っ子。
美男か、醜男かと言われれば、カカシは断然前者の部類である。そんないい男が至極当たり前の顔で抱き抱えている狐の子供の存在が道行く人々を混乱させる。
わけがわからない。誘拐犯? 変な人?
カカシの堂々とした態度のせいで、おかしな破壊力が増す。木の葉デパートに入った時も、人々の反応は大体同じで、カカシは至極真面目な顔のまま、エレベーターに乗り最上階のボタンを押した。






レンジャーショーの内容はさしてカカシの興味も関心も引くものではなかったが、膝の上の狐の子供がきゃあきゃあと嬉しそうに尻尾をはためかせているので、カカシは大いに満足していた。
「しゅごいってばよ~。びゅーんでばーんなんだってばよ~」
「………」
カカシがすりすりと鼻先をナルトの金糸に埋め込んでいると、
「カァシ。カァシ。銀狼、格好良かったってばよ。やっぱさー、やっぱ。あいつはいい奴なんだってばよ」
〝皆が悪者だって言っても、オレにはわかるんだってばよ〟ぱたぱたと尻尾を左右に振りながら、カカシの方を振り返った狐の子供が興奮気味に言う。
「なうとってば違いのわかるキツネー!」
どこか威張ったように、身体を反らして、狐の子供はカカシの膝の上でぽんぽん跳ねていた。
「………」
その時、館内アナウンスが流れた。
『今から良い子のみんなと木の葉レンジャーの握手会があります。係りのお兄さんのところに並んでね』
「ふぁ。あっ、あっ、カァシ。なうと、木の葉レンジャーと“あくし”したい」
『今回は特別ゲストで銀狼役の×××さんもいらっしゃってまーす』
遠目に、とは言ってもカカシの視力を持ってすれば、なんということはないことなのだが、
灰銀色の役者が舞台の袖に立っている。木の葉レンジャーの中身は、アルバイトのスタントマンだということは、想像が付いていたので、おそらく彼だけが本物の銀狼役の役者だろう。
なるほど、カカシにはいまいちどこがいいかわからないが、どこか伊達な雰囲気がある。その証拠に、腕の中のナルトは本当に嬉しそうに、はしゃいでいる。三角耳の裏側まで薄桃色に染めるほどに。普段から彼の〝ファン〟であると、豪語しているナルトのことだ。嬉しそうなこの反応は当たり前のことなのだが。だが。ちっとも面白くない。
「………」
「“あくし”したい。カァシ、カァシ。おてて離してってば」
「………」
「カァシィー…?」
不機嫌なカカシの様子に、ナルトの催促の声も尻すぼみになる。ぺたんと三角耳を寝かせたナルトは、不安そうに銀髪の人間を見上げる。どうして、カカシが不機嫌なのか、わからないが、大好きなカカシが怒っているだけで、気持ちが沈んでしまう。
結局ナルトは、レンジャーショーが終わるまでお膝抱っこから解放してもらえなかった。




 

「………」
「カァシのばぁか」
「………」
ご機嫌取りとばかりに連れて来て貰ったレストラン。〝ぱふぇ〟なるものを前にナルトはご立腹だった。そのうえ、ナルトがむぅむぅとむくれているというのに、お構いなしに押し付けられる生クリームの載ったスプーンのせいで、ほっぺがべちょべちょだ。どうやらカカシが先ほどのことを謝っているらしい。そんなカカシの様子に、ナルトは、しゅんとしてしまった。
「なぅとは。カァシのこと、しゅきよ」
「う、ん…?」
「だから、そんな哀しい顔しないで欲しいってば」
カカシは驚いたように、目を見開く。今にも泣きそうな顔をしているのは、ナルトの方ではないか、とも思う。だけど…。
「カァシが痛い痛いのお顔していると、なぅとまで哀しくなっちゃうんだってば」
そう言うと、三角耳の子供はカカシが差し出していた柄の長いスプーンから、甘ったるそうな生クリ―ムをぱくんと口に含んだ。




 
 
 
  
 








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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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