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空気猫

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この間、携帯でアニメを見ていたら、カカシ先生が瓦礫に埋もれていたのでそう言えば、と思い再アップ。去年くらいに、某企画のお誘いを受け寄稿したもの。










イチンゲールをしたのはか?

父が死んだのはカカシがまだ幼い頃のことで、彼の無駄に優秀な記憶力は、今も鮮明に、白い牙の最期の瞬間を覚えている。これが、名のある忍の末路なのかと言いたくなるほど呆気ない最後だった。物言わぬ亡骸を前に、涙すら出なかったのは、死を理解するには自分が幼過ぎたのか、それとも感情の欠落した欠陥品だったのか、今もわからない。
そして、子供は少年に成長し、青年期を経て大人へとなる。これはそんな大人と恋人の少年の、とある雨の日の物語である。
「ナールト。もし、オレが死んだらどうする?」
「んー?」
「もしもの話なんだけど、オレが死んだらどうする?」
〝おまえはオレと一緒に死んでくれる?〟
雨の音がしとしとを聞こえた。大人の質問に、前髪をボンボンで括ってキッチンに立っていたナルトは「へ?」「うぇ?」の間の顔で固まった。たぶん、カカシ先生ってばまた変なことを言い出した、とか思ってるのだろう。眉を跳ね上げて唇をひん曲げた、その顔、凄くイイね。そそられる。
カカシはこっそりと唇の端を吊り上げた。つい先ほどシたばかりだというのに、また熱が煽られてしまう。顔を顰めた頂けない表情にすら欲情してしまう自分は、ちょっと重症かもしれない。こういうのを恋にイカレテいる状態っていうのだろう。
「ねぇ。オレが、死んだら、どうする?」
「………」
「くくく。ナァルト?」
カカシは、わざと意地悪く聞いてみた。ナルトは感情が表情にすぐ出る。今もそうだった。
「おまえの、その顔。ぶさいく」
「うっせぇ」
「眉間に皺、出来てるよ?」
カカシはイチャパラを長椅子に放り出して、キッチンへと向かった。わかりやすくていいけど、おまえ忍者としてどーなの、とツッコミを入れてやりたくなることもしばしばで、だから16歳になったとはいえ、心配の種は尽きない。それは上司として、教師として、もちろん恋人としても同じことだ。年の差があるせいか、16歳の少年はカカシが簡単にこなせるちょっとしたことにも躓いてしまうから、つい余計な世話を焼いてしまうことが多い。
まるで、放って置けないひな鳥みたいだ。12歳頃のはいざ知らず今のナルトにひな鳥という言葉は相応しくないのは承知だが、まだまだ経験値では負けないつもりだ。もっとも確実に縮まる距離を、嬉しいと思う反面、複雑な気持ちでナルトの成長を見守っている自分がいるのも知っている。
自分を過去のものだとは思いたくない。だが、新しい芽が今の木の葉では育っているのだ。もし、自分が何らかの事情でこの世を去ることになってしまったら、この子はどうするだろうか。
だから、それはちょっとした好奇心だった。意地の悪い質問だったと思う。カカシは基本的に冷徹で冷たい人間だ。温かくみえるのは、温かいナルトといるからで、鉄が熱を吸収するように、ナルトと寄り添っている時だけ、温かくなる。
キッチンに立ったままのナルトに後ろから抱きついて、カカシは訊ねる。
――ねぇ、オレが死んだらどうする?
金髪碧眼の少年が思案すること三秒半。
「んー。殴る」
「え」
意外な答えにカカシは目を見開く。さすが意外性ナンバーワン忍者だ。死人を殴ってどうするつもり?
銀髪の上忍は身体をくの字に折ってクククと笑った。
「泣いてくれないの?」
もしかして愛されてないのでは?と、不安になって訊ねれば「うーん」と曖昧なお返事が返って来た。
「冷たい、ナルト」
「料理チューだってば」
「酷いねぇ。恋人より晩飯の方を取るつもりー?」
「カカシ先生の晩飯でもあるだろ、フカコウリョク」
「おまえ、もうそろそろそれくらい漢字で言えるようになりなさいよ」
「む。よけーなお世話だってば!」
ナルトはカカシの妨害にもめげずにまな板に視線を落としながら答える。
「だってさ」
「うん?」
「オレってば火影になる夢はぜってぇ諦めねぇし、一緒に死ぬとか今イチ意味わっかんねぇし、カカシ先生が死んだら哀しいと思うけど、オレは後は追えない」
カカシは、ナルトの髪の毛を弄んでいた指を止める。カカシが愛したのは、火影を超えるという夢を追い掛けている少年だ。どうして失念していたのだろう。ナルトの夢や性格を考えれば、自ら生命を絶つなんてこと、するはずがなかったのに。
自分を残して死んだ父を想う。年齢とか、可愛げのない性格だとか、色々複雑な事情があったため父の死を前にして、自分は泣けなかったが、ナルトはどうなのだろう。
喪失する哀しみを、この子は知っているはずなのに。
「おまえは泣いてくれる?」
オレの死を悼んでくれる?
「わっかんねぇ」
ナルトはジャガイモだとか人参の皮を剥くことに集中している。具材から察するに今日はカレーライスらしい。野菜を接種してくれることは嬉しいが、こんな時にナルトの視線を集めていると思うと、物言わぬ有機物ですら、憎らしくなってしまう。
「ねぇ、ナルト」
「………」
「もしおまえが火影になったとして、傍にオレがいなかったとしても、おまえはオレのことを思い出して、泣いてくれる? オレという人間がいたことを忘れないでくれる?」
カカシは、しばし躊躇ったのちナルトの髪の毛の一房に口付けた。陽だまりの匂いがする。
「なんで、突然んなこと言い出すんだよ。カカシ先生、死ぬ予定なんてないだろ」
「泣いてくれないの?」
「だから、わっかんねぇって…!」
突然、ナルトは腹に腕を回してくっついてくる銀髪の上忍を、ペシンと払った。
「カカシ先生のバカ!!」
「ナ、ナルト?」
こっち来んな!さわるな!唐突に始まった暴言の、オンパレードにカカシは目を丸くする。今にも調理器具やら野菜を投げ付けられそうな気迫に、思わず身構えたのだが、
「あれぇ…、ナールト」
片頬を手で擦りながら、カカシはこてんと首を傾げる。三十歳にもなって、その仕草はちっとも可愛くないのだが妙に似合うのがはたけカカシである。
「泣いてるの、おまえ」
碧い瞳に膜を張った水分。目の縁にこんもりと盛り上がってるのは、涙だ。どうやら、ナルトは声を押し殺して泣いていたらしい。そんなことにも気付けないなんて上忍失格かもしれない。
「泣いてくれてたの、ナルト」
「泣いてねぇっ」
「可愛い。ん、ちょっとこっち向いてごらん?」
「~~×☆※◇△」
タマネギのせいだってば!とナルトは、ジャガイモを持ちながら言った。
「………」
鼻先に突きつけられた野菜に苦笑して、カカシはナルトを抱き締めた。
「おまえ、本当に…」
「!??」
「愛しい…」
ぎゃーーーっ、と耳元で「さわるな」とか「変態」とかいう罵詈雑言が聞こえたが気にしない。そのまま、キッチンのシンクの近くに押し倒して、つっかえ棒代わりに差し出された抵抗する手のひらにキスをした。
「ちょ、何するんだってばカカシ先生!」
「ん? セックス」
「さ、さっきも、いっぱいシタってばぁああ!!」
「それは、それ。これは、これ。センセーは残念ながらその気になってしまいました。はい、諦めなさい。ナルト?」
服を乱し、肌蹴た胸元に顔を埋めると、暴れていたナルトが小さく声を漏らした。胸の突起を口に含む。それだけで「あん…」なんていい声が上がって、感度良好な慣れた身体を愛撫することにカカシは没頭した。
そのうちキッチンは二人分のため息で満たされて、ナルトの足は所在なく、宙を彷徨う。カカシはナルトの太ももを抱え上げると、自身をゆっくりと埋め込んでいった。
「あぁっ」
「ん…」
「あ、はぁ、んんっ」
別に、その日は何があったわけでもない。お互いの休みが合った久しぶりの休日で、幸せな一日を過ごしたあとだった。朝からナルトと同じベッドで目覚めて、だらだらと寝転がって、つまらないとムクれた少年のご機嫌を取るために昼は一楽で、修行をしたいと主張した子をベッドに引きずり込んで、セックスして。
どこにでもあるような、しかしカカシにとっては貴重な休日だった。ただ、忍という職業にある限り、死というものは陰法師のように付き纏う。ふとした拍子に掠める不安。幸せであればあるほど、忍び寄る死の影。
親が自殺した子供は死を身近に飼ってしまうらしい。誰が出した統計か知らないが、なんだかヘコむような研究結果で。カカシの場合は、人より生きることを諦めるのが早いかもしれない。なぜなら、命の重さは軽いのだ。己が、何千回という任務で奪ってきた人間の命のように。
「はぁ…、気持ちヨかった」
情事の感想を漏らして、カカシがペットボトルの水を煽る。その横で、ナルトは火照った頬を床にぺとんとくっつけて目を細めた。
カカシは傍らのナルトにもペットボトルを渡しつつ、窓の外に視線を移す。外はいつの間にか雨が降っていた。シトシトと大地を濡らす雨音。部屋は薄暗い。灰色の部屋で唯一色を持っているのは銀色と金色の頭だ。
ナルトは、カカシがベッドから手繰り寄せたシーツに包まっていた。だらん、と投げ出された足にはカカシが吐き出した精液が伝って零れている。
犯罪臭くてなかなか扇情的だね、とカカシは、ナルトの腰元を労ってやりながら笑みを零した。
「もう一回、スル?」
「飯、食いたいってば」
「動ける?」
「んー…、もうちょっと待って」
「出前か、それともオレが作ろうか」
「経費削減だってばよ。あとカカシ先生は包丁持っちゃだめだってば」
「どうして?」
「危ないから」
屈伸して、ナルトが起き上がった。散らばった服を掻き集め、上着を羽織ってのそのそとキッチンへと向かったナルトの背中にカカシは声を掛ける。
「で。ナールト。オレが死んだらどうする?」
「だからー、カカシ先生が死んだら殴るっつったろ」
「酷いねぇ。センセーは恋人間の暴力反対だよ」
見れば、上着を羽織ったナルトが片頬を膨らませて視線を落としている。
「センセー。オレを置いて行くなんて許さねぇからな」
絶対許さねぇからな、とナルトは碧い瞳を細める。
「センセーが死んだらシカマルとかキバとかと浮気してやるからな」
「はぁ…!?」
「サクラちゃんとも恋人同士になっちゃうからな!」
「お、おまえ。それは無理でしょ。サクラに殴られるよ?」
「ふーんだ。カカシ先生なんて余裕ぶっこいていればいいんだってば。最近のオレってばちょーモテるの。カカシ先生が死んだらアソビ人になってやるんだってば!」
あっかんべーとナルトがきゃんきゃん吠えると、カカシの目が据わって半眼になった。それはもう見事な三白眼であった。
「―――ちょっと、おまえ」
カカシに腕を引っ張られ、ナルトは床に転がる。「んだよっ」と抵抗すると、
「それ、ホンキ?」
「………っ」
ますます眉間に皺を寄せた大人に、至近距離で威圧される。
「そんなに怒るくらいなら、最初っからんな質問するな」
「………」
「カカシ先生はちょっと自分の命を粗末にし過ぎるってばよ。もうちょっとこの世に未練とか持って欲しい」
「なーに言ってんの。オレがいつ捨て身になったっていうの。大体、我が身を振り返らないって意味ならおまえの方こそそうでしょ?」
「そう、その言い方がムカつくんだってば。オレのことばっかり心配して、自分の方はないがしろだろ。もっと頑張れってばよ。いつもいつもチャクラ切れまで戦って、後先考えないで人のことばっかり助けて…っ!」
「ナルト……」
「それなのにカカシ先生はそういうの、表に出さないでサラッとやっちゃうから、知らない人には冷たい人間とか言われるし……オレってば時々そういうカカシ先生を殴りたくなる!」
「おまえねぇ…」
「センセーのバカ」
首筋に顔を埋められ、鎖骨の辺りを吸われる。
「カカシ先生はオレがいないとこで死ぬの禁止」
「えー? それじゃーおまえの目の前なら死んでいいの?」
「その時はオレがカカシ先生を死なせねぇの。とにかくオレがかっくいく助けに行くまでカカシ先生は待っててくれればいいんだってばよ」
「オレ、お姫さまじゃー…なーいよ?」
「そんなの、当たり前じゃん。オレたち、男同士だもん」
「ねえ、ナルト。頑張ったら何かしてくれるの」
「ちゅーしてやるってば」
「へぇ。ほぉ?それは、それは。ちゅーねぇ…」
「不満だってば?」
「だって、ちゅーでしょ。センセーは大人だから、もっとアンアンするような凄いことがいいなぁ」
「んじゃスッゲーちゅうしてあげるってば」
「す、凄いチュウ?」
「おう」
「ナ、ナルト…。い、今は?」
「今はナシ。あー、もう。ちゃっちゃと料理作っちゃうってば」
上忍が腰を浮かして凄いちゅーを強請りに来る前にナルトはキッチンへと向かった。





木の葉の里は硝煙の匂いに包まれていた。あちらこちらで舞い上がる煙や爆発音。数年前の木の葉崩しさながらの戦争状態だ。
カカシといえば瓦礫の山の中で身動きが取れずにいた。やたらと碧い空の下、上忍は空を振り仰ぐと、口布越しにハァー…とため息を吐いた。
「ダッサ…。オレ」
こんな姿ナルトには見せられないねぇ…。
今、ナルトが駆け付けたら、カカシ先生、まぁーたチャクラ切れ?なんて呆れた顔をされるかもしれない。そして盛大にお説教されるだろう。今にも幻聴が聞こえて来そうだ。
そのまま空を振り仰いでいると、澄んだ鳥の鳴き声が聞こえた。カカシの頭の上でぐるぐる舞うその鳥の名は…。ああ、あれはロクでもない俗称の鳥ではないか。
墓場(ナイチン)(ゲール)歌いながら穏やかな死をもたらす不吉な鳥。それが、崩れゆく里の天頂で悠々と飛んでいる。
オレはまだ死体でもないよ。ついでに言えば畑の案山子でもない。
だけど、オレにもしものことがあったとしても、ナルトには報せないで欲しい。あいつらの狙いはナルトの腹の中の九尾だから、ここに来てはいけない。
本当に、オレの恋人は人気者で困るよ…と自暴自棄めいたことを口の中でだけ呟いて、フラついてきた視界の中で、
『ナールト。凄いちゅーのあとは、なにしてくれるの?』
『その次はベッドでいいことしてあげるってば』
「はぁ…」
つまり、ナルトとベッドにインをしたかったら死ぬ気で気張れってこと。
親が自殺した子供は死を身近に飼ってしまう。誰が出した統計か知らないけど、なんだかヘコむような研究結果。
カカシの場合は人より生きるってことを諦めるのが早い方かもしれない。なぜなら命の重さは軽いから。カカシが、何千回という任務で奪ってきた人間の命のように。
だが、うずまきナルトに出会ってカカシは変わった。ただの道具でしかないと思っていた忍の職業を、好きだと思うことができた。
今は少し人生というものに前向きになってきたんだ。人生三十年目にして。そして何より。ナルトとベッドでキモチイイことしないといけないの。
んー…、怠け者のオレでもその約束なら守れそうだ。ねぇ、ナールト。墓場鳥を殺したのは誰でしょう。





 

 





 


 

 

 


 

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名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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