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空気猫

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数日間、ナルトの中でのもやもやとした気持ちは晴れなかった。あの女は誰だったのだろう。カカシの読んでいた手紙はなんだったのだろう、と疑問が湧きがってきて、当人に聞きたくとも聞けないという状態が続いたからだ。だからその日、歓楽街の中でナルトがその光景を目撃したのは偶然の出来事だった。
「どうしてだってば?」
見知った銀色の人影を捉えてナルトの足が止まる。安ホテルが入っている雑居ビルの前で、銀色の大人と、毛皮のコートを着た女が立っていた。
何か口論しているのかと思いきや女の方が、一方的にカカシに詰め寄っているようで、ナルトの見ている前で女の平手がカカシの頬に降ろされた。
「―――あ」
綺麗に流線形を描いた手がカカシを頬を叩いた。女はバックを何度かカカシにぶつけては、また罵っているようで、ナルトの心臓が早鐘のように速まるが、どうしてかその場を動く事が出来なかった。そのうちに女が去って、カカシの身体がズルズルと電信柱に背中を預けながら倒れ込む。
カカシを助け起こさなければいけないと思ったが、どうしてもその場から動けなくて、二人は何をしていたのだろうと、馬鹿な詮索ばかりしてしまう自分がいた。


『ナールト?』
「………」
『どうして、電話に出てくれないの?』
「………」
『ナルト……?』
その日、携帯にカカシからの着信が入ってるとわかっていたが、ナルトはどうしても電話に出ることが出来なかった。自分のそうした行為が、カカシを追い詰めているとも知らずに。





「ゲン兄、またな」
「おう。また来いよ」
夕方。繋ぎ姿の男に手を振って、ナルトは整備工場を後にした。手には土産が入ったビニール袋が提げられている。
ふぅ…とどこからともなく疲れたため息が漏れる。そして、ナルトは下を向いたとろで、見知った影が伸びていることに気が付いた。
「あ…」
そこに立っていたのはカカシだった。夕暮れ時に長く伸びたひょろひょろの影。
「ナルト。どこに行ってたの」
「………」
「ゲンマって奴のところ?」
無意識に後ずさってしまったのが、悪かったのかも知れない。カカシの表情が顰められる。しかし、それも一瞬のことで、すぐに彼の目は弓なりに曲がった。
「ナルト?どうしたの?」
「………」
「どうして逃げるの?」
どうして、彼はいつでも笑うのだろう。今はカカシと喋りたくなかった。あの女と何をしていたのだと、酷い言葉を浴びせてしまいそうで、怖かった。だから、ナルトは何も告げずに走り出してしまったのだが、その行為がどれほどカカシにショックを与えるのかナルトは知らなかったのだ。
「ナルト…?」
去っていくナルトの背中を見詰めて、カカシが不思議そうに首を傾げる。
「待ってよ。ナルト」
弾かれたようにカカシが走り出す。
「ははは。おまえもオレから逃げるの…?」
カカシは皮肉気に笑うと、必死で逃げるナルトの背中を追う。足が速いとは言え、ナルトのもつれる足だ。大人の足で追いかけられれば捕まってしまうのは容易で。
「ひぁ……っ」
どこかの工事現場に逃げ込んだナルトが、地面に転がって蹴躓いた瞬間に、カカシはナルトの足を掴んで、引き摺り寄せる。砂埃が舞って、ナルトは大人の下に組み敷かれていた。
「どうして、オレから逃げるのっ?」
「や、だっ」
「いつも、いつも。恋人のオレを差し置いて、いい加減にしてくれる?そんなにあいつがいいわけっ!?」
「……っ」
思ってもみなかったカカシの本音に、蒼褪めた表情でナルトがカカシを見上げた。
「……ち、ちがっ」
「なに、いいわけ?」
「ゲン兄はオレの本当の兄ちゃんみたいな存在なんだってば。だからカカシ先生とみたいにキスしたりなんて全然ないってばよ…」
「どうだか…」
「カカシ先生。オレのことを疑ってるのかよ?」
「それじゃあナルトはオレが妹みたいな存在と遊びに行くって言ったらどういう気持ちになる?」
「そ、それは」
「いやな気分にならなかった?兄みたいな存在ってことはね、恋人になり得るかもしれない存在ってことなんだよ」
「でも、オレってば全然そんなつもりはなくって…ただ飯を食いに行ってただけだってば」
「おまえは何とも思ってなくても、向こうには気があるかも知れないでしょ?」
「ゲン兄はそんな人じゃないってばよ…」
「〝ゲン兄、ゲン兄〟っておまえは懐いてるみたいだけどさ、あの男、下心が顔に出てたんだよ」
「………っ!」
ぽたり、とナルトの瞳から涙が零れ落ちる。睫の先を伝って大きな粒がアスファルトの地面に落ちた。
「酷い…」
「………あ」
「ふぇ。カカシ先生、酷いってばよ」
「………」
ナルトの嗚咽にカカシは一瞬怯んだようであったが。
「うるさい。オレを拒絶するなんて許さないっ。もうオレから離れられなくなるほど、いやらしい身体にしてやろうか…っ!」
「………っ!」
カカシの怒号と、剣幕にナルトの身体がビリリと電流を受けたように痙攣する。
下肢のチャックを無理矢理開けられ、下着にまで手が伸びる。
「違う、違う、違う…っ。カカシ先生、やめろってばぁっ」
「何がっ?何が、違うっていうのっ」
「お、お願…。カカシせんせぇ…やめて。いた、いってば」
ナルトの瞳から大粒の透明な滴が零れて、砂利に擦れてナルトの腕に血が滲んだ。そこで初めて我に返ったという風にカカシが、はっとする。
「痛い…」
「……っごめ」
ナルトの身体に付いた赤い痣。カカシの手形だ。
「ごめん、ナルト。ごめん、ごめんね。痛かったよね…」
自分が、ナルトを傷付けたのだという事実に気付いて、カカシは慌てた。
「手に痕が……」
「………」
「どうしよう、オレはおまえにどうやって償ったらいいだろう?」
怒っていたと思ったら、次は子供のようにオロオロとナルトの顔色を窺う。その仕草は酷く幼い子供のようで、脆く崩れ落ちそうな程、不安定だった。
「ごめん、ごめん…。嫌いにならないで…。おまえに嫌われたらオレは、もうオレでいる意味がなくなる…」
「カカシ先生?」
「ごめん、ナルト。愛してるんだ。ごめん、こんなオレがおまえを好きで、ごめん。許して、お願い」
「……」
頭を抱えてしまった、カカシを見て、ナルトはただ立ち尽くす。ややしばらくあって、ナルトが口を開く。
「ごめんなさいってば。カカシ先生。オレ、ちょっと先生と距離を置きたい…」
無情にも、ナルトはそう言ってしまったのだ。絶望したようなカカシの顔に、見ないふりをした。




 

 
 
 








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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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