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空気猫

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せっかくなのでパソの中で埃をかぶってたものをアップしてみる。
これのおまけ。→http://nekobiyori12.blog.shinobi.jp/Entry/263/
日記の方にアップするとつめつめぎゅうぎゅうになるね。読み辛くってすみません。改行があんまり好きじゃないんだ。







吸血鬼は、ナルトのことを「非常食」「子供」と呼んだ。雑な時は「ガキ」「クソガキ」となって、あとは、おい、とか、そこの、とか、そんな感じだ。ただ単にナルトと呼ぶ時はごく稀で、ほとんどない。けれど、存在を認識してもらっているだけで、ナルトは満足で、名前の呼び方なんて実際、どうでもいいことだった。事実、ナルトの本名はナルトではなくもっと長ったらしい今にも舌を噛みそうな名前だったのだが、拾われた当時まだ幼かったナルトは、自分の正式な名前を発音することも出来ず、なのでめちゃくちゃ略した言い方で自分を呼んでいた。だから、吸血鬼に自分の名前を教えた時もナルトはナルトで通し、やがて成長するにつれ昔の名前を忘れてしまった。ナルトは彼に拾われた瞬間から、ナルトになり、それ以外の何者でもなくなった。吸血鬼は無愛想で素っ気なかったが、ナルトはすぐに彼が大好きになった。
吸血鬼といえば、ちょっとしたことで仔犬のように纏わりつく子供を疎ましく思っていたものの、孤独の生活が長く続いていた彼だったから、邪険に扱うことはあっても、物珍しさも手伝って概ね友好的に子供と接していた。もっとも、ナルトは人間の子供であったから、それはいろいろ差し障ることもあったが。
ナルトが拾われて翌晩のことだったと思うが、小さな納屋を密閉しただけの寝床から起き上がったカカシは、部屋の隅っこにいる人間の子供に、おなかが空いたと訴えられ、愕然とした。
「そうか、何か食べないといけないのか」
その時は、偶然、部屋に転がっていたしわくちゃのりんごを発見し、なんとかそれで凌がせたが、彼は、彼と別の食事をするこの子供のために、これから毎日、何らかの食物を用意し与えなければいけない、という当たり前の事実をその時初めて突き付けられ、酷く狼狽した。正直、面倒だと思った。彼は自由気ままな生活を送っていたから、何かに制約される暮らしに慣れていなかった。今からでも遅くないから同じ場所に捨てに行くか、と半ば本気で思った。だが、自分を一心に見詰めてくる純粋そうな碧いまなこに結局カカシは根負けしたらしい。大きなため息を吐くと一言。
「とりあえず今晩はそれで我慢してくれよ。あとで適当に見繕ってくるから。好きなものとか、嫌いなものあるか?」
慣れない会話だった。希望通りにするつもりもないのにガキの好き嫌い聞いてどうする。あまりに普段の自分の会話内容とかけ離れているので、つい余計なことまで付け足してしまう。だから「なんでもいい」と言われて内心ほっとしたくらいだった。
「オレはこれから食事に出掛けるけど、大人しくしているよーに。ここら辺は治安が悪いからくれぐれも出歩かないこと。何かあってもオレは一切感知しない」
言い切って子供を見ると、子供はうつらうつらと舟を漕いでいた。
「これだからガキは…」
カカシは苦虫を噛み潰して外套を翻すと納屋を後にした。



キャバレーで女と少しばかり愉しみ、帰りに人狼のアスマに会ったのがいけなかったのかもしれない。少しばかり子供と隠れていた納屋に戻る時間が遅れた。
カカシが扉を開けた瞬間、黄色い物体がカカシの懐に向かって激突してきた。
「おい。いきなりなんだ…。おまえ…」
「………」
爪が白くなるほどしがみ付かれ、ようやくそこで子供が震えていることに気付く。寒かったのか、と思ったが、どうもそんな様子はない。だとすれば、と考えを巡らしてカカシはああと合点した。
「バカだなぁ。捨てられたと思ったの?ちゃんと帰ってきただろ。せっかく保存してる非常食を置いていくわけないデショ?なあ、よく考えてみなさいよ?」
それでも頑なな態度で頬を擦り寄せられ、カカシは今までに感じたことのない言いようのない感情に満たされた。
それは同情でもないし、ましてや愛情でもない。――ああ、このか弱い生物はオレが少しばかり気まぐれを起こしただけで意図も呆気なく死んでしまうのだ…。それは、確かに付き付けられた事実だった。だが、カカシにはそれがなんとも甘美なものに感じた。
人間との生活は面倒だったし、くたびれた。それでも彼は、子供を見捨てなかった。何度、放り出そうと思ったかわからない。しかし、彼を信頼しきって懐いてくる子供を見ていると、いかに非情になりきろうとしても心が鈍った。
そしていつしか年月が流れ、子供は少年へと成長した。
「ねぇ、ナルト。オレはあの時、おまえを拾って本当に良かったと思っているよ」
「唐突になんだってば。カカシ先生?」
「いや。少し昔のことを思い出してね」
カカシは隣を歩く少年を見降ろすと、優しく微笑んだ。カカシはこの界隈の社交界でも名の知れた伯爵、ナルトはその少年従者ということになっていた。従者の恰好をしたナルトを満足そうに見降ろしたあと、カカシはそっと少年の耳元に囁く。
「ねぇ、いい加減人ゴミにも飽きたし、そろそろ帰ろうか…?」
伯爵に扮した吸血鬼のカカシは従者であり今は恋人でもある少年の肩を抱くと、街燈の少ない路地裏に溶ける様に消えていった。ここにカカシの正体を知る者はいないし、二人の存在を怪しむ者もいない。
――実際、嫌われ者の吸血鬼をこれほど真っ直ぐに好いてくれる人間に出会ったのは初めてだったのだ。いつしか彼も子供を愛し始めていた。



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


もう二人はいろいろ致しています。
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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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