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空気猫

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木の葉商店街デートの帰り道。




 

 



正しいチョコレイトケーキの食べ方

「イチゴショート、アップルパイ、チーズケーキ、シフォンケーキ、シュークリーム、ラズベリーパイ…」
「ナールト、どれでもいいから早く決めちゃいなさいって」
「だってさ、だってさ、どれにしようか迷うってば~」
ショーケースの前で、カカシとケーキとを見比べて膨れている子供に、カカシは苦笑する。真ん丸くてふっくらしたほっぺも、困ったってばよと言って寄せられた眉も、可愛らしくて仕方がない。
「どれもおいしそうだってばよ~」
「もうそんなに食べたいなら全部箱に詰めて貰おうか?」
けろりとした顔で大人が言う。上忍の財布なら、それくらいなんてことないことだ。ナルトと付き合う前の話しだが、女に高価な宝石を強請られ、断るもの面倒で買ってやったことも何度かあった。
その時は女って強欲な生き物だよなと思い、誰かに物を贈ることに楽しみなんて感じなかったが、今は違う。この子の欲しいものならなんだって手に入れてあげたい。まさか自分がそんなことを思う日が来るなんて思いも寄らなかったが。
「店員さん、ここの端から端まで全部包んで下さい」
「えええぇっ。カカシせんせぇっ?」
カカシはケーキ屋の店員にガラスケースを指差して注文する。店員の女性は、上忍のはたけカカシと忌み子のうずまきナルトの組み合わせに若干の驚きを隠せずいたが、子供にメロメロな様子の上忍を見て「は、はい!!」と思わず背筋を正した。
ちろりと盗み見た〝うずまきナルト〟。以前、里の中で見た時よりも嫌な気持ちには不思議とならなかった。一生懸命ケーキを悩む姿。百面相のようにくるくる変わる表情は見ていて厭きない。
案外、普通の子供なのね。親がいないと聞いていたので、誰かに連れられてケーキ屋に来る機会も少ないのかもしれない。キラキラした瞳でショーケースを見る姿は、普通の子供以上にあどけなく、嬉しそうだった。彼女がケーキをトレイに移そうとすると、
「そ、そんなだめだってばよ…っ」
ナルトがオレンジ色のジャケットを握って、俯いていた。
「ナルト?」
「キャンセルでございますか?」
カカシと店員の女性が不思議そうに首を傾げる。
「どうして。遠慮することないんだよ?」
「もう。カカシ先生はすぐにそうやって無駄遣いする…。悪い癖だってばよ?」
ナルトは、自分の胸の辺りを掴んだまま視線を逸らして、ぷうと頬を風船みたいに膨らませた。
「オレってばカカシ先生の気持ちが嬉しかっただけなの。先生にたくさんお金を使わせたいわけじゃないんだってばよ…?」
多種多様なケーキの並んだショーケースを、ナルトは繊細な宝石細工を見る少女のように眺め、ほう…と感嘆のため息を吐いた。蕩けそうな瞳があちこちへと彷徨い、やがてある一点に留まった瞬間パァっと輝いた。
「あ。このチョコケーキがいいってばよっ。すごくおいしそう!」
「ふーん、じゃあこれね。すいません、このケーキこの子に一つ」
「はい。かしこまりました。これ、お一つで宜しいんですね?」
「ええ、これ一つで」
「お願いしますってば!」
オレってダメな大人だなぁと頭を掻きつつ、カカシは豪華絢爛なショーケースの中で取り立てて目立っていたとは思えない、小振りなチョコレイトケーキに目を落とした。
ちょこんとして丸くて可愛らしいフォルムがどこかナルトに似ていなくもない。
「ありがとうございました」
店員の女性の挨拶と共に、銀色の大人と金色の子供が手を繋いでケーキ屋を後にする。店員の女性は、ケーキの箱の中にこっそりと入れた小さなクッキーの包みに気付いて子供が歓声を上げることを想像しつつ、接客用ではない笑みを零した。





カカシの家でナルトはうきうきとした表情でフォークを片手にチョコクリームたっぷりのケーキを頬張る。
「あっまーいってばよ」
もきゅもきゅと両頬を膨らましてナルトは満面の笑みを浮かべる。カカシはそんなナルトがケーキを咀嚼する姿を肘を付いて愛おし気に見ていた。せっかく淹れたコーヒーは先程からちっとも減っていない。
「んくんく。カカシ先生、ありがとうってば、大好き!」
ケーキ1個でこんな可愛い顔が見れるのならいくらでも買ってあげたくなってしまう。やっぱりオレはダメな大人だよなぁと思いつつ、
「―――ナルト。ほっぺにクリーム付いてるよ」
「ふえ、どこ?」
「ここだよ」
きょとんと首を傾げたナルトを懐に引き寄せると、カカシはクリームのついたナルトのほっぺをぺろりと舐め上げる。
「!!!」
「あま…」
驚いたナルトの半開きの口にも唇を寄せて、ちゅっとキスをする。オッドアイの瞳が獲物を捕らえた猫のように狡猾に、そして細くなった。
「ん、とれた」
「もうっ。カカシ先生ったら!!」
ナルトは顔を真っ赤にさせて、腕をつっかえ棒にしてカカシを引き離すも、いとも簡単に大人のペースに巻き込まれしまう。
「ん、可愛い」
「ん…。やぁ……っ。せんせぇっ」
「ナールト。今日おまえをたくさん頂戴。オレにも甘いケーキを食べさせてよ?」
「…っんせ」
そのままナルトの口腔内を美味しく頂くカカシ。
「だめ、ってばよ、ッカカシセンセェ…やん」
ナルトの後頭部を片手だけで抑えて、カカシは子供の肺が悲鳴を上げるまで、深く長いキスを何度も、何度も角度を変えて交じわす。
「ん…っ」
「ナルト。ケーキ、もっと食べたい?」
とろんとナルトの視線が宙を彷徨う。カカシはテーブルの上のケーキを指ですくうとナルトの唇に押し付ける。
そのまま唇を合わせて、二人は甘い吐息を共有する。「やだ、離してってば」とか「カカシ先生のエッチ」なんて言わせる隙も与えないで、ズルい大人。
こんなケーキの食べ方をまだしていい年齢じゃないのにね?正しいチョコレイトケーキの食べ方なんてわからないけど、子供が行う食べ方とは掛け離れたこの行為。
オレの都合ばかり押し付けて、オレの欲望ばかり押し付けて、背伸びをさせている自覚はあるが、好きだから許して、なんて都合のいい台詞で誤魔化して、今日も明日も金色の稚児を貪る。
「んふ。ふぅううっ」
カカシはわざと音を立てて、押し倒したナルトから唇を離した。
「おいしかったね、ナルト…?」
「ふぇ…。なんかふわふわするってばよ・・・。オレってばなんかへん」
「え?」
はふはふと、頬を赤らめて子供の力がくてりと抜ける。カカシはいつも以上に潤んだ瞳に、驚いて身を離す。今日はやけに感度がいいと思ったけれど…。
もしやと思い、テーブルの上に置かれているケーキに視線を向ける。大人のカカシには気にならないほど微かだが、このチョコレイトケーキは。
「ん…。このケーキ、ちょっとだけお酒が入ってたみたいだね」
指で生クリームを舐めてカカシが苦笑する。おまえに夢中で気付かなかったよ、なんて暗部時代に鍛えた味覚もびっくりなミス。
だって仕方ないデショ。目の前にこんな美味しそうなおまえがいるんだから、―――……ね?
オレの感覚器官を狂わす、唯一無二の存在。
「熱いってばぁ…」
ごくりとカカシの喉が鳴る。助けてってばと、カカシの首に腕を回すナルト。ヒック、ヒックと泣きつつも甘えたように吐息を漏らすナルトに、カカシはイケナイ気分になってしまったのだけど。
「うぇぇぇ、目がぐるぐるするってばぁ」
「おまえ、可愛い酔い方するねぇ…」
とりあえず今度は子供に、チョコレイトボンボンなんてものも与えてみようかなと思案しつつ、今日のところは子供の大好きな啄ばむような甘いキスで我慢してあげよう。
 


 
 








 
 

 



 
「blue shooting star」の「ちょこ」さんの誕生日に寄贈した文章でした。 

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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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