空気猫
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突発、現代パラレル読みきりです。イチゴミルクとはまったく別物。
ええと、その・・・読まなくてもいいですよー。脱兎。
なぜって凄く個人的な話をカカシ先生とナルトに変換したものだから。
失踪ディズーmondayー
「助けてってば・・・」
小さく掠れた声で携帯に電話が掛かってきたのは、カカシがちょうど会社に出勤しようという時だった。定時刻よりもやや二十分ほど遅れた出勤時間。入社以来、遅刻癖のサラリーマンの代名詞を華麗に掻っ攫っているはたけカカシ二十九歳。ただし、仕事はできるので誰も嫌味を言えないというのが、誠に嫌味な男は、だけど携帯の向こうから聞こえる少年の声にだけは敏感に行動した。
「もう耐えられないってば・・・あの家から出るってば」
「ナルト・・・?」
只ならぬナルトの台詞にカカシは、会社へと続く自動ドアの前で、あんぐりと口を開けた受け付け嬢を残して踵返すとそのまま指定された駅のホームに向かった。涙で震えた声を見捨ててしまうことなんて出来なかった。
駅のホームに着くと、コインロッカーの隅にしゃがみ込んでいる金色の少年を発見した。
「どうしたの、おまえ!?」
憔悴仕切り蒼褪めた顔色の少年にカカシは驚く。目の下にクマを作り――、一睡もしていないのだろうか?カカシと繋がっていた携帯だけが頼りだとでもいうように手が白くなるほど握り締めている。
「カカシせんせぇ・・・」
ぽろぽろと涙を零し嗚咽する少年。そこにいつものような太陽の笑みはなくて。
「ごめんってば・・・頼れるの、カカシ先生しか思いつかなかった」
前にこの子と会ったのはいつだっただろうか。痩せて薄くなった身体を抱き締めて思う。やつれた顔は本当に可哀相としか言いようがなく、少年の身に何か異常な事態が起こったことは明白だった。
「どうしたの、ゆっくりでいいから話してごらん?」
「ごめんってば、カカシせんせぇ、お仕事だったってば?」
「そんなこといいから――今はそれよりもおまえでしょ?」
ね?と震える少年の頭をくしゃくしゃと撫ぜれば、へへへと泣き笑い。とりあえず、座れる場所を探し、プラットホームのベンチに二人が並んで座る。自動販売機で買った缶ジュースを渡せば「気が利くってばよカカシせんせぇ」と無理に明るい声を出すものだから「大人の魅力にくらくらするでしょ?」と全然笑える状況ではないのだけどおどけて返しておく。
「カカシ先生、オレんちの親って知ってるってば?」
「ああ、✖✖さんと✖✖さんだっけ?たしか義理の?」
「オレ、監禁されちまうかもしんねぇ」
「―――は?」
「カカシ先生とのことバレちまったの。男が恋人なんてありえねぇって大反対されて。オレのこと色狂いとか、淫乱とかよくわかんない言葉で罵りだして。家を出て一人で生活するっていったら部屋に鍵掛けられて、ずっと出してもらえなかった」
「おまえ、閉じ込められてたの?」
「必死で窓から逃げ出してきたんだってば・・・」
三日間、とぽつり呟かれた少年の腕には食い込んだような縄の痕があって、缶ジュースを持ったままカタカタと震えだした少年の様子に、彼が今しがた話した説明に嘘がないことを悟った。
「こういうのって警察に言ったほうがいいんだってば?でも証拠なんて何もないし、オレってばもうよくわかんねぇってばよ・・・」
金髪の少年が頭を抱える。
「もうヤダってば。ガキの頃からそうだったんだってば。門限の五時を一分でも過ぎたら、遊んでた友達に〝もうこの子とは会わないで下さい、迷惑です〟って言うの。そいつが泣いて〝もうナルトくんとは遊びません〟っていうまでずっとそいつのこと責め続けるんだってば。だからオレと遊んでくれる子なんて誰もいなくなった。小学校も中学校もずっと友だちなんてできなくて一人だった」
それは一種の愛情の形であったのかもしれないけど、過保護だと言い切るには何かもぞりとしたものを感じる行いをどう捉えていいのか、カカシには推し量ることができなかった。
「でも高校生になって、街で偶然カカシ先生に拾ってもらえて、オレの人生が変った」
カカシはナルトとの出会いを思い出す。今日と同じような格好で街のアーケードの隅にしゃがみ込んでいた少年。黒山の雑踏の中で一際目立つ金髪は、残業帰りのカカシの目を惹くのに十分な存在だった。真夜中に差し掛かる時分だというのに、どこかに帰る素振りすら見せずちょっと途方にくれた横顔。声を掛けたのは、その子のちがう表情を見てみたかったから。男だなんてこと不思議なことに考えもしなかった。
まだ未成年だということ一目でわかった。線の甘い顔立ち。細い未発達な骨格。だけど、カカシは気づけば少年を自宅のマンションに招きいれ、何かの熱に浮かされるように―――抱いた。
同性のセックスに抵抗を見せるかと思った少年は、甘い吐息を漏らして、カカシの首に腕を絡めてきた。まるで足りないものを補い合うように二人は求めて愛し合い、その日から二人は恋人同士になった。お互いのアドレスを交換し別れたのが、わずか一週間前のことだったのだけど、三日ほど前からぷっつりと連絡の取れなくなっていた少年がこんな事態に陥っていたとは思わずカカシは言葉をなくす。
「カカシ先生と会って初めて失いたくない人が出来たと思った。まだ二回ぐれぇしかあってないけどオレにはわかるんだってば。直感みてーなもんかな?オレにはカカシ先生しかいないって。だからオレってば今度こそカカシ先生としあわせになりたくて、なろうとしてたのに・・・」
初めて抱いた夜の日に、義理の両親のことは涙ながらに聞いていた。ぽつりぽつりとした説明であったが、少年の説明では彼等は彼に並みならぬ執着心を抱いているらしい。それを愛情と言ってしまえばそれまでだけど。
「なんで、あの人たちはオレの大事なモンを全部壊そうとするんだってば・・・?」
カカシせんせぇのこと、やっとみつけたのに・・・オレの大事な人なのに・・・それでもダメなんだってば?大切なものすら守れない自分の年齢が悔しい、と少年は咽び泣いて、カカシのシャツに縋る。
からん、と少年の手の中の缶ジュースが落とされる。
「・・・・ナルト」
床にトクトクとこぼれたオレンジ色の液体を見つつ、カカシは金色の頭を抱きかかえる。職場の同僚には決断はいつだって早いほうだといわれる。とくに、それが大事なものであるほど。
「・・・オレと一緒に暮らす?」
「え?」
「おまえがそんなに辛いなら、オレのとこにくればいいでしょ?」
「だって・・・そんな迷惑ぢゃ・・・」
「そのために呼んでくれたんぢゃないの?大人のオレを頼ってくれたと思ったのに、センセイ、ちょっとがっかりするぞ?」
「ほんとにいいんだってば・・・?」
「オレの大切な恋人でいてくれるならね?」
おどけたように言ってみせれば、くしゃくしゃに顔を歪めた少年が一時息を止めたかと思うとわああああと泣いた。
「おまえ泣き顔ぶさいくだねー」
とカカシが言うと少年はぽかぽかと大人の胸を叩いたのだけど。
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職業 ノラ
趣味 散歩・ゴミ箱漁り
餌 カカナル
夢 集団行動
唄 椎名林檎
性質 人間未満
日記 猫日和
ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。