空気猫
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木の葉マート、休日の昼下がり。いつもと違う時間帯にやって来た大人が一言。
「ナールト、バイトのあと暇?」
「へ?」
「外に飯食いに行かなーい?」
あのあと警察に呼ばれて事情聴取を取られたり、店長のチョウザにストーカー男のことがバレて「なんで言わなかったんだい!」と怒られたり心配されたり、(カカシ先生にも相談してって言ったデショと怒られ)色んな事があり、気が付けばもう9月という季節だった。
カカシがナルトのコンビニに通い始めて早2ヶ月程の歳月が経っていた。その間の二人の進展と言えば、あの夜の公園でキスをして以来まったく進んでいない。今時は中学生でももう少し発展が早いだろう。
「ご飯だってば?」
「そ」
「せっかくなんだから行ってくればいいじゃないかい?」
横のヤマトにも言われて、ナルトはうーんと考え込んでしまう。カカシの「ナルトの気持ちが追い付くまで待つよ」という申し出を受けてからというもの、カカシは本当にナルトに何もして来なかったし、プライベートで会う事もなかったのだ。
「明日、休みだし今日は9時上がりだから平気デショ。バイト終わる頃に店の外で待ってるからさ?」
「カカシ先生が迎えに来てくれるんだってば?」
「いや?」
「いやじゃねぇけど」
「飯っていってもそんなに堅っ苦しい所ではないし、――たまには誰かと一緒に食べるのも良いデショ?」
こういう時、顔の良い人は本当に得だと思う。そんな笑顔は反則だ。だってあまりに上手にカカシ先生が誘うから。こんなの断れないではないか。頭の中のナルトの言い訳をもしヤマトが聞いたなら、呆れ返った所だろうが、自称・恋人未満の大人と少年はそんな経緯で食事に出掛ける事になった。
「居酒屋…?」
「そ。ここならなんでも食べれるし、いいデショ?」
未成年を連れて来ていいんだってば?と思いつつ、ナルトは物珍しさからキョロキョロと店内を見回す。そうしてる内にも「バイト上がりだからお腹空いてるでしょ?」右から端に注文を始めたカカシを「わーっ」とナルトが止めつつ、結局おつまみ各種を少しずつ頼み、ナルトの口にはツクネ、カカシは日本酒を飲んでいる。
「ナルトー、ラーメンサラダってのもあるよ。頼む?」
「食う。―――カカシ先生ってばこういうとこよく来るの?」
「ま、たまにね。気楽だし。アスマとかと」
「アスマさんって前のあの大きい男の人だってば?」
「そ。あいつがまた大酒飲みでね~。ま、美人の奥さん貰って結婚してからは控えてるみたいだけど、あれはバカバカそれこそ熊のように飲み食いするの」
会話は相変わらずぽつりぽつりとではあるが途切れることはないが、なんで今日に限っていきなり誘われたんだろう、とそんなことを考えていると、電子音と共に携帯が鳴った。メールの受信ボックスを開いてみれば、
「うげ。キバからだってば!明日、抜き打ちで服装検査?ちぇ、また頭のことで呼ばれるってば」
「友達から?」
コクコクとオレンジジュースを飲みながらナルトが頷く。
「オレってば、これが地毛なのにさー、学年主任が黒く染めろーってうるさいんだってば。髪染めんなっつってるのに、黒染めはいいなんておかしいってばよ。すげーオーボー」
「あはは。そんなへりくつこねてる奴、オレの時代にもいたなー」
「これってば正当な理由。オレってばぜってーケンリョクには屈しないってば!」
「で、結局みんなで仲良く職員室に呼ばれて説教されるわけね?」
拳を握ってやけに熱く語る少年に大人がツッコミを入れて、「それは言わない約束だってばよ、カカシせんせぇー」とナルトがガックリと肩を落とす。
「ま、おまえの場合は本当に地色なんだからちょーっと気の毒だよねぇ」
「そう思う!?思う!?カカシ先生ってば、〝センセイ〟なのになかなか話しがわかるってばよー」
へらっと笑った少年におだやかな視線を送りつつ、カカシはグラスを傾ける。「今日はオレの奢りだからいっぱい食べときなさいよー」と少年の皿に今しがた運ばれてきたラーメンサラダを野菜を多めにどばーと盛り付け「ぎゃー野菜はノーサンキュー!!」慌てて取り皿を避難させようとする少年のおでこを腕で押さえ問答無用で食させ、カカシは背を丸めてくくくと笑った。
「ううう、カカシ先生ってばやっぱやっぱ〝いやーなセンセー〟だってば」
「はいはい、なんとでも言いなさい。おまえねー野菜食べないとそのうち本当に死ぬぞ?」
「し、死ぬの!?」
「うん、死ぬよ?」
真顔でニッコリ笑ったカカシにナルトはザザザーと蒼褪める。もちろん野菜を食べなかったからといってそう簡単に人間が死ぬものではないと思うが、カカシが言うと妙な圧力が有るから不思議である。
「ナールト、そんな顔してないで笑ってよ?」
「今は無理っ。カカシ先生ってば、オレをそんなに苦しめて楽しいんだってば!?」
「おまえ、面白いこと言うね?」
涙目になって野菜を箸で突く少年に苦笑しつつ、カカシは少々悪趣味な蛙のストラップのぶら下がった携帯にふと目を向ける。
「ナルトー。その携帯ってさー」
「……んあ?」
皿の上の野菜と睨み付けていたナルトが首を捻る。
「……例の変な電話が掛かって来ていた携帯?」
ぼそりとナルトにすら聞こえない呟きを漏らし、カカシは徐ろにナルトの携帯を手に取る。
「カカシ先生?」
ナルトが止める間も無くカカシは、ぼっちゃんと飲み掛けのグラスの中に携帯を落とした。
「あーっ」とナルトが大きな口を開けて呆然と黄金色のカクテルの中に沈んだ己の携帯を見詰める。
「オ、オレの携帯。カカシ先生ってば、何すんだってばぁ!」
「あ、ごめん。つい―――」
「オレのメモリィィ!!!」
ついってなんだってば。ついで人の携帯をグラスの中に落としちゃうんだってば!?
カカシを見れば、カカシは例の呆然とした顔で己の手元と携帯とを交互に見ていて、自分のやった行動の意味を計り兼ねている顔で首を捻っている。
「ごめん、ごめん。それじゃあオレが新しいの買ってあげるから」
「そ、そういう問題じゃねぇってばよ。データの控えとか取ってないのにぃ!」
「あらら」
「なんかさ、なんかカカシ先生ってちょっとズレてるってばよ!」
「あー、そうかも。よく人に言われるんだよねぇ」
自覚しているけど治そうとする意思が見られないカカシの様子にナルトは呆れてしまう。それどころかカカシは、暢気な顔で笑い出す始末だ。
「よし、一緒に携帯買いに行こうな。そういえば前に手を繋いで携帯ショップに入ったらカップル割引になるってサービスがあったけど、あれってまだやってるのかな?」
笑えない冗談、ではないかも知れないが、際どい冗談を言い出すしたカカシに、「カカシセンセー…」とナルトが物凄く何か言いたそうに睨む。
「ん。ごめんな?」
と言いつつ、カカシは瞳を伏せてお酒を飲んでいる。その姿はとてもサマになっているし、格好良いとも思う。だけど、どこにスイッチがあるかいまいちわからない大人。その矛先はナルトに向けられることはないようだが、ナルトはこうした大人の一面を見る度に、オレってばカカシ先生のことを何も知らねぇんだよなとしみじみ思ってしまう。
どうやらカカシの話を聞く限り一般的なお勤め人ではないようだが、この件に関しては何故かはぐらかされたままで、いつまでも身分を明かしてくれない大人に、オレってばもしかして遊ばれてる?と思わないでもない。
だけど、カカシはナルトを好きだと言ってくれる。言葉や態度を見ればそれに嘘が無いことがわかる。改めて自分の立場を振り返りナルトは思うのだ。自分はもしかしたら凄くカカシに大切にされているのではないかと。
普通の男なら、好きな人間を相手に色々と致したい気持ちは男なら当然あるだろう。仮にもカカシと同じ性を持っているナルトはその気持ちがよくわかる。
それなのに、「待っている」というカカシの言葉が改めて信じられない。いつまでも返事をしない相手に対して、ここまで優しく出来るものだろうか。
おそらく―――。これはナルトの予想だが、カカシが少しでも本気を出せば、自分などいとも簡単に組み伏せられてしまうと思う。体格的な違いはもちろん、どうやらイロイロ慣れていそうなカカシなら無理矢理自分を抱いてしまうことだって出来るはずだ。
それなのに、まるでナルトの歩幅に合わせるように、歩いてくれるこの大人は…。
ナルトの心の中がまた温かくなる。
「ナールト。次で最後の注文だけど何か食べたいものある?」
真夜中近くになってカカシが腕時計を確認しつつ、お冷とまた何かを店員に注文しながら言った。
「最後にちょっとだけ飲んでみな?」
「?」
日本酒を中心に、舐めて味わうのが主流の酒を先程から結構なペースでグラスを傾けていたカカシが、ラストオーダーした酒は、今までと趣が違った。琥珀色や黄金色とも違う、新しく運ばれて来たピンク色の液体にナルトは目を真ん丸くさせる。
大人に促されて恐る恐る舐めて見れば、
「イチゴミルク?」
「―――の、カクテル。飲み易いでしょ?」
頷きつつ、甘さに誘われて結構なペースで飲んでいると、
「はーい、そこまで」
すかさずグラスを取り上げられる。わしゃわしゃと頭を撫でられ、若干ぽやんとした顔でカカシを見上げれば、「おまえお酒弱かったんだねぇ」と苦笑された。
甘い雰囲気を漂わす二人に、伝票を置きに来た店員が不思議そうに首を傾げたが、金髪の少年の髪を愛おし気に弄る男の表情に、「見てはいけないものを見てしまった人」特有の気不味い表情を浮かべ、赤面と共に退場した。もちろんほろ酔い加減になり、カカシの肩口に頭を預けていたナルトは知る由もないことだった。
居酒屋を出たのは真夜中過ぎ。道路は人通りも無く、歩く道は二人っきり。やはり車道側を歩くカカシの横には、ナルトが片足飛びをしつつ、ポケットに手を突っ込んで歩いていた。
未だにカカシの隣に歩くのが気恥ずかしく、そんな自分を誤魔化すために、「よっと!」とナルトは堀の上でバランスを取る。
「おまえ、危ないデショー」
ナルトのパーカーをカカシが引っ掴んで、赤になった信号を指差す。
注意された所で交通量なんて殆どない時間帯だ。居酒屋を出てからというもの口数が少なくなった大人に、ガラにもなく緊張してしまったとは言えるはずもなく、決まりが悪いなぁなんて思いながらナルトはニシシと笑った。
アルコールでふわふわした足取りのナルトに、カカシは苦笑と共に「右見て左見て~」と言いながら、ナルトのパーカーを掴んだまま横断歩道を渡る。
「ひ、ひとりで歩けるってばよもう!カカシ先生ってば時々オレのこと子供みたいに思ってる時あるだろー…?」
「だっておまえ危なっかしいんだもん。いきなり飛び出しそうだし」
う…。と詰まった少年に、カカシはまた苦笑した。
「今日、オレの誕生日なんだよねぇ」
「へ……?」
そろそろ肌寒い季節。トレンチコートを羽織りナルトの一歩先を歩いていた大人の台詞に、ナルトが固まり、仰け反った。
「って、えええええええっ!」
「どうしたの、ナルト?」
「たたたんじょうびって今日!?」
「まぁ、正確には昨日?」
12時過ぎを差した腕時計を確認しながら、あっけらかんとカカシが答える。金髪の少年はカカシの告白に、目をしぱしぱと瞬かせた後に、がっくりと肩を落とした。
「どーしたのナルト?」
「カカシ先生…。オレってば今日が先生の生まれた日だって知ってたら誕生日プレゼント買ってくるとか、するってばよ」
モゴモゴと呟いた少年は、更に片手で拳を振るってもう片方の手でカカシを指差す。
「それに今日、カカシ先生の奢りじゃん!」
「いいよ、オレが奢りたかったんだから」
「な、なんでだってば~」
訳が解らず、大口を開けてカカシを見上げればにっこりと笑みが返って来た。
「誕生日にナルトと過ごしたかったんだ。ありがとうね」
ナルトはまたしても静止画のように固まり、ぱくぱくと口を動かす。なぜ、そんなこと不意打ちで言うのだろう。それも、今になって。反則だ。最初から言ってくれたら。……言ってくれたら?
「………」
―――自分はどうしたのだろうか。そんな日に一緒にいれないと断った?それとも…?
「ナルト、おまえは深く考えなくていいからね。オレが勝手にした我儘だから」
「!?」
ナルトの心情を呼んだのか、先手を打ってカカシが気遣ってくれる。その手慣れた大人らしい所作がナルトには哀しく映った。
「カカシ先生は…、なんでオレが好きなんだってば」
目元まで赤くなったナルトは自然と声を落とす。
「ナルト?」
「だってオレってばガキだし、男だし、全然カカシ先生に好きだなんて言って貰える良いところない」
ずっと気になっていたことだ。なぜ、自分みたいな子供をカカシは好きになったのだろうか。カカシのような男性なら綺麗な異性の恋人など選り取り見取りだろう。
「オレは、カカシ先生のことキライじゃねってばよ?上手く説明できねぇけど、オレってばカカシ先生になら…、その、触られても嫌とか思わねぇし、一緒に居ると安心するっていうか……」
トレンチコートの大人は黙ってナルトの言葉を聞いて居たが、柔らかな微笑みを唇の端に乗せて手近にあったガードレールに腰掛けた。
「嬉しい告白だな」
「え」
「オレは、気が付いたらナルトのことを好きになってた」
「へ?」
「好きの始まりなんていつだってそんなものだよな」
カカシは夜空を振り仰いで笑う。
「コンビニでナルトを見つけて、ちょこちょこ働いている姿とか、いつも一生懸命な所とか、素直なくせに結構負けず嫌いな所とか、可愛いなぁと思った。毎日、会いたくなって、顔が見たいとか、声が聞きたいなとか、思い出したら止まらなくて気が付いたらコンビニに足が向いていた」
こてんとカカシが首を傾げる。
「これじゃ、ダメ?」
「っ!」
「人を好きになるなんてね、自分でコントロール出来る方が珍しいんだよ。ナルトは、誰かを好きになることを止めることが出来た?」
カカシに訊ねられ、ナルトは、綱手や工場の皆、シカマルやキバ、チョウジを思い出す。止めることなんて、出来なかった。どんなに頑なに拒否しようとしても、罅割れた大地がやがて再生するように、ナルトの大切な人たちは増えていった。それはナルトが目を逸らし考えないでいたことだ。
人を好きになることは怖い。だけど、好きにならずにはいられないのも人間で、人と人との中で生きていく限り、きっと好きになることも嫌いになることも、傷付くことも止めようがなくて、道を歩けば誰かと肩がぶつかる。生きるっていうのはそういうことで、そしてすれ違うたくさんの雑踏の中で、ただ一人を見つけることは、誰であっても困難なことで、無難な人で済ましてしまう人、何となく選んでしまう人、この人と決めては何度も変えてしまう心変わりの激しい人、人間の数だけ様々な形がある。だけど、ナルトにとっては、誰かを必要以上に好きになることは、踏み出せずにいた一歩で、だって優しくしていなくなるくらいなら初めからいらないのだ、あの夕焼けの日のように…。
同級生の女の子を好きだという気持ちは、その子が別の人を想っているから、きっと成立していた想いで、彼女を好きなのだと思うことで誤魔化して正当化していた自分の気持ちをちゃんとわかっていた。
本当のナルト自身は孤独だった。誰も本当の意味で好きになったことがなかったから。
だけど、今、ナルトの目の前には温かな手が差し出されている。自分はこの大人と、肩を合わすほど近くで歩き初めていいのだろうか。この優しい人は、自分と一緒に同じ時間を同じ距離で歩いてくれるのだろうか。それがもし、一時的なのものであったとしても?
そこでふと考える。もしこの大人が己から離れていった時、自分はどれだけ傷付くのだろう。終わることを考えてしまう癖はまだ抜けそうになくて、だけど、どうしてだろうか。カカシのことだけは信じてみたいと思ってしまう。いいや、ちがう。もしカカシが自分から離れていっても、カカシを信じた自分を後悔しない、とそう思えるのだ。
ふ、っとナルトの視界が開けた。涙の足跡を辿れば、まだあの夕焼けの日と繋がっているが、この優しい人となら新しい一歩を踏み出して見るのも悪くないかもしれない。
「カカシ先生。オレってば決心した」
「え?」
「オレってばカカシ先生の恋人になりたい」
「!」
ナルトの言葉にカカシが電撃を受けたように固まる。
「…え?…は?……ええと、ナルト。今なんて?」
口元を覆い、珍しく動揺した様子のカカシにナルトはきょとんとする。
「カカシ先生?」
「あ、ごめん。足が震えて立てなくなりそうだ」
えええ、とナルトが慌てた様子でカカシに駆け寄ると、大きな腕にやはり壊れ物のようにそっと包まれた。
「まさか今日、返事を貰えるなんて……」
「そのつもりで言ったんじゃねーの?」
「伝わったらいいなーくらいだよ。それなのに、夢見たいだ。だけど、本当なんだよな―――うわ、うれしくて心臓止まっちゃいそ…」
突然、骨が軋むほど強く抱き締められる。
「わ、カカシ先生!?」
「もう好きなだけ抱き締めてもいい?」
「へ?」
「好きなだけさわってもいい?」
「っ」
「オレの――、ナルトになってくれるの?」
大人が覆い被さって来て、「キスしていい?」とお願いされてナルトは顔を真っ赤にさせる。
「いちいち聞くなってばよ…!」
「え。聞かないで欲しいの?」
「んなんじゃねーけど……んっ!」
言い掛けたナルトの唇にカカシの唇が重ねられる。ふっと息を吹き込まれ、不意打ちのキス。
「ん」
甘苦…?口の中に広がるイチゴミルクの味に、ナルトはアルコールのせいか、今までにない熱情的なキスのせいか、酩酊感に襲われる。―――ああ、さっきのカクテルだ。
大人の舌から移されたイチゴミルクの味と、以前にされたものよりも深く味わい尽くすようなキス。カカシの口付けはナルトの息が切れるまで続けられて、お互いの唇が離された瞬間、甘い吐息が漏れた。
「おまえの口の中って甘いねぇ、さっき甘いもの食べたっけ?」
「カカシせんせぇは、お酒臭いってば」
「あらら」
ぷは!と息を吐き出して、ぎゃいぎゃい騒ぐナルトに、ごめーんね?カカシは謝罪したが、反省の色は薄く、やはりわかっているのかわかっていないのか見当も付かなかった。しかし、ナルトはその日誕生日のカカシに最高のプレゼントを贈り、帰宅したのだ。
並んだ背中。ちょっとおかしな常識を持つ歪な大人と囚われていた過去から歩き始めた日向かいの少年。踏み出した一歩は僅かであったのだけど、確実に、そう確実に。
おまけ
「カカシ先生ってば今からでもなんか欲しいもんねぇ?オレってばカカシ先生にプレゼントあげたいってば」
碧い瞳をキラキラさせて自分を見上げた少年に、もう十分に貰っちゃったんだけどねぇとカカシは苦笑してぽんと頭に手を載せる。
「別になーんもないよ?」
「それじゃぁ、つまらねぇじゃん!」
口を尖らせてぐいぐいシャツの袖を引っ張られ、15歳にしては子供っぽい少年の仕草に、カカシはしばらく考えたあとにニンマリと口の端を吊り上げた。
「なー、なー、なんか欲しいものないんだってば。なーんでもいいんだってばよ?」
「一つ思い付いたよ、ナルト」
「なになに、なんでも言っててば?」
色違いの目を細めた大人は無防備な笑顔を見せる少年に向かって、悪戯っぽく微笑んだ。内緒話をするようにカカシが口元に手を当て、ナルトへと屈み込んで、
「じゃあね今度は、ナルトを頂戴?」
「!!!」
ぼそぼそと耳元で囁かれたその台詞。それに含まれている意味を知らないという年齢でもないナルトは、にっこり微笑んだカカシにこれまでになく顔を真っ赤にさせた。
End
カカシ先生ハピバ!(どんだけフライング!?)
現代パラレルイチゴミルク編、完結です。
そんなわけでナルトくん男の人とお付き合い初めてしまいました。
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10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
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職業 ノラ
趣味 散歩・ゴミ箱漁り
餌 カカナル
夢 集団行動
唄 椎名林檎
性質 人間未満
日記 猫日和
ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。