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空気猫

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現代パラレルシリーズ番外編2
キバ→ナルト






「もし足の不自由な人が階段をのぼろうとしていたら貴方はどうしますか?」


小学校の道徳の時間に、無個性に並ぶ黒山の教室の中で、小学校教師が投げた質問に子供たちはヒヨコが水鉄砲をくらった時のようにがぽかんと口を開けたが、しかしすぐに正解だと思われる答えを弾き出した。
「大丈夫ですかと声を掛けてあげます」
「手を貸してあげます」
「その人を助けてあげます」
良い子の学級新聞に載せたくなるような模範的な解答に彼女は己の生徒たちを満足げに眺めた。手を挙げてハキハキと答えた生徒の中には、飼育小屋のウサギに爆竹を仕掛けたりする男の子たちや、徒党を組んで派閥を作ったり、友人同士で悪口を言ったりしている女の子たちもいたが、そんな事は道徳の時間に関係ないのである。
「ばっかじゃねーの?」
「犬塚くん」
小学校の先生は「まぁ」と口に手を当てて白いジャンバーを被った少年を見つめた。
彼女の絶対統制下にある小さな王国で反抗する子供が一人。
「それじゃあ、犬塚くんはどうするのかしら?」
ヒクついた笑みを浮かべつつも彼女は柔和な声色で少年に尋ねた。
「オレは絶対助けねぇな」
机の上に足を乗っけたお行儀の悪い格好のまま、キバが答えた。小学校の先生がまた「まぁ」と口に手を当てて恐ろしい生物を発見したように受け持ちの生徒を見つめた。
犬塚キバといえば素行の悪い生徒で有名で、教室の中にまで飼い犬を連れて来ては何度も校長室に呼び出しをくらっていたので、教師たちの間でも心象が良くなかった。
彼女は自分のクラスから問題児が出ることを恐れていたので、これからはとくに注意をして少年を見張っていなければいけないわね、と心のメモ帳にしっかりと刻み込んだ。
もっとも自分が担任を受け持っている時にさえ問題を起こさなければ、それでいいのだけど。
「まぁまぁ」と大袈裟な仕草で口に手を当てた教師を、キバはつまらなさそうに眺めつつ、大口を開けてのたまった。
「オレは何もしねぇ。それで手ぇ貸して階段のぼってもそいつは嬉しくねぇと思うから。大丈夫ですかっつーのはそいつを助けることじゃねぇよ。だってもし助けたらその瞬間にああそいつは1人で階段上がれねぇなって決めつけてるじゃん。オレはんなことしねぇ」
しんと静まった教室の中で、教師は、その答えに貼り付いたように固まってしまった。
まぁこれらのことの発端は、彼女がその日の朝礼の時間で「今日から波風ナルトくんはご家庭の事情でうずまきナルトくんになります。今、ナルトくんは大変傷付いています。優しくしてあげましょう。みなさん変らず仲良くしてあげましょうね」と彼女がもっともらしく言った台詞のせいかもしれない。
キバはそれまでナルトとそれなりに仲が良かった。学校が終われば普通に遊んだし、軽口も叩きあったし、喧嘩もした。
それなのに、今日ナルトは教師の言葉によって「特別」になってしまった。昨日のナルトと何も変わらないはずのに、なんでナルトは腫れ物のように扱われなくてはいけないのだろう。子供心にも偽善的な教師の言葉が何か気に食わなかった。
キバは「まぁまぁ」が口癖のひっつめ頭の教師が苦手だったが、何も同情する事が悪いことだと思っているわけではない。同情はとても優しい気持ちだと思う。だけど、軽薄な好奇心とは別物だろう。
女の子たちは普段はナルトのことを気にかけてもいなかったくせに、ナルトを取り囲んでいた。彼女たちは心からナルトを同情しているということを身体全体で表現していた。それは一種の伝染病や流行病にも似ていて、可哀想な子だとナルトに労わりの言葉をかけ、さも気を使うように世話を焼いて、そんな優しい自分自身に酔っていた。
彼女たちの大袈裟な一挙一動は、ナルトを心配しているというよりは、親切な自分を周囲にアピールしていることが見え見えで、ある意味、女子ってホラーだとキバは思った。
「おい、ナルト!」
放課後、キバはわざと教師の前でナルトに声を掛けた。だって仕方ない。ナルトがひっつめ頭に掴まっていたからだ。「困ったことがあったらなんでも先生に相談してね」ひっつめ頭の台詞にナルトは困ったように頷いていた。
「ナルト!」
キバは自分より幾分か小さいナルトの手を握る。
「名前が違くなるとか、ちょーカッケーじゃん。オレも名前変えてーっ。つーかナルトばっか目立ってズルくね!?」
「いいいい、犬塚くん!!」
慌てたような小学校教師に、キバは舌を出して、ナルトを引っ張り出した。
肩を遠慮なく叩かれたナルトはぽかんと口を開けた。
「ナルトー、サッカーしに行くぞ!負けたほうが駄菓子屋で奢りなっ」
「それ、オレもノった」
「ボクも」
後ろから一つ縛りの少年と、お菓子を手に抱えた小太りの少年が続く。
「キバ…シカマル、チョウジ」
ぷっくりとした頬が赤く染まる。
一拍置いて、ナルトが弾けたように笑った。
「おう!キバなんかに負けねってばよ?」
「ナ、ナルトくん!?」
ニシシと笑い声を残し、転がるように子供たちが駆け出す。あとに残されたのはひっつめ頭の女教師で、やっぱり子供っていうのは無神経なのね、と小学校教師はただ呆然と子供たちを見送った。



昼休みの終了を告げるチャイムと共に犬塚キバはゆっくりとまぶたを開けた。見上げれば青い空と、―――キラキラ光る太陽。思わず眩しくて目を細めていると空の上にいるはずの太陽が、姦しく喋り出した。
「キバ。早くしねぇとイルカ先生の授業が始まっちまうってばよ」
しゃがみ込んでキバを見下ろしていたのはうずまきナルトだった。「置いてくぞ、めんどくせぇ」「キバ。寝すぎだよ」とちょっと遠いところでシカマルとチョウジの声もする。
ナルト、シカマル、キバ、チョウジの四人は同小、同中、同高だ。キバはあの時からナルトとは対等な立場でいてやるんだと心に決めていた。可哀想だとか、遠慮だとかは絶対してやるもんかとナルトと付き合ってきた。
「ナルト、オレ様を見下ろすんじゃねーぞ」
ナルトのくせに生意気だぞ、とキバはナルトのシャツの袖を引っ張ると、「うわ」とナルトがバランスを崩してキバに覆い被さる。
スローモーションのように、金色が視界いっぱいに広がって、蛙を押し潰したような声がキバから上がった。いくら平均より軽いナルトとはいえ男一人分の体重に内臓圧迫されたのだ、仕方あるまい。
「いてて。―――ごめん、キバ」
つんつん頭を振りながら、ナルトの声が耳の近くで聞こえた。洗い立てのシャツのいい匂いがした。ナルトは一人暮らしだから自分で洗濯しているのだろう。同じ男のくせに、清潔感のあるナルトにキバは戸惑ってしまう。こういうところはガサツだと思っていたのに。
「………キバ?」
四つん這いになってキバを見上げる同じ年のダチ。こいつこんなに睫毛長かったっけ…と男にしてはきめ細かい肌と、喉仏の目立たないほっそりとした首筋に魅入られる。
よくよく見れば造作の整った顔立ち。金色の睫毛といい、シャープな輪郭といいすべてが繊細な造りをしていた。
―――って、なに見惚れているんだっ。相手はナルトだぞ!?ナルトとは小中学校の頃からずっとダチで、イタズラ仲間で…
だけどやたら大きな碧い瞳や、半開きの唇から目が離せない。最近、ナルトが変わった。キバの知らない表情をするようになったのだ。元々中性的であった顔立ちをからかいの種にしたこともあった。だけど、キバはなんでナルトが色っぽく見えるようになったかそのわけを知らない。まさか男の彼氏ができたなんて、キバは思いつきもしないだろう。
ナルトの唇はリップクリームも塗ってないくせに、クラスの女子よりつやつやとしていて、キバの心臓が早鐘のように速くなったところでナルトの身体がキバから離れた。
「シカマル、あのさ授業終わったら相談してぇことあるんだけどいい?」
シカマルに懐いていった金髪の友人のあとをキバが追い駆ける。
「……またか」
「シカマル~~!!」
「わかったつーのめんどくせぇ」
シカマルに懐いていった金髪の少年のあとをキバが追い駆ける。
「おい、ナルト。シカマルに相談ってなんだよ」
「!?」
瞬間ナルトの瞳が落っこちるのではないかというくらい大きくなる。
ボボボボッとナルトの顔が赤くなって、「いやあのっ」と恥じらったように慌てる小学校の頃から見慣れてるはずのダチの顔。
「バーカ。ぼさっとしてねぇでさっさと教室に行くぞ」
「うわっ。シカマル」
シカマルにウチワ代わりの下敷きで頭を叩かれてナルトは逃走気味に階段を下っていく。
「んだよ、あの顔」
自分だって同じくらい赤い顔になっていることに気付かずキバはそっと呟いた。
オレは、ヒナタを好きなはずなのに。なんでナルトにドキドキしてるんだよ。それは不規則な旋律を奏でる心音のノイズミュージック。











 
 
 
 
 


ちなみにキバくんが言っていた言葉はバンプオブチキンのボーカルの人が言ってたことです。 
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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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