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空気猫

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そんなわけで仔狐を飼うことになりました編7



 


名前を呼んであげましょう―

「はい、〝ナルト〟。言ってごらん、おまえの名前は〝ナルト〟だよ」
「ぐるうるるー」
「違う、違う。口の開き方はこう。おかしいねぇ。声帯には問題ないから練習したらすぐに喋れるようになるはずなんだけど…」
やはり、いきなり発音は無理なのかと思いつつも、人間の言葉をほぼ理解している仔狐は、きっかけさえ掴めれば喋りだすのではないか、とカカシは考えていた。この子が喋れないのは、まともに喋りかける人間がいなかったためだろう。
そんなわけでムニっと頬を引っ張りつつ、牙をきゅっきゅっと弄っていると、ナルトの顔がくしゃくしゃになった。
「ケン!」
「いたっ」
かぷっとカカシの指にまたしてもナルトが齧りついた。ふわふわの尻尾でぺしりと顔を叩かれて、そんなものはちっとも痛くないが、四つん這いで逃げ出した子供に「こら、待ちなさいナルト!」つい強い口調で言ったのが不味かった。
仔狐はびくんと全身の毛を逆立てて、部屋の隅っこのカーテンの中に隠れると、尻尾を丸めてしまった。
それ以来いくら呼んでもうんともすんとも言わず、唸り声すら上げない。完璧な無視。ちっとも進歩しない関係。それどころか、後退している気がしないでもない。嫌われちゃったかなぁとカカシはやっぱり後頭部を掻いた。





猿飛アスマ27歳。彼を形成する単語。髭、煙草、上忍、…はたけカカシの数少ない友人。
「カカシ、なんだその奇天烈な生き物は!?」
「アスマ、うるさいよ。ナルトがびっくりしてるでしょ。それにその暑苦しい顔をナルトに近付けないでくれる?」
チャイムを鳴らし、のっしのっしと友人宅に入ってきたアスマは、勝手知ったる何とやらで、迷うことなく(迷うほどの広さもないという)はたけ家の居間に到着すると、殺風景な部屋の中で、やけに目立つ、金髪碧眼の子供を発見した。
「おまえ、とうとう幼児趣味の犯罪に走ったのか…」
しかも、カーテンの裏に隠れている子供は三角耳にふわふわの尻尾付きというなんともマニアックな格好。おまけに身体はガリガリで、ちょっと虐待にあったような風体だ。「拉致・監禁」なんて失礼な単語までアスマの脳裏に思い浮かんでしまった。とうとう仕事が忙しくて脳までやられたかと疑い深かそうな顔でカカシを見ていたアスマは「失礼な想像しないでよね」と先に釘を差されて、まぁ座れよと長椅子…ではなく床に促された。
なぜなら長椅子がベッド状態になっていたからだ。で、本物のベッドがどうなっているかというと、黄金色の毛と中身を出された枕の綿が散乱していて、まぁ大体どういう事態になっているかは察しがついた。
のんびりと茶を啜りながら今日までのいきさつを聞いたアスマは、おまえが拾いものねぇと鼻を鳴らした。
「そういや、てめぇは昔っから人間には冷てぇくせに、捨て犬には優しかったな」
「いや…、まぁ」
実を言うとカカシの忍犬たちは捨て犬だったり、保健所に処分されそうになっていた犬たちだった。
「半人半獣の仔狐ねぇ」
スパスパと煙草を吸いながら、アスマが好奇の視線をナルトに視線を向けると、三角耳の子供はびくんと身体を強張らせて、遊んでいたカカシ人形を抱き締める。
「おー、おー、警戒してる警戒してる」
「おい、アスマ。あんまりからかうなよ」
むっとしたようにカカシが注意すると、アスマがへいへいと肩を竦めた。「やけに可愛がってるなぁ」とあと一言二言冗談を口にしようと思ったアスマだが、友人の目がやけに真剣だったので止めにした。
そんな二人の様子を横目で見ていたナルトは、抱き締めていたカカシ人形の頭の部分をハムッと齧った。





「で、あの仔狐をどうするつもりだ。このまま置いておくのか?」
「あの子に行く所がないなら、そのつもりだよ。だけど、さすがに忍犬と一緒の扱いにするわけにはいかないし、一度は火影様に報告に行こうと思って」
当たりめぇだ、とズレた感覚の友人の頭を叩きつつ、アスマは顎を擦る。
「あー…、こいつの出所に心当たりがないでもないがな」
「大方、金持ち連中が主催のブラックマーケットとかでしょ」
「そんなとこだな」
「ま、オレが一匹くらいネコババしたって構いやしないでしょ」
吐き捨てるように、カカシが呟く。
「はー、いいんじゃねぇか。今のところどっからも文句は出てねぇみてねぇだしな」
脱走したのか、捨てられたのかまではわからないが、金持ちに買われた子供の末路なんて胸糞悪くなるだけだ。
忍の世界にいるとそうしたことにも詳しくなる。きらびやかな豪邸の地下に用途不明の座敷牢があるなんてことはざらで、家主が依頼人である限り、気付いてもアスマたち忍にはどうすることもできない。見てみぬふりをするだけ。
―――目の前の子供は、獣耳と尻尾を除いて見れば7、8歳くらいのガキだ。痩せた身体に人を相容れないギラギラした瞳。同じ年頃の甥っ子を持つアスマとしては、複雑な心境となる。
いっぱいカカシに美味いもん食わして貰えよ、となんとなく心の中で激励を送りつつ、アスマは「まぁ、なんだ」と切り出した。
「てめぇに懐いてるみたいだし、このまましばらくここに置いてやったほうが幸せかもしれねぇなぁ」
「いや、オレも懐かれてるのか微妙なところだよ。むしろちゃんとコミュニケーションを取れてるのかも……、謎」
最後のあたりは尻すぼみになり、説明していて落ち込んだのか、はたけカカシはがっくりと肩を落としている。
「で、今日はなんでおまえを呼んだかというとね」
「ああ、珍しかったな。てめぇから呼び出しなんて」
「ちょっと火影様に挨拶してくるからさー、それまでコイツのこと見ててくれる?」
「ああ?」
アスマがダミ声を出し、それまでカカシ人形で遊んでいたナルトの耳がぴくんと反応する。
頭部から出たカカシ人形の綿をモクモクと口に含みつつ、ナルトは注意深くカカシの動向を観察している。
「どうもこいつをまだひとりで残していくのは心配なんだよねぇ」
「オレは子守か」
「そ。よろしく~」
「上忍雇うと高けっぇぞ!」
「はいはい、飲み1回で」
ほっぺに綿をいっぱい詰め込んで、カカシたちから少し離れた床に座るナルトに苦笑して、カカシは腰を浮かす。
「ナルト~、ちょっと出掛けてくるね」
「!」
帰りがけに新しいおもちゃでも買ってあげようかなと思いつつ、いい子にしてるんだよ?と手を振りながら、カカシが立ち上がると、
ナルトは、ぽかんとアスマとカカシを見比べたあと、
ダッシュでカカシの腰に突進した。
それもほとんど四つん這いで、その速さ、まさにケモノの如し。
「お。ナ、ナルト?」
「なんだぁ?」
腰にきた衝撃に驚いてカカシが振り返れば、きゅう、きゅうとカカシにしがみ付く仔狐一匹。
床の途中にはころんとカカシ人形が捨てられていた。
そんな一人と一匹の様子を見ていたアスマは「ぶはは」と吹き出した。
「はぁー…。オレと二人っきりにされるのはイヤだってよ」
アスマが煙草を吹かしながらニヤついた笑みを浮かべる。カカシは困ったように、腰に巻きついてくる三角耳と尻尾付きの子供を見下ろした。
「ナルト、おまえねぇ。オレは出掛けないといけないんだけど?」
カカシが後頭部を掻くと、イヤイヤと小さな爪先が真っ白くなるまで、服に爪を立てられる。
「困ったなぁ」
「もう火影邸に一緒に連れてけばいいんじゃないか」
「まだ人前とか無理でしょ、この子は」
「抱っこして連れてけや」
「んー…、でもねぇ。こーら、ナルト。離れなさい?痛いでしょ?」
己の忍服に食い込んだ五指を一本ずつとって、やんわりと抱き上げようとすると、
「なうと!」
ばっと手を払われ、代わりに腰に腕を回され、潤んだ瞳でナルトがカカシを見上げた。
「なうと…!なうと…!なうと…!」
「え?」
壊れたオルゴールのように、なうと!と繰り返す仔狐。
「なうと、いっちゃだめ……」
「………」
そこでようやくカカシは「なうと」の言葉の意味を理解した。同時に笑いも込み上げてくる。カカシは、膝を折ると、ぽふぽふと泣き出した仔狐の金糸を撫ぜた。
「バカだね、〝ナルト〟はおまえの名前だよ…」
きょとんと首を傾げた、狐っ子。三角の大きな耳も一緒に傾いでいるから面白い。
「オレは、カカシ。おまえはナルト」
カカシは人差し指をナルトの胸にあてると「ナルト」と呟き、今度は自分の方を指して「カカシ」と呟く。
ナルトは碧い瞳を真ん丸くさせて、精一杯カカシの言葉を聞き取ろうとしているようだが、「あー」と「うー」と、考え込んだあと、
「なうと……」
カカシを指差して、こてんとまた首を傾げた。カカシはナルトの肩に両手を掛けたまま、がくんと項垂れて、「ゆっくり覚えていこうねぇ」と苦笑した。
その日はナルトが始めて自分の名前を呼んだ日になった。





「あー…、お二人さん。いいところを邪魔して悪いんだが」
こほんこほん、と空咳をして、一人と一匹で世界を作っていたカカシとナルトに話し掛けたのは何を隠そう、来客だというのに、ナルトのよだれでベトベトの床に座ったままのアスマだ。
「カカシ」
「なに」
「オレはてめぇが世間様から変人奇人だといくら言われてようが、根はまっとうな人間だってよく知ってるつもりだ。その、なんだ付き合いの長い友人だから言うんだけどな…」
アスマのやたら前振りの長い話を、カカシはナルトと向かい合って抱き合ったまま聞く。
ちなみにカカシはアスマの顔が正面に来る位置にいて、ナルトはカカシにしがみ付きながらもアスマの方へと振り返って三角耳をぱたぱたさせている。
つまり、アスマの位置からはナルトの後姿がモロにみえるわけで…
三十手前の男は、赤面したように、半人半獣の仔狐から目を背けた。
そして、苦肉の表情で一言。
「…………てめぇ、パンツぐらい穿かせろよ」
「へ?」
「そいつのことだ」
「ナルト?」
「なうとー!」
覚えたての言葉を繰り返す金髪碧眼の子供に、残忍非道と巷で有名なはたけカカシが蕩けるような笑みを零す光景を、半分魂の抜けた状態で見つつ、アスマはガシガシと頭を掻き回した。
「そのまんまの格好だとよう…、その、いくらガキでも差し障るだろ」
「なにが?」
大人がそんな仕草をしてもちっとも可愛くないのだが、こてん、とカカシが首を傾げる。
思わず、腕の中のナルトを見直すが、カカシにはアスマが顔を顰めるわけがわからなかった。それよりも、今までは抱き上げるだけでも生傷ものだったのに、さきほどのことで、わだかまりが解けたのか、ナルトが大人しく、カカシの腕の中に収まっていることに感動した。
そのうえ、カカシがどこにもいかないと安心したのか、ふくふくしたほっぺをカカシの上服に摺り寄せてくるのだ。これが可愛くないわけがない。
「あー…て・め・ぇ・は!ガキ相手にダラしねぇ顔で弛んでねぇでもっと他にやるべきことがあるだろうがよぉ!」
アスマの怒鳴り声に、ナルトのふんわりとして、それでいてふさふさの尻尾がピンと立つ。「あー…、また見えた」とアスマは片手で目頭付近を覆って天井を仰ぐ。
カカシが首を傾げるとナルトも一緒に首を傾げ、こいつら親子か…となごむまではいい。だが、カカシの貸したTシャツを一枚羽織っているだけのナルトの下肢は、今まで家に人間がカカシだけしかいなかったためツッコミを入れるものが現れなかったが、何も穿いていない状態なのである。
尻尾が上がれば、尻が丸見えという…なんていうか傍目から見ていて、居た堪れないというか、目のやり場に困る光景が広がるわけで、つまり先程四つん這いになってナルトがカカシに駆け寄った時、アスマはばっちりと、ナルトの尻とか局部とか色々見えた。
もちろんアスマには異性のボンキュンボンとした恋人がいるわけだから、子供のおいろけシーンなぞ見ても露ほども感じない。しかし、だ。
「パンツぐらい穿かせろ」
会話の議論は初めに戻った。
「おまえ、なんだって可愛がってるガキにこんな格好しかさせてやんないんだ」
「いや、だってオレの服の裾を折って穿かせても動きづらいのかすぐ脱いじゃうし、小さい子って、外でも公園の噴水とか見るとぽんぽん服脱いじゃってない?」
それと同じ原理で、心が子供のナルトも本人が恥ずかしくなければ、例え下半身がヌードの状態であってもいいのではないかというのが、はたけカカシの言い分だった。
「てめぇの言いてぇことはよくわかる。おまえの趣味が年上の清楚系だということも良く知ってる。しかしな、世の中には世間の目っつーのがあって、独身の男のアパートに下半身すっぽんぽんのガキがいたら色々差し障るんだよ!」
後生だからこの微妙なニュアンスで理解してくれ、オレに皆まで言わすな!というアスマの願いも虚しく、「なんで」と疑問符を飛ばした友人にアスマは、頭を抱えて蹲った。
結局、オレがやらねば誰がやる…ではなく、オレがやらないと友人が捕まる、と思ったアスマは立ち上がった。
「子供用の半ズボン買ってくるからそこから動くなよ、そのガキ抱えて玄関を一歩もでるなよ!?」
何度も念を押すように釘を刺して、上忍速度で商店街に走ることになり、あとに残されたカカシはナルトを抱っこしたまま、ナルトの噛み癖でぼろぼろになったシーツの上にボーっと座ることになった。
「おかしな髭クマだねぇ、ナルト」
「なうとー!」
「そうそう、上手上手」
暗殺のプロ、はたけカカシがそれ以外では結構なヌケ作であることは一部の友人にだけ知られてる事実である。
「だーかーらー、おまえはダメだっていうんだよ!」
この非常識人!朴念仁!
大人なのに、友人知人からそしられることのわりと多いはたけカカシ26歳であった。



 










ペットライフのカカシ先生はちょっとズレてるけどまともな人です。
あと「ナルトがしゃべった!」はハイジのテンションで。
 
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こんばんは

 コメントはお久しぶりです。が、ほぼ日参させて頂いてます。「ペットライフ」のナルトが可愛くて可愛くてメロメロです。
たまらなくイイですvv ナルトの「なうと~」のセリフ… 
カカシ先生同様、はうぅぅんvvキューンですよ
 そして「ナルトがしゃべった!」はハイジのテンションで、ということで…例のアレですね「ク○ラが立った!!」ワーイワイvv
このテンションで間違いなかったでしょうか?(笑)
 ナルトは綱手様に御対面するのですか?続きを楽しみにしています。ナルトを巡って綱手vsカカシとか…!?うふふ
百合 2008/09/03(Wed)00:45:14 編集
こんわばんわ~v
お久し振りです百合さま(^w^)はい、ナルトがしゃべった!はそのテンションで笑。日参~・・・ありがとうございます!よ、よく見捨てず通って下さって頭ぺこり…と猫、感動ですわーいわーいv
おお、綱手vsカカシですか!ペットライフのカカシ先生とナルトに限り勝負が見えてるような気もします笑。
ペットライフは猫ブログでは珍しいナルト→カカシなのでv(真剣に言ってますよ~)
飼い主にだけ懐く狐っ子にキュンとして頂ければなによりですコメントありがとうございましたkiss!
空気猫  2008/09/04(Thu)00:14:48
空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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