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空気猫

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そんなわけで仔狐を飼うことになりました編8
 







飼育許可を取りましょう―

「狐の子のぉ……」
「おそらく半人半獣でしょう」
火影邸の執務室。カカシはこの里の最高責任者と向かい合っていた。ナルトはカカシの首に腕を巻きつけたまま、狐耳をパタパタさせて二人の人間の会話に聞き耳を立てている。
火影の視線が紙面からナルトへと注がれると、ナルトはきゅっとカカシのベストにしがみついて尻尾を丸めた。「大丈夫だよ」とカカシがナルトの背中をあやすように撫でる。
微笑んだカカシの顔をぽかんと見つめたナルトは、カカシの表情を真似るように牙を見せて笑った。そんな二人の様子を見ていた火影はふうむと何事か考えた後頷く。
「ま、よかろう好きにせい」
書類にポンと判子を押しながら、三代目火影が答える。
「おぬし、表情が柔らかくなったの」
「は?」
「眉間の皺がとれたわい」
からかうように含んだ言い方をする老人に、なんと返していいかわからず「はぁ……?」と後頭部を掻いて、はたけカカシは火影室を退室した。





はたけカカシの髭の友人、猿飛アスマは顎をさすりつつ、自分の正面に座る一人と一匹と向かい合っていた。
カカシの腰には棒っこのように細い腕がしっかりと巻き付けられていて、吊り目気味の青玉が警戒したようにアスマのことを映していた。まるでカカシを取られるとでも思っているように。
(おいおいおい、勘違いだよそりゃぁ)
ゾッとするような勘違いをする子供にアスマの吸煙量がスパスパと増える。アスマがはたけ家の敷居を跨いだ瞬間、子供の三角耳は「侵入者」の気配を感じ取ってぴんっと立ち、アスマを一瞥すると、一目散にはたけカカシへ向かって駆けて行った。
それ以降、ナルトはアスマが話しかけてもぎゅっと目を瞑り、カカシの腕の間に隠れて、視線すら合わせようともしない。それどころかカカシの傍に居れば安心とでもいうようにくっついて離れない。
はぁ、とアスマからため息が出る。
「オレの買ってきた半ズボンはどうした」
「家にいると脱いじゃうんだよ」
そりゃめんどくせぇな…、とアスマは額に手を当てた。「今度、紅にでも相談してみるか」
このままではどうにも目がチカチカする。ついでに頭はくらくらする。
「随分と懐かれてるじゃねぇか」
「いや、この間からだよ、本格的にこうやって離れなくなったのは」
ちょっと今までの反動で過剰気味だけどねぇ、とカカシはのらりくらりと答える。
「おーい、狐っ子。オレのことは覚えてるか?」
きゅうきゅうとカカシの腰に腕を巻きつけていたナルトは、アスマに喋りかけられると、ぷいっとそっぽを向いた。
「嫌われちまったなぁ」
苦笑して、アスマが忍服のポケットから煙草の箱を取り出す。
「んー…、今のところオレ以外の人間には大体こんなものだよ?この間火影様のとこに行った帰り道もこんな感じだったしねぇ」
友人にフォローを入れながらカカシは、ナルトの顎をこしこしと撫でる。すると、狐耳の子供の瞳が心地よさそうにきゅうぅっと細められた。
「まぁ、なんとかオレが危害を加えない人間だってことはわかってくれたみたいだけどだねぇ」
「ほぉ?」
「他の人間と比べればオレが信頼できる、と思ったらから、余計に離れなくなったと思うんだよねぇ」
ね?とカカシが膝の上のナルトに同意を求めた。
カカシが頭を撫でると、ナルトの耳が気持ち良さそうに垂れて、まるで「もっと」とでもいうようにナルトはカカシの腹のあたりに頭を摺り寄せた。
「……なんつぅか」
アスマがカチカチとライターの火を点けて煙草を吹かす。
「そうしてっと飼い主とペット見てぇだな」
きょとんとカカシとナルトが同時に首を傾げて顔を見合わせた。ブワハハハとアスマが爆笑する。白い煙も一緒に吹き出された。
「へ?」
「犬猫にしちゃぁちとデカいがな」
己の頭の上で笑いあう人間二人を見上げて、ナルトは、眉の根を寄せる。「・………」まだ単純な回路しか存在しない思考回路を働かせ、しばらくの熟考したあとナルトはカカシの指に軽く歯を立てた。
「な、なんだ?」
「ああ、大丈夫だから。甘えてるだけ」
「は?」
「こーら、ナルト。だめでしょ?」
カカシが注意するも、ナルトはカカシの腕にぶら下がって、熱心にカカシの指に噛み付く。
すりすりとカカシの長い指にじゃれついて、カプりと両手でカカシの手を持って甘噛みする。以前のように、血が出るような噛み方ではなく、やわやわとカカシの五指に小さな牙を立てる。
くすぐったさから、カカシはクククと笑いをもらした。
「なんだか噛み癖がついちゃったみたいなんだよねぇ」
カカシは困ったように頭を掻きながらも、満更でもないという様子で頬を弛ませた。「はぁ…?」と「へぇ…?」の境目の表情のままアスマは、しばらく唖然と煙草を吹かす。
友人のカカシが、自分の予想していた以上に、拾いものの半人半獣の子供を気に入っているらしい、ということが少々意外だった。
はたけカカシという男は、そう簡単には誰かを己の懐の中に入れない。
それなのに、今のカカシは、鼻の頭をこすりつけるように、ナルトに擦り寄られ、「今はお客さんと話してるからあっちに行って遊んでなさい」と、口ではいさめているのだが、「きゅうん」と甘えたような鳴き声と共にイヤイヤと首を振られると、それ以上咎めなかった。
「やっぱり凄い勢いで懐かれてねぇか」
「そう…?」
「今、どうみたって焼きもち妬いて寂しがってただろ、そいつ」
「は?なんで」
「相変わらずこういう微妙な感情にはニブいよなぁてめぇは。おまえとオレが仲良くしてたから、仲間外れにされたって思ったんだろ」
「まさか」
「いやそうだろ」
「……そうなの、ナルト?」
己の膝の上の子供にカカシが視線を落とすと、目が合った瞬間に、
「なうと……」
と、にへーと笑ってナルトがカカシの頬を舐め始める。動物のスキンシップに近い行動なのだろうか。パタパタと尻尾が振られて、丹念に口元も舐められる。
「ん?おなか空いたのか」
「ケン!」
おお、通じ合っている、通じ合っている、とアスマは、台所に向かった男の足に、尻尾を振りながら纏わりついて行った仔狐の姿を見送った。




「………カカシ、そのメシはなんだ」
「うーん……?」
胡乱な視線を感じてカカシは、底の深い皿に視線を落とす。しばらく考えたあと「ああ……」と合点が言ったようにのろのろと口を開いた。
「初日にラーメンを食わせて以来、味をしめちゃったみたいで、ラーメン以外食わないんだよね。それだと栄養が偏っちゃうからご飯を混ぜてるんだけど」
「炭水化物と炭水化物摂らせてどーするんだよ。野菜とか食わせろ」
「……野菜ねぇ、なるほど」
二人が会話をしている間も、カカシの持っている皿目掛けてナルトがぴょんぴょんと飛び跳ねて、よだれを垂らしている。
「なうと、なうと、ごはん、ごはん、ごはん」
「はいはい、今あげるから待ってなさい。それにオレはカカシだからねー」
さっくり訂正を入れつつ、カカシがフローリングに皿を置くと、間髪入れずナルトが食事にガッつく。ナルトの食べ姿を見て呆れたため息を吐いたアスマだが「きちんと飼い主してるじゃねーか」と笑いを噛み殺しながら呟いた。
「………だからさ、アスマ。飼い主って、何。この間、こいつを忍犬と一緒にするなって言ったのはおまえでしょ」
「くはは。だってよォてめぇらを見てると……コントみてぇつうか、喜劇っつうか」
「ちょっとオレはいつでも真面目だよ?」
カカシが半眼で睨むと、「いいじゃねぇか」バシバシとアスマがカカシの肩を叩く。
「まぁ、こいつが懐いてるのは今のところおまえだけだろ?」
「まぁね」
「しっかり〝飼い主〟しろよカカシ」
「飼い主ねぇ…。そんなつもりはなかったんだけど」
「とりあえず最低限のテーブルマナーくらい教えてやれや」
カカシは傍目には凡庸な表情で〝ペット〟と呼称された狐の子供を見下ろす。
「ケン!」
食事を終えたナルトは米粒だらけの顔で、ニカっとカカシに飛びつく。小さなミサイルに突っ込まれた弾みでカカシは後ろのめりになって、上忍らしくもなく床に後頭部を強打した。
「痛いよ、ナルト」
わりと平素の声を出して叱ったカカシの首元に抱きついてナルトがパタパタと尻尾を振った。







 





 


そんなわけで仔狐を飼うことになりました編 終了。
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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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