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空気猫

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反撃に出る子狐。





 
 

「ベッドに行くってば?」
「んー…、今日はこのままヤリたいな」
キッチンのテーブルの上に転がされたオレは、いつものようにカカシ先生とセックスをしていた。今日はちょっとだけ服を乱されただけの格好。カカシ先生に揺さぶられて、オレの足が所在無さげに宙にぷらぷらと浮く。
「ナルトー、今日はやけに静かだねぇ」
「ふぇ、う、うん?そうっ…かな?…っん」
「ま、黙ってると女の子みたいだからいいんだけどね」
「………」
やがてオレの中に何度か精を叩き出したカカシ先生が長い息を吐いてオレの肩口に突っ伏した。いつものパターンならカカシ先生はセックスが終わると、すぐオレの中から出て行くのに、今日はなぜかぐずぐずとオレの中にいたままで?
「カカシせんせぇ?」
オレはカカシ先生の背中に腕を回して、汗でしっとりと濡れた銀髪に顔を向ける。
「……なんか喉渇いたな」
ぽつりと呟かれたその言葉にオレってばびっくりしちゃった。
「コーヒー飲むってば?」
ドキドキする心音がカカシ先生にバレてしまわないだろうかと思いながらオレは先生に尋ねる。
「…おまえんちコーヒーなんかあるの?」
はっきり意外だと書かれたカカシ先生の顔。オレの心拍数はいよいよ上がってしまう。
「ええとその…、お客様用だってばよ!」
「ふうん?」
本当は前にカカシ先生が上忍待機所でコーヒーを飲んでいるのを見て、スーパーで買っておいたんだってば。だからカカシ先生専用。カカシ先生はすぐ帰っちゃうから今まで出す機会がなかったけど、オレってば美味しいコーヒーの淹れ方、イルカ先生に教えて貰って練習したんだってばよ!…カカシせんせぇ、飲んでくれるかな?
「カカシ先生、コーヒー好きでしょ?オレってば、コーヒー淹れてくる!スゴクおいしく淹れられるの!」
早くしないと先生の気が変っちゃうと思ったオレは焦ってカカシ先生の下から抜け出そうとして。
「うわっ、待ちなさいナルト。いきなり動いたら…!」
「え?ひぁあっ」
オレってば中に先生のが入っていたことをすっかり忘れてしまっていて、おなかの中で動いた棒の感触に悶絶する。
「~~~~っっ」
「ナールト、だーいじょうぶ?」
「っっだい、じょぶ。ごめんってば、せんせぇ…」
涙目になりながらオレが応えると、カカシ先生がくくくと笑ってゆっくりとオレの中から出て行ってくれる。
「んひゃ……」
「ふー、もう動いていいよ?」
労るように頭を撫ぜられてくすぐったい気持ちになる。上着は着たままだったから下だけ履いて、
「あのね、すぐだから、すぐ淹れて戻ってくるから…カカシせんせぇ、ここで待ってて…?」
何度も振り返りながら、キッチンに向かうオレを見て「別に消えちゃわないから、前見てゆっくり歩きなさいよ?」ってカカシ先生はテーブルに腰を預けておかしそうに苦笑している。その笑顔に見惚れていたら、びたん!て転んじゃった。うう、痛いってば。よろよろとまだ力の入らない腰を抑えつつ、オレはキッチンに向かう。背後でカカシ先生の笑い声がまた聞こえて、それがとても耳に心地よかった。
「おいしいってば…?」
テーブルに手を突いて凭れ掛かったままのカカシ先生にコーヒーカップを渡す。カカシ先生が黙って飲んでいるので、不安になって尋ねたら短く、ん、って答えてくれた。
「なあに、ナルト。じぃっと見ちゃって。オレの顔がそんなに珍しいの~?」
「えっ。べ、別にそんなわけじゃねーもんっ」
「ふふふ、わかった。オレがあんまりいい男だからオレに見惚れてたんでしょ~?」
「ち、違うってばっ。カカシせんせぇってば自惚れてるんじゃねーの!?」
「ふうん?そーいうこという子のお鼻は摘まんじゃおっかなぁ~?」
「ふんぎゃっ」
手足をジタバタして抵抗するオレの鼻先を摘み、カカシ先生がコーヒーを片手に持って微笑んでいる。なんだか、なんだか普通の恋人同士みたい…、かも。
隣に座るカカシ先生の横顔はやっぱり格好良くて、いつ見てもドキドキしてしまう。せんせぇ、今日はお泊りしてくれねぇかな?一緒にいてくれねぇかな?今日こそは大丈夫かも。なぜかわからないけど唐突にそう思って。
「あのさ、あのさカカシ先生ってば、今日って暇…?」
だからオレってば、ありったけの勇気を振り絞ってカカシ先生に話し掛けた。
「夕ご飯食べてかねぇ?オレってば料理もできるよーになったんだってば。えっとね、カカシ先生の好きなものも作れるの。秋刀魚の塩焼きでしょ、ナスの味噌汁でしょ…」
全てが言い終わらないうちにカカシ先生が飲み終わったコーヒーカップをテーブルに置く。かちゃんと冷めた音を立てたそれと一緒にオレの心も凍り付いた。
「せんせ……、だめ?」
「悪いけど無理かな?これから行くとこがあるし」
「いっちゃうの?」
膨らんだ気持ちがしぼんでしまう。
「女の人のとこ行くってば?」
震える声で尚も尋ねる。
「ナルトはそう思う?」
ゆっくりと髪を弄ばれ、頬にカカシ先生の大きな手。
「いっちゃ、ヤダ…」
「どうしたの今日はやけに甘えっこだね?」
お願い、とオレはカカシ先生のアンダーを掴みぎゅっと握り締める。だけどすり寄せた頬の温もりは離れていく。それはあの春の日から平行線を辿ったまますれ違っていて。
「せんせぇ、オレたち本当に恋人同士…なんだってば?」
「そうだよ?お付き合いしてるでしょ?」
「だったら今日はイッショにいて欲しいってば、だめ?」
オレは最後の賭けに出て、恐る恐るカカシ先生を見上げる。お願い、カカシ先生。〝いいよ〟って言って。他のヒトを選ばないで。出ないとオレはもう。排水溝に流れ出た精液の渦がオレの中で繰り返しリピートされる。
「ナルト。オレ、束縛されるのキライなんだよね?」
「!!」
「ナルトならわかってくれるでしょ。オレ、そーいうのは面倒なの」
病院に入院した女の人たちみたいに?少しでも先生に求めたら、捨てられる?先生、それはとても哀しいことだってばよ。それでカカシ先生は、楽しいの?しあわせ?
「カカシせんせぇ、オレのこと邪魔なら言って。オレがウザいなら、カカシせんせぇに喋りかけない。もうカカシせんせぇとも目ェ合わせない。だけど、オレをただのモノみたいに扱うのだけは止めて」
「ナルト…?」
「カカシ先生のことが好きだった。でももう限界」
心臓が早鐘のように打つ。
「カカシせんせぇはオレのこと本当に好き?違うよね、嫌いでもないけど、好きでもないよね?オレってばただの性欲処理の道具?」
初めは、カカシ先生が九尾としてオレを見ていない、ただそれだけでも嬉しかった。だってそんな大人初めてだった。そんな人を好きになれた自分はなんて幸せなんだろうとそれだけで満足だった。だけど、オレってば我儘になっちゃったんだってば。もう、ダメ。
「オレってばカカシ先生の玩具じゃねぇ。都合いい時ばっかりやってきて、オレにだってちゃんと心があるんだってばっ。ちゃんと傷付くんだってばっ。知っていた!?」
「あー、いきなり何を言い出すかと思ったらそんなこと?」
「そんなことじゃねぇってばっ。大事なことだってばよ!?」
「おまえ、女みたいなこというね。そういうのオレ、面倒臭くてイヤなんだよね?」
「その女の変わりにしてたのは誰だってばっ。オレってばもうカカシ先生の言いなりにならねぇもん!!」
「だって、オレを好きなおまえの気持ちって、ただの憧れデショ。おまえの年にはよくあることなんだよ?」
「!! ちが…うってば」
カカシ先生はずっとそう思っていた?オレの気持ちなんてこれっぽっちも本気で受け取ってくれてなかった?やめて、やめて、やめて。もうこれ以上、酷いことを言わないで。貴方を好きだという気持ちまで、不定しないで。オレから先生を好きだという気持ちまで取り上げないで。
「もう、いい」
好きになったからと言って、同じように気持ちを返して貰えるわけじゃない。愛しても愛されるとは限らない。希望を抱いても落胆することがないとはいえない。手を伸ばして、手に入るもののなんと少ないことか。そんなこと…、オレにとってはずっと前から、当たり前で。小さな頃から続くこの里の檻の中で、約束を守られないこと、理不尽な扱いを受けること、我慢すること、慣れていた。だから辛くても我慢すればカカシ先生が傍にいてくれる、ただそれだけでもいいと、幸福なのだと思おうとした。だけど、やっぱりこんな歪んだ関係は間違っているってば。こんなこと続けても、オレのためにも、きっとカカシ先生のためにもならない。
「………も、別れるっ」
「え…?」
「っっわ、かれるって言ってんの」
唇を噛んで。だけど、絶対目を逸らさないでカカシ先生を睨んだら、カカシ先生がふいっと顔を背ける。
「っ。あっそ。別にいいけど…おまえ、意味わかって言ってんの?」
「いっぱい考えたし、もうこれ以上考える必要ねぇ……っ」
「……ふうん、後悔しても知らないよ?」
「しねぇもん!」
出てって!と叫ぶとカカシ先生が「そう」と短く呟いて、黙り込んだ。
「ほら、早く出てって。もう、この部屋に入って来ないでってば」
「………」
「カカシ先生っ!」
「……本当に?」
「本気に決まってるってばよ!」
「………」
途端に、カカシ先生が落ち着きなくきょろきょろと視線を彷徨わし始める。…いったいなんだってば。早く出て行けってばよ。それなのに、何度かこちらに視線が投げかけられて、ぎって睨むと視線が逸らされて、その繰り返し。
いい加減痺れを切らしたオレが、「もうなんだってば!」と口を開こうとすると、ふいにカカシ先生の視線が肌蹴たジャケットの首筋で止まって、隻眼が真ん丸く見開く。
「ちょ、ナルトっ。そのキスマークなにっ。オレのじゃないでしょ…!?」
「!!」
昨日、男たちに付けられた痕だ。まだ残ってたんだ…。とっさに隠したけどもう遅くて。なぜか、食い入るようにその痕を見るカカシ先生の手を突っぱねる。
「カカシ先生にはもう関係ないってばよ!!!」
「なる…ッ!」
オレはまだ何か言いたそうなカカシ先生を無理矢理追い出した。
 
 
 
 
 
 
 
 







 
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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