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空気猫

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日常編




―始まりの時間―

いい歳をした大の男二人がたまの休日にテーブルに向かい合って珈琲を飲んでいるという苦しょっぱい光景に、目に鮮やかな金色のカラーが加わったのはつい最近のことだ。数カ月前の真っ赤な人食い月の夜。長期任務の帰り道にはたけカカシは、道端で耳と尻尾付きの子供を拾った。金持ち連中のオークションに賭けられるところを逃げ出したのだろうか、それとも他の理由があったのか、路上の隅で泥まみれになって震えていた半人半獣の子供は、暖かいお湯で汚れを落としてやれば、金色の美しい子供に変身した。
カカシはその子供に「ナルト」という名前を与え、暫定的に家に置くことに決めた。
当初は、人間不信気味で命の恩人であるカカシにすら懐かなかった狐の子は、抱き上げれば噛みつき部屋の隅っこで震えていた。
だが、優しく撫で、温かい布団を与え、愛情を持って話し掛ければ、唯一の人間であるカカシに懐いた。
それからというもの、毎日ブラッシングをして、お風呂に入れ、たっぷりご飯を与えた。すると最初は栄養失調気味だった手足も、ぼさぼさだった耳と尻尾もふんわりふくふくしてきて、拙いながらも人語を解すようになった。
暫定的に住まわしている状態だった狐の子はいつの間にかカカシにとって、手放せない何かになってしまい、今ではすっかりはたけ家の住民になっている。そんなわけで暗部兼上忍でもあるカカシは、ついでに狐の子供の子育てまで始めてしまったのである。
「カァシ、パンツー」
居間のテーブルで寛いでいると、ナルトが着ていた服を捲り上げて見せたのでアスマは飲んでいた珈琲を吹き出した。
狐っ子が洋服箪笥の前でなにやら格闘しているなぁと思っていた。ころんころん転がり、時々「うぅぅ、きゃんきゃん!」なんて狐なんだか犬なんだか微妙な唸り声をあげて、背中を丸めている後ろ姿を何の気なしには見ていた。
だが、いきなりパンチラならぬ、積極的なストリップを見せられるとは思ってもみなかった。
誰だ、こんなズレている教育を施している奴は。
たじろぐアスマを余所に、モロに狐っ子のパンツを見せられたカカシは暢気なものだった。さすがはズレた教育を施している張本人だ。
カカシは朴訥とした顔で猫背気味に狐っ子に屈み込むと、「履けたの偉いねぇ」と微笑んで、忍服のポケットからドロップ缶を取り出して子供の口に放り込んでやっている。
ころころと口の中でオレンジ味のドロップを転がしたナルトはこてんと首をかしげるとニシシと笑う。ついでにアスマにも得意げな笑みを見せた。ふくふくした笑顔に不覚にもどきりとしてしまい、アスマは微妙に視線を逸らした。狐っ子、恐るべし。




「いいことしたらご褒美のお菓子ねぇ」
「この間、病院に行った時にドロップを上げたら癖になっちゃったみたいでねぇ」
カカシ人形を抱いてひとり遊びをしている子供の背中を見ながら、男二人が机の上に頬杖を付いている。
「可愛いでしょ」
「は?」
「うちのナルト、可愛いデショ」
今までになくニコニコとした笑顔をみせるカカシに、アスマはぽっかりと口を開けて呆気に取られる。何かを〝可愛い〟だなんていう感覚がこの友人に残っていたのかという大変失礼な感想は、良いとしてもあのはたけカカシが、感覚神経が鈍くて伝達がきちんと出来ないと噂のはたけカカシが、
「この間なんかオレのお嫁さんになるーって抱きついて泣いちゃってねぇ。可愛かったなぁ」
なんて傍目にもわかるくらい、三白眼をやに下げていうのだ。今度こそ、アスマは口に咥えていた煙草を取り落とした。
「……ちっこいガキ相手にデレデレだなおまえ」
アスマが「まさか」という思いを込めて話の水を向けると、銀髪の友人はきょとんと頬杖を付いたまま首を傾げた。
「………なにが?」
「あ、いや。てめぇの場合はどっちかっつぅと親バカの部類か」
そのままアスマとカカシが話していると、カカシ人形を片手に引き摺りながらナルトがやってくる。口が淋しいのかナルトは指をしゃぶりながらカカシの忍服をくいくいと引っ張った。
「どうした、ナルト?」
「カァシ、あそぼ」
「今はお客さんが来てるからあとでね」
「んじゃ、ここにいるってば」
そう言ってナルトは、カカシの膝の上にちょこんと座った。「な、な、な、カァシ。いつ遊べる?もうちょっと?」「カップラーメンができるくらいだってば?」「オレってばちゃんと〝順番待ち〟出来てえらい?」「あたまなでなでしてくれてもいってばよ」「いーち、にー、さー、ごー、ろー、ナルトのなー」「あしゅま、今度から横入りすんなってばよ」「くまのくせに生意気なんだってばよ!」「でもカァシは友だち少ねぇからオレってば我慢する」カカシ人形の頭を齧って引っ張り出した綿をもくもく口に含みながら、耳付き尻尾付き子供がそんなこと言った。カカシは自分の膝の上で足をぶらぶらさせている、三角耳が二個突出している金髪の真ん丸い頭を微妙な顔で見下ろしたが、何も言葉が思い浮かばなかったらしく、結局、子供が望んだ通り頭を撫でるだけで終わった。

人間椅子の上で覚えたての拙い言葉をフル活用して、マシンガントークをかます三角耳のお子さまに、人生26年になるのに、一言も言い返せもしない朴訥とした銀髪の男。
そんな一人と一匹を見ていたアスマは爆笑のために珈琲を「ブッ」と噴き出さないように懸命に堪え腹を抱えながら小刻みに震えなければいけなかった。


 
 


 












 
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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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