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空気猫

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「少しはマシな部屋になったってば…」
カカシ宅への訪問理由は、いつのまにやらゴミ屋敷の大掃除へと変わっていた。掃除をしないと、人間が座る場所もないからだ。
「別に掃除なんてしなくてもいいのに」と背後で不満そうにカカシが呟いていたが、ナルトは構わず、ゴミ袋にアルミ缶を放り込み始めた。
赤いペンキがぶちまけられた床を綺麗に拭き、大量の大鋸屑を掃除機で吸い取り、木炭で下書きが描かれたデッサンと呼べるのか微妙なラインの乱雑な線の集合と、赤とか黄色の油絵の具がこってり付着したぐしゃぐしゃに丸まった紙切れは、まとめてゴミ袋に放り込んだ。
(その他にも、散らばった彫刻刀とペンティングナイフやパレットナイフの数々。口に含んだだけで死に至る成分が含まれていることもあるという油彩絵の具まで無造作にキッチンのシンクにこびり付いていた)
掃除を始めたナルトが使ったゴミ袋の枚数は片手では数え切れない。
「ふぃー…っ。これでひと段落」
ナルトはキャンバスの山を壁に重ねて、額の汗を拭った。壁に描かれたままの落書きめいたものは目を瞑るとして、雑多に積まれていたものを整理すると、それだけでも少しは人間らしい部屋になった。
怖るべきことは、カカシに掃除をするという観念がまったく抜けているということだった。今までカカシは掃除をどうしていたのだろう。
そんなことを思って、ナルトは浅はかな自分の思考に後悔した。むろんカカシ以外の人間がやっていたに決まっているからだ。例えばそれは…。
「そりゃ、カカシ先生は大人だから前に彼女とかがいてもしょうがないってばよ…」
「えっ、なーに?」
辿り着いた結論に自分で落ち込んでいると、キッチンでお湯を沸かしていたカカシが顔を覗かせた。
「なんでもねぇ」
「ナルト、何か怒ってない?」
「別に怒ってないってば」
唇を尖らせたナルトの様子にカカシは首を捻る。何日か前にも、木の葉喫茶で見せた拗ねた表情だ。
「ナールト、何か勘違いしていない?」
〝べっつに〟という唇の形のまま、ナルトが顔を逸らしている。
「やっぱり変な誤解してるでしょ」
「してねぇ」
「嘘」
「して…」
「あのね、オレの部屋に来る人間なんて、ぶつくさ文句を言いながら半年に1回部屋の大掃除しに来るアスマくらいだよ?」
カカシの台詞にナルトの肩の力が、明らかに抜けた。
「それ、本当だってば?」
「馬鹿だね、嘘吐いてどうするの」
「………」
「ナールトくん?」
「オレってばてっきり、女の人が来て今まで掃除してくれたのかと思ってたってば…」
「それはどんなオレのイメージですか、ナルトくん」
がっくり肩を落としたカカシの方を振り向いて、ニシシとナルトが笑った。
「普通は、家に人は上げないよ。仕事場だからさ、勝手に歩かれたらイヤでしょ」
「―――っ」
「ナルト?」
「ううん、なんでもねぇってば」
にこ、とナルトが笑い、ふと、青と色違いの視線が合った瞬間、カカシは、金糸の前髪を掻き揚げおでこにキスをした。「んっ」と短く、鼻掛った吐息がナルトから漏れる。2人の足元で、踏みつぶされそうになった絵具が転がった。
油絵具の匂いが酷くなったような気がした。がたん、とナルトの背中が壁に押し付けられる。カカシの手がナルトの腰に回され、2人の身体が密着した。一瞬、2人の間で交わる視線が濃くなる。その時、
ピー…とお湯の沸く音がキッチンから鳴った。
「――と。ごめん、ナルト。火を消すからそこらへんに適当に座って待っていて?」
「お、おう…!」
不自然な程、お互いに距離を取り、カカシは火を消しに、ナルトはあたふたしながらも、適当な場所に腰を降ろした。
(し、心臓が爆発しそうになったってば……!)




「お待たせ、ナルト。サイダーでいい…?」
カカシはどこからか出したお盆を持って、飲み物を運んできたが、ナルトが座っている場所を見て、一瞬止まる。
「ありがとうってば。カカシ先生」
ナルトと言えば気にしたふうもなく、ベッドのすぐ傍に座りながらカカシからグラスを受け取った。
「どうしたんだってば、カカシ先生…?」
「――――…いや、なんでもない」
カカシはごく自然な動作で、ナルトの隣に腰を降ろした。100%無邪気に寄る結果だとはいえ、無防備なナルトの行動にカカシは苦笑する。
そして、そうした少年のまだ子供っぽいところにどうしようもなく煽られてしまう自分に困った。昔のカカシでは考えられない他愛のない会話すらも楽しい。それが幸せだった。
「オレさ、今日カカシ先生の家に来て良かったってば。先生のこと、前より知れた気がする!」
「―――……」
ナルトは、恥ずかしいのだろうか、俯いた項まで綺麗な朱色に染まっていた。
「なぁーんてな。へへ、照れ臭いってばよ」
「……い」
「……へっ?」
「可愛い…、ナルト」
うっとりしたようなカカシの声、蕩けるような笑顔、ふわりとカカシの顔が近付いてきたのに驚いて、ナルトはフローリングの床に両手を付いた。
「―――んっ」
唇が重なった瞬間、カカシに触れられた所から爪先まで電流が走る。息苦しさから口を開いた瞬間に舌を差し込まれた。
「あっ、やぁ?」
開いた口に、奥深く舌が差し込まれた。
「ん、んう。待ってセンセー…!?」
「ごめん。待てない。ナルト…」
ナルトがベッドに上半身だけ押し倒された瞬間、ガチャリと開きっ放しだった扉から高らかな声が響いた。
「カカシくーん。今日の日曜市で良い食材が手に入ったよ。明日のメニューを考えよ…?」
「父ちゃん?」
「四代目っ?」
「カカシくん…、ナルくん……?」
その時、木の葉喫茶四代目マスターミナトの目に映ったのは、ベッドの傍で押し倒されている息子と、その両手首を掴んで、圧し掛かっている従業員の姿だった。
それは明らかに血の繋がらない兄弟や年の離れた友人同士の雰囲気ではなくて、そのうえ息子のシャツに、不埒な手が侵入していた。
どさどさどさと音を立てて、両手に持っていた買い物袋が重力の法則に従い玄関に落ちる。
「何、やってるのーーーっ」
「と、父ちゃん、落ち付いて…」
薄っすらと上気した頬でナルトがミナトを宥めるものの、逆効果でしかない。
「ナ、ナルくん。パパは、パパはカカシくんとの不純な交遊は認めませんからねーーー!!」
その日。家賃、6万円足らずの安アパート内から、波風ミナトの怒号が1丁目先まで轟いたという。









 







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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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