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空気猫

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「スプーンとフォークでお気に召すまま」の24話目です。
オビト、カカシくん、中学生。
 








中学卒業前の半年間って、なんだかダルい。三年間過ごした校舎を今度は違う奴等が使うのも変な感じだし、これから自分たちがここを出てまったく違う生活を送るなんて、いまいちピンと来ねぇ、つかダルい。空は青いなぁなんて、当たり前のことを100回程考えてオレたちの毎日は過ぎて行く。
「暇だ」
「………」
「暇、暇、暇、暇、暇…」
「………」
「なー、カカシ」
「うるさい、オビト」
幼馴染の悪友に、ゴミ箱に紙くずを捨てるように切り捨てられればオビトも黙るより他はない。
「で、どーなの。この間言ってた女とは」
「別に。抱いたらただの女だったよ」
「うわ、なにその感想。いやーーーカカシくんったら冷めてるぅ」
「オビト、きしょい」
頭上から空き缶を投げられたオビトは、屋上よりさらに高い出っ張りの部分に上がって寝転がっているカカシを降り仰いだ。
「あーあー、いつになったらおまえが本気で好きになれる奴が見つかるのかねー」
「おまえ。その言い方、爺臭い」
「うわ、失礼、カカシちゃん」
「おまえこそリンに告白しねぇのかよ」
「な…っ。んで…、オレがリンなんかに……!?」
「わかり易い奴」
冷めた声で言い捨てたカカシに、オビトが片眉を顰めた。
「おまえさ、本気で誰かの事、好きになったことあるのかよ」
「セックスするのに愛が必要なの?」
「……カシッ!」
寝転がっていたオビトが跳ね上がるも、その時すでに見えたカカシの背中は屋上から去っていた。




「あっ。カカシ…っ」
嬌声と共に女の内部が締まった。カカシは息を詰め、機械的に動かしていた腰から白い飛沫を放った。
「あら、やだ。カカシったら中出ししたら、ダメって言ったじゃない」
「赤ちゃんが出来たらどうするの?」とクスクスと冗談にしては面白くないことを、わざとらしく取り上げて、いちいち指摘して来る女にうんざりした。
――おまえ、ピル飲んでるんデショ?小さな嘘は女の常だが、彼女等を見ているとその小賢しさに、失望することが多々あった。拗ねたように甘い声を出せば、カカシが可愛いと感じると思っているのだろうか。
自分よりも年下の者に向かって向ける媚を含んだ仕草に、嫌悪感が増す。
――今度こそ、見つけたと思ったのに。
皆、同じ中身だ。人間なんて、醜い脂肪の塊。
素早く制服を整えながら、狭い部屋から去ろうとするカカシを咎めたように女が言った。
「最近、冷たいのね。寂しいわ。何か、不満があるの?」
大きく開いたシャツから、薄っすらと汗を掻いた谷間が覗いていた。黒いブラジャーが透けて見える。
「あのさ、セックスの時に、頭を触らないでくれる?」
「あら。どうして?」
「潔癖症だから」
「もう、嫌な子ね」
緩くカールした髪の毛をくるんと小指で絡めながら、女はふふふと笑った。
「カカシ。私、貴方の事を愛してるわ。誰よりも愛してるのよ。信じてね?」
机に座っていた女がステップを踏んでカカシに抱き付いた。女の、柔らかな抱擁とは裏腹に、カカシの瞳は暗く濁ったままだった。





木の葉学園の放課後は学校祭の準備で賑わっていた。普段は下校している筈の生徒たちでさえ、まだ学校に残っている。
人の流れに逆らうように、カカシは猫背を一層丸めて玄関へと向かった。
「………?」
外履きを出そうとカカシが首を竦めた時だった、頬に黄色いペンキを付けたリンが駆け寄ってきた。
「カカシ。どうしたの、もう帰っちゃうの?」
「………」
「カカシ?」
無邪気に笑うリンを前にカカシは後頭部を引っ掻いた。カカシの下駄箱に血だらけのハサミが入っていた。
「………」
カカシはぼんやりと血の付着したハサミを見下ろした。刃先は長く、人でも殺せそうな鋭さがあった。
(ああ、鶏小屋を襲った犯人のハサミかな…?)
カカシはあっさりと結論に達した。近頃、学校で残忍な悪戯が流行っている。今日も校内で飼育されていた鶏が刃物で切りきざまれ無惨な姿で発見され、授業の半分は丸潰れになった。犯人探しをしたものの結局首謀者は見つからず終いで、カカシはいつもより長く屋上で惰眠を貪れたのだが…。
どうやら、事件の首謀者は自分を犯人に仕立てあげようと思ってるのかも知れない。なるほど、確かに己は素行が良い方ではないし、キレると何をするかわからない“危ない奴”だという噂も流れている。罪を擦り付けるのに、もってこいなのだろう、と一歩ズレた感覚で思った。
そういえば、屋上からの帰り道にかつあげをしている連中を見掛けた。リーダー格はミズキという男で、一見優等生だが裏ではあくどいことをしているらしい。何となく大方の犯人に辿り着くが、いかにもああいった人種がしそうなことだと思った程度だ。
「……カカシ。何、笑ってるの?」
不審そうな顔をして、リンが首を傾げて、カカシの手に握られたまだ血の滴るハサミにぎょっとする。
「カカシ。それ、どうしたの。大変っ、手から血が…!」
リンにして見れば、―――幼馴染みのカカシのことをよく知っていたから、彼女は単純に血だらけのカカシの手を見て、彼が怪我をしたと思ったのだ。
「リン。これは―――」
「だめよ。よく見せて!」
リンが身を引こうとするカカシの手を掴み駆け寄った時、一人の女子生徒が悲鳴を上げた。
ざわり、という音と共に、それまで銘々に騒いでいた生徒たちの視線がカカシの手に集まった。
「きゃー、誰かーーっ。はたけくんが、はたけくんが、不知火さんを!!!」
パニックになった女子生徒の一人がやたらと騒ぎ立て周囲の注目を集めた。すぐに職員室から教師等が駆け付けてくる。
「なんの騒ぎだ!」
昼間の事件のせいか、教師等の動きも素早く、ばたばたとした足音と共に廊下を走って来た。
「何をしている…!」
如何にも熱血漢らしい厳つい顔の教師が賺さずカカシの胸ぐらを掴んだ。
「はたけ。また、おまえか…!」
学年指導の教師でもある彼は額に青筋を立てて、カカシを憎々しげに睨んだ。当時ロクに学校に登校していなかったカカシは、たまに学校に出て来ては中学生らしからぬ派手な噂をばら撒くものだから、教師陣の覚えが悪かったのだ。曰く、歓楽街で女と遊んでいる。曰く、キレて他校の生徒を意識不明になるまでボコボコにしたなど。
「その手に持っているハサミはなんだ。あぁ?」
まるで、一生徒に向けられるものではない、口調の言葉がカカシに投げかけられる。当の本人と言えば、自分の不味い事態に気付いているのか、気付いていないのか、それとも気付いた上で何とも思わないのか、顔色一つ変えないで胸倉を掴む教師を見下ろしていた。
「なんだ。その反抗的な目は」
カカシとは対照的に、顔を般若のように真っ赤にさせた教師が、今にも活火山を爆発させそうな勢いでカカシに詰め寄る。カカシの冷めた目は相変わらずだった。
「おい。黙ってないで、なんとか言ったらどうなんだ。おまえの口はただの飾りか?」
「………」
教師の余りの剣幕に「先生!」とリンが蒼褪めた顔で、二人の間に割って入ろうとするが、次に教師が言った言葉に、彼女は全身が痺れたように動けなくなってしまった。
「まったく。親がロクデナシだとロクな子が育たないな。たまに学校に来たと思ったら面倒事ばかり起こしやがって」
シン…と下駄箱の前が静まる。とても教職者が放ったとは思えない言葉はやけに響いた。
「おまえの父親、自殺だろ。そんな環境で育った奴はロクな大人にならな…」
次の瞬間、キャアアーと甲高い悲鳴が聞こえた。
「あんたさぁ、ウザいよ?」
カカシは、表情に喜々とした笑みすら浮かべて、床に転がった教師を蹴った。何度も何度も…。
その瞳には、狂気すら浮かんでいて、見る者をぞっとさせた。
「バッ、カカシ。やめろって。死んじまうだろ!」
オビトが止めに入った時には、教師はぐったりと意識を失っていた。
「――救急車。何、ボッとしてんだよ、てめぇら。黙って見てるんじゃねぇよ。見せ物じゃねぇぞ!!」
オビトが涙目で、教師を抱き起こし、怒鳴る。その咆哮に、何名かの生徒が、金縛りから解けたように、うろたえ出した。
生徒たちの足音が入り乱れる中、拳を血だらけにしたカカシはぼんやりと視線を彷徨わせていた。
何故、こんな事態になったのか、何故、オビトが泣きそうな声を出しているのか、カカシには理解出来なかった。そして、白いブラウスの人物が目に留まる。
「カカシくん…」
カカシに視線を向けられた女教師が、蒼褪めて2,3歩後ずさる。ピンヒールを履いた彼女の足はガクガクと震えていた。
〝―――教えて。どうしてこんなことになってるの。助けてよ?〟
カカシが血だらけのハサミをぶら下げながら、手を伸ばすと、
「……ヒッ」
「なんで逃げんの」
担任の女性教師が脅えたように身を竦めた。
「ははは…。結局、アンタも同じか」
そしてカカシは当時付き合っていた彼女を刺した。

 
 
 
 

 

 
 
 
 
 
 





 
 
 
 
 
カカシ過去。スプーン本編に戻ります。カカシ先生はこのあと教師側の問題発言を加味され厳重注意を受けただけで済んでます。
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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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