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空気猫

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―そんなわけで12歳になりました編11-






朝、リンが目覚めると幼馴染みが使役している忍犬が手紙を運んできていた。走り書きのように書かれていた手紙の内容と、病人が食べるような買い物リストに首を傾げつつ、リンは幼馴染みの家へと向かった。
「リン。悪いけど、こいつが起きたら面倒を見てくれる?」
部屋中に漂う異臭にリンは顔を顰める。玄関先から見えたのは半裸の幼馴染と、長椅子で白いシーツに包まる裸の狐の子供で、シーツから覗く白い足がやけに生々しく、背中を向けて寝ているようだったが、この部屋で何があったのか、床に転々と散らばる衣服や鼻を覆ってしまうような精液の匂いから窺い知ることが出来た。
「カカシ。貴方はどこに行くつもり?――ナルトちゃんを一人残して!!」
「リン。怒ってるの?」
「当たり前よっ。ナルトちゃんに何をしたの、カカシ」
「何って……」
箒頭の幼馴染みは後頭部に手を当て、カシカシと引っ掻いた後、
「見ての通りの状況だよ。オレが、この子を無理矢理犯した」
「………っ」
十年来変わる事のない平坦な口調で彼はそんな事を言う。一瞬、手を上げそうになったリンであったが、幼馴染みの顔に浮かぶ神妙な表情に気付いて、平手を打とうとした手を下げた。
「すまん、リン。しばらくおまえの家にいさせてくれないか…。少し、頭を冷やしたい」
「何言ってるの、カカシ。ナルトちゃんの傍にはアナタがいたほうがいいに決まってるわ」
「オレじゃ、だめなんだ。オレに、そんな資格はないんだよ」
そう言って、体躯を丸めたカカシは沈黙の後、
「――悪い。おまえしか、頼れる奴いない…」
そう小さく呟いた。
「昔から、カカシのそういうところ、ズルいって思ってたわ」
「うん、ごめん」
また謝った幼馴染みと擦れ違うようにリンは、カカシの家に上がった。項垂れたカカシは入れ違いに、玄関から出て行く。




リンに揺り動かされ目を覚ましたリンの姿に気付くとナルトは大きく目を見開いて、脱衣所に籠ってしまった。
「ナルトちゃん…。私だけど、ドアを開けてくれる?」
ドアの向こうから微かな気配はあるものの、三角耳の子供はけして姿を見せてくれない。嫌われているのだろう、とわかってはいたが、このまま放って置くわけにもいかないだろう。
「カカシにナルトちゃんのお世話を頼まれたの。今日は身体が辛いだろうからって…」
「………」
「ナルトちゃん?」
「カカシ先生は今どこにいるんだってば?」
ドアの向こう側からは、初めて返ってきた返事にほっとしつつ、リンは脱衣所のドアをほんの2、3センチほど開けた。ドアの向こう側に見えたのは、僅かに毛羽立った黄金色の尻尾だ。
「ナルトちゃん。着替えのお洋服、ここにおいておくね?」
ナルトのお気に入りの襟首にファーが付いたオレンジ色の服を、そっと床に置くとピクリと裸の子供の体が震える。
「カカシは、いないの。ごめんね、その代わり今日は私が何でも好きなもの作ってあげるから…」
「なんでだってば!?」
「ナル――…」
かんしゃく玉が爆発したような声が脱衣所から響いたかと思うと、裸のままの半人半獣の子供が飛び出してきた。大理石のような肌の白さと、幼い体に色濃く残る情交の痕が、違和感を生んでいる。
「どうして、カカシ先生がいないんだってば?」
ドン、とリンの懐に小さな子供が転がり込んできた。
「オレ、カカシ先生に嫌われたっ?悪い子だから、もういらねぇの?」
「ナ、ナルトちゃんっ」
三角耳の子供は、リンの服の端を掴んで、頼りなげにリンを見上げる。碧い瞳からはボロボロと宝石のような涙が零れた。
「ごめんなさいってば。ちゃんといい子にするからって、カカシ先生に言ってってば。ちゃんと謝るから!」
「ナルトちゃん。落ち着いて。カカシはそんなこと思ってないわ、そんなことで、アナタを嫌ったりしない」
「うぇ、ひっく。ひっく。本当だってば?」
「ええ、本当よ」
ヒックヒックとしゃっくりみたいな嗚咽が断続的に何度も部屋の中に響く。
「――ナルトちゃんは。カカシの事が本当に大好きなのね」
リンは大きく息を吐き出すと同時に、小さな狐の子供を見降ろした。肩甲骨に掛かるまで子供のサイズにまったく合っていない首輪を選んだ幼馴染みのまぬけさに苦笑しつつ、自分にはない、子供の華奢な肩や線の細さに驚きを感じていると、
「リンさんは、本当にカカシ先生と結婚しちゃうってば?」
「…え?」
「だったらオレってば、もういらねえ子?」
涙目でそんなことを訴えられた。
「オレってば、それでもカカシ先生が好きなんだってば……」
ごめんなさい、ごめんなさい、と震える声で狐の子供に謝罪され、リンは瞳を瞬かせた。
「リンさんのことも、嫌いって言って、ごめんなさい。本当は、初めてあった時、綺麗な人だなって――羨ましかった。だから、カカシ先生の事、とられちゃうかもってリンさんに嫉妬してたんだってば」
「………」
意地悪して、手に噛みついてごめんなさい、と小さな手の平にぎゅうと縋られる。実際、牙がやっと生えそろったようなナルトの噛み痕など、半日も経たずに消えてしまったので、「気にしないでね、ナルトちゃん」とリンが言うと、それがまた堪らなかったらしく、ぶわっと狐の子供の涙腺が決壊したようだった。
「オレ、リンさんが、カカシ先生と好きあって結婚しても、いってば。でも、お願いだからオレのこと、ちょっとだけでいいから傍に置いて欲しいってば…。ペットとしてもでもいい、今まで通りなんて我儘は言わねえからカカシ先生の傍にいさせて欲しいってば」
項垂れた狐の子供は、床に涙を落しながら、リンの服をぎゅっと掴んでくる。カカシとリンが夫婦の関係になっても、ただ傍に居たいと、それでもいいのだと、狐の子供は言っていた。それほど、カカシが好きなのだと。
これほど、盲目的に他者に想われる事が、人生で幾度あるだろうか。
獣としてのサガなのか、それとも、この子供自身の情の深さなのか、リンに判断は付かないが、――幼馴染みの幸運に賞賛の言葉を送らねばならないだろう。今までの彼の人生の不運を思い出すと、尚更だ。
リンは狐の子供の後頭部をゆっくりと撫でてやる。
「例えば、何かきっかけがあったら、私はカカシと結婚していたでしょうね」
世界が終ってしまった、というような蒼褪め表情で、ナルトがリンを見上げた。
真っ白になった指先を、リンは苦笑と共にそっと握り返した。
「だけど、私とカカシは……」
リンは、自分とカカシの関係をちゃかし立ててた友人等を思い出しながら、小さな子供にもわかるようにゆっくりと言葉を紡いだ。
「無理なの。二人で居てもきっと寂しいことを考える以外出来ない。過ぎ去った、哀しい過去を思い出して二人で眺めることしか出来ないの。男女の関係になることは、ない。カカシを癒してあげられるのは、もっと違う存在だと思うわ。
例えば、ナルトちゃん。アナタよ」
目線を合わせて、微笑んでやれば、きょとんとした瞳とぶつかって、やがて碧玉が戸惑いに揺れて左右に彷徨った。
「嘘だ。オレってば、我儘で、料理もぶきっちょで、何も役に立たねえの。リンさんの足元にも及ばねえの。先生が、仕事で疲れてるの、わかってんのに、オレってば我儘だから1分でも1秒でも構って欲しいの。お風呂いれて、とか、頭撫でて欲しいとか、言ってばっかなの。ブラッシングも、散歩も、ご飯を作ってもらうのも、一緒に寝るのも、して欲しいことばっかなの」
「ただ、傍にいた。無条件でカカシを受け入れた。カカシにはそれだけで良かったのよ」




















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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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