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空気猫

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オトナルでカカシ記憶喪失もの。






はたけカカシは透明人間の夢を見るのか?
―はけカカシの失―

 人間の記憶をよく箱や引き出しなんかに例える奴がいる。そいつらの話しによると、人間の頭の中にはたくさんの箱が引き出しに小分けにされて仕舞われているらしい。箱の中には、生れてから今まで貯蓄した記憶が入っていて、人は、必要な時にそれを引き出しから出すことが出来る。
普段、箱は施錠された状態で保管されているため、他人が開けることは出来ない。箱を開けるためには専用の鍵が必要で、鍵は箱の数だけあり、保管庫の主は鍵束の中から鍵穴に合う鍵を探さなければいけないのだ。
大抵、鍵はすぐに見つかるが、人によって、整理整頓の上手い奴、そうでない奴がいて、下手な奴は箱の順序がバラバラだったり、箱を開けるための鍵を何本か失くしてしまう。赤ん坊の頃の箱なんかはとくに下のほうに埋もれてしまっているうえ、大抵の奴は箱を開けるための鍵を失くしているので覗くことができない。極稀に全ての箱を開けることのできるマスターキーを持っている奴もいるらしいが、滅多にない例らしい。
そして、人間の中には時として、何かの拍子に鍵束ごと落としてしまう、うっかり者もいる。つまり、そいつはどの箱も開けれなくなる。箱は確かに存在するのに、何も記憶を引き出すことのできない状態に陥るのだ。
しかし、記憶を落し物扱いするなんてまったく失礼な話しだと思う。大事な記憶をポンポン落として堪るものか。そんなお手軽に、失くせるものではないだろう?
「記憶喪失だな」
それが、病院のパイプベッドの上で目覚めたオレに開口一番に告げられた診断結果だった。緑の半被を着た胸のデカい女の谷間を眺めてから、オレは視線を病室に移す。
「カカシ先生…。意識が戻ったってば…!?」
安っぽいパイプベッドの傍らで金髪碧眼の青年が、瞳に涙を浮かべていた。里指定の緑色のベストを両拳で握り締めているところを見ると、この里の忍なのだろう。忍のくせに簡単に涙を見せるなど、随分と愚かで浅はかな奴だと思った。
「どうやら、暗部入隊直後からここ数年ほどの記憶がすっぽり抜けているらしいな」
オレの頭には包帯が巻かれている。どうやら酷い怪我をしたらしいと納得した。
「おまえは隠密任務中に崖から落ちて頭部を負傷したんだよ。ツーマンセルを組んでいた暗部がおまえを里まで運んだ。私は五代目火影の綱手だ。まぁ、おまえが今覚えている時代より十数年後の火影ということになるな」
この女が何を言ってるかわからない。三代目火影はどうしたのだろう。これは何かの冗談か。それとも悪い夢なのか。夢ならどうか覚めてくれ。
冷や汗の伝いそうになったオレの手に熱い手の平が重ねられる。視線を上げれば、金髪の青年が居た。
「カカシ先生。本当にオレたちのことも忘れちゃったってば?」
カカシ先生? 不可思議な己の呼称に思わず眉間に皺が寄る。潤んだ碧い瞳に見詰られ、なんだか居心地の悪い気分になり、オレは視線を反らした。男のくせにこいつの頭はおかしいのか。突然、握られた手に瞠目して、オレは思わず青年の手を振り払った。
「あ。ごめんってば。カカシ先生。はは、そうだよな。オレのことも忘れてるんだもんな……」
金髪の青年はオレの態度に酷く傷付いたような表情をした。しかし、それも一瞬のことで「仕方ねぇってば」と、すぐ馬鹿みたいにへらへらと笑い出す。
年の頃は十代後半といったところだろうか。キラキラ光る金髪といい、なんだかどこかで嫌というほど見たことのある色彩だが、この名前も知らない青年はいったいどこの誰なのだろう。
そして、金髪のガキの背後には、従者か何かのように暗部面を被った黒髪の青年が控えていた。それも、面越しでもこちらを睨んでいるのがわかる。射抜くような視線に思わずオレは訝しんだ。
「そこのおまえ。オレに何か文句があるのか?」
暗部といえば、オレの後輩だろうか。それにしては不躾な態度だ。とは言っても、暗部に礼儀を弁える人間が居ることのほうが珍しいのだろうから、黒髪の態度はごく一般的だと言えるだろう。むしろオブサーバーなのは、忍のくせに気配がやけに騒がしい金髪のガキのほうだ。
「サスケ。なに、むっつりしてるんだってば。カカシ先生が驚いてるじゃんか!」
両手を腰に当てて、まるで聞き分けのない弟か何かを叱るような仕草の青年。黒髪の鳥面といえば、あからさまにそっぽを向いている。
「カカシ先生。サスケはいつもあんな感じだから気にすんなってば!」
満面の笑みを向けられても困る。そして、金髪の青年と黒髪の暗部はお互いに目が合った瞬間、ぷいっとしめし合わせたように視線を反らした。一見、不仲に見えるが案外、仲が良いのかもしれない。
「あいつらはおまえの教え子だよ。――あそこの黒髪の暗部がおまえとツーマンセルを組んでいた…とは言っても、今のおまえに言ったところでなんのことかわからないだろうがねぇ」
「一応、理解はしました。つまりオレは、任務中に負傷を追い、今まで忍として蓄積したデータを十年以上に渡って消失した。そのために、今後の任務に劣化や支障を来す可能性があるということですね」
「おい、おい。機械じゃないんだから、自分に対してそんな言い方はないんじゃないかい?」
「意味を計り兼ねます。任務達成以外に忍である私になんの価値があるというのですか?」
「はぁ。今のおまえと話していると別の意味で頭が痛くなりそうだよ。相変わらず人を選ぶというか、扱い辛いったら…」
「すいませんねぇ。平然としていますが、これでも見た目より余裕がないんすよ。混乱気味でしてね。で、貴方が――火影サマ?」
「ほほぅ。嫌味なところは健在とみた。だが、頭の回転の良さも残っていて何よりだ。いや、むしろ記憶を失くしたほうが忍としては頭の螺子が締まったかい?」
「それはどう言う意味ですか?」
「今のおまえに話したところで理解は出来んだろうな」
ふぅむと腕を組んだ妙齢の女性は、背中に賭けという字を背負っていた。まさかこの人は…、と噂に聞いたことのある伝説の三忍の一人をオレが思い浮かべたところで、
「ナルト」
「おう!」
「どうする。カカシの面倒はおまえが見るかい。それとも、このままここに入院させているかい。おまえが決めな」
女が呼んだのは先程の十代らしい金髪の青年だ。びっくりするほどくりっくりで大きな碧い瞳が、きょとんとこちらを見つめる。
「カカシ先生の面倒はオレが見るってば。先生も、病院より家に帰ったほうが、きっと落ち着くと思うってばよ」
おい、おい、勝手に決めないでくれよ。だけど、まぁこの場合は悪くない提案かもしれない。早くこの薬品臭い場所から退散願いたかったので、オレは金髪のガキの言葉に反論するのを止めにした。




 +                        +
 


「――――おい」
女が去り、金髪の青年と退院の身支度をしていると、それまで病室の隅で置物のように控えていた暗部が口を開いた。
「何。やっぱりオレに何か言いたいことがあったわけ?」
オレが、飄々として応対すると鳥面の暗部は自分から話しかけたくせに何も応えない。割って入ったのは金髪の青年だった。
「サスケってばこれでも責任を感じてるんだってばよ。自分と組んでる時にカカシ先生が負傷したから」
「へぇ」
自惚れかも知れないが、オレと組むとなるとこの若さでこの暗部は相当の手練なのだろう。感心と共に、職業柄興味が沸く。
「で。用件は何。謝罪だったら、謝る必要はないね。任務中に負傷したのはオレの力が至らなかったせいだからな」
「いや、オレだってあんたに謝るつもりは毛頭ない」
「ほぉ?」
生意気な小僧に、オレは片眉を跳ね上げる。まるで、いつかの自分を見ているような既視感を感じた。もしかしたら、こいつはオレとよく似たタイプなのかもしれない。
「ただ、あんたに言いたいことが一つだけある。――こいつはオレ(,,)()だからな、手ぇ出すなよ。いいか、ナルトは任務であんたの傍につくんだからな」
「んな…っ。サス…っ!」
「あんたはこれからナルトと療養に入るだろうがな。それだけは覚えておけ」
鳥面の青年は後ろから金髪の青年を羽交い絞めにして、暗部面を頭の上にズラす。現れたのは、鷹の目を思わせる双黒で、なかなか美麗な風貌の青年であった。
「だっ、ばっ、バカスケ!!いきなり、なに言ってるんだってばよ!!」
背後から回された腕に金髪の青年は耳まで真っ赤にして双黒の暗部に噛みついている。そして――。
「ウスラトンカチ。おまえは黙ってろ」
「んんん~~~っ」
なんとオレは生まれて初めて男同士のキスを見てしまった。華奢な青年同士とはいえ、なんとも気色が悪い。オレの目の前で、顔を赤くした金髪の青年が双黒の暗部に顎を持ち上げられ、もがいていた。
「………」
「――ふん。オレの邪魔しに入らないところを見ると、本当に記憶がないらしいな」
ぽかんとしているだけのオレの様子に、唇の端を拭った暗部は鳥面をまた装着しながらそんなことを言った。
「ぷはぁっ。サスケ。いきなり何するんだってばよ。おまえってば頭おかしいんじゃねぇの!?」
「ふん。ショック療法って奴だ。こいつのことだ。オレとおまえのキスシーンで記憶を思い出すかと思ってな」
「ふざけんな、オレ様がぁああっ」
ギャーギャーと騒ぎ出した(片一方だけだが)雛鳥たちにオレは呆れてしまう。
「カカシ先生。オレってばこいつとはなんっっっんでもねぇから!本っ当、なんでもねぇからな!」
金髪の青年がオレに向かって吠えるが、そんなことをオレに言われても困る。改めて、金髪の青年を見てみると、キラキラした金糸に、宝石みたいにピカピカした碧い瞳。輪郭はまだ甘く、肌はミルク色。身体つきは同年代の青年からみれば小ぶりなほうだろう。
なるほどまぁ、女の役になりそうな要素はあるが、だからと言って、男同士でキスをするのを見て喜ぶ趣味はない。
「おまえら、男同士でそんなことやって気色悪くないのか…?」
「……っ!!」
オレが思わず吐いた台詞に、金髪の青年がかなり驚いた顔をしてこちらをみていた。鳥面の暗部が何か言いたそうに、一歩前に出たが、金髪の青年がそれを制す。
「サスケ。いいってば。おまえはもう仕事に戻れってばよ」
「おい。だが、ナルト…」
「いいんだってば。あとはオレに任せろってばよ。なっ!」
鳥面の暗部は青年に微笑まれると、まだニ、三言、文句を言いたそうではあったが、やがて壁の暗闇に音もなく消えた。あとに残ったのは記憶を失くして訳がわからないオレと、金髪の青年だった。





+            +



「カカシ先生、荷物はもうねぇってば…?――って言っても任務先からここに来たんだモンな、見舞いの花くらいしか持つものはねぇよな」
「………」
金髪の青年は、ニシシと笑って、病室のドアを閉める。年下の青年だというのに、オレと言えばただ黙ってその後に着いていくしかできない。それが歯痒がった。
「おーい。ナルト」
廊下に出ると、後ろで黒髪を括った青年が居た。上忍らしき正装をしてはいるものの、全体的にかったるいという雰囲気が漂っている青年だった。
「シカマル。なんで病院にいるんだってば?」
「面倒くせぇが薬品の仕入れだっつぅの。小うるせぇ親父に頼まれてな」
「ははは。シカマルの父ちゃんってば、相変わらず息子使いがひでぇってばよ」
黒髪を括った青年と金髪の青年が廊下で立ち話を始めた。金髪の青年に微笑まれると、黒髪の頭の青年は満更でもなさそうな仕草で後頭部を掻いている。黒髪の青年はオレのほうにも会釈したが、記憶がないのでオレはどうすることもできない。
「カカシ先生。本当に記憶がないんだな」
「おう。そうなんだ。でも、きっと一時的なことだと思うってばよ」
「そうか。邪魔して悪かったな。じゃあ、またな。ナルト」
そのまま金と黒の青年は片手を上げてそれぞれの方向に歩き出したが、明らかに黒髪を括った青年はオレの前を歩く金髪の青年に想いを寄せているようだった。あの鳥面の暗部との間柄といい、青年のモテっぷりに驚いてしまう。
「あれは…?」
「オレと同期の奈良シカマルだってばよ。あったまの良い奴でさぁ、この間、暗号解読班から、上層部入りするって話。仲間内では大出世だってばよ」
「へぇ。おまえは?」
「オレはまだ新米上忍。へへへ、今はドベだけど、今にうずまきナルト列伝を木の葉中に轟かせてやるんだってば!」
オレは黙って青年を見る。
「ナルト。新しい茶が手に入ったのだが、うちに飲みに来ないか?」
「おい、うずまき。この間の任務、上出来だったぞ。ずずず」
「ナルトくん。人間関係について面白い本が手に入ったのですが…」
青年はどうやら人気者のようだ。その後も木の葉の名門一族と言われている白眼の青年やら、先程の黒髪の暗部といい会う人間会う人間が、全員が青年に惚れていることは、記憶を失くしわけがわからなくなっているオレでも明らかにわかった。
「おまえ。本当に、気持ち悪くないの?」
「へ…?」
「それともプライドがないとか?」
「???」
さらに驚くべきことは、金髪の青年が己に向けられているほとんどの好意に無頓着だということだ。あれほど多くの視線に気付いていないというのか。天然とも、まぬけとも言える青年の鈍さにオレは呆れてため息を吐いた。
 
 














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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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