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空気猫

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番外編。ぱちぱちぱち~。

 








出会ハートどきゅん☆

オレがガキどもの世話だって?とんでもない。なんでオレが下忍の先生なんてやらないといけないわけ?思案することコンマ一秒。
「お断りします」
「しかしカカシ、今年はおまえと浅からぬ縁でもある四代目の子も下忍として――、」
「私には関係ありませんね。生憎と子供の面倒を見れる性分ではありませんので」
三代目の申し出に即刻断りを入れた。



はたけカカシ26歳。職業・忍。5歳で下忍、6歳で中忍、13歳で上忍になった現役暗部。いわゆるエリートコースまっしぐらの男である。現在、特定の恋人はなし。ただし、一夜のベッドを共にする女なら片手に余って捨てるほど。
泣かせた女は数知れず、木の葉一の業師とは忍としての字ではあったが、別の意味でも有名で、道を歩けば、その日の夜の相手が向こうから寄ってきた。
だけど本気の恋愛ってものは未だに未経験。恋ってなあに?それっておいしいの?それが、オレの常識だった。そう、あの日。あの瞬間、あの子に出逢うまでは。
久し振りの休日に、男たちに小突かれている子供と出くわした。まったく目障りな光景を目にしたとそのまま当初の予定通り色街に繰り出そうとしたカカシだが、なんとなくガキを助けてみた。殴る蹴るまでは良かったが刃物が飛び出したのはいただけない。男たちを蹴飛ばして、地面に転がっていた子供の首根っこを引っ掴み仔猫よろしく子供を持ち上げれば、きょとんとした碧玉が己を映した。
「お、おにいさんが助けてくれたんだってば…?」
さくらんぼのように愛らしい唇から紡がれる、くりっくりの可愛らしいボイス、百カラットの宝石のように大きくて潤んだ瞳、長い睫毛、産毛がまだ生えているような真ん丸いほっぺ。
身なりこそ、捨て犬か何かのようにボロボロだったけど、アンティークドールのように整った容姿。
透き通るような碧い瞳と、ぴょこぴょこ跳ねた金髪の髪の毛は紛れもなくカカシの知っている師と同じものであったけど、ああこれほど美しいものだっただろうかとカカシは息をするのも忘れて小さな稚児に見惚れた。
太陽の光を受けてキラキラと輝く金糸の髪の毛が眩しくて目を眇めていると、
「助けてくれて、ありがとうだってば?」
こてんと首を傾げた子供が照れ臭そうに笑った。カカシの目の前で、零れ落ちそうなくらい大きな瞳が、はにかんで細められる。
「……………!!!!」
その瞬間、ヒットマンの格好をした陽気なキューピッドがウィンクひとつ飛ばして小銃でカカシのハートを打ち抜いた。
「立ち入り禁止お断り」の立て札をぶら下げて澄まして立っていた、高い、高い塔の上から真っ逆さまになって転落したカカシ。打ち抜かれた心臓を押さえつつ、地面から起き上がれば〝恋の道→〟の立て札とお花のアーチの掛かった初恋ロード。
「嘘でしょ…。こんなことって」
だけど、凍りついていると思っていた心臓はドクドクと脈打って、新しい血をポンプでカカシの全身へと送り出している。
カカシは子供の身体を抱え直し、そっと両脇に腕を差し込むと、壊れ物のように恭しく地面に降ろした。
子供の身体はどこもかしこも柔らかくて、生まれたての赤ちゃんみたいだった。それだけでカカシの心臓は最高潮に高鳴る。
「……おまえ、名前なんていうの?」
「うずまきナルトだってばよ!」
震える声で訊ねてみる。返ってくる答えなんて百も承知だったが、もっと形の良い唇が動いているのを見ていたかった。
「何歳?」
「12歳だってばよ!」
「ふうん」
12歳。…ま、いっか。とやはりコンマ一秒でカカシの中で結論が下る。ちなみに性別だとかいう1番初めに常人が気にするべき点はまったく歯牙にも引っ掛かっていない。
「手、怪我してるぞ」
「オレってばこれくらいへっちゃらなんだってば」
すぐ治っちゃうんだってばよ?と付け加えられる。
カカシは顔を顰めて携帯用の医療ポーチを取り出した。
「お兄さんの手、汚れちゃうってば…」
引っ込められそうになった手を掴んで応急処置を施す。
ふっくらとした手の平を握れば、極上のベルベットよりも滑らかな肌触り。消毒をして包帯をくるくると巻き終えると、「ありがとってば」と消え入りそうな小さな声で謝礼を言われる。ぱちぱちと恥ずかしそうに伏せられた瞳が愛らしい。
「またすぐに逢えるよ…」
夢心地で呟いた台詞はきっと子供には聞こえていなかったと思うが、そんなことはもうカカシにはどうでもいいことだった。ただ、目の前の子供をどうやって手に入れるか、それのみに向かってカカシの頭は働きだしていた。そう、まずは接点をつくらなくてはならない。それもなるべく沢山。この子にとって自分が、掛け替えのない位置の人物になれるほど。



「仕方ない、上忍師の任務は別の者に回すとするかのう…」
書類を片手に独り言を呟いた三代目火影は、ぺらぺらと他の上忍たちの忍者登録票を捲る。
「おお、こやつなぞいいかも知れん。上忍ではないが、なかなか目の利く男だ…、情に厚いとも聞く。九尾の件にも目を曇らせず平等に接してくれよう」
伝令用の鳥を飛ばそうと、ペンを置いたところで、だだだだだだ、と火影執務室に向かって地響きが近付いて来た。物凄い勢いで接近してくるこのチャクラは…
(あやつがこんなに取り乱すとは、12年前のあの日以来…いやこれはそれ以上か)
何事か!?と火影が椅子から腰を浮かそうとしたその時、すぱーん!!と、ど派手に扉が開けられる。およそ忍とは思えない足音と共に登場をしたのは、はたけカカシその人だった。
「カカシ…おぬしどうした!?」
いつにない、というか今までに見たことのないカカシの様子に三代目火影が戦慄く。
「敵襲か!?」
「火影さま、先程の件、謹んでお受けいたします…!!」
どちらも鬼気迫る顔で執務机に向かい合い、だん!と手を付き「!?」と同時に固まる。
「…カカシ?」
「あ!火影さま、その手に持っている書類は……!?」
「ん?上忍師候補のものであるが…。おぬしの代わりに不知火でも任命しようと思っての。あやつは特上ではあるが、特例として上忍師として働かせようかと…」
「ふざけないで下さい火影さま。あの子はオレのです!!!」
「は?」
カカシの発言に火影が固まる。しかし、あまりのカカシの豹変振りに脳が処理仕切れなかったようで、のろのろと一歩遅れたような反応しか取れない。
「いや、しかしのう…。別におぬしに無理を強いてまではやってもらわんでも…」
ぼそりぼそりと呟きながら戸惑う火影に、
「やります!やります!!やらせてください!!」
畳み掛けるようにカカシが身を乗り出す。
「どうした?おぬし、やりたくないとぬかしていたではないか?どういう心変わりじゃ?」
「何を言いますか、火影さま!下忍育成は、木の葉の未来を担う重大な職務の一つ!このはたけカカシ、謹んで拝命させて頂きます」
「おぬし…。さきほどと言っていることが180度変っておらんか?」
「気のせいです!!!」
きっぱりと言い切ったカカシに三代目火影は顎を擦りつつ煙管を吹かす。まぁ、この男がやる気を出してくれたのなら、結構なことではないか。元より、ナルトの身の内にある九尾のことや、うちはの生き残りの子供のことを考えれば、カカシほどこの任に適任な上忍はいなかったのだから。そんなことをつらつらと考えつつ、プロフェッサーと呼ばれた老人は、ふむふむと頷いて、
「わかった、わかった。おぬしがそこまでいうのなら了承しないこともないぞ」
「ありがとうございます、火影さま!是非、うずまきナルトの上忍師としてご指名ください!!」
「いや、他の下忍も2名おるのだがのう…」
「火影さま!!」
「まぁよかろう。では、はたけカカシ、おぬしを今日より上忍師および九尾の監視役として任命する」
あまりの気迫に押されて、つい…と、
あとに三代目火影はこの時の自分の浅はかな判断を、人生最大の失点として後悔することになるのだが、それはまた別の話。
「有難きしあわせにございます、火影さま」
うやうやしく頭を下げた銀髪の男は、にんまりと口を吊り上げて、明日からの毎日に思いを馳せた。金色のあの子は誰のもの?はたけカカシのもの?
つまりは、ある人でなしと呼ばれた男の、生涯でただ一度の大迷惑な巻き込み式大恋愛の始まりの日だったのだが、
厄介な人物にハートをロックオンされた憐れなお子さまの運命やいかに。







 
 
 
 
 
 
 
 
 

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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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