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空気猫

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―Wednesday―

「すいませーんてば」
ここは人生色々。緊張気味にその扉を開くひよこ頭の忍者の登場に、なんだなんだと中にいた大人たちの視線が集まる。きゅっと巻いた額当て。里では珍しいハニーブロンドの髪の毛。真ん丸いほにゃほにゃのほっぺ。ぱちぱちと大きな碧い瞳。男の子にしては長い睫毛。ワンサイズ大きめのもこもこ襟の付いたオレンジのジャケットから覗く華奢な鎖骨。
子供は、九尾の檻であることはもちろん、最近では、上忍はたけカカシの想い人として、この里ではある意味で有名なお子様、うずまきナルトだった。
「あ、あの失礼しますってば?」
男だらけの部屋に華が混じったような、微妙な色めきがあったのは気のせいであろうか。とりあえず、長椅子に寝転がってダレていた上忍何名かは「おお?」というふうに起き上がって興味深そうにナルトを見詰めた。
「うう…。な、なんだってば」
自分を見つめる視線の多さに、思わずナルトの声が小さくなる。上忍待機所に下忍が来ることは珍しい。それもこんなに小さくて、彼等にして見れば、ふにふにと可愛らしいお子様が来ることは滅多にない。
あれがはたけカカシに追い掛けられている可哀想なお子様なのかと、何名かの上忍は同情し心を痛め、よくあのゴキブリ並みにしつこい上忍のストーカー行為に耐えているものだと、涙ぐみ感動すらしている者たちもいた。
一方、ナルトといえば、己が扉を開いた瞬間から集まった視線の多さに、やはり下忍の自分が来てはいけない場所だったのだろうか、と大いに頭を悩まし、それどころか、己は九尾だから疎まれているのだろうか、と好意的な視線が混じっていることも知らずに、視線を忙しなげに彷徨わせていた。
「おまえ…は。うずまきか」
「ふぇ」
小さな来客を出迎えたのは、ちょうど入り口付近でたむろしていた特別上忍のゲンマとライドウだった。自分の倍の身長はある二名の忍を、ナルトは扉の影から半分だけ顔を出して、伺うように見上げた。
「ここに何か用でもあるのか」
「ええと、オレってばカカシ先生を探してて…」
上から見下ろされる威圧感と人見知りで、ナルトの言葉は尻窄みになったが、上目遣いできょろきょろと、忙しなげにカカシの姿を探している不安げな仕草が、親鳥を探す雛のようで、余人にはどうにも可愛らしく映った。ふ…、とゲンマは笑みを零して楊枝を同僚に向かってしゃくる。
「おら、ライドウ。てめぇがおっかねぇ顔してるから、お客さんがビビっちまってるだろ。少しは愛想良くできねぇのかよ」
「はぁ、オレか!?」
「おまえだよ。そんなんだから女にもモテねーんだよてめぇは。なーうずまき」
決定口調で言われて、「んだと!?」とライドウがゲンマに向かって怒鳴ると、ナルトが肩を竦めた。
「ほらみろ」とゲンマがニヤついた顔で笑い、ライドウがぐっと詰まる。
「おい、坊主。男ならモジモジしてないで、どーんっと入って来い!」
ライドウがナルトの腕を引っ張る。知らない大人が自分の名前を呼んだことだけでも驚きなのに、顔に傷がついた大人の方が突然、ドアを全開にしたものだから、弾みでナルトは「うわっとっとっと」と転がるように、待機所の中に入ってしまった。
腕をわたわたと振りなんとかバランスをとって転倒を免れたナルトだが、流石にむっとした様子で、ライドウへと振り返った。
「危ねぇだろ、おっちゃん!」
里の〝大人〟たちの中で物怖じしていたナルトだが、元来負けん気の強い少年だ。一度、とっかかりがとれるとやいやいやいとばかりにやんちゃな言葉が飛び出た。
「…お、おっちゃん!?」
誰が!?オレがか!?と大袈裟な動作で己の顔を指差すライドウに、うんうんとナルトが腕を組んで大きく頷く。端で同僚と子供の様子を見ていたゲンマは「ぶわはははは」と爆笑した。
「ゲンマ。てめぇ、人のこと笑える歳か!?」
「まぁ、そう怒るなってライドウ。ははは…。あー、面白れぇ。おい、うずまき」
「な、なんだってば楊枝の兄ちゃん…?」
ナルトは身構えるように、ちっちゃくファイティングポーズを取る。そんな子供をオモチャみてぇで可愛いなぁと思いながらも「楊枝の兄ちゃん」発言に笑みを零していたゲンマだが、一方ライドウは納得いかないといったふうに前に出る。
「おい、ちょっと待て。なんでこいつは兄ちゃんでオレはおっちゃんなんだ」
「だってこっちの兄ちゃんの方が若い感じするし、それに男前じゃん」
「ぐ……っ!?」
さっくり心臓をナイフでエグるような発言を言い放って、唇を尖らす少年忍者の姿がまたゲンマの笑いを誘う。「どうせオレなんて…」と今度こそライドウがしゃがみ込んで落ち込みだし、ひー、ひー、と腹を抱えて笑いを噛み殺しながら、ゲンマがナルトの背中を叩いた。
「おまえ、存在自体がかなりツボ。気に入った。ここに座れや」
「うわっ!?」
「オレは不知火ゲンマっつーもんだ。で、あっちで蹲ってるのが並足ライドウ」
よろしくな、と何故か手を差し出され、握手をするとそのまま抱き上げられて奥の長椅子に座らされた。
同時に、上忍の一人がのろのろと腰を浮かし、どこかの甘いもの好きの特別上忍用に用意されていたと思われる甘味ジュースを共同冷蔵庫まで取りに行った。
人生色々に小さなアイドルが誕生した瞬間であった。












 
 
 
 
 
 
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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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