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空気猫

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ウィークエンドの幻

次の日、2回目の草取り任務があった。前々日にナルト押し倒し未遂事件もあり、現場はピリピリとしていた。木の上では相変わらずカカシを監視するために暗部たちが目を光らせている。
ナルトも、相変わらず少しだけ落ち込みながら、草毟りをしていた。いつもだったら、抱きついたりべたべたして、任務の邪魔をするはずのカカシが、彼等がいると大人しく木の幹に腰掛けたままだからだ。(正確には縄で縛られたまま)
なんでカカシ先生はぐるぐる巻きなんだってば?とナルトが訴えると、サスケとサクラは気不味そうに視線を見合わせた。ちょっぴりカカシが気の毒になったのと、自分たちのカカシに対する行為が、もしかしたらナルトを護ろうとするあまりに、行き過ぎていたかもしれないと思ったからだ。
「いいですか、我慢できなくて飛びついたらまた簀巻きにして貰いますからね!」とサクラは何度もカカシに言い聞かせてから暗部等に頼みカカシの縄を解いてもらった。
ナルトといえば、サクラの方がカカシや暗部たちよりずっと年下なのに、まるで大人のようにカカシのことを叱ったり暗部たちに指示を出したりしていたので、「サクラちゃんすごいってば」と単純に感心してしまった。大事なところはそこではないのだが。
そんなわけでサクラに釘を100本ほど刺されたためか、それ以降カカシは大人しく18禁本を読んでいた。しかし、そんなカカシに対してナルトはなんだか物足りない。カカシが遠く離れたところで、自分たちの下忍任務の様子を見守っているだけだからだ。読んでいる本の内容はともかく、よくよく考えれば、それが本来の担当上忍のあり方というものかもしれないが、ナルトにとっては、自分に纏わりつくカカシの行動が、担当上忍のスタンダードな行動としてインプットされていたから、他の八班や十班の担当上忍も、シカマルやチョウジ、キバたちにくっついているだろうと、当人たちが聞いたら鳥肌の立つような勘違いをしていた。
背中に温もりがなくて寂しいなんて、カカシに出会うまで思っても見なかったことなのに、全部カカシのせいだとナルトはなんとなくムッとしてしまった。
だから、「なんでいつもみたいにぎゅってしてくれないんだってば?」と任務が終わったら聞いてみようと決心した。
カカシの機嫌が良かったら聞いてみよう。いつもみたいにちょっと屈んで自分の話を聞いてくれるに違いない。紺色の瞳をかまぼこみたいに細めて。きっとたぶんおそらく。
その結論に到達すると、素晴らしい考えのように思えてきた。俄然気持ちが明るくなってナルトは草をぎゅっと握って千切る。おまえたちに怨みはないけどこれも大事な任務なんだってばよ。植物好きなナルトは、ごめんってばと謝りつつ、しゃがみ込んで草を毟る。
―――どうやってカカシ先生を呼び出そうかなぁ。
ぶちぶちぶちぶち……
―――そういえばサクラにはカカシと二人っきりになるなと言われてたのだ。
ぶちぶちぶちぶち………
―――サクラとの約束を破るとどうにも後が怖い気がする。
でもカカシと話したい。
「いってぇっ」
迷いが作業にも出たのだろうか、勢い良く草を引っこ抜いた瞬間に、ナルトはそのまま地面に転んでしまった。
「もう、ナルトったら相変わらずドジね」
「ウスラトンカチが」
オーバーリアクションで転倒したナルトに気がついて七班の面々が振り返る。サクラがポーチの中からハンカチと消毒液を出そうとしたが、ナルトは慌てて手を引っ込める。
「ちょっとなんで隠すのよ」
「オレってばこれくらいの怪我へっちゃらだし!」
ナルトはニシシと笑いながらも、サクラから距離をとった。怪訝な顔のサクラを余所に尻餅をついた瞬間に手を擦って血の滲んだ手の平を見ていると、木の幹に背を預けて18禁本を読んでいた上司に、来い来いと手招きされる。
きょとんとナルトは首を捻った。既に音を立てて塞がり掛けている傷口。大人のカカシは自分のこの特異体質を知ってるだろうか。ならば見せても構わないに違いない。「ちょっ、ナルト」サクラの声が後ろから聞こえたような気がしたが、ナルトはたったかとカカシの元へと駆け寄った。木の上で暗部たちが、クナイなどを取り出したが、カカシの一睨みで、僅かに怯む。
「ただ傷を診てやるだけでしょ」
下忍二名のきつい眼差しと暗部の緊張が集中する中、カカシは小さく独り言を呟いて、駆け寄って来たオレンジ色の子供の手の平を握る。
「どれ、見せてごらん」
「カカシ先生、オレってばもう平気だってばよ?」
「傷口にジャリとか入ってたらどーするの」
「平気だってば」
「はい、ウソ」
くいっとナルトは腕ごとカカシに引き寄せられる。
「あ……、オレってば泥だらけだし、カカシ先生の手が汚れちゃうってばよ」
ナルトはモジモジと遠慮をして視線を逸らす。
「変な遠慮するんじゃないよ」
気恥ずかしくなったナルトは、せっかくカカシが傍にいるのに、カカシの忍服のポケットばかり見ていた。
そんなナルトを余所にカカシは手際良く包帯を巻いていく。その手付きは、普段はおちゃらけていても、さすが上忍だ。
あれ、前にもこんなことがあったような?とナルトは変な気分になった。これはデジャヴ?
躊躇いもせず自分の手にさわる大人。
紅く火照った顔で、視線を真っ直ぐ固定すると、口布をつけた大人の顔。左目には額宛。
「カカシ先生……ってさ」
――――あの男の人に似てる。
「ん」
「な、なんでもないっ」
ズザザザとナルトが砂埃と共に、仰け反った。そんなナルトの行動に、暗部たちがクナイを構えて、現れる。うんざりしたようにカカシが顔を顰めた。
「何もしてないよ」
今回は、と付け加えたが、仕事熱心な暗部たちは、カカシの腕を拘束する。…少しばかり後輩教育を間違ったかもしれない、とカカシが後悔しているのを余所に、ナルトは顔を真っ赤にさせて心臓の辺りを押さえていた。カカシと目が合うと、ビクンっと肩が上がる。
(あーあ、せっかく近寄って来てくれたのにすっかり怯えられちゃってるし…)
はぁ、とため息を吐く。
(……っカカシ先生、ため息吐いたってば)
ナルトは泣きそうに眉を潜める。カカシに見詰められるとわけもなくドキマギしてしまって、何となく気不味い雰囲気になる。
おかしいってば。カカシ先生と喋る時に緊張したことなんてなかったのに。心臓がドキドキしてその日、ナルトはとうとう任務が終わってもカカシに声を掛けることが出来なかった。
わからない。この気持ちはなんなのだろう。教えて、カカシせんせー。











 
 
 
 
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空気猫取扱説明書概要
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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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