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空気猫

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お隣さんシリーズ。猫さんは社会的にはわりと学歴いい方らしいんですが(まぁまぁご優秀な…とか言われる部類)、この通り立派な人間未満です。








0か1の世界

進路。辞書を牽いて見なくとも言わずもがな、進むべき道だとか、将来の方向性だとか、中高生にとってもっぱら憂鬱の種でしかない難題なのではあるが、高校3年生ならばともかく、高2の夏休みを控えるオレにとっては、今一つピンとこないものであったりする。それでも、周りのクラスメイトなんかは傍目には自分の何倍もその難題に対して真剣に考えているような気がして、周囲の大人に守られている時代が終わりを告げますよーっと時計を持った白兎がダッシュで駆けて行くような、微妙且つ繊細なふわふわとした気分を味わっているというのが現状であったりする。
ワープアでニートの方がマシだなんて時代で、働く価値が見出せないって社会人が急増しているという今日この頃。社会人経験ゼロの高校生のオレから見ても不思議な社会だと思う。
それに、ここ最近、人生が着々と履歴書になっている気がするのは、オレだけかな?
たった数行で、人の価値がわかるのか不思議でならないんだけど、黒インキで人様の人生を知ったかぶりして、ついでに人の中身まで透けて見えるなんて不思議だ。
今度、思い切りイカス証明写真でも撮ってきて見せようか。男・うずまきナルトとしては、オレのアートな一面を面接官様方に拝ませたい、是非。
「あ。はよ、ってば」
「おはよ」
ベランダで朝日を眺めながら、しゃこしゃこ歯磨きをしていたら、お隣さんとばったり出くわしてしまった。薄い壁とチープな造りに定評があるごくごく普通のマンションならではの光景だってば。でも、よりにもよってこんなまぬけなベストショットで見られなくてもいいと思うけど。
気まずい沈黙のあと、カカシ先生はニコッと笑った。このお隣さんは大概お隣の高校生に愛想が良いのだ。そして、遺伝子の二重螺旋が未だ現代の最先端科学を持ってしても全て解明されていない事と同じくらい、はたけカカシという人物はオレにとって未知なる人物であったりする。
なにしろ、普通の神経をした人生30年になる社会人は十代のガキを恋人になんかしない。少なくとも、同じチンコが付いてるオレなんかを相手にはしない。恐るべしセンスの持ち主だってば、はたけカカシ。
オレがくあぁって欠伸を噛み殺していると、
「あらら。それって進路の紙?」
懐かしいねぇ、と人生の先達者は、オレが一晩悩んで何も書けなかった(とは言っても半分は現実逃避していたのだが)白紙の用紙に気が付いて、余裕卓々で微笑んでいる。お隣のカカシ先生に学生時代があったなんて信じられねぇとか言ったらこっぴどい目に遭うだろうか。
「ナルトは、どうするの?」
聞いてもいい?と首を傾げて来る三十代。わりと様になっているのが悔しい。
「んー。とりあえず就職かなぁって思ってるってばよ」
「進学しないの?」
「オレ、そんなに頭良くねぇし。勉強は高校生までで十分だってばよ。大学とかは頭の良い人が行くところだろ?」
「うーん。オレは学歴推進派じゃないけど、4年間の猶予が与えられたと思って自分の将来についてゆっくり考えるのもいいんじゃなぁい?」
「そうだってば?」
「18歳で将来の選択をするのは早いとは思うんだよねぇ」
うーん、そうかなぁ。オレってば、もう高校生だし、とっくに大人になった気分だけど、カカシ先生の年齢からみるとやっぱりまだまだガキなんだろうか。
「ふぅん。オトナテキにはそんなもん?」
「ま。学歴だけが全てじゃないから、決めるのはおまえだけど」
よく理解していないまま、オレはしゃこしゃこと口の周りを泡だらけにして、お隣さんに頷いた。すると、突然、お隣の彼が苦笑し始めた。なんだってば?
「なーると。おまえ、その顔かなりNG…」
「な!それを今、言うか!」
自分がほんの少しばかり容姿に恵まれているからって、人の顔を見て吹き出すのはちょー失礼だと思う。むかっ腹を立てたオレはむきーとお隣さんに食って掛かった。(別に怪獣みたいに襲ってはいない。念のため)
「大体、カカシ先生が珍しく早起きしているから悪いんだってばよ、ふぁーもごもご!!」
「あー、ごめん。ごめん。悪かったから、泡を撒き散らすなって…せっかくの可愛い顔が台無しでしょ?」
ぷにゅ、と人差し指でほっぺを押され、オレは黙り込む。生意気盛りなオレとしては歯の浮くような台詞をさらりと吐けてしまう大人に嫉妬だ。
今朝のカカシ先生は片手に缶ビールで、…また朝方に帰って来て飲んでたらしい、とオレが先生の健康を心配していると、
「ま!ナルトはオレのところに永久就職してもいいけどねー」
「んな!?」
カカシ先生がなんだか寝惚けた事を言い始めた。その余裕綽々の笑みはなんですか?確かにカカシ先生ってば、数か月に一回は新しいパソコンを玩具感覚で買ってるし(この間はなんだかパッドを買ったらしい)、最近昇進したらしいし、もしかしてすげー稼ぎ頭なのかもしれねぇけど、へらへら顔のせいでいまいちわかんねーつか、どこまで本気で言ってるかもわかんねーのが実情。本人に訊ねたら〝全部ホンキだよ〟と怖い答えが返ってきそうで聞き返せねぇから、とりあえずオレは膨れてみた。
「オレ、カカシ先生に養って貰うほど落ちぶれてねぇもん。ギリギリまで自分でなんとかしてみせるってばー」
「そういう時は〝考えておきます〟くらいの社交辞令を言えるようになりなさいよー、おまえ」
「へ?なんで?」
はぁ…とカカシ先生のため息が聞こえたような気がした。お馬鹿で可愛いんだけどねぇって呟きが、オレの耳に届いた気がしたのは気のせいだってば!?
「どーせ、オレってばカカシ先生と違って頭悪ぃもん!」
「いや、別にオレはそういうことを言いたいわけじゃなく…ね?」
だったらなんだってば、もー。言いたい事があるならはっきり言えってば!オレってば、シロクロはっきりつけたいタイプなのに、カカシ先生はモゴモゴと呟いただけで終わった。本ばっかり読んでいるから、現実世界の対応に不器用になるのだー。
「……んう」
で。結局、にゅうっと伸びて来た腕に身体を引き寄せられると、ベランダ越しにちょんとキスをされた。
…だから、何がしたかったんだ。この人は。
「ねぇ…、ナルト。学校の時間までちょっとイチャイチャしよーか?」
「うえぇえ…」
「いいじゃない。お仕事頑張ったオレへのご褒美」
朝一番でぶすムクくれた高校生と不誠実な(?)社会人の図は、なんだかマヌケとしか言いようがないのだが、オレはTシャツの袖で歯磨き粉を拭いながら、台無しになってしまった部屋着にあーあという気分だ。
だけど、自分がかなり単純な人間である事は、わりと承知しているつもりなので、オレはぷくぷく膨れながらも、カカシ先生を許してやった。
「ね。こっちにおいでよ?」
ううう~と、唸ったオレは仕方なく頷いてやったのだ。カカシ先生が蕩けそうな顔で笑って、オレの髪の毛を何度も梳く。
なんて、寛大な心の持ち主なのだ。感動の雨嵐である。きっとオレは頭に葉っぱの冠を被ったオッチャンとか、蓮の華が大好きなパンチパーマのオッチャンと同じくらい広い心を持っているに違いない。
「ふ、くぅ」
次の瞬間、カカシ先生の舌が侵入してきて、オレってば真っ赤になってそれを受け入れる。ん、ん、とか、くちゅ、とか恥ずかし過ぎる音が鳴る。
「ふふ。歯磨き粉の味」
「当ったり前だってば…!」
顔を真っ赤にさせると、くくくとカカシ先生が笑った。そのまま、場面はシャットアウト。朝っぱらからめくるめく官能の世界である。





「て、あっ。カカシ先生、ちょっと待ってってば!カカシ先生に見て貰いてぇもんあるんだってばー」
カカシ先生の部屋でシーツに包まっていたオレは、ガバッと起き上る。尻の辺りを抑えながら、ドタバタやってると背後で大人がニヤニヤしている。すけべな内面が透けて見えてるってばよ!
白紙の進路の紙を見られた後じゃ気まずいのだが、オレはベランダの柵を越え、荒れ果てた部屋の中へUターンして、件のモノを持ってきた。
「明日提出のオレの履歴書だってば。ちょー力作」
「なぁに。添削して欲しいの?」
「シシシ。お願いしまーす」
オレがお願いポーズをすると、シャツをおなざりに引っかけたカカシ先生は、銀髪をカシカシ掻いてから、紙面に視線を落とす。
「どれどれ…、ぶっ。」
気のせいか、カカシ先生から変な音がした。どうした、はたけカカシ。そのブルブルと震える肩はどうしたんだ!とうとう持病の癪が…と心配になったオレは(ちなみに遅刻癖という立派な病気である!)、雨蛙のようにぷうっと膨れることになった。
「お、おまえ。自己PR文に〝オレの良い所はどんな時でもあきらめねぇど根性です〟って、ぷくく。もう少し言葉を考えなさいよー」
………。えーと今のカカシ先生は、むつかしい言葉で言うと、抱腹絶倒?って奴?なんで?つーか、人の履歴書を見て大笑いだなんて嫌味な男なんだ、はたけカカシ!
「正直者には福があるんだってばよ!!オレってば自分の気持ちに真っ直ぐ生きる男!」
「はい、はい。それを言うなら余り物には福があるだし…意味、全然違うし…わかったから。くくく」
そ、その言い方、ムカつく!カカシ先生って、こんなに笑い上戸の人だったけ?こっちが素とか?
カカシ先生は、左目に込み上げて来たらしい涙を拭いつつ、笑っている。うーん、色男って、そんなこと思ってる場合じゃねぇ。
人生、17年。されど17年。オレだってイロイロ考えて生きてんのにさっ。そのノーテンキでいいなぁってゆるみきった顔はなんだってば!
「んじゃ、就職が駄目だったらオレってばこの国で一番偉い人になる!」
「は…?」
「あきらめないど根性があれば、大丈夫だってばよ!!」
今度こその大爆笑。あー、あー、笑えばいいんだ。この人は。今にスーツにサングラスのボディガードに囲まれるような要人になって見せるのだ!…なんて言っても、この大人はちっとも本気にしないんだろうけどさ。
「あー、笑った」
「むぅ」
「ん?唇尖らせてどうしたの?」
カカシ先生の顔が寄ってきて、ちゅっとキスされる。
「ちーがーくーて!」
そういう催促じゃねぇ!と、思わずオレは両手を振り上げて大人をぽかぽかと叩く。…そんなわけでお空の上の父ちゃん、母ちゃん。今日もオレのご近所付き合いは概ね良好です。





















履歴書に座右の銘はどんなことにも諦めないど根性です!って書いてあったら「ぶっ」ってなるよね。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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