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空気猫

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キバナル。(キバの誕生日に合わせたかったが間に合わなかった)
この二人はちゅーもできないくらいがいい。キバ→(片思い∞友情という名の越えられない壁∞)ナル。








「あ…」
「あ…」
日中、うだるような暑さが続いた夏のある日である。赤丸の散歩のためにしぶしぶ外出した犬塚家の少年は、道端で金髪の少年とばったり出くわした。
「へへへ。キバ、どうしたんだってば?」
「それはオレの台詞だろ!?」
ナルトの金糸からはポタポタと水が滴っている。口元に出来た痣は今しがた出来たばかりだろう、赤く腫れていた。子供の周りに散乱しているのは、買い物袋から零れた野菜たち。どうやら、買い物帰りに暴行を受けたらしい。
ナルトは同年代の中でも、細いし、小さい。発育不良というか、明らかに栄養が足りていないというか、下手すれば大概の女子連中よりも、華奢で細っこいだろう。この間の演習の時に春野サクラが「乙女より細いなんてムカツクわ、しゃーんなろ」だとか「どうして毎日いいだけ太陽に当たっているのに色白なのよ」だのとナルトの頭を叩いていたのを思い出しながら、キバは顔を顰めた。
こんなちっちぇヤツ相手にもこの里の大人は容赦がない。キバはナルトが里人から暴行を受けていることを知っていた。
「誰にやられたっ」
「へっ?」
「オレが殴ってきてやるから、そいつの名前教えろよ!」
「い!?」
大きな瞳が何度も瞬いた。そんなにびっくりすることないだろ。碧い瞳が綺麗だなぁ、とか思いつつ、自分自身を叱咤する。
おまえはオレのダチだろ。ダチに手ぇ出した奴に、喧嘩吹っ掛けて何が悪い。
だけど、ナルトは友人の剣幕に驚いたのか、手をぶんぶん振った。
「大したことねーってばよ」
ニシシといつもの笑みを作って、両手を頭の後ろで組む。
「おい。ナルト…。んな奴等のこと庇うんじゃねぇよっ」
「だ~いじょぶだってば。オレってばこれでも丈夫なんだぜ~?」
「………」
キバはぐっと言葉を飲み込む。
「うん。大丈夫だから。な!キバ。んな、顔すんなって」
一度、こうなるとナルトは頑なだ。自分の主張を曲げないというか、妙に悟りきった顔で大人っぽくなる。ナルトを取り巻く周囲の事情なんてわからない。だけど、まるで自分はガキなのだと思い知らされているみたいで少し悔しい。
キバが俯いていると、ナルトは表情を柔らかくして笑った。
「あ。なぁ、なぁ。赤丸のこと抱っこしていいってば?」
「え?」
「……あ。だめってば?」
「いっ!…いや!いいぜっ!」
ナルトは表情を崩すと、可愛らしく笑った。…今の笑顔、めちゃくちゃかわええ。もう一回みてぇ。
「ワン!」
「あははは。赤丸くすぐったいってばよ!」
ナルトは犬好きらしく、キバが赤丸を連れていると、いつもさわりたがった。赤丸と顔をくっつけるナルトの姿に、キバは顔を赤くする。
「にくきゅー、ぷにぷに」
「…………」
可愛いなぁ。…コイツ、どうしてこんなに可愛いんだよ?ウチの母ちゃんもしかりだけど、春野たちといい、女は怖いもんな。それに比べてナルトは、ちまこいし、抱くとすっぽり収まりそうだし、ちょっと声が高めなのもいい。とにかく、自分と同じモンついてんのかよってくらいには可愛い。こんなにドキドキする相手が、同じ男だなんて、複雑だが。
そういえば同じ班のヒナタがナルトのことが気にかかっているようだ。あいつは、ナルトのことを見ると顔を赤くしたりするんだけど、どうしてだろうな?
「ん?キバどーしたんだってば?」
こてん、と子犬のように首を傾げるナルト。―――…ばっ。やべぇ。
「おい。泥くらい拭けよ。おまえ、びしょびしょだろ」
「ん~。でも、オレってばハンカチとか持ってねぇし。この暑さだとそのうち乾くんじゃねぇ?」
「仕方ねぇなぁ…」
キバがジャケットの袖でナルトの顔を拭ってやると、照れくさそうにナルトが微笑んだ。
「キバ…?顔、真っ赤だってばよ、どうしたんだってば?」
「な、なななんでもねぇ!」
シュークリームだとか、ショートケーキだとかが大好きだという女の気持ちが、ナルトを見ていると理解出来るような気がする。あのほんわりした色の唇ってすげぇ甘そう。
そのままキバはナルトと散乱している野菜を拾う。始めはそれすら遠慮していたナルトに「手伝う」とぶっきらぼうを押しつけて、比較的傷んでないものをぐしゃぐしゃになっていたビニール袋に入れた。
「くぅん…」
赤丸が自分のことを見上げてくる視線を感じながら、キバは改めてナルトの手にぶら提がっているスーパーのビニール袋に視線をやった。
「……随分、たくさん食うんだな?」
ナルトのビニール袋には、とても一人分とは思えない量の食料が詰まっていた。ナルトは一人暮らしのはずだ。そういえば、ここらへんはナルトの家の付近ではない、ということをキバは今更ながらに思い出す。ではなぜ、ナルトはこんなところでずぶ濡れになりながらも買い物袋など引っ提げているのだろう。
「今日はカレーにするんだってば。カカシ先生の分があるからさ、ついつい多く買っちゃうんだよな」
「え!?おまえ、担任なんかと一緒に飯食ってるのかよっ?」
「うん。カカシせんせぇってば、結構前からオレの家に押しかけてきて、野菜食えとかうるさいくらい言ってきてさぁ。んで、いつの間にかオレの方がカカシせんせぇの家で飯食うことが多くなったっていうか…」
どうやら七班の担当上忍は随分と過保護な担任のようだ。キバは「はたけカカシ」という人物を思い浮かべてみる。木陰でいかがわしい本を読み、顔をほとんど隠している怪しいことこの上のない人物。あまり他人に干渉する性質ではないと少年の嗅覚が感じてただけに、ナルトに対する面倒見の良さは少々意外なことに感じた。今度、担任に質問してみようか?
「カカシ先生ってば、ほんと心配性なんだよな」
「へぇ…。そうなのかよ」
ナルトが、大きくなることはいいことだ。ナルトの場合はまるまると太ればいい、とは思うが、なんだか面白くないと思ってしまうのはどうしてだろうか。大体オレの方がアカデミーの頃から付き合い長いんだとか、大人にばっかりコロコロ懐くなよ甘えたとか。「なぁ、ナルト…」キバがナルトに何事かを話そうとした時だった。
「ナ~ルト。こんなところにいた。あんまり遅いから、センセー心配してきちゃったよ?」
「あ。カカシ先生!」
ぼふんと煙が巻き起こった。キバの前でくるん、とナルトが一回転する。気が付けば、ナルトの小さな身体は上忍の腕の中にすっぽりと収まっていた。
「任務終わったらすぐ来てくれるっていったじゃない?」
「スーパー寄ってたんだってば。今日はカレーだってばよ!ちゃんと先生に言われた通り野菜も買ったし!カレーなら野菜たくさん食えるだろ?今日はごーかなの!」
「ごーかなのか」
「そう。ごーか、ごーか!」
そう、ごーかなのか。ごーか、ごーか、とまるで頭の悪い会話のように繰り返す上忍と下忍。
キバは上忍のあまりの変貌ぶりに驚きを隠しきれない。
あのやにさがった顔はなんだろう。
腕の中のナルトが可愛くって、愛しくって、仕方がない、といった顔つきだ。
確かにナルトはちんまくて可愛いが…、
まさにデレデレ。そんな表現が相応しいのだ。
それと同時に、会話の内容はあほっぽいのに、どうしてか、親密な二人にキバは取り残された気分になる。同じ空間に居るはずなのに、ずっと二人が遠い気がするのは気のせいか?
「ん?おまえ。怪我してるじゃない」
「あ、これは…」
「――ったく。家に帰ったら手当てだな」
「……う、うん」
「唇の端、切れてる…」
顔を顰めた担当上忍を、ナルトは上目遣い気味に見詰めている。そのさまは先程キバと話していたナルトより百倍くらい可愛かった。
どうして、ナルトはあの大人の前だとオレと話す時より小さな声で話すのだろうか?
――オレと話している時のあいつの方がずっと元気だ。
どうして、ナルトはいつもの笑顔を引っ込めて、あんなに潤んだ切ないような瞳で、あの大人を見詰めるのだろう。
――オレといる時の方がずっと楽しそうにゲラゲラと笑っているのに。
だけど、なんだか銀髪の大人に決定的に負けているような気がして、犬塚キバはきゅっと唇を噛む。ちくしょう。なんだよ、なんだよ、なんだよ…!!なんだかしんねぇが、すげー悔しい。
「キバ…?」
ナルトの声に、キバははっと顔を上げる。
「キバくん?ああ、紅の班の…」
そこで初めて気が付いた、といった様子で大人が少年を見降ろす。そんなカカシの一挙一動すら、まるで相手にされていない、とでもいうようで悔しかった。
「…?キバ、具合悪くなったってば?」
ナルトが不思議そうに自分を見詰めている。
「なんでもねぇ」
「大丈夫だってば?」
「ああ」
(だ~いじょうぶだってば)
今になって、先程のナルトの妙に間延びした喋り方が誰の影響であるかわかったような気がした。
(なんだよ、なんだよ…!ナルトのバカヤロウ)
意味がわからないが、意味がわからないなりに、なんとなくわかってしまったら、なんだかいますぐ走り出してしまいそうで。だけどこの場から逃げたくなくて。なんだか感情の起伏がぐちゃぐちゃだ。とにかく考えがまとまらないのは全部陽射しが強過ぎることが悪いのだ、とキバは真夏の太陽を恨むことにした。
「ナルト。もう帰ろうか?キバくんにバイバイしなさい?」
「え…?あ…?せんせ?」
きょとんとした顔のままナルトは、大人に抱えられて、キバの前から遠ざかって行く。
「キバ。赤丸。それじゃーな。一緒に野菜拾ってくれてありがとっ」
「あ。ああ…」
別に、ナルトが誰かと夕食を摂るための食材なら拾いたくなかっただなんて、醜い感情に気が付いて自己嫌悪。背中を向けた大人の肩口でパタパタと手を振るナルト。
自分勝手な大人の腕の中で精一杯抵抗しつつ両手でメガホンを作って、
「キバ。さんきゅっ。またな!」
にこーっとナルトが今日一番可愛い顔で微笑んだ。碧い瞳が弧を描いて細められる。
「!!」
途端に早鐘のようになる鼓動。
この感情はなんだ?
相手はナルトだぞ…?
あんなガサツでうるさいやつ。可愛いわけがないのに、同世代のどんな女よりも凄く可愛く見えるから困る。
ワンワンと何かを催促するような赤丸の声がやけにうるさくって。この感情が飯食って、がーって寝りゃなんとかなるものだといいのに。今回ばかりはどうにも、厄介で、持て余し気味。
「キャン!ワンワン!」
「赤丸、どうした?は?もっとナルトといたかったって?何言ってんだよ、おまえ!」
一心同体な相棒は、きゅーんと鳴いた。もしかしたら主人よりも正直な動物の本能。
「くそ。どうした、オレの心臓…」
ナルトは赤丸とも仲が良いから、気に入ってた。それだけのはずだったのに。服の袖口で顔を覆ってみる。そのまま視線は斜め明後日の方向。金髪の少年が去ったあとも止まらない胸の動機。急上昇する心拍数、体温。とりあえず犬塚キバは炎天下の中、道の真ん中で顔を真っ赤にさせた。その感情の名前に少年が気付くことがある日が来るのかは謎ではあるが、木の葉の里の猛暑日、散歩の途中の出来事であった。

















キバ→(∞片思い∞)ナルが好きなのである。
だけど、カカシ先生が出張り過ぎたのはキバナルに対する妨害としか思えない。キバナル返せ。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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