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空気猫

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「おまえの目は節穴か」なヤマトたいちょと暗部時代のカカシてんてーの話。根底はカカナル。






黒猫は謳うよ、ラララと

「生き残れたの、幸運か悪運かわからないね」
貴方は、心底どうでもいい人間を見る時の瞳でボロボロのボクに冷たく言い放ったのです。
そんな貴方にボクは憧れました。



実験施設から生き残れたのは、まったくの偶然としか言いようがなく、ボク以外の実験体はメスでぐちゃぐちゃな末路を辿ったか、細胞分裂の暴走の果てに発狂して死んだ。
「おい。テンゾウ!聞いてるのか!」
「……あー。すみません。聞いてませんでした」
「おまえ、いい加減に自分のコードネームくらい覚えろよな」
「………」
ボクが無機質な瞳で見詰めると、相手は怯えたように去って行った。別にこんなことには慣れているので、いちいち気にはしてはいられない。
実験場を生き残ったボクに次に与えられたのは暗部として第二の人生だった。自分のような出生の人間が今更表舞台に出れるなど思ってもみなかったし、また期待もしていなかったので、妥当な措置だと思う。命を搾取される側から搾取する側に回っただけ。それだけでもマシというものだ。〝あいつ、実験体の生き残りらしいぜ〟等、幾ら暗部とは言え囁かれる噂や好奇の目、腫れもののような扱いにも慣れた。大体、あの施設の人間だったボクは表向き死んだことになっている。ボクは木の葉の里にあって戸籍上、どこにも存在しない人間なのだ。下手すれば、在庫処分、それこそ物を捨てるようにボクは廃棄されるべき存在だったかもしれないのだから、殺しの道具とはいえもう一度やり直せる機会を設けられただけでも感謝しなくてはいけないだろう。
ああ、でも―――…。
「もう三カ月か…」
今夜のような満月の夜は昔のことを思い出してしまう。ナゼ生キ残ッタ。ナゼオマエダケガ、人間ノ中ニ混ジリノウノウト生ヲ享受シテイル?遺伝子の暴走の果てにドロドロに溶けた兄弟よりも近しい同じ実験場の仲間たち。彼等とボクとの違いなど、実は幾許もなかったに違いない。
ただ運良くボクだけが生き残った。悪夢のような毎日が日常となっていた日々から救出された。救助隊に発見された時、ボクは真っ裸のまま死体だらけの部屋で呆然と座っていたという。意識は混濁、しかし命には別状なし。
60体の実験体のうち、生存者は1名。誰かが別の誰かに報告をしたように思う。それから声を掛けられたような気もするが、まともな会話など数年したことがなかったために、上手く反応することすら出来なかった。
施設から出ても、日常的な動作を思い出し回復するまでに2カ月近くかかった。ここ1カ月は人間らしい情緒は取り戻しつつあるが、ああ、助かったのだ、という実感は実はあまり沸かない。
ただ、自分の中に組み込まれたボクのモノではない遺伝子に時折思いを馳せるだけだ。強過ぎる遺伝子は体に副作用を齎して、気が付けば実験体の中で生き残ったのはボクだけだった。
だが、生き残ったからと言ってなんだというのだろう。結局はまた里に利用されるだけの命になったに過ぎない。利用される相手が変わっただけで、ボク自身の価値などは何も変わりはしないのだ。
いっそ、死んでいった他の実験体のように拒絶反応が起きれば良かったのに。他人の遺伝子を受け入れ共存したボクはなんて浅ましい人間なのだろうと思う。まさに生にしがみ付いた愚者だ。
「―――あ」
物思いに耽っていると、隣の木の枝がかさりと音を立てた。ほとんど音がしなかったのに、誰かが立っている。それだけで相当な手練の人物なのだろうと想像出来た。
ボクの横にいたのは犬面を被った暗部だった。月光の下で、白く浮かび上がった銀髪と、陶器のような土気色の肌。月下の君、そんな言葉が似合うほどには綺麗な人間だと思った。
「何。おまえが今日のパートナー?大丈夫?ぼうってしてたようだけど、足引っ張らないでよね」
「え?あ?その…」
見掛けと違い口の悪い彼にやや呆然としていると矢継ぎ早に「名前、何」と訊ねられる。
「テンゾウです」
「ああ…。あの実験場の」
それだけで何か合点したらしく犬面の暗部は背中を丸めたままこちらを見詰めた。ボクよりも華奢な身体だが、何歳か年上の人物なのだろうか。細身だが、鍛練されているだろう身体はまるで鋼のようにしなやかで、言葉遣いや仕草に余裕や自信が感じられる。
「おまえ、生き残れたの幸運か不幸かわからないね」
「―――…!」
また好奇の目で見られるのかとうんざりした気持ちになっていたボクにとって彼の発言は予想外のものだった。まるで先程のボクの考えをそっくりそのまま言い当てられたようで、ボクは衝撃を受けた。
「生きてたってこんな世界なのにね。はは、ご愁傷さま。まぁ、人生精々生き足掻いてみたら?案外楽しいかもよ?」
月夜を背景に、面越しで目の前の人物がくつくつと笑ったことに気が付いて心臓が跳ねる。
「今は外野の視線がうるさいと思うけど、しばらくのことだと思うし、おまえの実力をきちんと見せていけば周りも変わるんじゃない?ま!へらへら笑ってるだけで騙せる人間なんて幾らでもいるんだからね。上手くやりなさいよ」
非常的なことをぽんぽん言う彼にぎょっとして、だけど同性ではあるがこんな綺麗な人に特別なことを打ち明けられたという高揚感に満たされた。
「ま!せっかく実験場からオレが助けたんだからさ、もっと楽しそうな顔してもいいんじゃない?」
「あ、貴方はあの時の…!?」
さぁねー、とのんびりとした口調で、夜に跳躍する彼。彼の右手にくないが構えられ、任務開始の時刻だとようやく気付く。ボクも忍具を構えつつ、闇夜に目を向けた。
「今日はとりあえずオレのあとについてくればいいから。余計なことしないでみてて」
「は、はい!!」
「あれ?ちょっと浮上した?」
「え」
面越しなのに、そんなに表情が変わっていただろうか。
「面を被ってるのにわかるのかって?まぁ、オレくらいになるとわかっちゃうんだよね~」
す、すごい。すごいぞ。この人はボクの心まで読めるのか。きっと並はずれた洞察力がそうさせるのだろう。なんだ、この人。こんな人、今まで見たことない。まるで光の扉が開いたように、ボクの前が明るくなった。
そんなボクの熱狂的な視線に気付いているのか気付いていないのか、月下を跳躍する彼はぽつりと独り言のように呟いた。
「―――この里の人間の物見高さって鬱陶しいったらないよね。こっちは見世物じゃないっつーの。ほんと、あの子以外、みんな生きる価値なんてない奴等ばっかりだよねぇ」
ボクに背を向け、吐き捨てるように言った彼の右手のくないが、本日抹殺すべき標的に向かって投げられる。
「でも、大丈夫だよ。忍としては、オレの仲間は誰も殺させやしないから」
ニッコリと(面越しだがおそらく)笑った彼のあとにボクは数秒遅れて着いて行く。この人に一生着いて行こうと思った。
―――ああ。な、なんて恰好の良い人なんだ!!
変な発言を聞いたような気もするが気のせいだろう。とにかくそんな些細なことはその時のボクにはまったく関係なかった。「あ、あのっ。カカシ先輩って呼んでいいですか!」
「はぁ。何、おまえ。気持ち悪いんだけど」
靴底の裏で踏みつけてやろうか、という顔をされたが、そんな些細なことはもう関係なかった。なんて偉大な先輩なんだ。その日、ボクはカカシ先輩を心から尊敬した。









 
 
 
 
 


前にかかならさんと「ヤマト隊長ってなんであんなにカカシ先生に対して夢みてんだろ」という話になって、あれですよインプリティングってやつですよ頭まっちろな時にカカシ先輩恰好良いとか刷り込まれちゃってそのまま現在に至るみたいなパターンですよ、等猫さんひでぇ…みたいな意見を述べた時になんとなく出来た話。もちろんヤマトたいちょは大好きです。
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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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