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空気猫

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カカシ先生とナルトくんの話です。初めまして編です。

 



 




 

そしてはじまりのはニャーと鳴いた

「んー、おまえらの第一印象は…きらいだ!」
ぽふん、と落ちた黒板消し。まさか上忍師ともあろう人が、こんなイタズラに引っ掛かるとは思わなくて、自分で仕掛けたくせにちょっとびっくり。
銀髪の箒頭。丸まった猫背の背中。顔の半分以上は覆面で覆われていて、唯一晒された右目は眠たそう。ちょっと、いやかなり怪しい見た目。
「……ちょっと、ナルトォ~、あやまったほうがいいんじゃないの?あのセンセー、さっきからずっとあんたのことみてるわよっ」
「ふぇ?う、うん…」
こそっと隣のサクラがナルトに耳打ちする。桃色の髪のナルトの好きな女の子。こういうふうにフォローしてくれるとこが、ナルトがサクラに惹かれる理由。
だって、本当にキライなら無視すればいいことだから。少なくとも他のくの一クラスの女の子はそうだった。だけどサクラはなんだかんだと言いながらかまってくれる。サクラちゃんって案外面倒見がいいんだってば。耳元に掛かった女の子特有の吐息がくすぐったくて、くふふと笑ったら「心配してあげてるのになによ!」ぽかんと叩かれた。
「ちゃっちゃといってきなさい」
サクラに背中を押され、ナルトは大人の前に出る。背後で「上忍のくせに引っ掛かるほうが悪いんだろうが」とサスケがぼそりと呟いていたような気がしたが、それには「いーっ」てしておいた。オレってばサスケは好きくねーっ。スカシててムカツクんだってば。
それに、それに!ああ、思い出しても腹が立つってば。今日、ナルトはサスケとキスをしてしまった。なにが悲しくて男なんかにファーストキスを奪われてしまわなければいけないのか。
なので昼間の怨みもこめて、ぎっと睨むと「チッ」って舌打ちされてそっぽ向かれた。やっぱムカツクってば!かっとしたナルトは、そっぽを向いた黒髪の少年の頬が若干赤かったことに気づかなかった。
先刻、のちに事故ちゅーと噂されるそれで、何かがいけないものが開花しまったうちは少年十二歳。がしかし、それを認められない、悩み多き年頃であった。
「ナルトォォ、サスケくんにメンチ切るなんていい度胸ねー!」
「うげ。サクラちゃん、誤解だってば。サスケの奴が悪いんだってばぁ」
そんな少年の心の内など知るよしもなく、サクラに怒られ涙目になるナルト。その一方で一見クールを装いながら悶々と机に突っ伏す少年。
「はは、おまえらオモシロいな~」
三人のやりとりを黙って見ていた上忍は何を思ったのか、そして何に気付いたのかそんなことを言った。ナルトといえば、突然、上から聞こえた声に、はっとして、はしゃいでいた気分も忘れておずおずと見上げた。
手が振ってくる瞬間、ナルトが条件反射のように身を竦ませれば、カカシは少し困ったような顔をした。
「ふぇ……?」
ぽふぽふ。頭の上で弾んだ手。殴られるわけでも、叩かれるわけでもなく、やさしく撫ぜれた。慈しむような、その動き…に、ナルトはぽかんと銀髪の上忍師を見上げた。
「どーした?」
のんびりと掛けられた声。「大人」の男の人。だから怒られると思った。だけど銀髪の上忍はとくに気分を害した様子もなくて、弓なりに曲がった優しげな瞳に見つめられ、ナルトは、次の言葉を言いよどんだ。
サクラも上忍の行動に少し驚いて、(だって少女も周りの大人が金髪の少年にだけやけに厳しいことに薄々勘付いていたから)だけどすぐにその驚きと違和感を振り払い上忍に話しかける。
「先生、これからどうするんですか」
「そうだなぁ、今日は天気もいいし、屋上に行って自己紹介でもしてもらおうか」
サクラの問いに上忍はナルトの頭に手を置いたままニッコリと笑った。そして名残惜しげに金糸の髪を指に絡めてからポケットに手を突っ込んで背を向ける。一瞬ぽかんと呆気に取られていたナルトだが、弾かれたように去っていくその背中に追い縋った。
「…っあのさ、あのさ!」
「ん~?」
「んと、…せんせぇ…さ」
オレのこと怒らないの?不思議でしかたなくて、きょとんとして問えば、
「元気があるのはいいことだぞぉ」
だって。くしゃくしゃ。また頭を撫ぜられた。絶対、どっかズレてるってば。おっきな手にちょっとビクッてなったけど、ぞわぞわってなったけど、大人の手は温かかった。
こんなの初めて。イルカ先生だって最初はオレのこと複雑そうな目で見てたってばよ?どうして?わからないってば。
屋上で自己紹介を行ったあとそのままカカシの号令でその日は解散ということになった。
「朝飯は抜いてこいよ~吐くから!」
「吐くってそんなにきついの!?」
「チッ」
慣れない先生業にほっと一息。カカシが手を後ろでにして後頭部を掻いていると小難しそうな顔をしてうなっている金糸の子供がひとり。
「むー」
「どーしたぁナルト?」
「うわ、カカシせんせぇ…!?いきなり背後に立つなってば!」
どわわ、と腕をわたわたさせて大袈裟にリアクションするナルトに、カカシの瞳がまた弓なりに細められる。「どれどれ、どこが読めないんだ?」背中越しに覗き込む大人に若干緊張しながら、ナルトはプリントの文面を指差す。
「…――おまえね、これくらい読めなきゃダメデショ」
「だってさ、だってさコレ難しい漢字ばっかだってば!」
「全部アカデミーの授業で習う字のはずだけど?」
「う。」
二の句の継げなくなったナルトは気まずそうにカカシから視線を反らす。少し離れた場所から二人の様子を見ていたサクラは呆れたようにため息を吐いた。
「ナルト、あんた相変わらずおバカねぇ」
「サクラちゃんは読めるってば?」
「当然でしょ。こんなの読めないのあんたくらいよ。ねぇ、サスケくぅん~」
桃色の少女がハートを飛ばして黒羽色の少年にすりよっていく。その後姿をナルトは「がーん」と斜線付きで見送った。あとに残ったのは朴訥と立つ銀髪の大人と落ち込む子供。
「フラれたな」
「余計なお世話だってばぁ!」
むきー!歯を剥き出す子供に大人は「クククっ」と怪しく笑ったあと、くしゃりとナルトの頭を撫ぜた。また体をビクつかせたナルトだが、ふれてくる低めの体温が心地よくて、「イルカ先生」と「火影のじっちゃん」以外の大人を不思議な面持ちで見上げた。そんな二人の始まりの日。















鈴取り前夜。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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