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空気猫

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ナルト視点。






ナルトにとって公園は避難所。学校が終わるとすぐに公園に行く。あの家の中にはいたくなくて。
だって息が詰まってしまうから。公園にいたってひとりぼっちには変わりないが、せめて音がある場所にいたい。


灰色ねずみオレの魔法使い





キャーキャーはしゃぐ子供たちの歓声に背中を向けて、ざく、ざく、ざく、一人砂場で砂を掻き混ぜる。
オレってば全然寂しくないもんねー。ざくざく、頑なにスコップを振り上げて、一人砂場に座り込むお子様。豪快に啖呵を切ってからというものナルトに話しかけてくる子供はいなくなった。
別に。オレってば誰とも遊びたくないし、ひとりでも平気だもん。
全然、うらやましくなんてない。
―――ふっくらとした頬を膨らましながらも砂を掻き混ぜる手に力が入る。
「いっ」
砂が目に入って、ナルトは思わず両手で顔を覆う。砂の付いた手で擦るが、逆効果でしかなく、(うう、痛いってばぁ……)ぺとんと砂場に座り込んでしまう。
だけど、ナルトが蹲ったって誰も心配しに来てくれない。相変わらず離れたところで、楽しそうなはしゃぎ声が聞こえるだけだ。当たり前だ、自分からキライだと、友だちになりたくないと言ってしまったのだから。自業自得だけど、まだ8歳のお子様に辛い日常。
「―――……っ」
ダイキライだってば、みんな。そんなふうに思ってしまうなんていけないことだと思う。だけど、嫌な気持ちはむくむくと黒い雲のように膨らんで、ナルトの心をいっぱいにしてしまう。
公園に設置されている背高のっぽの時計を見上げれば、もうすぐ3時を差すというところ。
―――絶対、来る。絶対、来てくれる。お気に入りの空色のスコップでざくざくと砂を掻き回して、ナルトは心の中で繰り返し呟く。
少し眠たそうな目で、少しダルそうな声で。
「おまえ、どーしたの?」
ほらね。来た。ちょっと猫背気味の傾いた影を持つ、灰色ねずみ。
オレを見下ろすの。
「うわ。目、真っ赤じゃない。なに汚い手で擦っちゃってるの。バイキン入るよ?」
バカだねぇと笑われて、どうしてかな。すごく、くすぐったい気分。
「おいで。水飲み場で目ぇ洗ってあげるから」
脇に手を差し込まれ、ふわっと足が宙に浮く。だっこして貰うとほっとする。肩口に顔を埋めると、何かを喋るたびにちょっと動く喉仏が不思議で仕方ない。男の人特有のそれ。まだ子供のナルトには縁のないもの。……うちゃん、ナルトの唇が切ない単語を呟こうとしたが、ぐっと飲み込む。
唇を噛んでいると、ぷにっとほっぺたを突かれた。
「おまえ、なあに膨れてるの。今日は〝秘密基地〟に連れて行ってくれるんでしょ?」
それとももう忘れちゃった?
コテンと首を捻って尋ねられて、ナルトは慌てて首を振る。
「ねずみにね、ねずみにだけ教えてあげるの!」
興奮して騒いだら、「はいはい、元気だねぇおまえ」って呆れられた。
口調はぶっきらぼうだけど、優しくて寂しい気分なんてどっかにいっちゃったってば。
不思議だってば。ねずみといると、安心する。
オレ、もうひとりじゃない。
「ねずみって魔法使いみたいだってば」
「はぁ?何言っちゃってるの、おまえ」
「ねずみが言ったんだってばよ、魔法使いの弟子って!」
「……ソーデシタネ。ソーデシタ」
「発音があやしいってば」
パーカーのフードを持って、ぎゅっと引っ張れば、青年が苦笑した。少しだけ顔を屈めた顔が近付いてきて、ちょんと唇をノックされる。
驚いたけど、これって特別って意味だってば?この間、教えてもらったことをナルトは反芻する。
ニシシと笑うと、ちょっとバツの悪そうな青年の表情。
オレたちってば、全然似てないのに。―――すごく似てる。きっと心の深い部分が。
だって時々、傍にいる灰色ねずみが泣きそうに見える。
泣いてないのに、泣いてるなんておかしいかもしれないが、ナルトに声を掛ける時の彼はどこか寂しそうな顔なのだ。
猫背気味で、ちょっとひしゃげた後ろ姿。声を掛けないでよ、と全てを拒絶しているようで、本当は心の空っぽを埋めてくれる誰かを待っていた。
大きな灰色ねずみと小さいナルト。
どちらも少しだけ人生とかいう道の中で、迷っていてそんな二人が奇跡的な偶然で出逢った。
泣いていたのはどっち?
どちらも斜め下を向いて、足元ばかり見ているが、なんとなく手を伸ばして、人間って言うものの温度を確かめてみる。寂しがり屋の手の行方がどこに落ち着くのか。その答えはまだ誰も知らない。
俯き合う仲間なんて、そんな関係なんてちっとも生産的でないと思うが、どうかもう少しだけこのままで。









 
 
 
 
 
 
 
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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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