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空気猫

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猫さんは甘くておいしいところばかり食べて生きていきたいです。







 

甘くておいしいところだけ食べたらいけませんか?


「オレってばそういう考えの人好きくねぇの」
「へぇ」
「甘くておいしいとこだけっつうの。なんか納得出来ねぇ」
しゅた、と木の幹に手裏剣が当たった。それと一緒に子供の頬がぷくぷく膨れる。下忍任務終了後、カカシは解散の合図を告げるや、〝これからはプライベートの時間〟とばかりに満面の笑顔になった。しかし、他二名の子供たちの前で小さな恋人をデートにお誘いした不謹慎な大人は「オレってばこれから修行するの!」と見事にフラれる。もちろんそこで引き下がる上忍ではなく、こうして子供の修行に付いて来ているわけなのだが…。
「大体さぁ楽しいことばっかやってたら身体に悪いんだってば。何事もバランスが大切だと思うってば」
ナルトがまた手裏剣を投げる。残念ながら的からは大いに外れてるのだが、むくれながらも手は淀みなく動いている。
「例えば、パフェについているさくらんぼだけとか、饅頭のアンコだけとか、クッキーのチョコレイトのところとか、自分の食べたい部分だけを齧るとか、んなの身体に悪いの」
「ふうん。ちょっとくらい辛いこともしなきゃ立派な大人になれないってこと?」
「そう、それ」
でも、おまえ。前に饅頭のアンコだけ食べてなかった?と思いつつもカカシは、首を捻った。
「ナルト。それ、誰に言われたの?」
「イルカセンセェー…!」
切り株に座って頬杖を付いたカカシが尋ねれば、返って来た答えは案の定お決まりのものだった。あっそう。ふーん。はいはい。まったく、面白くない。せっかくデートを我慢して修行に付き合っているのに愛しい子の口から出て来る他の男の名前。
「ふうん。それじゃあ、今日の晩飯は野菜鍋ね」
〝はい、決定〟と言ってやる。もちろん、意地悪だ。
「好きなものばっかじゃダメなんでしょ?」
「…………」
ナルトがカカシを振り返って口をへの字に曲げる。若干、頬を真っ赤にしてぷるぷる震えているのが可愛らしい。
「オレってば野菜はノーセンキュー…!」
両腕でバッテンを作って、飛び出したのはお決まりの台詞だった。大袈裟でわかりやすいポーズに苦笑して、カカシは腰掛けていた切り株から立ち上がる。
カカシが「おいで?」と腕を広げれば、まるで磁石に引き寄せられたように、ぽすんと子供がカカシの腕の中に収まる。
「カカシ先生はいぢわるだってば」
「はいはい、どうせオレはおまえのイルカ先生みたいみたいに優しくありませんよー」
「またそういうことすぐ言う…」
ほっぺをぷにぷにとさわって来る指に、むうとナルトはまた膨れる。
「…オレってば別にイルカ先生の甘ったれじゃねえもん」
もう、イルカを卒業したのだとナルトはカカシの腕の中でいやいやをした。カカシは困ったように、頬を掻いて、ナルトに手を差し出す。
「ほら、おてて繋いで帰ろうか。それとも抱っこしてあげようか?」
「…………」
伸ばされた手に、ナルトはまたまたむうと膨れた。
「オレってばすっげぇガンバってるのに…」
「え?」
「なんでもねぇの!」
「なーに。おまえ、怪しいよ?」
「カカシ先生に言われたくないってば!」
「……おまえ、恋人に向かって酷いこと言うね」
カカシはふうとため息を吐く。
「さー、今日はがんがん野菜を食って貰うからな~」
「ぎゃっ。あれは冗談じゃないんだってば!?」
「ははは、先生はいつでも本気だぞぉ~?」
「カカシ先生、横暴だってば。暴君!!」
「はい、はい。なんとでも言いなさ~い」
カカシはナルトの抗議の声を耳半分で聞く。大体、なんだかんだと言ってイルカはナルトの好きなものばかり食べさせていると思う。ラーメンやアイスを、ナルトが強請れば「しょうがねぇなぁ」なんて言って与えている。
可愛い生徒。それも格別の。気持ちは痛いほどわかるが、(もちろんカカシにはそれに恋人としての項目も加わるのだけど)必然的にカカシがナルトの食生活をきちんと管理してやらなきゃいけなくて、愛しい子の嫌われ役を買って出ているという何とも不本意なこの状況。
おまえのためを思っているのに。そんなに暴言を吐かないでよ。哀しくなっちゃうデショ?
「カカシ先生のおたんこなーす!」
「はー、そういうこと言っちゃうわけね、おまえは」
ナルトの両手を持ち上げて、カカシは子供を吊るす。ぷらんと浮いた二本足。バンザイの体勢のままへの字口で固まった、お子さま。ああ、可愛い。思わず趣旨を忘れて、そのままキスしてやれば、腹部に衝撃が走った。
「こーら、ナルト。痛いでしょ」
「野菜鍋とこの話は別だってばよ、カカシ先生」
足をバタつかせたナルトがカカシの腹部めがけてキックをするが、さすが上忍というべきか、ビクともしない。
そのうちカカシの腕がナルトを抱き締める。生意気なことばかり言うお子さまが可愛くて我慢できなくなったのが本音らしい。
「おまえ、どうしたの。今日はやけにご機嫌斜めじゃない」
「べっつにぃ…」
唇を尖らして、カカシのベストを掴むナルト。抱っこしてやれば、不機嫌そうな顔をしながらも、しっかりカカシの腰に足が回されるので笑いが込み上げてくる。
空を見上げれば紅。とろけそうな真っ赤な夕日。柔らかな子供の抱き心地と陽だまりの匂いを楽しみつつ、カカシはしみじみと呟く。
「オレは好きだけどねぇ。甘くておいしいものばっか食べる人生」
「……カカシ先生、甘いもんきらいじゃん」
「そんなことない。とっても好きだよ?」
不思議そうに見上げた子供の唇にちょんとキスを落としてやる。〝おまえを〟食べるのは大好きだよ?耳元で囁いてやれば、ぼん!と音がしそうなほど子供の顔が真っ赤になる。
「カカシ先生ってばサムいってばよ!」
「ははは、なんとでもいいなさーい」
ギャー!と雄叫びを上げカカシの腕の中から逃れようとするお子さまをぎゅっと捕獲して、暴れる子供のおでこにキス。やだ、やだ、と抵抗する小さな手すら愛おしい。やんちゃな手の平を優しく掴まえて子供が怯んだ隙に、ふっくらとした唇を頂く。そのまま首筋まで滑る愛撫。軽く歯を立ててやると、大人の手練手管に不慣れな子供はくてんと大人しくなる。
「カカシせんせぇのバカ…」
可愛い憎まれ口は最高の褒め言葉として献上され、ナルトは上忍速度でカカシの家へとお持ち帰りされる。ちなみに買い物中のサスケがこの光景を目撃して「ウスラトンカチどもめ」と舌打ちしたことは1番星だけが知っていた。







二人だけの部屋で毛布に包まって、夕ご飯前の情事。軽い運動だよ、と大人は言ったが、ナルトはぐったりとした様子でシーツに沈んでいる。
大人の腕枕。1番居心地のいい位置を探して頭を預ける。ふにふにと頬をつつく指が擽ったくて、ついつい微睡んでしまう。
「もうちょっとダラダラしたら夕ご飯にしよ。一緒に作る?」
「んぅー……」
顎の部分を擽られ、ゴロゴロ、きっと猫なら喉を鳴らしてしまうほど気持ちが良くてナルトは目を細める。そのうち、いつもナルトが聞き惚れてしまう低い声が鼓膜を震わした。
「ねぇ、なんでそんなに怒ってたの?」
ベッドの中では殊更に甘く擦れた声。オレってばこの声に弱いんだってば。隠し事なんて出来ない。
「だって…、カカシ先生が」
「オレが?」
「オレのことをすぐ甘やかそうとするから…」
意外な言葉にカカシは目を見開く。ぷいっ、とナルトが視線を逸らす。
「オレってば、先生に速く追い付きたいのに、カカシ先生は急がなくていいよとか、おまえのペースで頑張ればいいよって」
今日だって、デートに行こうって。オレってば凄く嬉しかったけど、それじゃあダメじゃん。
「カカシ先生といると楽しいことばっかなんだもん。甘くておいしいことばっか」
身体に悪いんだってばよ?とカカシの方にすり寄って来る愛らしいお子様。まさに天然爆弾。
百戦錬磨と言われたカカシだが、わずか12歳のお子さまに心臓を鷲掴み。
カカシの内心など知る由もないお子さまは、尚も甘露のような告白を続ける。
「オレってば、カカシ先生と一緒にいてぇの。そのためにもカカシ先生との距離を少しでも縮めたいんだってば」
年齢の距離はどうやっても無理。だからせめて、好きな人の足を引っ張らないくらいには強くなりたいと思う。
「頑張ったぶん、カカシ先生に近付けるんだってば…」
そうでしょ?だから甘くておいしいことばっかしてらんねぇの。
「近付きたいのに………」
だけど甘くておいしいことばかりの恋人の関係。とろりとした飴に包まれるような安心感。ナルトが今まで知らなかったことばかり。愛の囁き、二人だけの戯れ、蕩けるような情事。
オレってば困ってしまう。
「甘くておいしいことばっか」
ふぅ…なんて色っぽいため息と共にぽつりと呟かれた独白。―――ああ、もう堪らない。
なんて、なんて、愛おしい存在。
「ナルト」
「なんだってば?」
きょとんと首を傾げたお子さまの手を取って、カカシは最高の笑みを浮かべる。
「バカだねおまえは」
むっとしたナルトに、甘い台詞がぼそぼそと囁かれる。何も知らないお子さまに世の恋人たちの流儀というものを教えてあげよう。その役目を与えられた自分はなんと運が良いのだろう。なんたる光栄。にやりと笑った大人はそのまま、子供の手の甲に唇を寄せた。左手の薬指に、キスを落として心臓を直撃。




その日の夕飯はやたら上機嫌の大人と、顔を赤くして皿ばかり見る子供がテーブルに向かい合う。ことこと煮込んだ野菜スープ。だけど野菜の味なんてちっともわからなくて、恋人たちの時間は甘くておいしいことばかり。


 
 
 










ごちそうさまでした。
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ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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